不思議の国の■■■   作:Feles

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帽子屋は言います。

ここはゴミ箱の底だと。

アリスは、楽しい気分が台無しになった気持ちでした。


お茶会場

「やぁやぁ、三人共いらっしゃい、よく来てくれました」

 

お茶会会場に到着するなり、奇怪な帽子を被った黒髪の少年が出迎えた。

 

「ごめんね帽子屋さん、ちょっと遅れちゃったね」

 

「いえいえ、15時ピッタリですから、問題ありませんよ白ウサギさん」

 

「え?」

 

そんな馬鹿な、ここに来るまでに30分は掛かった筈なのに…

 

「さて、どうぞ皆様あちらのテーブルにお掛けになってください」

 

帽子屋が手を向けた先には、丸耳の生えた灰髪の子供がポツンと座る丸テーブルがあった。

 

「よォ、溝鼠、元気してたか?」

 

「久しぶり、化け猫」

 

「随分なご挨拶じゃねェか」

 

「こっちのセリフ」

 

「こらこら、何を言い合っているんですか、お二人共」

 

「あはは、また始まった~」

 

「えぇ…」

 

開口一番が罵り合いとは仲が悪すぎるだろう。

白ウサギはのほほんとしている。

この二人を呼んだ帽子屋は何を考えているのだろうか…

 

「本当に仲が良いよね二人共」

 

「化け猫さんも溝鼠さんも睦み合うのは始まってからにしてください」

 

「チェシャ猫、だ、間違えるんじゃねェ」

「眠りネズミ、間違えるな」

 

「はいはい」

 

なるほど、これが…

 

「罵り愛…」

 

「うるせェぞクソガキ」

「うるさいクソガキ」

 

「すいませんでした!」

 

全員が席に着くと、帽子屋が手を叩いた。

 

「はい、皆様お揃いの様ですので、第6回『気が触れ茶った会』を開催いたします」

 

「まずは、定例の挨拶と共に、初めて参加される方が居られるので、自己紹介もさせて頂きます」

 

「本日は誰一人欠けることなく、皆様に出席頂き、誠にありがとうございます」

 

「主催者ことワタシ、帽子屋と名乗っております、どうぞご自由にお呼びください」

 

「みんなよく知ってると思うけど、ボクは白ウサギだよ~」

 

「オレももうやったが、チェシャ猫な」

 

「初めまして、眠りネズミ、よろしく」

 

みんなの目がこちらを向いている。

き、緊張する…

 

「は、初めまして、アリスは…」

 

「アリスさんですか、よろしくお願いします」

 

「アリス、覚えた」

 

「…はい、そうですね」

 

何故、誰も最後まで聞いてくれないのだろうか。

どうせ思い出せないから、別に良いのだが。

 

「それでは、どうぞご自由にお茶会を楽しんでいってください」

 

帽子屋の、その言葉でお茶会は始まった。

チェシャ猫と眠りネズミは早速、二人だけの罵り愛を繰り広げている。

必然的に、三人で会話することになった。

 

「アリスさん、本日は突然の招待にも関わらず、参加してくださりありがとうございます」

 

「いえ…全然そんな」

 

「アリス、このクッキー美味しいよ?食べる?」

 

「あ、ほんとだ、美味しいね」

 

「本当ですか?ありがとうございます、どうぞこちらの紅茶も飲んでみてください」

 

そう言って、紅茶をカップに注いでくれる。

 

「うん、美味しい…」

 

「それは良かったです、頑張って作った甲斐があるというものです」

 

「これ全部、帽子屋さんが?」

 

「はい、全て自家製のものです」

 

「すごい…」

 

「ね、帽子屋さんじゃなくて、お菓子屋さんでも良いと思うよね~」

 

「いやいや、そんな」

 

「でも、安心したなぁ」

 

「はい?」

 

「最初、変な帽子被ってるし、こんな森の中でお茶会開いてるしで、ちょっと怖かったんだよなぁ」

 

「ふふふ、すいません、この帽子は私に唯一残されたものでして…」

 

「唯一?」

 

「…そうですね、ワタシの身の上話となりますが、ご興味は?」

 

「気にはなる、かな」

 

その、帽子なのか、寄生されている何かなのか一瞬迷うレベルで奇怪な帽子を被り続ける理由が。

 

「では、まず」

 

「昔、ワタシはとある国の城下町で、名の通り帽子屋を営んでいました」

 

「その国、ハートランドでは、自分でいうのも烏滸がましいですが、評判が良かったんです」

 

「そしてある日、その評判を聞いたハートランドの女王様が、ワタシに依頼を出したのです」

 

「王冠のオーダーメイドでした」

 

「王族からの依頼ですから、とても名誉なことです」

 

「そもそも、ただの帽子屋のワタシに断ることが出来るはずもありません」

 

「一生懸命、作らせて頂きました」

 

「完成した王冠を見て、女王様は怒り狂い、ワタシに死刑宣告をしました」

 

「そのままトランプの兵士達に囲まれ、地下牢に幽閉され、ただ静かに死刑の日を待つだけでした」

 

「そんなワタシの元に訪れたのが、ハートランドの王様です」

 

「王様は、ワタシを秘密裏にこの森へと逃がしました」

 

「この森なら女王も探しには来ない、来たとしても見つけられないから、と」

 

「そうして、ワタシはこの森で暮らすこととなりました」

 

「この帽子は、最後にワタシが被っていた、商品です」

 

「かつての暮らしの名残です」

 

「言ってしまえば、ワタシは既に帽子屋では、ありませんね」

 

「これで、ワタシのお話はおしまいです」

 

「あぁ、でももう一つだけ」

 

「この森で暮らす人達は、そういう人達ばかりなので、優しくしてあげてくださいね」

 

帽子屋はそう締め括った。




国を追われた帽子屋は森で暮らしていました。

帽子はもう二度と作ることは出来ませんが、充実した日々でした。

そんなある日、鼠を拾います。

孤独を癒す、最初の住人でした。

次に拾ったのは、猫でした。

家がより賑やかになりました。

最後に拾ったのは、つい最近のこと。

白兎と───
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