お茶会はいつまでも終わりません。
何故なら、この世界はずっとこの時間ですから、と。
「白ウサギ、そろそろ行こう」
「ん?あぁ、そうだね」
「え?急にどうしたんだよ」
帽子屋の話を聞き終わり少し気まずく思っていたところに、眠りネズミが唐突にそう言った。
「帽子屋さん、ボクらはもう行くね」
「そうですか、もう少しお話しをしたかったですが、お別れですね」
「うん、またね」
そう言って、白ウサギは席を立った。
それに倣い、自分も立ち上がった。
「なんだ、もう行くのか?」
「ごめんね、そろそろアリスを送らなくっちゃ」
「そうか、アリス、元気でな」
「うん、バイバイ」
帽子屋達に別れを告げ、白ウサギ達に付いて行く。
「なぁ、白ウサギ、お茶会の途中で良かったのか?」
「しょうがないよ、時間が迫ってるし」
「別に、俺は終わるまで居ても…」
「お茶会が終わるのは明日だけど、良いの?」
先頭を行く眠りネズミはそう言う。
「え?」
「明日の15時までの予定だけど」
「1日まるごとやるのか?!」
「そうだよ」
そんな馬鹿な。
「そんなに居られないでしょ?」
「まぁ、確かに」
「アリスはお家に帰らないとでしょ?家族が待ってるよ」
「そう、だなぁ」
家族が待っている、不思議と、そう思えた。
「それじゃあ目的地は、ハートランド城だね」
「それってさっき話してた、ハートランドって国の?」
「そうそう、その国の女王様だけが、アリスを元の世界に帰せるんだ」
「えぇー…」
一気に帰れる気がしなくなった。
「大丈夫さ、ボクが女王様にお願いするから」
「白ウサギって何者なんだよ」
「ただの友達、かな」
不興を買っただけで、死刑宣告されるような女王様と友達とは一体、何があったのだろうか…
「到着」
そこには、扉の付いた大きな木があった。
「ここまで、バイバイ」
「うん、ありがとう、ネムくん」
「ありがとな」
白ウサギは扉を開き、中へと入り込む。
それに続き、中へと入ると広場に辿り着いた。
広場の中心には、大きな鏡が安置されている。
「鏡の世界を出るのか?」
「鏡の世界?」
「違うのか?」
「鏡の世界なんて無いよ?」
「え?いや、だって最初の家の鏡は…」
「あぁ、アレ?あれは鏡を基準に反転させた構造の家を繋いでるだけだよ」
「え!そうだったのか…」
「お洒落でしょ?」
「ははは…」
お陰で勘違いしてしまった。
「じゃあ、この鏡は何処に繋がってるんだ?」
「城下町だよ」
「お城じゃないのか」
「流石にそんな不用心なことはしないさ」
「それもそうか」
「じゃあ、はい」
白ウサギが手を差し出してきた。
「なんだ?」
「置いていかないって、約束したからね」
「一緒に潜ろ?」
「いや、いいよ、恥ずかしい…」
「あは、アリスは恥ずかしがり屋さんだね」
「ほら」
手を取られてしまった。
そのまま、鏡の前まで引っ張られる。
改めて見ると、大きい。
「いっせーの、で跳ぶよ?」
「…分かった」
「いっせーの、で!」
「いっせーの、で!」
二人一緒なら、不安は無かった。
鼠は猫が恐かったのです。
しかし、落ちて来たこの世界に猫は居ません。
最初こそ、喜んでいましたが。
鼠は気付いてしまったのです。
猫が掛け替えのない友人だったことに。
帽子屋の言葉を忘れ、寂しさを紛らわせるように、森へと入り込み。
気が付けば、手遅れでした。
けれど、いっそこのまま、そう思った時です。
聞き慣れた声を、見慣れた姿を、見つけたのでした。