バトルスピリッツ――Reincarnation―― 作:ショウ.
光に包まれたとき、地面の喪失と共に訪れる無重力空間。
強い光を放っているのに不思議と目を開けていられるその場所でシオリの衣服が袖や裾など端の方から分解と同時に新たな衣服が生成される。そして生成した服の上から胸当てや腕輪などの装飾具がそれぞれの部位に嵌められていく。
見覚えのある衣服に変化が終わると光は弱まり足の裏から地べたを踏み締める感触とほどよい重力感。
そして光の空間だったそこは姿形を変え、バトルフィールドとなっていた。
「――――」
ここまでの時間、約三秒未満。だが体感時間は三十秒ほどと脳が混乱する現象を目の当たりにしてシオリは半ば放心状態で自身の姿を確認する。
学生服だった先程と違い、身に纏うのはここで戦うための正装、バトルフォーム。
黒を基調にグラデーションのように赤、紫、緑、白、黄、青の淡い六色に彩られ、あちこちにI~XIIのローマ数字が浮かぶ神秘的なローブ。
胸当てやブレスレットは歯車になっており、全体的に時計を思わせる姿になるのはシオリのキースピリット『クロノ・ドラゴン』をイメージしたものだからだ。
「バトルフォームに着替える時、もし一瞬でも全裸になってたらどうしようって思ってたけど魔法少女っぽい感じで少し安心したかな」
前回は目を閉じていたためにこのプロセスを見逃していたシオリは頭の隅で、全裸になった瞬間があったら……と不安を募らせていた。
あの空間は外からは誰にも見られない。それはタイヨウがバトルフィールドに移動しモニターに映る瞬間をこの目で見ていたから知ったことだ。
が、それを抜きにしても一瞬でも全裸になるのは嫌なものだ。シオリだって一端の乙女だ。恥じらいだってある。
「――――ぁ」
不安だった部分も解消され頭も落ち着いてきたシオリは顔を上げると遠く離れた対面でアンナが手のひらを開閉しながら身体の調子を確認していた。
「私の顔に何かついていましたか」
「あ、ジロジロ見てごめんね。カッコいいバトルフォームだなって」
シオリの視線に気付いたアンナは金属の擦れる音をたて正面から向き合った。
アンナのバトルフォームも本人のイメージとはほど遠いものだった。
紫のシンプルなドレスの上に纏う漆黒の甲冑。腰には長剣をぶら下げており長い髪を紫のリボンで一つにまとめていた。
その姿は西洋の騎士そのもの。気合いの入ったアンナの表情からはお嬢様だった可憐な頃では見受けられない幼さと凛々しさが同居していた。
「それ重くないの?」
「こう見えてただのプラスチックみたいな物ですから全然ですわ」
肩や腰をぐりんと回しアンナは身軽な動きを見せる。
そんな二人のやり取りをモニター越しで眺める面々は使われていない台に移動し座っていた。
「へー、二人ともカッケェじゃん」
「どっちが勝つのかハラハラするわね」
「マリアン、私たちルールあんまり分かんないから色々と教えてね」
「ええ、任せてね。昨日覚えたての知識もバンバン出しちゃうわよ」
解説に意気込むマリアを中心に子供たちも集まり本人には届かないがそれぞれ声援を送る。
そして事前に先攻後攻を決めていなかった二人は離れた位置でじゃんけんを繰り返していた結果、アンナが先攻となった。
「私のターン。スタートステップですわ」
――TURN 1 アンナ
手札:4 リザーブ:3[s]
「ドローステップ、メインステップ。まずはナイトブレイドラを召喚ですわ」
《ナイト・ブレイドラ→Lv1.BP1000[s]》
何もないフィールドに最初に姿を現したのは小さな紫の翼竜だった。
刃のような黄色の翼を広げ紫の体毛に包まれた翼竜は鋭い目付きで敵であるシオリを威嚇する。
「あ、カワイイ!」
「当然です! この子はタイヨウ様が愛用するブレイドラのリメイクカードの一つなのですよ!」
絶賛するアンナに呼応してナイトブレイドラも両腕を広げて更なる威嚇行為に。
「この子の素晴らしさはこのバトルで更に見せるとして続けてネクサス、龍の聖剣を配置です」
《龍の聖剣→Lv1》
アンナの背後から台座に突き刺さった漆黒の剣が競り上がる。
「最後にバーストをセットしてターンエンドですわ」
TURN 1 アンナ終了――
手札:2 リザーブ:0 バースト:有
《ナイト・ブレイドラ→Lv1.BP1000[s]》
《龍の聖剣→Lv1》
――TURN 2 シオリ
手札:5 リザーブ:4[s]
「メインステップ。そっちがナイトブレイドラを出すなら私はゴッドシーカーロロドラを召喚!」
《ゴッドシーカー ロロドラ→Lv2.BP3000 C1[s]》
ナイトブレイドラに謎の対抗心を燃やすシオリが召喚したロロドラもまたブレイドラのリメイクカード。
緑の体毛をしたロロドラはナイトブレイドラと違いその場で跳び跳ね活発に動き回っていた。
「せわしないスピリットなのですね」
「元気なことはいいことだよ。ロロドラの召喚時効果でデッキから3枚オープン。その中の《放浪の創界神ロロ》と転醒カードか系統『道化竜』を持つカードを手札に加えるよ」
デッキの上から自動でオープンされる3枚のカード。
そのカードを通覧したシオリは目当てのカード《放浪の創界神ロロ》を手札に加え、残りの《道化竜ギンガードラゴン》か転醒カード《百識の書架渓谷》のどちらを手札に加えるか悩んだ結果――。
「《百識の書架渓谷》を手札に加えて残りは破棄だよ」
「転醒カードを手札に……ですがこのターンこれ以上の展開は」
「アタックステップ。ロロドラでアタック!」
「え! アタックですの!?」
手札を補強したもののバーストはセットできず、そのままターンエンドするものと予測していたアンナを裏切るようにシオリは強気にロロドラをアタックさせた。
「バーストを警戒してませんの」
「私、初心者だから。紫とのバトルも初めてで一々バーストを警戒して後手に回るぐらいなら発動される覚悟を持って攻めるだけだよ」
シオリの力説にアンナは目を丸くしマリアは感心し頷いていた。
「昨日のタイヨウちゃんの戦術ね」
モールトとのバトルでタイヨウは彼の必殺技【闇奥義】の発動タイミングを意図的に操作し、攻撃を凌ぎきった。アポロもといタイヨウを尊敬するシオリならその戦術を素早く自身の戦術として組み込むのもおかしな話ではない。
既にロロドラの召喚時効果で創界神と転醒カードを手札に加え十分な仕事をしただけでなく二つのバースト条件も踏んでいる。
そしてこのアタックによってアタック後、破壊後、ライフ減少後のどれかをバースト条件を踏むことになる。
たった一体のスピリットにここまでの役割を意図的に与えた初心者と呼びづらいシオリにただただ感服するだけだが、惜しむらくは――。
「色が悪かったわね」
マリアの呟きにバトスピの事を知らないアカリ達が首を傾げた。
「ライフで受けます」
《アンナ:ライフ5→4》
ナイトブレイドラを素通りし飛び上がったロロドラはアンナの目の前に展開したライフ障壁に背中の刃を突き立てライフを砕いた。
ライフダメージを0にしているため衝撃すらこない砕け散る派手なエフェクトを前にアンナは睨む。
「その勇気は素晴らしいものですがさすかにバーストを侮りすぎですわ。ライフ減少でバースト発動です。騎士の覇王ソーディアスアーサー(Re)のバースト効果で相手のコアを3個トラッシュに送りますわ」
フィールドには疲労状態のロロドラしかおらず問答無用でロロドラの生命の源が奪われる。
「あ、ロロドラ……」
「伝説の騎士 今、この戦地にてその剣技を振るいなさい。騎士の覇王ソーディアスアーサー(Re)をレベル1で召喚です」
《騎士の覇王ソーディアス・アーサー(Re)→Lv1.BP10000C1》
鞘から抜いた剣を空へ向けて突き上げると上空に暗雲が立ち込め、穴が空くと一筋の光が差し込んだ。
暗雲から舞い降りてくるのは重厚な鎧を見に纏った一人の騎士。背中から生えるコウモリの羽根を広げ剣を抜刀したソーディアスアーサーはシオリと対峙する。
「なんかなんかシオリのターンでヤバそうなのが出てきたんだけど」
「カッコいいな……けど」
「これシオリンまずいんじゃ……」
シオリの前に立ちはだかるソーディアスアーサーから感じる圧。それはタイヨウが煌臨させたアポロヴルムに勝るとも劣らない肌がひりつく威圧感を放っている。
「まさに虎の尾を踏む、ですわね」
「……ターンエンド」
TURN 2 シオリ終了――
手札:6 リザーブ:0
TURN 3 ――アンナ
手札:3 リザーブ:4
《騎士の覇王ソーディアス・アーサー(Re)→Lv1.BP10000C1》
《ナイト・ブレイドラ→Lv1.BP1000[s]》
《龍の聖剣→Lv1》
「メインステップ。キャメロットナイトX召喚」
《キャメロット・ナイトX→Lv1.BP1000》
アンナが新たに召喚したのは小さな紫の一つ目兵隊だ。
槍と盾構えた兵隊の足元を見れば足は実態を持たず幽霊のような存在をしていた。
「紫だから幽霊なのが当たり前って感じなのかな。あのアーサーもコウモリの羽根みたいだし」
「キャメロットナイトXの召喚時効果で1枚ドローですわ。さらにもう一体キャメロットナイトXを召喚。1枚ドローですわ」
《キャメロット・ナイトX→Lv1.BP1000》
二体目のキャメロットナイトが現れ一体目と目を合わせると同時に槍を掲げる。
これでアンナのフィールドには四体のスピリットが並び、対するシオリはスピリットもバーストも無し。加えてコアも全てトラッシュと手の内ようが一切ない。
「あれだけスピリットを召喚してるのに手札があんまり減ってない」
「それが紫の特徴の一つね。紫にはキャメロットナイトXのように召喚時に1枚ドローするコスト3帯のカードが多く存在してああやってスピリットを横に並べても手札が尽きないの」
無論、経験者なら紫のセオリーは把握済み。対策として手っ取り早いのが召喚時もしくは手札増加のバーストを伏せることだが生憎シオリは紫のセオリーを知らなければバーストも無い。これでは好きなだけ展開してくださいと言っているものだ。
「バーストをセットしてアタックステップですわ。キャメロットナイトでアタックですわ」
剣先をシオリに突き付けキャメロットナイトに突撃の号令が飛ぶ。
「ネクサス、龍の聖剣の効果発揮。系統『起幻』と『魔影』を持つコスト3以上のスピリットがアタックしたとき1枚ドローですわ」
「アタックするだけで手札が増えるなんて厄介って感じだよ。ライフで受ける!」
《シオリ:ライフ5→4》
槍を構えて一直線に突撃するキャメロットナイトはシオリに展開されたライフ障壁に槍を突き立てる。
一切の衝撃がなかったレベル0と違いレベル1は障壁が破壊された衝撃が衝撃波としてシオリを襲い足をふらつかせる。
「レベル1に上げるだけでこんなに変わるんだ」
「まだまだ行きますわよ。二体目のキャメロットナイでアタック」
《龍の聖剣の効果で1枚ドロー》
「ライフで受ける!」
《シオリ:ライフ4→3》
「ソーディアスアーサーもアタックですわ」
「それもライフで受ける!」
《シオリ:ライフ3→2》
コウモリ羽根を広げシオリの前まで飛翔すると抜き放った大剣を上段で構え、勢いよく振り下ろした。
「同じライフの消失なのにこのアタックだけ威力が違く感じるよ」
二つのライフ消失の衝撃波を台座に付いているグリップを握ってしっかりと堪えたシオリは残り一体の回復状態のナイトブレイドラを見つめる。
「……ナイトブレイドラは攻めずにターンエンドですわ。ですが勝敗はもう決まったようなものですわね」
「それはどうかな。これぐらいまだまだ挽回の余地はあるって感じだよ」
「いいますわね。なら次のターンあなたがどうでるのか楽しみですわ」
TURN 3 アンナ終了――
手札:4 リザーブ:0 バースト:有
《騎士の覇王ソーディアス・アーサー(Re)→Lv1.BP10000C1(疲)》
《ナイト・ブレイドラ→Lv1.BP1000[s]》
《キャメロット・ナイトX→Lv1.BP1000(疲)》
《キャメロット・ナイトX→Lv1.BP1000(疲)》
《龍の聖剣→Lv1》
TURN 4 ――シオリ
手札:7 リザーブ:8[s]
回ってきたシオリのターンだがその惨状はアカリ達素人目からも明らかだった。
前のターンでロロドラから回収した豊富な手札量。アンナの猛アタックで得た大量のコア。
シオリの言う通り挽回しようと頑張ればどうにかできる状態ではあるが――。
「生半可な展開だと逆にアンナちゃんに利用されるわ」
「え、相手みたいに数出して並べるんじゃダメなんすか」
「アンナちゃんもシオリちゃんが数押ししてくる可能性は考慮してるはずよ。バーストもその防衛壁。そしてシオリちゃんがもしこのターン攻めたらそれはアーサーの餌食よ」
「またあのカードが何かするんですか!?」
カード知識のない三人はアーサーのアタック時効果を知らない。そしてマリアはアンナが理想とするこの後の展開にただシオリにエールを送るしかない。
ここで判断を間違えれば――アーサーを倒せなければ次のターンでシオリは敗ける。
「それで敗ければそれまでのバトラーということ。タイヨウ様のサジットを倒したのも何かの間違えと言うことですわ」
今のところ手応えは感じない。むしろ初心者らしいバーストの踏み抜きかたに失笑してしまいそうになる。
タイヨウの立場を考慮してもう少しぐらいは何かしてみてほしいところではあるがそれは期待するだけ無駄だとアンナが思ったタイミングだった。
「よし、この順番でやればいける!」
手札とコアを見比べてコストの計算を終えたシオリが行動に移る。
「まずは放浪の創界神ロロを配置」
《放浪の創界神ロロ→Lv1.C0》
シオリが最初に選んだのはロロドラの召喚時効果で手札に引き寄せたこのデッキ唯一の創界神だ。
緑の探検服に木の長杖を持った灰色のフードを被る眉目秀麗の男性がシオリの後ろに佇む。
創界神の配置による共通効果、【神託】によりデッキから3枚がトラッシュに落ちる。
上から順に《道化竜ドラゴ・フランケリー》《道化竜ドヴェルグドラゴン》《絶甲氷盾》。ロロの神託条件は道化/起幻のコスト3以上のスピリットもしくは転醒スピリットか転醒ネクサス。今回は道化竜二体が条件に入ったためボイドからコア2つ創界神に追加された。
《放浪の創界神ロロ→Lv1.C2》
「あれが新しいロロの創界神ですわね」
「道化竜メルトドラゴンを召喚」
《道化竜メルトドラゴン→Lv1.BP3000》
《放浪の創界神ロロ→Lv2.C3》
お次に召喚したのはコスト3のスピリット。ピエロの格好をした奇抜なドラゴンが口から吹き出す火を手で操り遊んでいた。
「メルトドラゴンの召喚時効果で相手のネクサスを破壊!」
吹き出した火の玉をジャグリングの要領で遊び倒すとそのまま龍の聖剣に投げ当て燃やし尽くした。
「龍の聖剣が……!」
「ネクサスを破壊したときトラッシュのコア3個をリザーブに戻すよ。そして道化竜ポルドラ&カスタードラを召喚」
《道化竜ポルドラ&カスタードラ→Lv1.BP2000C1[s]》
《放浪の創界神ロロ→Lv2.C4》
一本の角が生えた緑竜と二本の角が生えた双子の緑竜が仲良く宙を舞う。
「召喚時効果でBP5000以下のスピリットを破壊してボイドからコア1個をこのスピリットに置いてレベル2にアップ!」
《道化竜ポルドラ&カスタードラ→Lv2.BP4000C2[s]》
一本角の緑竜がナイトブレイドラを火炎ブレスで破壊し、二本角の緑竜がそれに応えるように生命の力を溢れされる。
「ネクサス、百識の書架渓谷を配置」
《百識の書架渓谷→Lv1.C1》
《放浪の創界神ロロ→Lv2.C5》
ロロの周りを無数の本が羅列する渓谷が現れる。これもロロドラの効果で手札に入れた転醒ネクサスだ。
「ロロの神技を使って1枚ドロー」
《放浪の創界神ロロ→Lv1.C2》
「手札を補充する神技ですか。悪くないですわね」
「最後にバーストセットだよ」
一通り準備を整えたシオリは深呼吸を一回入れるとメルトドラゴンのカードに手を置き、
「アタックステップ。メルトドラゴンでアタック!」
「シオリンが攻めた!」
盤面は少し持ち直したシオリだがマリアからすれば攻めるにはまだ些か不安が残る。だがマリアもそして対面でにらみ合うアンナもシオリがこれ以上無策で突っ込むとは考えづらい。
「何かあるんですわね」
「ご明察。系統『起幻』を持つ私の赤のスピリットがアタックしたとき百識の書架渓谷は転醒するの!」
バトルフィールドが震え書架渓谷の奥から何千の歳月を感じされるご老体の竜人が姿を現す。
「百識の主ウィズダンブールに転醒!」
《百識の主ウィズダンブール→Lv1.BP5000C1》
――Count1――
葉の落ちた木の角を生やし根のような長い髭に顔を覆われたモノクルが特徴的た赤い翼を持った竜にネクサスは転醒した。
その瞬間、シオリの手の甲に装着されている時計の針が進みIを指し示した。
「ウィズダンブールの転醒時効果でワンドロー」
「ついに転醒してきましたわね」
「でも私のやりたいことをこの先だよ。バースト発動!」
「なんですって!?」
シオリの突如としたバースト宣言。既存のどの条件もまだアンナは踏んでいないのにも関わらずのバーストの発動。
警戒するアンナにシオリは軽快な口調で宣言する。
「クリメイションフレイムは本来、相手のこのスピリットの召喚/煌臨時発揮後が条件のバーストだけど私のカウントが増えたとき1以上ならバースト条件を無視して発動できるの」
「転醒に対応したバースト……! まさかそのようなカードが存在していたなんて」
「クリメイションフレイムのバースト効果でBP 15000以下のスピリットを破壊! 対象はもちろんそこの騎士の覇王だよ!」
紅蓮の炎がソーディアスアーサーを包み渦巻く熱風と化して勇猛なる騎士の覇王を破壊させた。
「ソーディアスアーサー!」
「さらにコストを支払ってフラッシュ効果。BP6000以下のスピリットを破壊!」
《道化竜ポルドラ&カスタードラ→Lv1.BP2000[s]》
そしてソーディアスアーサーを襲った紅蓮の炎が次の獲物を見つけ二体いるキャメロットナイトの片方を同じように焼き尽くした。
「カウント1以上のとき、このカードは手札に戻るよ。さあ、このアタックはどうする」
「使い捨てのマジックを手札に戻すなんて……ライフで受けますわ」
《アンナ:ライフ4→3》
メルトドラゴンの全速投球による火球がアンナのライフを砕く。
「バーストは開かない。ならポルドラカスタードラもアタック!」
アンナが動かないのを確認して二匹の翼竜が攻めに転じる。
「それもライフですわ!」
《アンナ:ライフ3→2》
相変わらずライフ二つを奪ってそうな連続攻撃。レベル0とは言え立て続けにスピリットの圧を間近で受けたアンナは少し汗を流していた。
「ここで使いますわ。ライフ減少でバースト発動、絶甲氷盾ですわ!」
発動したバーストは定番の絶甲氷盾。バースト効果でアンナのライフは一つ回復し、コストを支払いこれ以上のシオリの攻撃をシャットアウトした。
「下手にコアを与えすぎたかな。ターンエンド」
TURN 4 シオリ終了――
手札:5 リザーブ:0 Count1
《道化竜メルトドラゴン→Lv1.BP3000(疲)》
《道化竜ポルドラ&カスタードラ→Lv1.BP2000[s](疲)》
《百識の主ウィズダンブール→Lv1.BP5000C1》
《放浪の創界神ロロ→Lv1.C2》
TURN 5 ――アンナ
手札:5 リザーブ:7[s]
《キャメロット・ナイトX→Lv1.BP1000》
「Sバースト以外にも自主的に発動できるバーストがあるとは思いませんでしたわ。正直、油断してましたわ」
「やっぱり? 私、バーストのシステム大好きだから綺麗に決まって大満足って感じだよ」
「ええ、本当にですわ。ヴィアゼルさんを思い出さずにはいられませんでしたわ」
「ヴィアゼル……? 何処かで聞いた名前のような……」
懐かしむように誰かの名前を口に出すアンナ。初対面のシオリには彼女の知り合いなんて知るよしもないのだがつい最近シオリはその名前を聞いた記憶がある。
「はぁ……いくら初心者といってもそれは勉強不足ですわ。タイヨウ様が【S】ランクバトラーと知っていらっしゃるなら他の【S】ランクバトラーの皆さまの名前ぐらいは知っておくべきじゃないですか」
アンナは呆れてため息をつく。それに申し訳なくなり頭をかくシオリだが、今のアンナの発言から昨日のマリアとの会話を思い出した。
「【S】ランクバトラーのヴィアゼルって確か《覇者》って呼ばれてる人だよね」
「あら、知ってはいたのですね」
「ちょっとど忘れしててね。アンナちゃんはヴィアゼルって【S】ランクバトラーとバトルしたことあるの?」
「ええ、ありますわ。彼に限らず他の【S】ランクバトラーともバトルしたことありますわ」
全【S】ランクバトラーとバトル経験があるというアンナにシオリは目を輝かさずにはいられなかった。
「全員と! スゴい! ねぇ、さっき私のプレイングを見て思い出したヴィアゼルってどんなバトラーなの」
「そうですわね……彼は【S】ランクバトラーの中で最も暑くる……熱い人ですわ」
「暑苦しいんだ」
顔を僅かにだが歪むほどの思わぬ不評に苦笑するシオリはそのまま話を聞き続ける。
「彼のバトルは理知的な要素は一つもないバーストのごり押しばかりですわ。それこそ先程のあなたみたいなバーストを無理矢理発動ばかりさせてましたわ」
「バーストデッキなんだ」
「ですがあなたと違って彼がバースト発動すると中々止まりませんわ。私が相手したときは少なくとも1ターンで五回以上はバーストを発動されましたわ」
「五回以上も……!?」
さすがのシオリでも一度のターンに五回以上のバースト発動はそうそう成せるコンボではないことは理解できる。それを平然とやってのけるのがヴィアゼルが【S】ランクバトラーと呼ばれる由縁なのだろう。
「脱線してしまいましたわね」
「そうだね。私も変に掘り返してごめんね」
「では私のメインステップからいきます。ナイトブレイドラを召喚」
《ナイト・ブレイドラ→Lv1.BP1000C1》
再び召喚したナイトブレイドラにキャメロットナイトと顔を会わせ跳び跳ねる。
「ネクサス、龍の聖剣を配置して闇騎士ランスロットXをLv2で召喚」
《龍の聖剣→Lv1》
《闇騎士ランスロットX→Lv2.BP7000C2[s]》
紫のシンボルに無数の剣の軌跡を走らせ飛び出したのは細心の騎士。
白い羽根のマントをなびかせレイピアを振るう姿は洋風の騎士そのものだ。
「召喚時効果で疲労状態のメルトドラゴンを破壊して1枚ドローですわ」
振るったレイピアから発生した鎌鼬が二頭の緑竜を巻き込み切り裂いた。
「……ターンエンド」
TURN 5 アンナ終了――
手札:3 リザーブ:0
《キャメロット・ナイトX→Lv1.BP1000》
《ナイト・ブレイドラ→Lv1.BP1000C1》
《闇騎士ランスロットX→Lv2.BP7000C2[s]》
《龍の聖剣→Lv1》
TURN 6 ――シオリ
手札:7 リザーブ:8 Count1
《道化竜ポルドラ&カスタードラ→Lv1.BP2000[s]》
《百識の主ウィズダンブール→Lv1.BP5000C1》
《放浪の創界神ロロ→Lv1.C2》
《ウィズダンブールの効果でドローステップのドロー枚数+1》
「さっきのターン、あの子攻めてこなかったね」
「シオリンのフィールドには回復状態のスピリットがいたからじゃないの?」
「でもアンナには三体のスピリットがいたんだ。無理すれば倒せたんじゃないか」
「シオリちゃんがさっき使ったマジックが手札に戻ったのが効いてるわね。あのマジックの存在がアンナちゃんのアタックを封じてるわね」
第三視点からの戦況の分析に三人が納得の声を上げる。
そしてシオリもまたここが勝負所だと手札に来た切り札を目に覚悟を決める。
「まずはネクサス、新しき世界を配置」
《新しき世界→Lv1.C1》
《放浪の創界神ロロ→Lv2.C3》
書架渓谷の代わりにバトルフィールドの外に形成されるのは独特な自然形態を持った名の通り新たな世界。そして――。
「――――」
「……! 来るのですね。あなたのキースピリット」
シオリの周りに漂う空気が変わるのを感じたアンナは直感的に彼女のキースピリットが来ると剣の柄に手を伸ばす。
「時歩み龍が今ここに顕現する! 召喚、時空龍クロノ・ドラゴン!」
《時空龍クロノ・ドラゴン→Lv2.BP5000C3》
《放浪の創界神ロロ→Lv2.C4》
空間に亀裂が走り、青い刃が空間を切り裂いた。歯車を模した装飾を身に付けた竜人が空間の狭間から飛び出しバトルフィールドへと降り立った。
「あのドラゴンが彼女のキースピリット……! 悪くないですわ」
「バーストをセットしてロロの神技を発動!」
《放浪の創界神ロロ→Lv1.C1》
「このタイミングでまた手札補充ですか」
「違うよ。ロロの神技は私のカウントが2以下の時、私の転醒前ネクサスを転醒させることができるんだよ」
その説明にアンナは目を見開きシオリのフィールドを見渡した。
先程の条件に当てはまるカードは一つ。このターンの最初に配置した新しき世界。転醒ネクサスを強制的に転醒させる。十分に驚かされる効果だがアンナの視線はすぐに転醒ネクサスからバーストに移る。前のターンのあのコンボを見せられればそれは無理もない反応だった。
「新しき世界を風雅龍エレア・ラグーンに転醒」
《風雅龍エレア・ラグーン→Lv1.BP3000C1》
――Count2――
岩のアーチに一匹の龍が舞い降りる。白い体躯に赤い宝玉の埋まったウィズダンブールに並ぶ賢老の龍が新しき世界から飛び出しウィズダンブールの隣に着地する。
「エレアラグーンの転醒時効果でボイドからコア2個をエレアラグーンに追加、Lv2に。そして私のカウントが増えたのでバースト発動!」
《風雅龍エレア・ラグーン→Lv2.BP5000C3》
「やはり転醒に反応するバーストですわね!」
無難に予想するなら一度バースト効果も見せて手札にも戻った使い回しのクリメイションフレイム。コスト支払い込みで使えばアンナのスピリットを二体破壊出来るがシオリがセットしたのはより勝ちに近付くための強力なバースト。
「道化竜フール・ジョーカードラゴンのバースト効果。BP12000以下のスピリットを2体破壊する」
「そんなバーストまで!?」
地面から沸き上がった炎がキャメロットナイトとランスロット、二体の騎士の体を燃やしそのまま破壊する。
「その後、このスピリットを召喚。エレアラグーンのコアを使ってLv2で召喚 」
《道化竜フール・ジョーカードラゴン→Lv2.BP10000C3》
《風雅龍エレア・ラグーン→Lv1.BP3000C1》
《放浪の創界神ロロ→Lv1.C2》
唐紅の艶のある鱗のトカゲに近い羽根のある竜人が破壊した騎士の名残を観覧し悦に浸りながら大鎌を振り回す。
これでシオリのフィールドには五体、アンナのフィールドは一体となった。そしてバーストもセットをしていない。まさに勝機と呼べるチャンスなのにシオリは無根で考え込んでいた。
「シオリ、何悩んでるんだろ」
すぐにでもアタックしてもいい場面だがシオリは何か警戒してるのかアンナの手札を睨む。
「……ごめんね。ポルドラカスタードラとウィズダンブールのコアをクロノドラゴンに移してLv3に」
《時空龍クロノ・ドラゴン→Lv3.BP8000C4[s]》
コアを奪われた二体のスピリットはクロノドラゴンに後は託すと目線を送り消滅する。その光景に思わずシオリは嗚咽を堪えるように手で口元を覆った。
「悲しいなら無理してレベルを上げなければいいですのに」
「そうも言ってられないよ。あなたに勝つためにもクロノドラゴンだけは消させはしない!」
わざわざシオリがスピリットを二体犠牲にしてクロノドラゴンにコアを移した理由。それは単純明快で紫のコア除去を警戒してのこと。
赤に特化した知識の持ち主であるシオリでも分かる紫のコア除去効果。シオリは勝つためにもクロノドラゴンのレベルを下げられるわけにはいかなかった。
「アタックステップ。フールジョーカードラゴンでアタック! アタック時効果でこのスピリットのBP以下のスピリットを破壊して1枚ドロー」
突進するフールジョーカードラゴンは道端の草を刈る感覚でナイトブレイドラを破壊すると守りの手がないアンナに大鎌を振り上げる。
「フラッシュタイミング、リミテッドバリア!」
「白のマジック!?」
振り下ろされるフールジョーカードラゴンの大鎌がアンナの障壁を砕く直前にバリアが展開し大鎌を弾いた。
「リミテッドバリアはコスト4以上のスピリットのアタックでは私のライフは減りません」
「どうしてこのタイミングで……」
「そうですわね。本来なら私もギリギリまで使いませんが……バトラーとしての勘ですかね。このアタックをライフで受ければ私は敗けると、そんな勘がしたのです」
「……た、ターンエンド」
TURN 6 シオリ終了――
手札:5 リザーブ:0 Count2
《時空龍クロノ・ドラゴン→Lv3.BP8000C4[s]》
《道化竜フール・ジョーカードラゴン→Lv2.BP10000C3》
《風雅龍エレア・ラグーン→Lv1.BP3000C1》
《放浪の創界神ロロ→Lv1.C2》
TURN 7 ――アンナ
手札:4 リザーブ:9[s]
《龍の聖剣→Lv1》
回ってきたアンナのターン。だがアンナはこのターン首の皮一枚繋がったとしか思っていない。
あの時感じた守らねばと判断した直感。兄や他の【S】ランクバトラーや転醒使いとのバトルでは働かなかった勘に今救われた気がした。
それが何を意味するのかアンナは分からないが分かるのは一つ――。
「次のターンなんて億劫な真似はしませんわ。私の騎士に恥じぬようこのターンで決めますわ」
「この感じ……! もしかして騎士の覇王の他にキースピリットがいた感じなの」
アポロヴルムやサジットアポロドラゴンを出す時のタイヨウに似た張り詰めた空気。バトルフィールドの静寂。アンナのキースピリットが出てくる予兆。
「タイミングはバッチリですわ。まずはキャメロット・ルークを召喚」
《キャメロット・ルーク→Lv1.BP2000C1》
アンナが先に召喚したのは要塞のように分厚さと大盾を持ったキャメロットナイトと同系列のスピリット。無論、それが本命ではなくこの次だ――。
「いきます」
「――――!」
「聞きなさい。円卓を統べる新たな騎士の名を。竜騎士の存在を! 召喚、竜騎士ソーディアス・ドラグーン」
《竜騎士ソーディアス・ドラグーン→Lv2.BP7000C2[s]》
空に集まる暗雲から一体の羽根の生えた騎士が降臨した。
紫と漆黒の鎧を身に纏った騎士の覇王に似たスピリットだった。右手には紫の宝石が嵌め込まれた長剣を、左手には赤い竜の紋様が記された盾が。
新たなスピリットの登場は否応なしにテンションが上がるシオリだがソーディアスドラグーンを一目見てあのスピリットがアンナのキースピリットだと気付いた。
「そのスピリットがアンナちゃんのキースピリットだよね。バトルフォームとそっくりだよ」
最初はスピリットとバトルフォームの雰囲気から騎士の覇王がアンナのキースピリットと判断していたがこうして満を持して召喚されたソーディアスドラグーンを見るとこっちのスピリットの方がよりアンナのバトルフォームとシンクロしていた。シオリとクロノドラゴンのように。
「このカードは最近お兄様から貰った大切なカードですわ。私の新しい騎士を召喚した以上、このバトル勝たせてもらいます」
「私だって敗けるつもりなんて更々ないよ」
「アタックステップ。ソーディアスドラグーンでアタック!」
《龍の聖剣の効果で1枚ドロー》
羽根を広げ突撃するソーディアスドラグーンは不思議なことにクロノドラゴンに狙いを定めるように飛翔していた。
「ソーディアスドラグーンのアタック時効果でコア2個以上のクロノドラゴンに指定アタックですわ!」
「クロノドラゴンに指定アタック!? えっと、クロノドラゴンでブロック」
横一線に凪ぎ払うソーディアスドラグーンの長剣をクロノドラゴンの青いブレードで防ぐとそのまま弾き、反撃に移る。
BPの差は1000。クロノドラゴンの方が勝っている。このままバトルが続けばクロノドラゴンが勝つがわざわざこのターンで勝つ意気込みのアンナが無駄死にとなるアタックをするとは思えずシオリは何を仕掛けてくるかずっと考えていた。
考えて考えて……そしてある変化に気付く。バトルをしているソーディアスドラグーンの鎧の隙間から紫と赤い光が溢れていたことに。
「あの光は!」
それは効果が発動する予兆。そしてシオリはあの光に見覚えがある。昨日、タイヨウのカウンターで炎に包まれたクロノドラゴンと同じ光だ。
「きっと驚きますわね。竜騎士ソーディアスドラグーンはコア2個以上のスピリットにブロックされたとき転醒しますわ!」
「転醒……!?」
クロノドラゴンを弾き飛ばすとソーディアスドラグーンからより一層強い光が溢れてくる。
「今こそ皇としての真なる力を見せる時です! 竜騎士ソーディアス・ドラグーンを龍騎皇ドラゴニック・アーサーに転醒!」
《龍騎皇ドラゴニック・アーサー→Lv2.BP11000C2[s]》
――Count1――
カードが飛び上がり裏返ると何も書かれていなかった裏面に新たなスピリットが刻まれると同時にアンナのバトルフォームのドレスが紫から赤に変わる。
ソーディアスドラグーンの鎧が弾け中から現れたのは一匹の紅き龍。両腕を鉤爪のついた大きな翼に変え、伸びた尾を地面に叩き付ける。
「転醒スピリット……! アンナちゃんも転醒使いだったの」
「いいえ、あなたのように転醒カードを何枚も持ってるわけではありませんわ。今、私が使える転醒カードはこのカードだけですから」
「そうなんだ。カッコいいスピリットだね」
「ええ、私のキースピリットに相応しいですわ。ドラゴニックアーサーの転醒時効果発動! BP15000の相手スピリット全て破壊ですわ!」
全身を赤く光らせるとドラゴニックアーサーは無数の光線を打ち出し雨のようにシオリのフィールドに降り注ぐ。
その光線に撃たれたシオリのスピリット達は抵抗も叶わず破壊されるがクロノドラゴンだけはただでは破壊されない。
ソーディアスドラグーンのように全身を光らせ姿を変え始める。
「なっ……!」
「このまま黙ってやられるほど私のクロノドラゴンは大人なしくないよ!」
二足歩行だった竜人から四足歩行の龍へとクロノ・ドラゴンの変化が始まる。翼も数を増やし無機質なものから蝶のような美しさのあるものに。
自身が使っていた青いブレードが両肩や腰から生え、首の伸びた頭部にも龍皇の象徴として生えていた。
「幾千の時空を越えし龍よ 今ここに新たな姿を顕現せよ! 転醒、時空龍皇クロノバース・ドラグーン!」
《時空龍皇クロノバース・ドラグーン→Lv3BP13000C4[s]》
――Count3――
龍皇の名を得たクロノバースドラグーンは自身の転醒時効果で回復し、龍騎皇を迎え撃つ。
「このバトル、私とクロノバースドラグーンが貰うよ!」
地上で取っ組み合っていた時空龍皇と龍騎皇は互いに翼を広げると戦いの舞台を空中へと移す。
先に上を取った龍騎皇が全身から無数の光線を打ち出すが時空龍皇はその光線の雨を掻い潜り龍騎皇の元に辿り着くと両肩のブレードで翼を切り裂くと龍騎皇の喉元を噛み付き地面に叩き落とした。
ぐったりと横たわる龍騎皇にトドメを刺さんと全身を一本の剣のように急降下を始めた。
「まさか破壊に対応する転醒だったなんて油断しましたわ。……ですがそれでも勝つのは私のドラゴニックアーサーですわ。フラッシュタイミング、マジック、デモンズフィンガーですわ!」
《龍騎皇ドラゴニック・アーサー→Lv1.BP8000[s]》
「ここで紫のマジック!?」
「デモンズフィンガーは相手のスピリット全てのコアを一つだけにする効果ですわ。つまりクロノバースドラグーンはLv1に下がりBPは私のドラゴニックアーサーが上回りますわ」
《時空龍皇クロノバース・ドラグーン→Lv1.BP6000[s]》
「そんな! クロノバースドラグーン!」
時空龍皇の落下速度が弱まったのを龍騎皇は見逃さない。直前で横に跳ぶことで躱すと標的のいなくなった地面に時空龍皇が自ら身体を打ちのめし無防備な横腹に強烈な尾の一打を浴びせると時空龍皇は岩壁まで吹き飛ばさ激突する。
態勢を立て直そうとする時空龍皇に反撃の隙を与えるはずがなく、口から火炎放射を放ち今度こそ時空龍皇を破壊した。
「クロノバースドラグーン――ッ!」
キースピリットの破壊にシオリは悲痛な声を漏らす。負けると思っていなかった相棒の破壊はシオリの精神に多大なダメージを与えた。
「ドラゴニックアーサーはバトル終了時にターンに1回回復しますわ。キャメロットルークでアタックですわ」
《龍の聖剣の効果で1枚ドロー》
鈍重そうな見た目に反して滑るように動くキャメロットルークは幽霊だからこそ出来る動き。
ブロッカーのいないシオリはこのまま無条件でライフで受けるしかないがシオリにもまだマジックがある。
「クロノバースドラグーンのブロックを無駄にしないためにも――フラッシュタイミング、マジック、クリメイションフレイム!」
シオリの手札にある唯一の防御札。紅蓮の炎がキャメロットルークの行く手を阻む――はずだった。
「……! 破壊されてない」
炎の中から無傷で飛び出したキャメロットルークは変わらない無機質な表情でシオリに狙いを定める。
「私がそのマジックの警戒をしていないと思いまして。キャメロットルークは相手の効果では破壊されないんですわよ」
「そんな効果があったなんて。――ライフで受ける」
《シオリ:ライフ2→1》
飛び上がって槍を突き立てていくキャメロットルーク。その一撃は強くないはずなのに何故かシオリの足が震える。
負けるのが悔しくて震えてるのかと言えば違う気がした。でもそれ以外の理由はシオリには――。
「このアタックで終わりですわね」
「悔しいな。後、少しだったのに」
「そうですわね。あの時、リミテッドバリアが無ければ敗けていたでしょうね。ですが今回、運は私に味方しましたわ」
「次は……次は私と私のクロノドラゴンが勝つから」
「次ですか……フフッ、次も私の騎士があなたを倒しますわ」
互いに最後の言葉を交わす。これがラストアタックになるとお互いに分かっていて――。
「いきます。龍騎皇ドラゴニックアーサーでアタック!」
《龍の聖剣の効果で1枚ドロー》
シオリの眼前まで飛翔した龍騎皇は咆哮を上げ、その迫力にシオリは後退りすると龍騎皇は一段上に飛び上がると足の爪を障壁に突き立てそのまま握り潰した。
最後のライフを失い空中に放り出された感覚に包まれるとシオリの視界はそのまま真っ白に染まった。
《シオリ:ライフ1→0》
――アンナWIN!
【バトスピ小ネタ劇場】
~そういえば~
チサ「シオリン、バースト発動した後にどうして手札に戻ったあのバーストをセットしなかったの」
コユキ「そういえばそうね。転醒したタイミングでバースト発動出来るなら相手のターンで転醒できればまた無条件発動できるよね」
マリア「第6ターンの事ね。バーストは自分のメインステップに一度しかセット出来ないからあの時、もうセットした後だったからセットしたくても出来ないのよ」
アカリ「なるほど。そんなルールもあるんね」
マリア「一応例外としてスピリットの効果とかでバーストをセットするときは回数制限はないからバースト好きの人はミブロックバラガンを使ったりするわね」
コユキ「へー、バースト……ちょっと気になるかも」