バトルスピリッツ――Reincarnation――   作:ショウ.

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第6TURN 悪しき穿つ星なる一矢

 五秒程だった。

 目の前にいたタイヨウとモールトの二人がその場から消え大きな画面に映るバトルフィールドに移動したのは。

 

 「最後の情けだ。先攻はお前にやるよ」

 

 白い、骨を彷彿させる外装はさながら鎧のようで拳を打ち付け戦闘態勢に入るモールトは戦士そのもの。

 

 「どうも。お言葉に甘えて先攻をもらうよ」

 

 対してタイヨウの姿はシオリの時とはやや異なるものだった。

 胸当てや籠手などの装飾品は形状がほんの少し変化しただけで色は黄金色のままパッとみの変わりはないが灼熱の炎を思わす赤いコートの半身が黒く染まっていた。

 たったそれだけの変化なのにタイヨウの熱さを感じされるバトルフォームは姿を消し去り例えるならそれは宇宙に浮かぶ太陽のような静けさだろうか。

 

 「本当にデッキが変わるだけでバトルフォームが変わるんだ」

 

 自分とバトルした時はタイヨウの雰囲気と離れていて違和感あったがシオリ的にはこちらのバトルフォームの方がタイヨウに合っていると思った。

 

 「タイヨウちゃんは変わらず赤デッキのままかもね。大丈夫かしら」

 

 「そういえばマリアさんはあの人とバトルしたことあるみたいだったけどどんなデッキを使うの?」 

 

 一人タイヨウのバトルフォームからデッキの色を割り出し心配するマリアにシオリは聞いた。

 

 「そうね……過去の話だけどアイツは紫使いでコア除去を得意としていたわ。アタシの黄色デッキとは相性が悪くてね、情けない話一度も勝ったことがない処か追い詰めたこともないの」

 

 「そんなに強い相手なの」

 

 「ええ。【A】ランクなのも伊達じゃないわ」

 

 粗雑な言動しかしないがマリアも唸るバトルの腕。タイヨウは負ける気は一切ないようだが、勝算は本当にあるんだろうか。

 

 「スタートステップ」

 ――第1TURN タイヨウ

 手札:4 リザーブ:3[s]

 

 と、そんな事を考えているうちに表情からはその考えを読み取れないタイヨウの第一ターンが始まった。

 

 「ドローステップ、メインステップ。ブレイドラXを召喚」

 《ブレイドラX→Lv1BP1000[s]》

 

 最初にタイヨウのフィールドに現れたのは翼が刃のような黄金色の体毛をした小さな翼竜だ。

 

 「あ、可愛い!」

 

 スター・ブレイドラと毛色が違うだけで姿も名前も酷似するキュートなスピリットにシオリは目を輝かせていた。

 

 「続けて創界神ネクサス、光導創神アポローンを配置」

 《光導創神アポローン→Lv1》

 

 タイヨウが配置したのは先のバトルでも見せた創界神アポローンと瓜二つの別のアポローン。

 赤髪で筋肉質な青年、手に携えた弓は変わらずだが纏う装飾は少し違って金色の武具が目立つ。

 

 「創界神って数種類あるんですね」

 

 隣に立つマリアにそう訊ねると彼は眉間に皺を寄せていた。

 

 「……本来、同名の創界神は一種類しかないのよ。だからアポローンに他の形態があったなんてアタシも初見なのよ」

 

 「そうなんですか! 奥深いな~」

 

 感嘆の声を漏らすシオリだが彼女が使うロロもまた二種類目の未知のカードだということに気付いていないシオリを横目で見るとタイヨウはそのままアポローンの神託を行っていた。

 

 「神託の効果でデッキの上から三枚トラッシュに置き対象の界渡/化神/光導のコスト3以上スピリット一枚につきボイドからコア一つをアポローン上」

 

 トラッシュにいったのは《甲冑双魚ピスケ・オステウス》《龍星の射手リュキオース》《天星12宮風星士キャンザムライ》の三枚。全て対象だったためアポローン上にコアが三つ追加されてレベルは2に。

 《光導創神アポローン→Lv1 C3》

 

 「蟹甲竜キャンサードラゴンを召喚」

 《蟹甲竜キャンサードラゴン→Lv1BP2000 C1》

 《光導創神アポローン→Lv1 C4》

 

 ブレイドラの隣に白いダイヤのシンボルが浮かび、破裂すると青と白の鉄のような甲殻に身を包む四足歩行の竜。そして背中からは翼の代わりに頑丈な蟹のハサミが伸びていた。

 

 「あれって白のスピリット、ですよね?」

 

 「そうね。白のシンボルから現れたのだから白のスピリットで間違いないわ」

 

 「フィールドに赤のスピリットと白のスピリット! タイヨウのデッキって赤白の混色デッキなんだ!」

 

 それはどうだろうかとマリアは思い返す。神託で落ちた中に緑のカードがあったことを。

 見間違えでなければタイヨウは最低でも三色もの色を扱っていることになる。

 

 無論、それが可笑しいと言うわけでもなくマリアやシオリもメインの色とは別に白の防御カードがデッキに入っていたりする。これは誰もがやるデッキ構築の一つだ。

 

 だが、タイヨウは二人と違い守るための別色のようには感じられない。どちらかといえば戦略の幅を広げるための混色。

 

 「それが混色のメリットでもあるけど軽減シンボルの兼ね合いがある以上事故にもなりやすいデメリットがある。それを上手くまとめているならあのデッキかなり強いわよ」

 

 「へぇー!」

 

 語るマリアだが彼はまだ知らない。タイヨウの扱うスピリットの大半が軽減シンボルの色を六色自由に変化させる特殊な効果持ちだということを。

 

 「最後にバーストをセットしてターンエンド」

 

 第1TURN タイヨウ終了――

 手札:2 リザーブ:0 バースト:有

 

 《ブレイドラX→Lv1BP1000[s]》

 《蟹甲竜キャンサードラゴン→Lv1BP2000 C1》

 《光導創神アポローン→Lv2 C4》

 

 

 ――第2TURN 紫石のモールト

 手札:5 リザーブ:4[s]

 

 「中々良い出だしのようだが俺には関係ねえ。死骸旅団ボーンヘッド・ドラコを召喚!」

 《死骸旅団ボーンヘッド・ドラコ→Lv2BP4000 C2[s]》

 

 モールトが最初に出したのは小さな紫トカゲ。一応羽はあるが見た目はトカゲそのもの。頭に頭蓋骨の被り物をするトカゲはタイヨウに甲高い威嚇音を発していた。

 

 「マリアさんの言う通り紫デッキみたいですね」

 

 「けど、私の知ってるデッキとは違うわね」

 

 「俺もバーストをセットしてターンエンドだ」

 

 第2TURN 紫石のモールト終了――

 手札:3 リザーブ:0 バースト:有

 

 《死骸旅団ボーンヘッド・ドラコ→Lv2BP3000 C2[s]》

 

 ――第3TURN タイヨウ

 手札:3 リザーブ:3 バースト:有

 

 《ブレイドラX→Lv1BP1000[s]》

 《蟹甲竜キャンサードラゴン→Lv1BP2000 C1》

 《光導創神アポローン→Lv1 C4》

 

 回ってきたタイヨウのターンだが早くもタイヨウは何もせず沈黙していた。

 

 「ふっ、どうやら調子がよかったのも最初だけのようだな」

 

 「…………うん、決まった。モルゲザウルスXを召喚」

 《モルゲザウルスX→Lv2BP4000 C2》

 《光導創神アポローン→Lv1 C5》

 

 考えた末にタイヨウが出したのは長い尻尾の先に鉄球のついた二足歩行の地竜だ。

 

 「アタックステップ。モルゲザウルスでアタック」

 

 「タイヨウちゃんが先に仕掛けた」

 

 「アタック時効果でBP+5000」

 《モルゲザウルスBP4000→BP9000》

 

 先制攻撃を任されたモルゲザウルスは全速力でモールトまで駆けていく。BPはモルゲザウルスの方が上。このままライフで受けるかと思ったが――。

 

 「ボーンヘッド・ドラコでブロックだ」

 

 「え? ブロックするの?」

 

 負けると分かった上でブロックを任されたボーンヘッド・ドラコは愚直に頭を付きだし突進するも振りかぶった勢いで飛んでくる鉄球に側頭部を粉砕され破壊された。

 

 「ボーンヘッド・ドラコの破壊時によりデッキから2枚ドローだ。そして相手による自分のスピリット破壊後によりバースト発動! 死骸旅団タンザナイト・ボーン・ドラゴン!」

 

 伏せられていたバーストが条件を満たし表に翻り結晶化した骨で出来た異形のドラゴンが瘴気を振り撒きながらフィールドに召喚される。

 《死骸旅団タンザナイト・ボーン・ドラゴン→Lv2BP

7000 C2》

 

 「こいつのバースト効果は召喚だけだがこいつには召喚時効果がある。疲労状態のモルゲザウルスを破壊しデッキから1枚ドローだ」

 

溢れでる瘴気が座り込むモルゲザウルスを包むとそのまま肉を溶かし骸姿に破壊する。

 

 「酷い……!」

 

 「こっちも破壊後バースト発動。双光気弾のバースト効果でデッキから2枚ドロー」

 

 タイヨウもただやられる訳はなくしっかりバーストで手札を補充した。

 

 「キャンサードラゴンでアタック」

 

 そして平然とキャンサードラゴンにアタックの指示を出す。まるでモルゲザウルスの破壊を予想してたかのように。

 

 「ほー、攻めてくるか。いいぜライフで受けてやるよ」

 

 ライフの宣言をした直後、キャンサードラゴンは跳躍しモールトの前に現れたライフの障壁を自慢のハサミで断ち切った。

 

 「くっ……いい感じだぜ」

 《ライフ5→4》

 

 「ブレイドラもアタックだ」

 

 「うそ、ブレイドラもアタックさせちゃうの!?」

 

 まさかこのターンでフルアタックを仕掛けてくるとは思わずモールトも目を見開いたがすぐに、

 

 「ライフで受けるぜぇ!」

 《ライフ4→3》

 

 ブレイドラのアタックもライフで受け、輝きの失ったライフに手を当てニヤリと笑う。

 

 「連続でライフを削って俺の集中力を奪うつもりなら無駄だ。俺はこのバトルに馴れてるからな」

 

 「……ターンエンド」

 

 第3TURN タイヨウ終了――

 手札:4 リザーブ:2

 

 《ブレイドラX(疲)→Lv1BP1000[s]》

 《蟹甲竜キャンサードラゴン(疲)→Lv1BP2000 C1》

 《光導創神アポローン→Lv1 C5》

 

 ――第4TURN 紫石のモールト

 手札:7 リザーブ:5[s]

 

 《死骸旅団タンザナイト・ボーン・ドラゴン→Lv2BP7000 C2》

 

 「不味いかもね」

 

 「何がですか」

  

 「タイヨウちゃんが何を考えてるか分からないけどさっきのフルアタックでライフを二つ削ったものの相手は手札3枚、コア2つも増えてしまったわ」

 

 先ほどのタイヨウのプレイングに危機感を感じたマリアが思わず苦言を呈した。

 

 「そっかライフを多めに減らしたらその分使えるコアが増えるし手札も多かったら選択肢が増える――」

 

 「ええ。それともう一つ気になることがあるわね」

 

 そう言うとマリアは壇上に上り二人が使っている台座を調べ始めた。

 台座に何があるんだろうと背伸びしてマリアの動きを見ているとモニターからモールトの低い笑い声が。

 

 「せっかくコアを多く用意してもらったんだ。少し早いが俺のキースピリットを見せてやる」

 

 不適な笑みを浮かべモールトは一枚のカードを手に取り、叫ぶ。

 

 「司るは『死』。骸の龍よ生きとし生けるものを死にいざなえ! 闇輝石六将 紫骸龍神ダイムザーク召喚!」

 《闇輝石六将 紫骸龍神ダイムザーク→Lv1BP5000[s]》

 

 大地に瘴気が満ち一体の神が舞い降りた。

 筋骨隆々の紫の肉体を龍の骨格で作られた骨の鎧を纏い死そのものを告げる瞳が怪しく光る。

 

 「あれがキースピリット……!」

 

 モールトのバトルフォームと似た姿である以上、それは疑いようのない事実。

 先にキースピリットを出された事に、最初にタイヨウのキースピリットが見たかったと不満を持っていると、

 

 「アイツ何てことをしてくれたの!」

 

 マリアの怒声がシオリの耳を貫いた。

 

 「ビックリした。どうしたんですか」

 

 「嫌な予感がしたから調べてみたら、まさか高校生相手に決闘者モードでバトルを挑んでいたなんて」

 

 「決闘者モード?」

 

 聞き覚えのない単語に首をかしげるとモールトがアタックステップの宣言をしていた。

 

 「ボーンヘッド・ドラコでアタックだ」

 

 ダイムザークの後に召喚されたボーンヘッド・ドラコが同胞の敵を討つべくタイヨウに襲いかかる。

 

 「ブロッカーもいないお前はライフで受けるしかないよな。それとも創界神の神技でも使うか? あったらの話だけどな!」

 

 「――ライフで受ける」

 

 「ダメよライフで受けちゃ!」

 

 バトルフィールドにいないマリアの声が届くわけもなくモニターに向かって彼は叫んだ。

 

 「なんでライフで受けたらダメなんですか。使えるコアが増えるんですよ」

 

 「……このバトルは決闘者モードに設定されてるから互いのライフダメージが強制的にレベル6に設定された状態なの」

 

 「レベル6? それってどれだけ痛いんですか」

 

 まだレベル0の軽い衝撃程度しか知らないシオリはレベル6のライフダメージがどれ程のものかピンと来ない。

 マリアは険しい表情で教えるべきか悩みついには口にした。

 

 「レベル6は身体中に強烈な痛みを与えるの。それはもう現実で味わうことのない痛みとしかいいようがないわ」

 

 悲痛な顔で教えるマリアに先ほどライフで受けたモールトの顔が過る。

 屈強な体格の持ち主であるモールトですらその痛みに一瞬顔を歪めていた。 

 それを高校生のタイヨウが――まだまだ成長期でしかも久しぶりと言うタイヨウにそれ程の痛みにずっと耐えれるとは思えない。

 

 「タイヨウくん――!」

 

 シオリも思わず叫んだ。届くはずのないと分かっていながら。

 しかし無情にもボーンヘッド・ドラコは所定地まで来ると口から紫の熱線を放ちタイヨウの障壁を焦がした。

 

 「痛みに恐怖しな」

 

 障壁は弾けると同時にタイヨウのバトルフォームのライフも弾け激しい衝撃がタイヨウを襲った……はずだった。

 

 「なっ!?」

 

 「――それでアタックは続けるの」

 《ライフ5→4 》 

 

 ライフで受けたタイヨウだが、その体にダメージがあったのか疑わしいほど微動だにせず顔色は涼しかった。

 

 「どうなってやがる。レベル6に全く動じないなんてありえない!」

 

 「ありえるよ。この程度のダメージだともう痛みも感じないんだから」

 

 その発言に全員が驚いた。

 一体タイヨウは過去にどれだけの激しいバトルを繰り返したんだろう。誰も答えは知らないが確実に言えるのはモールトよりもこの手のバトルに馴れていたということだ。

 

 「けっ、苦しむ姿を見たかったのに期待外れたぜ。ターンエンドだ」

 

 第4TURN 紫石のモールト終了――

 手札:5 リザーブ:0 

 

 《闇輝石六将 紫骸龍神ダイムザーク→Lv1BP5000[s]》

 《紫骸旅団タンザナイト・ボーン・ドラゴン→Lv2BP7000 C2》

 《紫骸旅団ボーンヘッド・ドラコ(疲)→Lv1BP2000 C1》

 

 ――第5TURN タイヨウ

 手札:5 リザーブ:5

 

 《ブレイドラX→Lv1BP1000[s]》

 《蟹甲竜キャンサードラゴン→Lv1BP2000 C1》

 《光導創神アポローン→Lv1 C5》

 

 「はぁ~、タイヨウくんが無事みたいでよかった」

 

 「そ、そうね」

 

 一先ずタイヨウが平気な事に安堵するもシオリ以外の全員がすぐにとある疑問が浮かび上がる。

 

 “彼は何者なんだ”と。

 

 【A】ランクではないと言うわりには使うカードはあまり見慣れないものばかり。しかも決闘者モードでレベル6に上がってるはずなのに痛みを一切感じさせない立ち姿。本当に【B】ランク以下のカードバトラーなのか。

 

 「それとももしかして彼が――」

 

 「マリアさん何か言った?」

 

 「いいえ、なんでもないわ」

 

 とある可能性が浮かび上がるがシオリの呼び掛けに一旦思考を辞める。

 今はタイヨウの勝利を信じ、彼のバトルを見守らなければならないから。

 

 「これでターンエンド」

 

 第5TURN タイヨウ終了――

 手札:3 リザーブ:0 バースト:有

 

 《ブレイドラX→Lv2BP2000 C1[s]》

 《蟹甲竜キャンサードラゴン→Lv2BP4000 C2》

 《蟹甲竜キャンサードラゴン→Lv2BP4000 C2》

 《光導創神アポローン→Lv2 C6》

 

 ――第6TURN 紫石のモールト

 手札:6 リザーブ:5 

 

 《闇輝石六将 紫骸龍神ダイムザーク→Lv1BP5000[s]》

 《紫骸旅団タンザナイト・ボーン・ドラゴン→Lv2BP7000 C2》

 《紫骸旅団ボーンヘッド・ドラコ→Lv1BP2000 C1》

 

 「あれだけ偉そうに言っておいてもう守りに徹するとは情けねえなぁ」  

 

 「問題ないよ、これで勝てるから」

 

 「その減らず口を叩けるのも今だけだ。紫骸旅団デスリブドラゴンのアクセル」

 

 煽りを簡単に受け流し逆に煽り返すタイヨウに、モールトの額には青筋が浮かび、使うカードを叩きつける辺り苛立ちが態度に現れていた。

 

 「手札の系統『死竜』を持つゾンビドラゴンを破棄してデッキから2枚ドローだ」

 

 「さっきから手札を増やし続けてる」

 

 「キースピリットも動いてないのも気になるわね」

 

 読めないモールトの戦術に不安は募っていく。キースピリットであるダイムザークが何もせずにその場にいるのがそれを更に助長させていた。

 

 「今度は美麗鬼アラのアクセルだ。効果でデッキから1枚ドロー。そしてもう一枚美麗鬼アラのアクセルだ!」

 

 「まただ!」

 

 アクセルの連続使用。確実に手札を揃えるモールトはまるで何かを待っているようだった。

 

 「いい感じだ。バーストをセットしてアタックステップ! タンザナイト・ボーン・ドラゴンでアタックだ」

 

 異形の骸がようやくかと重々しい足取りで歩き出す。

 

 「いくぜフラッシュタイミング、魔具使いカエムルのアクセル! ダイムザークの効果で紫のアクセルはコスト2の紫1つの軽減シンボルに変更される」

 

 「へぇー」

 

 「コアが2個以下の相手スピリット1体を破壊だ。対象はそこの蟹だ!」

 

 モールトの持つカードから紫の光線が射たれキャンサードラゴンを襲うが、

 

 「キャンサードラゴンの破壊時【星読】発揮。デッキの上から1枚オープン。それが系統『光導』を持つカードなら手札に加える」

 

 キャンサードラゴンの断末魔がタイヨウに次なる一手を与えるチャンスを作ろうとするがオープンされたのは系統『地竜』/『星竜』の砲竜バル・ガンナーだった。

 

 「違うカードだった場合はデッキの下に」

 

 「残念だったな。何もしないなら蛇戦士フェウラーガのアクセルだ。トラッシュのコア1つをライフに置くぜ」

 《ライフ3→4》

 

 「ならここでアポローンの神技発揮。BP8000以下のスピリットを破壊。対象はアタックしているそのスピリットだ」 

 

 弓を構え矢を引き絞るアポローンから放たれる光の矢が一線。タンザナイト・ボーン・ドラゴンを一直線に貫いた。

 

 「そしてデッキから1枚ドロー」

 

 「なるほど、それがアポローンの効果か。けど破壊しても意味ねーよ! バースト発動! もう一体来いタンザナイト・ボーン・ドラゴン!」

 《紫骸旅団タンザナイト・ボーン・ドラゴン→Lv2BP7000 C2》

 

 破壊した場所から同じスピリットが再び姿を見せる。

 

 「数を減らせなくて残念だったな」

 

 「……そうだね。無駄打ちだったかもね。あんたがもう一度アタックしてきたらだけど」

 

 「確かに。アタックしないとこっちが無駄だよな」

 

 タイヨウの指摘にニヤニヤと笑いながらモールトは

ダイムザークに手を掛けるが。

 

 「ここはターンエンドだ。そろそろ仕掛けてきてもおかしくない頃合いだからな」

 

 第6TURN 紫石のモールト終了――

 手札:4 リザーブ:0 

 

 《闇輝石六将 紫骸龍神ダイムザーク→Lv1BP5000[s]》

 《紫骸旅団タンザナイト・ボーン・ドラゴン→Lv2BP7000 C2》

 《紫骸旅団ボーンヘッド・ドラコ→Lv1BP2000 C1》

  

 ――第7TURN タイヨウ

 手札:4 リザーブ:4 バースト:有

 

 《ブレイドラX→Lv2BP2000 C1[s]》

 《蟹甲竜キャンサードラゴン→Lv2BP4000 C2》

 《光導創神アポローン→Lv1 C3》

 

 ここまでお互いアタックをしライフを削ってはいるものの目立つ動きはなく硬直状態と言ってもいい。

 

 「なんか違和感」

 

 「ん、どこが? 確かに動かなすぎだとは思うけど、ない話ではないわよ」

 

 「そういうわけじゃなくて相手がずっとあまり攻めずに手元にカードを並べてるのがちょっと。さっきのバーストもタイヨウくんのターンで使えればカウンターにはもってこいなのに……まるで今の状態を維持してるような……」

 

 シオリの指摘に改めてモールトの盤面を見てみるとカードの効果を使うためというよりもそこにカードを並べるために使ったように見える。

 

 「タイヨウくんも神技を使えばあのキースピリットを破壊できるのにそれをしないのは何かを警戒してるからなのかな。いやでも破壊すれば問題は……あ、紫だからトラッシュから回収できて――」

 

 二人の盤面を見比べ考察を続けるシオリにマリアは驚きのあまり掛ける言葉がなかった。

 今日がデビューした新人バトラーのはずなのに着眼点や思考力が上級者と変わらない。

 

 「最近の若い子は恐ろしいわね」

 

 「モルゲザウルスXを召喚」

 《モルゲザウルスX→Lv2BP4000 C2》

 《光導創神アポローン→Lv1 C4》

 

 タイヨウはもう一度モルゲザウルスを召喚するとブレイドラのソウルコアを手に取り、

 

 「マジック、ソウルドロー。使用コストにソウルコアを使ったためデッキから3枚ドロー。――準備はこんなもんか」

 

 最後にボソリと溢したタイヨウの言葉は誰の耳にも届かなかったがシオリはタイヨウの手札を見る表情でうっすら察していた。

 

 「アタックステップ。モルゲザウルスでアタック」

 《モルゲザウルスXBP4000→BP9000》

 

 「さしずめそいつは特攻隊長ってわけか」

 

 「低コストの割りにはBPが高くて使いやすいからね。それでこのアタックはもちろんライフで受けるよな」

 

 モールトが宣言するよりも先にタイヨウがそれを先読みした。

 

 「はっ、いいぜ。お前の言う通りライフで受けるぜ」

 

 タイヨウの予告通りモールトはモルゲザウルスの強烈な鉄球の一振りを一身に浴びる。

 

 「これで満足か」

 《ライフ4→3》

 

 「――どれだけ繕ってもあんたはライフで受けるしかない。そして次のターンがあんたのラストターンだ」

 

 「なに?」

 

 それは大胆すぎる宣言だった。言うならばタイヨウは次に自分のターンが回ればトドメをさすと宣言したのと同義。

 

 「ははっ、さすがに冗談でも笑えねーぞ。舐めるのも大概にしろ!」

 

 煽りを止めぬタイヨウ。本人は煽ってる気は無いようだがこれ以上の刺激を与える気はないようで黙ってモールトを見据える。

 腹が立つならこのターンで倒してみろと言わんばかりに。

 

 第7TURN タイヨウ終了――

 手札:5 リザーブ:0 バースト:有

 

 《ブレイドラX→Lv1BP1000 C1》

 《蟹甲竜キャンサードラゴン→Lv2BP4000 C2》

 《モルゲザウルスX(疲)→Lv2BP4000 C2》

 《光導創神アポローン→Lv1 C4》

 

 ――第8TURN 紫石のモールト

 手札:5 リザーブ:6 

 

 《闇輝石六将 紫骸龍神ダイムザーク→Lv1BP5000[s]》

 《紫骸旅団タンザナイト・ボーン・ドラゴン→Lv2BP7000 C2》

 《紫骸旅団ボーンヘッド・ドラコ→Lv1BP2000 C1》

 

 ターンの始まり。今まで何かしらのアクションを起こしていたモールトは静かに体を震わしていた。

 

 「バトルを始める前もそうだが始めてからも図に乗ったことばかり言いやがって」

 

 短時間でのタイヨウから言われ続けた罵詈雑言の数々。モールトの発言に比べればタイヨウはまだまだ言ってもいいレベルだが、勿論本人には関係ないこと。

 十数年しか生きていない生半可の小童に生意気な口を叩かれたのだ。我慢が不得手のモールトでもこれ以上我慢するのは限界だ。

 

 「ゆっくりいたぶって後悔させてやろうと思ったがやめだ。後悔する暇も与えず絶望だけを与えてやる」

 

 真っ直ぐタイヨウに指を突き刺すがタイヨウは気にする様子はない。

 

 「その涼しい顔も今の内だ。ボーンヘッド・ドラコを召喚。ダイムザークを最高レベルに」

 《紫骸旅団ボーンヘッド・ドラコ→Lv1BP2000 C1》

 《闇輝石六将 紫骸龍神ダイムザーク→Lv3BP9000 C3[s]》

 

 準備は整った。

 モールトは深く息を吐き捨てアタックステップに移った。

 

 「タンザナイト・ボーン・ドラゴン、アタックだ」

 

 今までと違う緊迫感の漂うモールトはタイヨウが何もしてこないのを確認すると手札からアクセルカードを手に取った。

 

 「フラッシュタイミング、不思議竜ジャバウォッキーのアクセル。効果によりお前のスピリット全てのコアを2個ずつリザーブ送りだ」

 

 モールトの背後に一頭の竜が顔を見せると口を大きく開けタイヨウのスピリットに死の光線を浴びせた。

 避けることの出来ない光線に身を溶かされたスピリットは消滅しタイヨウのフィールドには創界神しか存在していなかった。

 

 「全滅……」

 

 それは誰かの呟きだった。

 守り手を失い、バーストの発動すらしないタイヨウの防御手段は手札と一回しか使えない神技のみ。

 

 「ライフで受ける」

 

 不安も拭えぬまま無防備に異形の骸がタイヨウを襲いライフの障壁を破壊する。

 

 「――――」

 《ライフ4→3》

 

 痛々しくタイヨウのバトルフォームのライフが弾け飛ぶが本人が気にすることはない。本当に痛覚を感じていないようだ。

 

 「その余裕な態度、腹立つぜ。だがこれで終わりだ。ダイムザーク――アタックだ」

 

 召喚されてから不動だったダイムザークがようやく攻撃の命を受け、紫の瞳を怪しく光らせ瘴気を放つ。

 

 「『死』の恐怖を味わいな。ダイムザークの【闇奥義・天獄】発揮!」

 

 「闇奥義!?」

 

 シオリの僅かに残る少年心をくすぐるワードにシオリは眼前の現象に目を見開いた。

 モールトのフィールドに置かれたスピリットカードと手元のカードが紫色に光っていたのだ。

 

 「【闇奥義】は闇輝石六将に与えられた条件を満たすことで発動する唯一無二の必殺技だ。ダイムザークの【闇奥義】の発動条件はフィールドと手元のカードが10枚以上で紫のみの場合だ」

 

 モールトのフィールドには4枚のスピリットカード。そして手元には6枚。計10枚の紫のカードが存在している。

 

 「無理してアクセルを使っていたのもこれが狙いだったんだ」

 

 仮に気付けたとしても手元のカードに効果を及ぼすカードがなければ手の打ちようがない。だが今大事なのはそこじゃない。【闇奥義】の効果だ。

 

 「【闇奥義・天獄】の効果。お前のライフのコア2個をボイドに送り、俺はボイドからコア2個を自分のライフに置くぜ!」  

 

 「それって!」

 

 「―――――」

 《タイヨウ:ライフ3→1》

 《モールト:ライフ3→5》

 

 無慈悲にタイヨウのライフが闇に呑まれモールトのライフが闇の力により復活する。

 それはタイヨウの生命を自分のものへと吸収する行為だ。

 

 「こればっかりは想定外だったろうな。見たところバーストの発動もないようだが。手がねーならこのアタックで終わりだな」

 

 派手な効果に目を奪われていたがモールトの言うようにまだダイムザークのアタックは続いている。

 ブロッカーもゼロ。アポローンの神技も対象外となった今、絶体絶命の危機に立たされ――。

 

 「フラッシュタイミング、マジック、アドベントスター」

 

 「なに、ここで赤のマジックだと!」

 

 「手札より系統『神星』『光導』を持つコスト7以下のスピリットをコスト支払わずに召喚する。来い、太陽龍ジーク・アポロドラゴンX」

 《太陽龍ジーク・アポロドラゴンX→Lv2BP9000 C3》

 

 間髪入れずに放たれた赤のマジックカード。

 赤き星の輝きが何もいなかったタイヨウのフィールドに太陽の名を冠する赤いドラゴンを呼び寄せた。

 

 「そのままブロックだ」

 

 迫り来るダイムザークに翼を広げ突進しその進行をアポロドラゴンが防ぐ。

 

 「まだそんな隠し球を持っていたとはな。けどそんなの敗北の先延ばしにしかならねーよ!」

 

 BPはお互いに9000。何とかこの攻撃を防げてもまだモールトには 回復状態のスピリットが2体もいる。

 

 「フラッシュタイミング、マジック、サジッタアローレイン」

 

 「まだマジックを持っていただと!」

 

 「BP10000まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する。ボーンヘッド・ドラコ二体を破壊」

 

 地面より打ち上げられた光がモールトのフィールドに雨のように降り注ぎボーンヘッド・ドラコの体を焼き付くした。

 

 「死にかけのくせに粘りやがって。腹いせだ。そのドラゴンだけでも死の底に」

 「そう簡単に僕のドラゴンを倒せると思うなよ」

 

 マジックの使用によりレベルが下がり弱体化したアポロドラゴンの抑えつける力が弱まる。ダイムザークは強引に腕を振り払うとアポロドラゴンの首を掴み、そのまま握り潰した。

 

 「相手による自分のスピリット破壊によりバースト発動、五輪転生炎(Re)!」

 

 「そのバーストは!」

 

 宙に五つの火球が浮かびぐるぐると円を描き回り出すと中央から鋭い爪を持った赤い手が飛び出す。

 

 「五輪転生炎(Re)のバースト効果。バースト発動時に破壊された系統『化神』を持つスピリットをコスト支払わずに召喚する。戻ってこいアポロドラゴン!」

 《太陽龍ジーク・アポロドラゴンX→Lv1BP6000 C1》

 《光導創神アポローン→Lv1 C5》

 

 炎の輪から破壊されたアポロドラゴンが翼を羽ばたかせ大地に再臨する。

 

 「これであんたのアタックは終わり。残念だったね」

 

 骸の神の一撃を耐え、マジックの連続使用により絶望的だったこのターンを凌ぎきったタイヨウにモールトは盤を叩いて吠える。

 

 「ふざけるな! 俺の【闇奥義】を受けて立っているわけがねえ!」

 

 確実にこのターンで倒せる自信があったモールトはそれを防いだ事実が認められず吠え続けるがタイヨウはそんな彼を見て呆れるようにため息をついた。

 

 「だから三下、雑魚なんだよ」

 

 「なんだと」

 

 「僕があんたの狙いに気付いてないとでも思ったのか」

 

 モールトに指をさし、その言葉の意味を理解出来ていない彼にタイヨウは、

 

 「あんたが無駄にアクセルを使ってるからどうせ場にある枚数に応じて発揮する効果だと思ったから使われても問題ないタイミングに誘導した」

 

 「そんなはず、ありえねえ……だろ」

 

 言葉に覇気が無くなっていきモールトは思い返す。タイヨウのプレイングを。

 タイヨウが攻めてきたタイミングは全部モールトのフィールドにスピリットが並び始めてからだ。  

 最初こそフルアタックをしたがそれ以降はスピリットの数が少なくライフを狙うチャンスがあってもタイヨウは積極的に攻めず守りに徹していた。

 

 だからモールトはアクセルをいつもより多用することでそれを補っていたがそれすらもタイヨウの誘導だとせれば――そして今にして思う。

 

 「あの時攻めたのは俺の意思だったのか」

 

 タイヨウがスピリットのコアを少なく置いていたのはコアが足りないがゆえのものだと思っていたがそれもモールト自身が攻めの好機だと錯覚させるためだとすれば――。

 

 「俺はいつから奴の誘導に乗ってしまったんだ」

 

 必然とそこにたどり着いてしまう。

 

 「ちなみになんで僕がアポロドラゴンのレベルを下げてあのタイミングでマジックを使ったか分かるか」

 

 タイヨウの問い掛けにモールトは思考するも答えは導き出せない。

 沈黙が続く中、タイヨウは何度目かのため息と共に答えた。

 

 「あんたが手札にトラッシュから召喚する術を持ってるからだよ」

 

 「――!?」

 

 その言葉にモールトは手が震え手札にある指摘されたカードに目を向ける。

 

 「いくら僕でもあれを二回も使われたら負けるからね」

 

 「……ターン、エンド」

 

 

 第8TURN 紫石のモールト終了――

 手札:3 リザーブ:3 

 

 《闇輝石六将 紫骸龍神ダイムザーク(疲)→Lv3BP9000 C3[s]》

 《紫骸旅団タンザナイト・ボーン・ドラゴン(疲)→Lv2BP7000 C2》

 

 ――第9TURN タイヨウ

 手札:3 リザーブ:8[s] 

 

 《太陽龍ジーク・アポロドラゴンX→Lv1BP6000 C1》

 《光導創神アポローン→Lv1 C5》

 

 

 瞬きするのも忘れシオリは食い付くようにモニターに映る光景を凝視していた。

 

 「ただ者ではないと思っていたけどここまでなんて」

 

 初見のデッキを相手にしてるとは思えないタイヨウの未来予知に匹敵する先読み。それを実行できるデッキの回り。

 何もかもがタイヨウの思い通りに動くバトルに皆が唖然とする中、シオリだけは胸が熱くなるほど高揚していた。

 

 見ていて分かる。タイヨウの高いプレイング。それに応えようとするデッキの回りの良さ。何よりあれでもまだタイヨウが本気でない衝撃。

 

 「凄いよタイヨウくん」

 

 けどシオリが高揚している一番の理由はタイヨウのプレイングが憧れのカードバトラー――アポロと同じだと無意識に感じているのが大きかった。

 

 「――あ」

 

 ふと顔を上げたタイヨウと目があった気がした。

 モニター越しで向こうからこちらの姿は見えないはずなのにタイヨウの視線が自分に向いているような気がして仕方なかった。

 そして彼の口がゆっくり動く。

 

 “いくよ”と。

 

 「極限を超えろ 灼熱の星の化神! 全てを滅するその一矢で戦いを鎮めろ 光龍騎神サジット・アポロドラゴンXを召喚!」

 《光龍騎神サジット・アポロドラゴンX→Lv1BP7000[s]》

 《光導創神アポローン→Lv2 C6》

 

 炎の海の中。下半身が白馬、上半身が竜人のケンタウロスが駆け抜けバトルフィールドに現れ背後に射手座の星図が浮かび上がる。

 

 「あれは――!」

 「射手座の十二宮Xレアだと」

 「―――っ!」

 

 赤い毛並みを靡かせる立ち姿は歴戦を潜り抜けた英雄の出で立ち。

 あれがタイヨウのキースピリット。アポロが使っていたスピリットと同じスピリットだった。

 

 「太陽神弓サンバーストをサジット・アポロドラゴンに直接合体(ダイレクトブレイヴ)で召喚」

 《光龍騎神サジット・アポロドラゴンX+太陽神弓サンバースト→Lv1BP12000[s]》

 

 上空から降ってくる十字の形をした金色の弓をサジット・アポロドラゴンは掴み更なる高みに頂く。

 

 「お前が、サジット・アポロドラゴンを使う、だと……」

 

 「正確にはX化したサジット・アポロドラゴンね。――さて、敗ける準備は出来たか」

 

 問い掛けた答えを待つわけでもなくタイヨウは冷めた目でモールトを射抜く。

 

 「サジット・アポロドラゴンでブレイヴアタック!」

 

 咆哮し、大地を駆けるサジット・アポロドラゴンはサンバーストを構え光の矢を精製する。

 

 「サジット・アポロドラゴンのアタック時効果。このスピリットのBP以下のスピリットを破壊する。ダイムザークを破壊」

 

 放たれた光の矢がダイムザークの胸を穿ち、身体中に亀裂が走り爆発した。

 

 「そして【星界放】の効果でアポローンのコア2個をこのスピリットに置くことでこのスピリットのシンボル分相手のライフを破壊する」

 《光龍騎神サジット・アポロドラゴンX+太陽神弓サンバースト→Lv2BP18000 C2[s]》

 《光導創神アポローン→Lv1 C4》

 

 「なっ……! グハッ」

 《ライフ5→3》

 

 追い討ちを掛けるサジット・アポロドラゴンが放つ二本の矢がモールトのライフを砕く。

 

 「まだだ! 戊の四騎龍ブラックライダーのアクセル! トラッシュのダイムザークを再召喚だ!」

 《闇輝石六将 紫骸龍神ダイムザーク→Lv3BP9000 C3[s]》

 

 フィールドに禍々しい魔法陣が展開され散らばった肉片が集まりダイムザークが舞い戻る。

 

 「タンザナイト・ボーン・ドラゴンの効果。アクセル発揮後1コスト支払いブラックライダーを手元から召喚だ!」

 《戊の四騎龍ブラックライダー→Lv1BP4000 C1》

 《紫骸旅団タンザナイト・ボーン・ドラゴン(疲)→Lv1BP5000 C1》

 

 まだ勝負を投げ出していないモールトはタイヨウに読まれていた蘇生手段を用いブロッカー二体を土壇場で用意する。

 

 「アポローンの神技。ブラックライダーを破壊し1枚ドロー」

 《光導創神アポローン→Lv1 C1》

 

 「ちっ、ブロックしろダイムザーク!」

 

 遠距離から打たれる矢をダイムザークは骨の鎧で防いでいく。

 

 「残念だったな。これでお前がこのターンに勝つのは不可能だ」

 

 凌ぎきったと確信するモールトだが、

 

 「いいや、このターンで終わりだよ。マジック、バーニングサン!」

  

 アポロドラゴンを消滅させて使ったのはアポロ専用のマジックカードだ。

 

 「手札より輝竜シャイン・ブレイザーをサジット・アポロドラゴンに直接合体(ダイレクトブレイヴ)で召喚。そして回復する」

 《光龍騎神サジット・アポロドラゴンX+太陽神弓サンバースト+輝竜シャイン・ブレイザー→Lv2BP23000 C2[s]》

 

 「ダ、ダブルブレイヴ!」

 

 シャイン・ブレイザーの光輝く翼がサジット・アポロドラゴンの翼に装着する。

 

 「どうなってやがる。さっきのドローでこの布陣を揃えたと言うのか」

 

 「そういうこと。いつも僕の思った通り来てくれて頼もしい限りだよ」

 

 しれっと言っているがそれをなし得るのがどれだけ難しい事か。モールトは悔しさのあまり唇を噛み締めていた。

 

 「じゃあもう一度破壊させてもらうよ」

 

 シャイン・ブレイザーの六枚の翼がダイムザークを囲い逃げ場を無くした龍神の心の臓を再び矢で貫いた。

 

 「シャイン・ブレイザーの効果。BP8000以上のスピリットを破壊したとき相手のライフ1つを破壊する」

 

 「ぐっ……こんなはずが……」

 《ライフ3→2》

 

 「サジット・アポロドラゴンでラストアタックだ」

 

 バーニングサンの効果で回復したサジット・アポロドラゴンが再び大地を駆ける。

 

 「サンバーストのアタック時効果でタンザナイト・ボーン・ドラゴンを破壊」

 

 そしてついに疲労状態とはいえ最後のスピリットを破壊されモールトのスピリットは全滅した。

 

 「サジット・アポロドラゴンはトリプルシンボル。次はもっとましなバトルを期待するよ」

 

 サンバーストを構えモールトに照準を合わせる。

 残り2枚の彼の手札にはこれを打開できる手段がなかった。

 

 「ありえない……ありえないありえないありえないありえないありえない! 俺がこんな奴に――!」

 

 「穿て! サジット・アポロドラゴン!!」

 

 光が収束された強烈な一矢がモールトのライフ二つを消し飛ばした。

 

 「こんな奴に敗けるなんてぇぇぇぇええええ!!!!!」

 《ライフ1→0》

          ―――タイヨウWIN!




~バトスピ小ネタ劇場~
《武勇伝》
シオリ「マリアさんって名の知れたカードバトラーだったんですね」

マリア「ええ、そうね。といっても過去の話だけどね」

シオリ「でも凄いですよ! 何か武勇伝的なのはないんですか」

マリア「そうね……あれはアタシがまだ敗けを知らない生意気な若者だった頃。当時、カードショップを経営していた店長が――」

タイヨウ「なんか凄く長い話に理想なりそうなんだけどこれ僕も聞く感じなの」
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