鬼滅の東刃〜Another of Slayer〜   作:トーニオン

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今回は黒死牟戦、実弥視点の回です。



泥酔の稀血と実弥の過去

月の呼吸。伍の型 月魄災渦

 

危ない、この間合いは!

俺はすかさず後ろに跳ぶ。

 

「はっハアッ振りなしで斬撃を繰り出しやがる。だがその技は見た事あるぜ」

 

風の呼吸。参の型 晴嵐風樹

 

「お主やりおる…肉体的にも技の全盛とみた…」

 

鳥肌が止まらねぇ、こいつの技、一振りの斬撃のまわりに不規則で細かな刃が付いてる。それは常に長さ大きさが変化する定型じゃ無い。この技は八意との打ち合いでも見た事ねぇ、時透がやられる筈だ。

避けたつもりの攻撃の形が変則的で歪、長い経験で培われな感覚が殆どなけりゃ無理だ。

さらにこの速さ!しかもコイツは呼吸を使ってやがる。そして顔には痣までおまけ付き。再生力、身体力が異常に高い、鬼が呼吸を使いさらに速度攻撃力を高めているとは。

だが、この力を持って上弦の弐というのは…

「おもしれぇ!おもしれぇぜ!殺しがいがある鬼だ!いっそ見て見てぇよお前より強ぇ鬼をな!」

 

風の呼吸 弐の型 爪々・科戸風

 

その刀で止めたか

だが、まだ隙はある。

俺は瞬時に右足の指で玄弥の刀を挟む。

そしてバレねぇように上段で斬る。

やっぱり刃で止めたか。

俺は足で玄弥の刀を突き刺そうとする。

しかし鬼には顎に僅かに傷をつけた程度だった。

それに、お前はまだ、あまり動いてないんだろ?

遅いのが見え見えだぜ。

 

技を打ち合う、一瞬たりとも瞬きが出来ねぇ、ほんの少し切っ先の振りをしくじっただけで即死だ!

 

「古くは戦国の世だった…私はこのように…そうだ…風の柱八坂神奈子とも剣技を高めあった…」

 

月の呼吸 陸の型 常世孤月・無間

 

周りの柱がボロボロと刻まれる。

わずかに反ったおかげで傷口はそれほど深くねぇ。

それに…俺は。

 

「ふむ…随分堪えたがここまで…動けば臓物がまろび出ずる…」

 

やはりな、俺の血の臭いで奴はふらついたか。

「猫に木天蓼、鬼には稀血…」

くらいやがれ!

 

鬼は足元が揺らぐ。

「オイオイどうしたぁぁ?千鳥足になってるぜぇ、上弦の弐にも効くみてぇだなぁこの血は!俺の血の臭いで鬼は酩酊する。稀血の中でもさらに稀少な血だぜ!存分に味わえ!」

さらにはおはぎの糖による発酵でより強いぜ!

 

 

自分の血が特別なんだと気づいたのは鬼を狩り始めてすぐだ。

そもそも鬼にされた母が俺が出血した途端にヨロヨロと揺らいだ。母を殺めた後はこの世の全てが急速に色を失い擦り切れて褪せていった。

俺は夜の中を踠き回った。

鬼殺隊も日輪刀も存在すら知らず山程の刃物で武装して鬼と戦い捕らえ、陽の光で灼き殺す。今思えばとんでもない自殺行為だが、死ななかったのはこの血で鬼を泥酔させられたおかげ、運がかなり良かっただけ。同じ鬼を追っていて出会った鬼殺隊の粂野匡近が育手を紹介してくれたおかげ、でも知ってる。

善良な人間から次々に死んでいく。この世の不条理を、下弦の壱、姑獲鳥は匡近と倒したのに、柱になったの俺だけだった。匡近は治療が間に合わず失血死。

俺の弟にはそんなことさせねぇ!

 

 

風の呼吸。陸の型 黒風烟嵐

 

血の臭いに酔ってるんだろ?お前の速さはかなり鈍くなってんだよ!

俺は呼吸で止血だってできるぜ?

 

「どちらにせよ人間にできて良い芸当ではない…初見なり…面白い…」

 

鬼はだいぶ酔ってるようだ。さすが上弦、今頃ならほとんど決着がついてるはずなのにまだ酔いに耐えられるのか。面白ぇな。

「微酔う感覚も何時振りか…愉快…さらには稀血…だが…」

 

斬り込むと同時に鬼は俺の刀を踏んできた。

俺は力に押され倒れ込む。

まずい…斬られ…。

 

 

 

「頭に来るんだよ、人が苦しんでいるっていうのに笑っている奴が、自分の手を汚さず命の危機もなく一段高いところから涼しい顔で指図だけするような奴が、いいご身分だなぁ、おいてめぇ、産屋敷様よぉ」

 

「不死川…口の利き方というものがわからないようだな…」

「いいよ行冥、言わせてあげておくれ、私は構わないよ」

「ですがお館様…」

「とりあえずこの傷だらけの野郎に三日月の傷でも背中につけましょうか?」

 

「大丈夫だよカナエ、永琳」

「白々しいんだよォ、鼻につく演技だぜ。隊員のことなんざぁ使い捨ての駒としか思ってねぇくせに、あんたは武術も何も齧ってすらねぇだろぉ、見れば一発でわかる。そんな奴が鬼殺隊の頭だとぉ?虫唾が走るぜぇ!ふざけんじゃねぇよ!」

 

「ごめんね。刀は降ってみたけれどすぐに脈が狂ってしまって十回も出来なかった。叶うことなら私も君たちのように体一つで人の命を守れる強い剣士になりたかった。けれどどうしても私には馬術以外無理だったんだ。辛いことばかり君たちにさせてごめんね」

言葉が出てこなくなった。

お舘様の眼差しは母を思い起こさせた。親が我が子に向ける溢れるような慈しみに、優しく頬をくるまれる気がした。

 

「君たちが捨て駒だとするならば、私も同じく捨て駒だ。鬼殺隊を動かす駒のひとつに過ぎない。私が死んでも何も変わらない。私の代わりは既に居る。

実弥は柱合会議に来たのが初めてだから勘違いしてしまったのだと思うけれど私は偉くもなんともないんだよ。

みんなが善意でそれその如く扱ってくれているだけなんだ。嫌だったら同じようにしなくていいんだよ。

それに拘るよりも実弥は柱として人の命を守っておくれ。それだけが私の願いだよ。

匡近が死んで間もないのに呼んでしまってすまなかったね。兄弟のように仲良くしていたから尚更辛かったろう」

「名前…何故それを…」

「不死川くん、お館様は当主になられてから鬼殺隊の全隊員の名前と生い立ちは全て記憶してらっしゃるのよ」

 

俺は告げられて驚くしか無かった。

俺でさえ一緒に戦って死んだ隊士全ての名前は覚えきれてない。

「実弥、鬼殺隊の子供たちは皆遺書を書いているよね。その遺書の内容がね不思議なことに殆どが似通っているんだ。匡近も同じだったよ。

渡そうと思っていたんだ実弥に、匡近は失った一つ下の弟とその弟と同じ歳の実弥を重ねていたんだね。光り輝く未来を夢みてる。私の夢と同じだよ。

大切な人が笑顔で天寿を全うするその日まで幸せに暮らせるよう決してその命を理不尽に脅かされることがないよう願う。たとえその時自分が生きてその人の傍らに居られなくとも生きていて欲しい。生き抜いて欲しい」

 

さっき銃も拾っといて正解だったよ!

俺は銃を刀の威力止めにする。

そして鬼目掛けて3発撃つ。

 

だが、その弾は一切傷をつけられていない。

それにこの近距離、まずい!

 

月の呼吸。参の型 厭忌月・銷り

 

次々と降って湧く…鬼狩共…。

 

「黒死牟、あなたにはこれまでの恨み全部ぶつけるわ」

「我ら鬼殺隊は百世不磨、鬼をこの世から屠り去るまで」

 

「悲鳴嶼さん…八意さん…」

 

「そこの女…私と同じ血の臭い…まさか」

「えぇ、あなたは勘が鋭いのね。そうよ、私は八意永琳、継国家の正当後継者よ。そして、私はあなたと同じ月の呼吸の使い手。さぁ、私とあなた…本当の決着をつけようじゃないの」




永琳さん、ついに本格的に戦闘に参加しましたね。
次回、永琳さんの過去が明らかになります。
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