鬼滅の東刃〜Another of Slayer〜 作:トーニオン
目の前の大男は鉄球を振り回し、もう1人の銀髪の女は青白い刀を構える。
素晴らしい…極限まで練り上げられた肉体の完成系…これほどの剣士を拝むのは弟、縁壱以来だ。
私が見逃していた隊士がここまで成長をしていたとは…やはり私の目は間違っていなかった…。
その空気はビリビリする。
空気が引き寄せられる…。
そして男は鉄球を放つ。
だが、まだ見える。
その鉄球を砕けば良いのだな…
月の呼吸…
その瞬間視界に手斧が入る。
両手共武器を離すとは…
私はぐっと反って斧の軌道から離れる。
月…
岩の呼吸。弐の型 天面砕き
鉄球が突然軌道を変え、自分の頭の方へと飛んでくる。
危ない…だが鎖の辺りまで行けばよ…
私は鎖を断とうとする。
しかし鎖は斬れぬ!
鎖、斧、鉄球、全ての鉄の純度が極めて高い武器。
私の肉から作られたこの刀では斬る前に灼け落ちてしまうだろう。
これ程太陽光を吸い込んだ鉄は刀匠の技術が最盛期たる戦国の世にも発見されていなかった。
しかしそれも間合いの内側に入れば良いだ…
「あなたの考え、透けて見えるわ」
月の呼吸。捌の型 月龍輪尾
私の刀が折れた…だが、
「折られた所ですぐに再生するのだ…攻撃は無意味だ…哀れな人間どもよ…」
「いや、哀れなのはあなたの方よ…」
刀を見るとその刀は再生が遅くなっている。
更には頭が軽い。束ねた髪が殆ど落とされている。
何故だ…
「あなたの刀はあなた自身の肉で作っていると読んで私が発動しておいたのよ」
私はその女の刀を見る。するとその刀身は赤く変わっていた。
「あなたの弟さんの手記が残ってて助かったわ。私は既に…赫刀を発動させているからね」
その刀には記憶がある。
赫刀を発動した鬼狩は私が対峙したものでは2人いる。
一人は弟縁壱、もう1人は輝夜という女だ。
輝夜という女は特に恐ろしかった。私が初めて女で畏れたものだ。
あの女は痣を発動し、赫刀を発現させた。
「あなたが殺した月の呼吸の柱8人分、償ってもらうわ」
「お前…歳はいくつだ」
「39よ!それがどうしたの」
「痣のものは例外なく…二十五を迎える前に死ぬのだ…私は何人も見てきた…二十五を超えて痣を発動させたものは…二時間と経たぬうちに息絶えている」
「なら、私の人生全て、あなたを倒すためにかけてやるわ」
私はその女に唯一上回っていたものがある。
それが決定打となり、輝夜という鬼狩に辛勝した。
その女は耐え続けたのだ。
私の技を幾度も喰らい、右眼が潰れようとも、左腕が斬り落ちようとも、
十六の型を出していた。そして、その技を見た私はそれを記録するために帰ろうとした。
しかし、私は涙を流していた。
わからなかった…だが、今までの鬼狩とは比べ物にならないほど強い。
だから私はその達成感で泣いているのだと理解した。
その後しばらくは刀を作り出すことはできず悩む程だった。
そう、あの時の輝夜という鬼狩のように、いや、それを越えようとする女が今、目の前にいる。
「さぁ、あなたも年貢を納める時が来るわね」
「ここで勝たねば話にならぬ。今発動してもよかろう」
目の前の鬼狩たちは痣を発現させる。
「本気を出してきたか…ならば…私も本気を出さなければならない…」
刀を枝分かれさせて生やす。
「面白いじゃねぇかぁ!その厳勝って鬼はよぉ!」
数分という時間で体を縫ったのかあの男は。
「実弥、ここは3人であの鬼を倒しましょう」
「上等じゃねぇか!俺の体を斬ったこと、そっくり返してやるよぉ!」
「時透さん、すまないが俺の胴体をくっつけてくれねぇか…」
「わかった」
俺は玄弥の胴体を押しつける。
「あともう一つお願いを聞いてくれませんか…」
「なんだ」
「あそこに落ちている上弦の髪の毛…取ってきて食わせて貰えますか?最後まで俺は戦いたいんです…兄貴を守り…死なせたくない…兄貴には…もうすぐ祝言を約束している人がいるんだ…こんな所で兄貴を…」
俺はとにかく玄弥を助けたくなった。だが、髪が落ちているところはすぐ近くにまだ悲鳴嶼さん達がいる。
何とかして取りに行く方法は無いだろう…
その瞬間、悲鳴嶼さんが鉄球を振るう。
そして投げつけた。
すかさず、不死川さんが攻撃を放つ。
だが、鬼の方の振りの間合いが広い。
そのためなかなか近づけない。
とにかく見ているだけではダメだと俺は走る。
とにかく髪の毛がごっそり落ちているのに取りに行かないわけが無い。
これが今俺に出来る数少ないことだ。
その時だった。
風の呼吸。 壱の型 塵旋風・削ぎ
大量の髪の毛が舞う。
俺はその髪の毛を何房も空中で掴む。
とにかく大量に掴んで玄弥に食わせれば何かあるかもしれない。
そして、俺は玄弥の元へところまで戻る。
「どうだ…玄弥」
俺は両腕のない玄弥に髪の毛を食わせる。
すると、凄まじい勢いで体が治っていく。
「玄弥、大丈夫か…」
俺は玄弥の目を見ると赤くなっているのに気がつく。
その眼の色はまさにあの鬼と同じもの、玄弥の体がどうなっているのか少し気になった。
「気分がいい…やはり上弦…反動もすげぇが力もすげぇ、それに・無惨の声が聞こえる」
「ほんとか?なんて言っているんだ…」
「上弦の壱に…気をつけろ…その鬼狩を片付けたら・私を守れ…って何度も言っている」
「上弦の壱!?」
おかしいと思った。
文献を調べていた時に巌勝は数回鬼殺隊と戦っていた頃は目に上弦の"壱"だったと表記されている。
しかし、今戦っている鬼は上弦の弐、おかしかったんだ。
この戦い、下手をすれば…
上弦の壱、一体どんな鬼なんでしょうか。
黒死牟を打ち倒した鬼の顔が見てみたい。