鬼滅の東刃〜Another of Slayer〜   作:トーニオン

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今回は玉壺戦です。
絶体絶命ながらも無一郎と文はどうするのでしょうか。


無一郎の記憶と覚醒

「オヒョヒョヒョ!お前みたいな女に私の頸でも取れるんですか?」

「てめぇ、私は強いんだよ?それに、私一人でもお前なんか斬り刻んでクマの餌にでもしてやる!」

その時ものすごい轟音が上がる。

「おっ、半天狗の方もついに本気を出しましたかね!それじゃあ私も本気を出させていただきます」

玉壺は脱皮をしだす。

そこには、気持ち悪い蛇のような姿へと変わった玉壺の姿があった。

「ご覧あれ、私が脱皮をするのは50年ぶりです!どうですかこの姿!美しいでしょう?」

「おえ、気色悪い、美的センスどころか常識さえもないのかこの腐れ芸術家気取り、あんたの作品と同じでゴミにしか見えないよ!」

「はぁ?私の体まで侮辱するとは!許せない!」

 

文は煽り倒している。

だが、水獄に閉じ込められて5分、残る息もわずか、どうにかして破らなければ、僕は焦る。

 

「おのれ!お前には死ぬよりも辛い、生かされる芸術品になりたいようだな!」

 

血鬼術。蛸壺地獄

壺からは大量の蛸足が溢れ出し、文を掴む。

さらに蛸壺はあばら家の壁を突き破る。

 

「くそっ、まだそんな技を!斬れない!なんなのこれ!」

「どうですか?私の蛸壺地獄を、しばらくそうしててください!」

玉壺はあばら家の方を見る。

「ほほう、あばら家はこうなっていたのですか、里の長でもいる訳ではなさそうだが、ものすごい鍛冶道具がずらりと並んでますね。素晴らしい、ん?」

 

玉壺の目にはものすごい集中をして刀を研いでいる鋼鐵塚の姿が目に映る。

 

「すごい鉄だ!すごい刀だ!なんという技術…凄すぎる。作者は誰なんだ…どのような方がこの刀を…なぜ、自分の名を刻まずこの一文字のみを…いや…わかる…研げば研ぐほど…」

 

玉壺はふと壺を取りだし、毒魚を吐き出す。

それを見た文が焦り出す。

「お前だけには、鋼鐵塚さんを、傷つけさせはしない!」

 

風の呼吸。弐の型 爪々 科戸風

 

文は全力で蛸の足を斬り刻む。

僕はそれを見て、文に全てを託そう。

そう思って諦めかける。

 

どうしてそう思うんだ?

先のことなんて誰にも分からないのに。

 

なんだ?違う。炭治郎にはこんなこと言われてない。言ったのは誰だ?

視界が狭窄して意識をが落ちかけている。

でもなぜ俺にこの言葉がかけられる。

 

自分の終わりを自分で決めたらだめだ。絶対どうにかなる、諦めるな。一人でできることなんてほんのこれっぽっちだよ。だから人は力を合わせて頑張るんだ。

 

誰も僕を助けられない。みんな僕より弱いから、僕はもっとちゃんとしなきゃいけなかったのに判断を間違えた。

自分の力を過大評価していたんだ、無意識に柱だからって、いくつも間違えたから、文を置いて僕は死ぬんだよ。

 

「絶対に死なせない!時透さん頑張って!俺が助けるから!」

小鉄くんは何度も包丁を刺し、水獄を斬ろうとする。

「くそぉ!なんなんだこれ!ぐにぐにして気持ち悪い!」

僕でさえ斬れないのに君が斬れるはずがない。

僕なんかよりも優先すべきことがあるだろう。鋼鐵塚さんを守れ。そんなこと君には無理か…せめて持てるだけ刀を持って逃げろ。

 

後ろから魚の化け物がゆっくりと近づく。そしてものすごい数の針を吐き出す。

 

「痛っ、うわぁ、血だ!」

さらに追い打ちをかけるように魚は小鉄くんの鳩尾を刺す。

俺は必死に叫ぼうとする。でも、声を出せるほどの息もない。

小鉄くんに傷口を抑えろと言っても届かない。

よたよたしながらも小鉄くんは水獄の方に向かう。

そして大量の息を吹き込む。

 

 

人のためにすることは巡り巡って自分のためになる。

そして自分ではない誰かのために、

信じられないような力を出せる生き物なんだ。無一郎。

 

知ってる。思い出した!

僕は…

 

霞の呼吸。 弐の型 八重霞

 

 

思い出したよ炭治郎。

僕の父は君と赤い瞳の人だった。

 

僕は水獄を破り、地面に倒れ込み、噎せる。

そして、顔に刺さった毒針を抜く。

くっ、痺れが酷い。この針…水獄から出られたところで僕は…

 

 

杓子定規に物を考えてはいけないよ無一郎、確固たる自分を取り戻した時君は強くなれる。

お館様は言っていた。目も見えないのに僕に向かって。

「小鉄くん!大丈夫!?しっかりし…ゲホゲホ」

 

肺が痛い。水が入ったからだ。

母さんは風邪をこじらせて肺炎になって死んだ。

その日は嵐の日で薬草を採りに出ていった父は崖から落ちて頭を打って死んだ。

そして両親が死んだのは十歳の時だ。

 

「時透さん…俺の事はいいから…鋼鐵塚さんを…助けて…刀を…皆を守って…」

小鉄くんは俺に言ってくれた。小鉄くんは十一歳、そうだ。僕は一人になったのは十一歳の時。

僕は双子だった。僕の兄は有一郎。

 

銀杏の散る頃、両親を失った僕と兄は杣人として暮らしていた。

「情けは人の為ならず誰かのためになにかしてもろくなことにならない」

「違うよ。人のためにすることは巡り巡って自分のためになるって意味だよ。父さんが言ってた」

「人のために何かしようとして死んだ人間の言うことなんてあてにならない」

「なんでそんなこというの?父さんは母さんのために頑張って…」

「あんな状態で薬草なんかでも治るはずないだろ?馬鹿の極みだね」

「兄さんひどいよ…」

「嵐の中を外に出なけりゃ死んだのは母さん一人で済んだのに」

「そんな言い方するなよ!あんまりだよ!」

「僕は事実しか言ってない。うるさいから大声出すな。猪や熊が襲ってくるぞ。それに、無一郎の無は無能の無、無駄口の無、こんな会話なんか意味が無い。結局過去は変えられない。そういう運命なんだ。無一郎の無は無意味の無」

 

兄は言葉がかなりきつい人だった。記憶のない時の僕はなんだか兄に少し似ていた気がする。

兄と二人の暮らしは息が詰まるようだった。僕は兄に嫌われていると思っていたし兄は冷たい人だと思っていた。

 

桜が咲く頃。山奥に人が訪ねてきた。

お館様の御内儀だ。あまりにも美しいので僕は初め、白樺の木の精だと思った。

だが結局兄はいつものような暴言を吐いてあまね様を追い返した。

 

「すごいね!俺たち剣士の子孫なんだって、しかも一番最初の呼吸法っていうのを使う凄い人の子孫で、ものすごい数の鬼を倒したんだって!」

「知ったことじゃない、さっさと火でも起こせよ」

「ねぇ、剣士になろうよ。鬼に苦しめられてる人たちを助けてあげようよ。俺たちならきっと」

そういうと兄は鉈で鶏の首を刎ねる。

「お前に何ができるって言うんだよ!一人で火も起こせないような奴が剣士になる?人を助ける?馬鹿も休み休み言えよ!本当にお前は父さんと母さんそっくりだな!楽天的すぎるんだよ!どういう頭してるんだ!具合が悪いのを言わないで働いて体を壊した母さんも、嵐の中薬草なんか採りにいった父さんも、あんなに止めたのに!母さんにも休んでって何度も言ったのに!人を助けるなんてことはな、選ばれた一握りの人間にしか出来ないんだ!先祖が剣士だったからって子供の僕たちに何が出来る?教えてやろうか?俺たちにできること、犬死にと無駄死にだよ!父さんと母さんの子供だからな!結局あの女にいいように利用されるだけだ!なにか企んでるに決まってる!この話はこれで終いだ!さっさと晩飯の仕度しろ!」

 

僕達は口を一切効かなくなった。

週に一度家へ通ってくれるあまね様に水を浴びせかけた時だけ一度喧嘩をしたきり。

そして夏になった。その年の夏はかなり暑くて僕たちはずっとイライラしてた。夜も暑く、蝉も鳴き続けていて。

8月7日、その日は特に暑く、戸を開けて寝ていたら鬼が入ってきた。

そして目の前で兄は左腕を斬り落とされ、俺に泣きつく。

そして鬼はこう言い放つ。

「騒ぐなよ、どうせお前らみたいな貧乏なガキの木こりは何の役にも立たねぇだろ?いてもいなくても変わらないつまらねぇ命なんだからよ。じゃあ早速こいつでも食ってやるかな」

 

その時、目の前が真っ赤になった。生まれてから一度も感じたことの無い、腹の底から噴き零れ出るような激しい怒りだった。その後のことは本当に思い出せないら、途轍もない咆哮がまさか自分の喉から発せられていると思わなかった。

 

そして、気づくと鬼は死にかけていた。だけど頭も両手両足も潰れされても死ねないくらい苦しんでた。

間もなく朝日が昇り

鬼は塵になって消えた。

そんなこと心底どうでもよかった。

早く有一郎の所へ行きたかったのに、体が鉛みたいに重くなって、目の前にある家まで、這いつくばって行くしかなく。随分時間がかかってしまった。

だが、兄さんはまだ声がした。

「神様仏様…どうか弟だけは助けてください…弟は俺と違う心の優しい子です…。人の役にたちたいと言うのを…俺が邪魔しました…。悪いのは俺だけです…。バチを当てるなら俺だけにしてください…。わかっていたんだ…本当は、無一郎の無は…無限の無なんだ…お前は自分ではない誰かのために…無限の力を出せる選ばれた一握りの人間なんだ…」

「兄さん…」

「だけどな無一郎、どれだけ善良に行きたって神様や仏様も結局、守って下さらないから…、僕はお前を守らなければと思ったんだ…。優しくしてやれなくてごめん、いつも俺には余裕がなかった…。人に優しくできるのもやっぱり選ばれた人なんだ…。だから…、僕の今まで生きた時間の倍以上生きてくれ…それがたとえ…欲深いと言われようとも…」

僕は、いや、俺は生きなければならない。優しく、そして誰かを守らなければ。

 

「文!今助けに行くぞ!」

俺は全速力で文のもとへ向かった。

 




無一郎覚醒!
それに、一人称も"俺"に変わりました。

これこそが無限の無を持つ無一郎の覚醒です。
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