鬼滅の東刃〜Another of Slayer〜 作:トーニオン
戦いの終わりが少し気になりますね。
お館様の仰った通りだ。確固たる自分があれば両の足を力一杯踏ん張れる。
自分が何者なのかわかれば、迷いも、戸惑いも、焦燥も消え失せ、振り下ろされる刃から逃れられる鬼はいない。
あの煮え滾る怒りを思い出せ。
最愛の兄に蚊も寄り付かず、蛆が湧き腐ってゆくのを見た。
自分の体にも蛆が湧き始め、僕は死の淵を見た。
運良く助けられなければ俺はそのまま死んでいただろう。
記憶を失っても体が覚えている。死ぬまで消えない怒りだ。
だから僕は血反吐を幾度も吐く程自分を鍛えて叩き上げたんだ。
鬼を滅ぼすために、奴らを根絶やしにするために!
「さぁ、私の華麗なる本気をしかと見るが良い!」
血鬼術。 陣殺魚鱗
「さあどうかね、私のこの理に反した動き、鱗によって自由自在だ予測は一切不可能。私は自然の理に反するのが大好きなのだ!おまえはどのように料理してやろうか、醜い頭を捥ぎ取り美しいカサゴの頭をつけてやろう!」
玉壺のは笑みを浮かべ襲ってくる。だが、そんなのお見通しだ。
霞の呼吸。 漆の型 朧
「なんだと?消えた?」
この技を見せるのは初めて、だけど万世極楽教狩りで身についたこの技は俺以外には絶対に出来ない。俺にしか出来ない、幻惑に近い技。
「どこだ!姿を現せ!」
玉壺はあたりを見渡し、見えたところをいくつも狙う。
だが全く当たるわけが無い。
それに、君の振る拳は手応えはあったとしても俺に当たることは絶対無い。
「おまえ!私は頸を斬られたところでまだ余裕がある。私に勝てると思うのか?」
「君は本当に馬鹿だね、なんでこの場所には僕と文しかいないと思ったの?」
「なんだと、どういうことだ?」
「気づかないなら気づかずに死ねばいい、わからないまま死ぬってのは、それはそれで面白いよ」
僕は玉壺の頸を斬る。
「どういうことだ!私は!何故だ!何故だ!」
「お終いだね。さようなら、お前はもう二度と生まれて来なくていいからね」
玉壺の頭がコロコロと転がる。
「くそぉぉぉ!人間の分際で!この魚壺様の頸をよくもぉぉ!だが私の頸が斬られたところでまだ私には勝ち目が…」
「そいつはどうかね?馬鹿な芸術家さん」
森の奥からぞろぞろと人がやってくる。その先頭にはにとりさんが立っていた。
「あんた、勝ち目があると思ってるけどね、こっちはもう全部わかってるのよ?あんたの策略を!ほら、これを見なさい!」
「おお!それは私の壺!大量にしかけてあったものの一つではないか!」
玉壺はそれを見て喜ぶ。
「あなた、しかけてた数は全部わかっているね?」
「108だ。だがそれがどうした?」
するとにとりさんは笑みを浮かべる。
「やっぱりね!みんな、これが玉壺の仕掛けた最後の壺よ!」
「どういうことだ!何故200もあった壺の最後なんだ!」
「教えてあげますよ!あんたが仕掛けた200の壺、そのほとんどをあなた自身が魚にしたのよ?自分の攻撃で、自分の逃げ道を潰すなんて、ほーんと目先の集中しか考えてないお馬鹿さん」
そう、俺が朧を使っている間、俺の方に意識を向けている間に、拳が放たれそうな場所に、文とにとりさんが壺を積み上げていたのである。
そして、この鬼が壺を勝手に鮮魚にしてくれる。
あとは僕が全部回しておしまい、そういうことを玉壺の所に向かう途中でにとりさんから伝えられた。
これを思いついたにとりさんって本当に何者なんだよって思う。
「じゃああんた、地獄に落ちて、せいぜい針山の針で遊んでなさい!」
にとりは壺を逆さにして手を離す。
すかさず俺が壺を斬る。
玉壺は少しずつ塵へと帰っていく。
「最後に、私の言葉を聞いてくれぬか」
「最後だけならいいよ」
「私の作品は、この世に残り続ける!そして、私は名前という永遠の命を手に入れた!北斎のように、この日の本で私は永遠に語り継がれるだろう!この身は死すとも、名は生き…」
俺は腹が立ったので玉壺を踏み潰した。
「うるさいよ、そんな戯言だけは聞きたくなかったよ」
「あぁもう最悪!あんな糞壺野郎!最後まで自慢ばかりとか腹が立つ!」
「私も絡繰は作るけどあんなに自慢とかはしない」
「芸術とかそういう言葉を言って欲しくなか…」
俺はふらついて倒れる。
「大丈夫ですか!もしかしてかなり無理してませんでした?」
「そうですよ、ムリは禁物で…オロロロロロロロロロロロ」
文はその場で嘔吐する。
「文さんまでどうしたんですか!それにものすごく顔色悪いですよ!」
「文、そんな無理しすぎて死んだら元も…げほっ」
「うわぁ!お二人とも!早く治療を!」
泡を吹いて俺は意識が朦朧とする。
「やばいやばい!どうしよう!鋼鐵塚さん!鉄穴森さん!小鉄くん!いるんだったら返事してください!」
「はい、私はここにいますよ!鋼鐵塚さんを守るのに必死ですみません!」
「鉄穴森さん!ところで鋼鐵塚さんはどうしたんですか?」
「あぁ、あそこの木の近くで今2本目の第一段階をやってます。一本目は先ほど終わりましたから」
「ほんと、鋼鐵塚さんって奇妙な人だからなぁ」
「うわぁぁぁ!小鉄少年の亡霊!」
「いやいや全然死んでないので亡霊じゃないですよ!」
「いやー!亡霊って自分でわからないものなんですよ死んでるのが」
「いや、生身ですよ、それに俺、さっきまで壺探ししてましたし」
「その血は何なんですか!鳩尾刺されてそんな出血して死んでないはずないでしょうが」
「あぁ、これですか?切られた腕の方の血なんですよ。押さえたからついちゃって、それに腕の傷はにとりさんたちが包帯を巻いてくれたお陰で大丈夫です。あと腹の方には…炭治郎と咲夜さんから預かってた鍔を入れてたので助かりました。お二人とも新しい刀につけて欲しいって言われてたんですよ!」
俺はその二つの鍔を見て思い出す。
炭治郎の鍔は引退した煉獄さんの鍔だ。
それに、俺が死にかけていた時に駆けつけてくれた幽々子さんの鍔だ。
二人のことが蘇ってくる。
俺は涙を流す。
ほら全部うまくいった。
父さん…母さん…兄さん…
頑張ったなぁ。
巡り巡って俺の元へ帰ってきた。
俺は、倒したんだ!
俺は少しだけ、目を瞑る。
「無一郎さん!しっかりしてください!」
「しーっ、さっき私が薬を打っておきました。30分くらいで解毒が全部終わると思います。私も、こんな時のために、八意さんの薬を持ち歩いてますから、まぁ応急的なものですけどね」
文、すごいよ。それに、紋様が出てるし。俺も出てるのかな、鏡を見てみたい。
でもさぁ、そろそろ自分が下着姿なのにもう一回気がついて欲しいよ。
流石にはしたない姿を見るのは嫌なので目を瞑ったのに。
文さん下着姿で壺運んでたんですか…
それに、玉壺、相当意味深なこと言ってましたね。
死んでも名が残れば永遠の命とかなんとか
というと玉壺どんだけ作品残してんだよ…