鬼滅の東刃〜Another of Slayer〜 作:トーニオン
私は今、師範を探している。
最近どこにいるんだろう。永遠屋敷の方にいるのかな?
それとも…
私は仏壇の前で座る師範を見つける。
師範は深呼吸をしていた。
「師範、お戻りでしたか。師範の稽古が楽しみです。柱稽古で隊士にしっかり指導する師範、その姿を見てみたいです」
私は師範の姿を思う。
だが、師範からは思いもよらないことが告げられる。
「あのね、カナヲ、私は今回の柱稽古には参加できません」
「えっ…ど、どうしてですか?私は師範の稽古をより深く受けたくてきいたのですが」
私がそういうと師範は微笑む。
「カナヲも随分自分の気持ちを素直に言えるようになりましたね。……いい兆しです。それに、もう硬貨を使っていないところを見てきたあたり、やはり良い頃合いだわ」
「師範…」
そういうと私は師範に手を引かれて永遠屋敷に連れていかれる。
「師範、どういうことですか?」
「あなたには話さなければならないですね。私の実の姉、胡蝶カナエを殺したその鬼を殺すための計画について話しておきましょう」
「え、どういうことですか?カナエ姉さんを殺した鬼がいるなんて」
「えぇ、私の姉、胡蝶カナエは万世極楽教の教祖、万世童磨によって殺された。そう、明治四十五年の一月、こいしちゃんと共に初めて万世極楽教の潜入をした時。こいしちゃんを庇ったカナエ姉さんは、童磨の血鬼術により…、私は近くで任務を終わらせていた時に報せを受けて駆けつけると既にカナエ姉さんは、両足首がなく、右眼も落ちていた。でも、カナエ姉さんはそれでも鬼と人間が仲良くなれることがある。そう言って死にました」
「じゃあ、その童磨という鬼を倒せばいいのね。でも倒し方は」
「そう急がなくても話しますよ。童磨は氷を扱う鬼、色々と煩わしい術を使います。ですがもし、童磨という鬼と戦うことになった場合、私はカナヲとは一緒には戦えない」
「どうしてですか!私と一緒に戦えばきっと勝て…」
「その甘い考えは今すぐ捨てなさい」
それを言われて私は引き締まった。
「上弦の強さは少なくとも柱3人分、いや、童磨は既に上弦の弐、下手をすれば柱の6人分の強さに匹敵します。しかし、隊士たちからの情報によれば、女を喰うことに異様な執着があり、意地汚らしい、それに身体能力が非常に高い、奴は優秀な肉体を持つ柱、それに、女であればまず喰うでしょう」
嫌だ、師範が喰われるところを見たくない。
「それに、私の体は鬼が天敵とする、高濃度の藤の花の毒が血液から内臓、爪の先や髪の先まで回っている状態です。ですが、ここまで回るのに、最低でも一年は藤の花を摂取しなければならない、まず今から摂取し始めてもまず間に合わない」
「師範、もしかして…」
「あーーー、アンタ、さっきから聞いてたら自分自身を毒玉として喰われる気満々に聞こえるんだけどさぁ、じゃあなんで私を呼んだんだよ。説明して欲しいねぇ」
そういうと部屋の襖が開く。
「に…にとりさん!?」
「お、カナヲ!久しいねぇ、私の打った刀、結構大事に使ってるって聞いてるよ!一年以上刀を刃こぼれもせずに使ってくれたのはカナヲと善逸くらいだよ」
「ちょっと、重要な話なのに入って来ないでください」
「おいおい、同期なんだしさぁ、少しは優しくしてよ。それにさぁ、本当は死にたくないんだろ?」
そういうと師範は黙る。
「実はなぁ、藤の花の毒が回ってるのはほんとだけど、それはしのぶだけじゃぁないんだよ」
「どういうことですか?にとりさん」
「カナヲも知ってるよ、というか最近まで一緒に屋敷で暮らしてたじゃねぇか、最近見ないかもしれないけど」
「もしかして…」
「そう、因幡鈴仙。彼女もだけど、藤の花の毒の被験者なのさ。それもこれも八意さんとしのぶは藤の花の毒の研究を八意さんに弟子入りした時からずーーっとね」
「じゃあ、師範が喰われないで済む方法はあるんですか?」
そういうと師範が口を開く。
「えぇ、たった一つだけ方法があります。それは……」
私はそれを聞いて絶句する。
そんな方法でなければならない。
でも、師範が生き残る術はそれしかない。
「だから私、鉄河城にとりが呼ばれたわけだ。それに、既に打倒童磨についての作戦は既に動いている。おそらく、総力戦が行われる時にそれが実を結ぶはずだ。目に浮かぶぜ!やつが苦しみながら死ぬ姿が」
「にとりさん、あまり話しすぎないでください。それに、私はもう2つの手も打ってるんですからね」
「こんばんは、珠世さん、物騒ですよ。夜に窓を開け放っておくのはでも今日は美しい月が映える夜だ。初めまして、吾輩は産屋敷耀哉の使いの者です。いやぁしかし隠れるのがお上手ですな。あなたを見つける間に産屋敷様は動けなくなってしまいました」
「どうしてここがわかったのですか?」
「人間の人脈と炭治郎たちが血を送っていた動物の足跡です。貴方が浅草の後に買ったこの家の元の持ち主を特定し、それから昼間のうちに愈史郎くんやパチュリーちゃんの視覚や動物の動向を把握してました」
「凄まじい努力ですね。何故そこまで出来るんですか」
「いえいえ、、吾輩は訓練を受けているとはいえただの鴉、そもそもそこまで警戒はされない、貴女方に一切の危害を加えるつもりは無いので安心して欲しい」
「では何の御用でしょうか」
「ふむ、不信感でいっぱいの様子も無理はない。吾輩が、炭治郎やしのぶのように貴女から信用を得るのは難しいですね、やはり…」
「愈史郎とパチュリーは……?」
「愈史郎くんもパチュリーちゃんも心配いりませんよ。パチュリーちゃんはそこのドアの前でこちらを覗いてますし、愈史郎くんは三階から降りて来ようとしてますよ。ほらものすごい足音が聞こえますし」
「パチュリー、中に入りなさい。覗き見は良くないですよ」
「失礼しました。珠世様、その鴉、凄いですね。私たちの使い獣よりも優秀じゃないですかね」
「では用件を話しましょうか、鬼殺隊にも鬼の体と薬学、毒学に精通しているのは知ってますね」
「ええ、炭治郎からの手紙でしのぶという隊士が応援してくれるというのは聞きつけてます」
「ですが、鬼殺隊にはもっと、優秀な人がいるんです。その人と合わせて3人で禰豆子の変貌も含めて一緒に調べて頂きたい。鬼舞辻無惨、及びもう1人の謎の鬼の始祖を合わせて倒すために協力しませんか?産屋敷邸にいらしてください。設備については最新式のものを既に用意しております」
「どういうことです。鬼である私を鬼殺隊の本拠地へ…!?」
「珠世さんはある時を境に血の検体数が激増したのはご存知ですか?」
「えぇ、私が鬼の始祖が他にもいるという話を炭治郎に伝えたあとすぐですね」
「実は鬼殺隊には珠世さんには渡せない程の雑魚鬼の血の検体もご用意しております。だからこそ、より深く研究できます。安心して下さい。では、私は失礼します」
「珠世様!何があったのですか?」
「愈史郎、パチュリー、今から産屋敷邸へと向かいます。ここからは三里半程で着くと思います。直ちに検体と道具の準備を」
「わかりました!珠世様のためなら」
珠世様は翌日の柱稽古の日に合わせて来て下さる。
そして。
「あら、童磨様、何を思い耽っているんですか?」
「おう、実はね、ついにこの万世極楽教の信者の数が一万人になったんだよ」
「おめでとうございます。私も童磨様とその時を迎え入れられて本当に良かったです」
「そうだね、君が考えた案によって万世極楽教はここまで大きくなった、それに、これだけの信者がいれば、神様も認めてくれると思う。信者がみんな集まれば神さえも超えることが出来る。そして極楽浄土に新たな世界を作ろう」
「そのお考えは素晴らしいですね」
「そうだよね、あと実は俺は鬼なんだよ」
「そうなんですか!?童磨様が鬼だなんて」
「鬼なんだよ、しかも、俺は上弦の参、つまり十二鬼月の中でも三番目に強いんだよ。それに、このことを教えられるのは、特別だからさ、だから君は特別に最後まで食べない。そう、僕は君たちを食べて、最後の戦いをして、勝って、更なる未来の人々が極楽に行けるように努める。そう思ってるんだ」
「素晴らしいお考えですね。つまり、私は、最後まで食べられないんですね」
「ここまで貢献してくれた君だからこそ、僕は最後に食べる。ありがとう鈴仙」
「いえいえ、私は童磨様のために行動しただけです」
「カナヲ、この作戦を私に選ばせるためにも、明日からの柱稽古、カナヲは8人の試練を突破しなさい!そう、私はあなたの事を信じているから」
「はい!師範、絶対に応えてみせます!」
「じゃあ、カナヲ、これが最終決戦の前の最後の私がカナヲに与える試練だからね。絶対やり遂げること」
「はい!」
私は明日からの柱稽古で必ず師範に認められる隊士となって帰ってくる。そう心に決めた。
さて、カナヲは八人の試練を乗り越えることが出来るのか。
次回、柱稽古、開幕です。