鬼滅の東刃〜Another of Slayer〜 作:トーニオン
さて、伊黒さん相手に太刀打ちできるのか?
とてつもなく辛い試練だ。
使うのは木刀だとしても当たれば即大怪我、力加減を間違えればその人の人生さえも左右しかねない程の傷痕を残しかねない。
この可愛そうな隊士、200人の間を縫って伊黒さんの攻撃が来る。
それが、今までとは段違いにやばい。
その攻撃は、まるで蛇のようにグネグネと曲がり獲物に噛み付くようだ。
それに加えて隊士達には一切掠らない動き、これはもはや伊黒さんくらいまでの太刀筋は難しいかもしれない。
恐ろしい、それに、持っているのは同じ木刀なのにどうして曲がるんだ。
俺は何度も木刀を振る。
しかし、この異常なまでに細い隙間を狙おうとすると、仲間が涙を流して訴えてくる。
頼む。当てないでくれ!死にたくない!そう、何度も何度も訴えてくる。
今までにはない緊張感で手がブルブル震える。
この太刀筋は相当正確にやらないと被害者が増えるばかりでもはや試練所ではない。
だからこそ、俺はずっと観察した。
妖夢の太刀筋、伊黒さんの太刀筋、なにか癖がある。そこを伊黒さんは突いてくる。
妖夢の癖、そして伊黒さんの癖、そして俺の癖、そこを何度も何度も観察する。
自分の何度も頭で考える。
そして伊黒さんの突いてきそうな場所を探る。
そして伊黒さんの試練開始から4日目。
「そこだ!」
「甘い!」
俺は突いてきそうな場所を察する。
見えた!隙の糸!
「はう!」
そこで一旦打ち合いが止まる。
そして伊黒さんは一息つく。
「だいぶ攻撃できるようになってきたじゃねぇか」
「はい!伊黒さんの太刀筋を研究して、しっかり相手の弱点を見極められました」
「それに、これを見ろ」
俺は伊黒さんの指さすところを見ると、伊黒さんの羽織の裾が大きく切れていた。
「とりあえず、お前は一つ目を突破した。お前は自分を誉めろ」
俺は涙が出た。
「妖夢!やったよ!俺、伊黒さんに……」
「だが、まだ忘れてないか?ここでの条件は二つある。互いに連携をして、俺を打ち負かすという条件がまだ残ってる」
それを告げられた瞬間涙の意味が変わる。
まだ、終わってないんだ……。
俺はこれからの地獄のことが過り、ボロボロと泣いた。
「フン、その程度の動きで攻撃できると思うな」
俺は妖夢と2人で連携し、この狭い空間で伊黒さんを相手に戦っていた。
「相手はこの場所を一番熟知している訳ですから、その有利な所を埋めるところを見…キャッ」
「口でやるな、隙が見え見えだ」
伊黒さんは今までは全力ではなかったかのような程素速くなっている。
この速さについていく方法を考えなければ、お互いの動き、合図、それを相手により悟られずに。
俺は、目を薄める。
視力だけに頼るな、全感覚を研ぎ澄ませろ。
俺はとにかく、そうして何度も避ける。
そして、連携の試練3日目。
「フゥゥゥゥ」
「スゥゥゥゥ」
俺と妖夢は一切口をせず、とにかく全神経を研ぎ澄まし、伊黒さんの動きを把握する。
来る、その隙……今だ!
俺と妖夢は同時に木刀を突く。
すると、何かを感じる。
布?服か?だが何かが違う。
俺は目を見開く。
すると、そこには口が裂けた伊黒さんが目の前にいた。
「「う…………」」
「黙れ、黙らないと顎を握りつぶすぞ」
俺と妖夢は伊黒さんの言うことに従った。
そして、俺と妖夢は伊黒さんの部屋へと案内される。
「はぁ、お前ら……」
もしかして包帯を斬っちゃったことで怒ってます?いや怒ってますよね!?
「…だ…」
ちょっと聞こえずらかった。
「合格だ。それに、お前らを柱と同等と認めてもいい」
それを聞いた時、俺は目を丸くした。
「まさか俺の包帯を切るやつが現れるなんて思わなかったよ」
それはもう伊黒さんからは嬉しそうな臭いがした。
「伊黒さん?気になったんですけど、何故いつも包帯をしているんですか?」
妖夢!?それを聞いちゃダメな気がする。
「やはり気になったか、だが、絶対に他の奴らには話すなよ。この話を知っているのはお館様だけだからな」
それほどの話を甲隊士とはいえ、俺達に話すのはどういう事なのか。
「俺は元々女ばかり生まれる家だった。男が生まれたのは三百七十五年ぶりだと言われた。そんな俺は生まれた時からずっと座敷牢で育てられた。俺の母や姉妹などの親戚は猫撫で声で気色悪いほど親切でとにかく毎日俺に食い物を大量に持ってきた。
だが、換気もままならない場所に充満した脂や乳の臭いには俺も吐き気を及ぼしていた。夜になり俺が眠ろうとすると、不気味に這い回る音が聞こえた。そして強烈な視線を感じた。粘りつくような視線、それも幾つも。俺は全身から汗が噴き出し、音が止むまで全く動けなかった。
そして十二になった頃、初めて座敷牢から引きずり出された俺はものすごく大きな部屋へと案内された。そこは豪華とかどうかも分からなかった俺には分からなかった。だがそこにいたのは三体の下半身が蛇のような女の鬼達だった」
「ひぃぃぃ」
「妖夢、静かに」
「そう、俺の一族は蛇鬼達が交代交代で金持ちやら資産家やらを殺して強奪した金品で生計を立てていた非道の一族だった。そしてその鬼たちは一歳かそこらの赤ん坊が大好物で、自分の産んだ赤ん坊や、資産家の妻を家畜みたいに産ませた子を贄として捧げていたんだ。それに、俺は珍しく生まれた男でこのように色違いの目をしていたために、蛇鬼共に気に入られて十五になるまで熟成して丸々肥えるまで生かされる予定だったんだとか」
「妖夢?大丈夫か?」
「うん……」
「俺はその時に蛇鬼に爪で口元を切り裂かれてそこから垂れる血を盃に溜めて飲んだ。そして座敷牢にあと3年もここには居たくないと思っていた俺はとにかく半年間にげること、そして生きることだけを考えていた。
食事に使われている金属の箸で壁を削ったり、食事の椀で穴を掘ったりもした。その時は毎日毎日神経を擦り減らし続けた。
その時、壁の穴から迷い込んできたこの鏑丸だけが信用出来る生き物だった。そして半年程の時間をかけて、俺は逃げ出すことが出来た」
「妖夢、大丈夫?手ぬぐい貸す?」
「ありがとう…」
「そして俺は知ったんだ、この住んでいた場所、それにその外に出た先にも絶望しか無かったことを。
俺の住んでいた場所は八丈島という火山島、そこは絶海の孤島だと言うことを思い知らされた。俺はその島の砂浜で追い詰められている時に、岩柱の悲鳴嶼さん、当時炎柱の煉獄槇寿郎さん、そして元鳴柱の堀川雷鼓によって助けられた。その後、生き残ったたった1人の妹に全力で罵られた。お前のせいで一族60人、私以外みんな殺されたと、とにかく俺は何十年もかけて償わなければならない怨みや憎しみを」
「そんなことあったんですね……」
「伊黒さん、そんな過去があったとは……私、伊黒さんに酷いこと言ってすみませんでした……」
「誰だって悲しい過去がある。俺はこの全ての罪を償いきって、自分が生きてて良かった人生に清算すると決めている」
「すみません、童貞で納豆みたいなやつだって言ってしまって」
妖夢、それはちょっと酷いと思わないか?
「残念だったな、俺は童貞ではない、既に事は済ませてある。だからお前が童貞と罵ろうと俺には効かない。それに、納豆を悪口には使うな。俺はとろろ納豆が好きだからな」
色々とあったが、伊黒さんの話が聞けた。
俺は伊黒さんとは苦労話ができるかもしれない。
伊黒さん、俺も変な目で見てしまってすみません!
こうして俺は次の試練へと向かった。
だが、そこではとんでもないことが行われていたとは俺は知らなかった。
伊黒さん、過去が悲しすぎます。
それに、生まれが八丈島とかいうのまでサラッと言ってしまうとか。
あと堀川雷鼓という鳴柱、一体なんなんでしょうか?
ちなみに第五の試練突破者数253人(この時点)
次回は炭治郎がメインでは無いです。