鬼滅の東刃〜Another of Slayer〜 作:トーニオン
遡ること4月、私はとにかく嬉しくてしょうがなかった。
「ついに、ついに太陽を克服する鬼が現れた……!上弦が欠けてしまったが、それ以上の収穫だ!」
私の細胞を通じて見ることが出来る能力で半天狗の体越しに見えた。
禰豆子という特別な鬼が現れるまで私は1100年にも渡り探してきた。
そして、現れた。
「あの娘の血を飲めば、恐らく、私は太陽の下で過ごせる鬼となる……」
長かった、私は全ての苦労が吹き飛ぶほど嬉しい。
私が鬼になったのは忘れもしない。弘仁の頃だ。
私を鬼にしたのは平安時代、腕の立つ素晴らしい医者だった。
私は当時、筋肉の衰えが尋常ではなく、今のままでは二十歳を超えることは不可能と言われていた。
だが私は少しでも生き永らえるように医者に懇願した。
「どうにか、どうにか私を、太陽の下で蹴鞠が出来て、人々に尽くせるようにしてください」
「君の病気は少し特殊でね、私でも実験的な薬しか用意出来ない。筋肉が衰える病気はまずわからない。だが私は君がこれを乗り越えられることに賭けている」
そう言ってくれた時は本当に嬉しかった。
だが、弘仁7年、既に体が衰え、息も苦しくなってきた頃、私はあまりにも苦心する医者のことを省みず、殺害した。
だが、その日処方された薬は時間が経つと、息が苦しくなくなってきた。
私は強靭な肉体を手に入れたような気がした。
筋肉は衰えなくなり、鍛えれば強くなれる。
それも無尽蔵に。
だが、私は外へ出ようとした瞬間に鏡に反射した太陽により、私は痛みを覚えた。
その痛みの場所を見ると、その部分が焼け爛れてしまっていた。
日の光の下では歩けない。
その現実が私を襲った。
どうにかして日の光を浴びても生きていけるからだにはなれないか、そう考え続けたが道筋さえもわからなかった。
そして人の血肉が欲しいという衝動までもが襲ってくる。
私はそれを恐れていた、だが、私は耐えきれず、同じ家族を1人喰らってしまった。
するとどうだろう、体がより強くなったような気がした。
これが鬼の力か、私は人間に戻りたいという感覚はこの時に捨てた。
だが、太陽の下で過ごせるということが全くできていない。
だからこそ医者の作った薬の調合を調べ尽くした。
だが、まだ試作段階であり、青い彼岸花というものが多く使われているということしか記されていなかった。
だからこそその薬を完成させるためにも私は夜しか動けない体で幾年もの間、駆け回った。
だが、彼岸花は元々赤い、青い彼岸花というもの自体存在するのかは危うい。だが、医者の記したものには書かれている。
それを手がかりに私は太陽の下で歩ける体になるために青い彼岸花を探し続けた。
私が鬼となってからは鬼を倒すための武士というものが出来、私は殺される訳には行かない。そうおもい、1人の武士に血を浴びせた。
すると、その武士は私と同じ鬼になった。
これか、鬼は増やせるのか。
それから私は鬼を増やし続けた。
そして鬼の中にもしかすると太陽を克服できる体質のものが現れるのではないか、私は考え続けた。
そして大正5年、鬼となり丸1100年でやっとか。
私は妻にも報告をした。
「妻よ、ついに太陽を克服したものが現れた!」
だが、返ってきた言葉は冷ややかだった。
「ふーん、ついにやったのね」
「なぜそんなに乗り気では無いのか」
「あなたは一番に太陽を克服したい。そう思っていたわね。それが実現したのは嬉しいことよね」
まるで他人事のようだった。
「なぜ喜ばない、お前も太陽の下で過ごすのが夢だったろう」
「私もそう思っているわ、だけどここまで増やした鬼も全員そうなるのにはもう少し時間がかかると思うのよ。それに、鬼を日本軍に売るという計画が完遂されるまでは喜べないわ」
「なるほど、そういうことか」
私は少し喜びすぎていたかもしれない。
反省をする。
「太陽の克服が達成され、鬼殺隊が全滅しないと、私たちは世界を取るのは夢のまた夢ね」
私はそれに、少し引っかかった。
鬼殺隊が全滅するのはわかる。でも世界を取るというのはあまりに大きすぎる計画ではないか。
だが、私と結婚する時、妻はその当時から話していた。
それに、妻と結婚していなければ、今頃鬼どうしで争いも起きていたかもしれない。
それだけを避けるためにも私は結婚という選択肢を取った。
1週間後、
「鬼殺隊を全滅させ、世界を取らなければならない。だからこそ私たち鬼は強くならなければならない。無限城を増築し、現在の10倍の広さにしようと思う。そして、いざというときは鬼殺隊を全員引き込んで叩き潰す」
私は私が鬼にしたもの全てを無限城に呼び寄せ、演説した。
そして、無惨様という慕う声が響く。
これは鬼の王としては当然のことだと思う。
だが、私は本当にこの行動をしてよいのか悩む。
私の本当の目的は太陽を克服し、太陽の下でも生きられる、ただ1つのみ、そのためにも鬼殺隊は邪魔である。
鬼殺隊がいなくなれば私は鬼を増やすこともやめ、ゆっくりと過ごしたいと思っている。その目的のため禰豆子という鬼を私は手に入れなければならない。
私はなぜ悩んでいる。
鬼の始祖となり、ここまで大きな鬼の王となった私が悩むのか、長らく生きてきてこんなことは初めてだ。
演説を終え、私は一人、自分の部屋で茶を飲み、一服する。
そして私はひとつの決断をする。
「鳴女、聴こえるか?お前にしか出来ないことだ」
私は鳴女に命令を出す。
「わかりました。私、鳴女、無惨様に900年仕えて来たこと、そしてその血鬼術、存分に発揮してまいります」
「そうだな、お前は私が鬼にしたものの中で最も古株だったな」
鳴女が提案してくれなかったら十二鬼月という制度も生まれなかった。鳴女は私にとっては最もお互いを知る仲間なのだから。
私は鳴女を愛そうと思ったことは無い。だが、お互いを対等に信頼できる唯一の存在だ。
私がこれまでに愛したものは珠世だけだからな、裏切りものではあるが。
「産屋敷、お前と戦う日はそう遠くない。最後に地に足を踏み立ち上がるのは私だからな」
無惨の目的って実際にはそれほど大きくなかったんですね。
というか妻の方が野望がでけぇ。
次回、十二鬼月の猗窩座と勇儀に視点を当てます。
無限城編が始まるまでもう少しお待ちください。