鬼滅の東刃〜Another of Slayer〜 作:トーニオン
善逸視点がほとんどです。
雷の呼吸の因縁の戦いが今、始まる。
俺はものすごく怒りが込み上げてくるのを感じる。
だが、これほどまでにない機会には感謝しなければならないと思う。
無限城に落とされた時、俺はすかさず姉貴を助けた。
「すまねぇな善逸、私がうたた寝してて」
「姉貴はそろそろ自覚を持った方がいい。俺も姉貴も甲の隊士なんだから」
リーン
音が聞こえる。この音は、獪岳の音。それに、音には濁りがある。やはり鬼になっていたか。
「姉貴!こっちだ!」
俺は姉貴の手を引き無限城を走る。
雷の呼吸。 壱の型 霹靂一閃
「邪魔だ、消えろ」
「…善逸」
俺の心は怒り、憎しみ、恨みに溢れている。
音が大きくなっていく。
すると、目の前に顔がボロボロになり、全身から血を垂れ流す隊士が転がっていた。
「おい!大丈夫か?しっかりしろ!」
「ま……り…ささ…ん…獪岳…が…上弦…陸…」
そう言って隊士は息絶えた。
「おい!おい!しっかりしろ!」
「姉貴、そこにいろ。俺は獪岳を殺ってくる」
「おい待て!」
俺は姉貴の止める声を無視し、少し奥へと進む。
そして大きな襖が経つ間の前に着く。
「いるんだろ、出てこい!そこにいるのはわかってる」
「口の利き方がなってねぇぞ!兄弟子に向かって、少しマシになったようだが、相変わらず汚ぇ高音の声してやがる。久しぶりだな、善逸」
獪岳は襖を開け、刀を構えながら歩いてくる。
「獪岳、鬼になったお前を、俺はもう兄弟子と思わない」
「変わってねぇなぁ、チビで出っ歯でみすぼらしい、少しは筋肉をつけたようだが、柱になれたのかよ?それに壱と漆以外の型は使えるようになったか?」
「…」
「まぁ無理だろうなぁ、柱の席は満員、おめぇは弱虫だから成長しねぇ、そんな鬼殺隊よりも鬼は評価してくれて俺は上弦の陸だぜ?」
「適当な穴埋めで十二鬼月に入って運良く上弦入りできたことが随分うれしいようだな」
「へぇ…言うようになったじゃねぇかお前…」
「なんで鬼になんかなってんだ?丙まで上がっていながら」
「ははっ!お前には…」
「雷の呼吸の継承権を持った奴がなんで鬼になった。
アンタが鬼になったせいで爺ちゃんは腹を切って死んだ!
姉貴を介錯に切腹したんだ!それに30分間、苦しみと後悔を噛み締めながら!
アンタのせいで姉貴まで巻きこんで!それもこれも雷の呼吸の使い手から鬼を出したからだぞ!」
俺は涙に目を潤ませながら獪岳に言い放った。
「ははは、しったことじゃねぇよ、だから何だ?悲しめ?悔い改めろってか?
俺は俺を評価しない奴なんぞ相手にしない、俺は常にどんな時も!正しく俺を評価するものにつく!
爺が苦しんで死んだなら清々するぜ、あれだけ俺が尽くしてやったのに俺を後継にせずてめぇみたいなカスと魔理沙みたいなゴミと3人共同で後継だと抜かしやがったくそ爺だ!
元柱だろうが引退から23年して耄碌した爺に用はないからな!それに俺を丙にまでしかあげなかった鬼殺隊ってのもクソだ」
「姉貴がゴミ、俺がカスならアンタはクズだ、壱の型と漆の型しか使えない俺たちと壱と漆の型だけ使えないアンタ、後継に恵まれなかった爺ちゃんは気の毒でならねぇよ」
「てめぇと俺を一緒にすんじゃねぇ!」
雷の呼吸。肆の型 遠雷
その攻撃は見慣れている。俺の目の前で自慢してきた型だったな。
そんなの見切るのは簡単なんだよ!
雷の呼吸。壱の型 霹靂一閃
「おせーんだよ、クズ」
獪岳の体を袈裟斬る。
何が起こったのかいまいちわかってない獪岳は焦っていた。
「お前は矜恃も根性もねぇカスだが強くなったじゃねぇかだがな、お前らは死んで当然なんだよ!爺もてめぇもあのゴミもぉぉぉ!」
雷の呼吸。弐の型 稲魂
速い、でも見えなくはない。俺は僅かに頬に切り傷を作りつつも避けきる。
「大勢人を喰ったな?万世極楽教の女たちを、もう善悪の区別もつかなくなったんだな?」
「善悪の区別はついているぜ!」
雷の呼吸。参の型 聚蚊成雷
「俺を正しく評価し認めるものは善!低く評価し認めないものは悪だ!」
回転しながらの波状攻撃か!アンタもただ1年間何もしていなかった訳では無さそうだな。
雷の呼吸。伍の型 熱界雷
斬撃を避けきれない。俺はまともに攻撃を受ける。
「どうだ!?血鬼術で強化された俺の刀の切れ味は?黒死牟さんのおかげで編み出したんだ!皮膚を!肉を!そして骨を罅割って焼く斬撃だ!」
雷の呼吸。陸の型 電轟雷轟
「食らった斬撃はお前の体で罅割れ続ける!目に、体に焼き付けろ!俺の力を!鬼になり雷の呼吸を超えた!」
俺は背中を壁に打つ。そして倒れる。
「てめぇは俺とは格が違ぇんだよ!お前はどうせ未だに俺以下なんだろうな!」
「それは違うと思うぜ!獪岳!アンタはあたしらとは違って甲隊士なんだよ!アンタも諦めなければ今頃甲で肩並べてたとこだろうがな」
「姉貴…」
「あたしが全部やってやるよ。それに、新しい技の使い所も見つけたし」
「ほう、面白いじゃねぇか?てめぇみたいなゴミまでやってくるとは」
「は?ゴミとは失礼だね?私の方が姉弟子のくせに何を宣うのだか、それに、ゴミ漁りをしてた所を師範とあたしが救わなければアンタはそのまま野垂れ死んでた可能性もあるのによ」
「ふん、俺を評価しねぇで散々いじめたのは許さねぇ」
「あれはあの時勝手に師範が育ててた桃を盗み食いしてたからだろ?自業自得だよ」
「は、そんな話もてめぇが死ねば思い出すこともねぇだろうがな!」
獪岳が俺のことを嫌っていたのは十分わかっていた。俺だって獪岳が嫌いだった。
でも尊敬してたよ、心から、アンタは努力してたしひたむきだった。1年足らずで丙まで上がるのも並大抵じゃない。そんな俺はいつもあんたの背中を見てた。
特別だったよ、アンタは、爺ちゃんや俺や姉貴にとって特別で大切な人だったよ。
だけどそれじゃ足りなかったんだな。
どんな時もあんたからは不満の音がしてた。
心の中の幸せを入れる箱に穴が空いているんだ。
どんどん幸せが零れていく。その穴に早く気づいて塞がなきゃ満たされることは無い。
爺ちゃんごめん。俺たちの道は二つに分かたれた。
俺は起き上がり、そして獪岳を見る。
「善逸はやる時はやる男だ、アンタの目は節穴なんだよ!」
「ふざけんじゃねぇ!お前ら皆殺しだ!」
ごめん、兄貴、
雷の呼吸。陸の型。電轟雷轟
雷の呼吸。捌の型 迅雷
雷の呼吸。玖の型 火雷神
凄まじい力により獪岳の腕は技を放った直後に姉貴の技で細切れにされ、さらに俺の斬撃により頸が斬られる。
「畜生!やっぱりあの爺贔屓してやがったな!お前らにだけ教えて俺に教えなかった」
「違う、爺ちゃんはそんな人じゃない。これは俺だけのと姉貴だけの型だよ。この技でいつかアンタと3人で肩を並べて戦いたかった」
七までしかない型からさらに玖まで編み出した?アイツらが?壱と漆しか使えない奴らが俺よりも劣っていたカスとゴミが?耐えられない!そんな事実は受け入れられない!あんな奴らに俺らが負けるのか?
だが、あいつらは俺の血鬼術で罅割れて血を流して死ぬんだ。
「人に与えない者はいずれ人から何も貰えなくなる。欲しがるばかりの奴は結局何も持ってないのと同じ、自分では何も生み出せないから、一人で死ぬのは惨めだな」
現れた男は獪岳の頭を踏み潰す。
俺と姉貴は獪岳が塵になる姿を目にし、倒れる。
そして目の前には川、そしてその反対側には爺ちゃんがたっている。
「爺ちゃん!ごめん俺、獪岳と仲良く出来なかった。
手紙を書いたりもしてたんだ!でも返事してくんなくて!
俺がいなかったら獪岳もあんなふうにならなかったかもしれないほんとごめん!許して!
何も恩返しできなくなってごめん!爺ちゃんが生きてる内に柱にもさぁ…なりたかったんだけどごめん爺ちゃん!俺の事嫌いになった?何か言ってくれよ爺ちゃん…」
足元には彼岸花が絡みつき、前へと行かせてくれない。
「善逸!お前は儂の誇りじゃ…お前はまだやるべきことがある!お前は、魔理沙と共に雷の呼吸を繋げ!心配するな!儂は天からお前を応援するからな…」
「爺ちゃん……、俺、行ってくる。みんなが待っているから」
「善逸…お前は本当に、やる時はやる男だ。行ってこい!そして獪岳を鬼にした首魁に一撃食らわしてこい!」
「ありがとう…爺ちゃん!」
目を覚ますとそこには隊士たちが俺たちのために鬼から護ってくれて、その後ろで俺と姉貴は横になり手当されていた。
「善逸…死ぬんじゃないよ…!私たちで雷の呼吸を繋ぐんだから…」
「姉貴もボロボロじゃないか……。俺はやってやるよ。爺ちゃんの分、そして獪岳が生きるはずだった分、俺は生きてやる!」
「善逸…もう私のこと姉貴と呼ぶの失礼かな…。あたしの方が善逸を兄貴と呼びたいくらいだ…」
俺と姉貴は涙を流しながら手を繋いでいた。
ついに獪岳を倒しましたね。
これで残る上弦は五体。
ほとんど何もせずに格上げをされ続けた獪岳。
そして色々苦悩をし、助けられながらも上を目指し続け、甲まで上り詰めた善逸と魔理沙。
対照的ですね。