うちら風雲一派のものでして·····。   作:萩山

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一波乱

あれから俺は特に変わった日常を送るでもなく今日もあんていくで珈琲を啜ろうと思う。

さて、珈琲をと思い周りを見渡すがトーカちゃんの姿がない。

今日は居ない日だったか?

 

「やあ、風雲くんいつもありがとうね。」

「芳村さんの珈琲美味しいんでそりゃ毎日来ますよ。」

 

芳村さんの入れる珈琲は本当に美味しい。ここに通う喰種も人も見る目があるな…いや、この場合舌が肥えているとでも言うのか?

あぁ、そうだ。この際にトーカちゃんのことも聞くか。

 

「今日トーカちゃん居ないんですね。」

「そうだね。今日は四方くんと一緒に食料調達に行ってもらう予定だからね。」

 

食料調達、あんていくでその言葉を指す行為は自殺した人間を回収する行為を指す。

そうか、そういえば彼女が出払っている時は大体食料調達だっけ?

また明日だな。

 

「そうだ…丁度いい。聞きたかったことがあるんですよ。」

「風雲くんが私に聞きたいこととは、珍しいね。」

 

どこまで俺の考えを読んでいるのかは知らないが、おやおや、とお爺さんらしくこちらを見つめる芳村さん。

どうやら質問には答えてくれるような雰囲気。

 

「神代リゼの死とともに現れた片目…隻眼についてですよ…。」

「君にしては情報が早いね…。基本的に行き当たりばったりの風雲くんにしてはとても珍しい。」

 

そこまで珍しいこととは知らなかったな。

やれやれ、と肩をすくめる芳村さんは優しく告げる。

 

「まだまだ人のお客さんがいるからね。閉店後にまた来なさい。」

 

まだ昼間だ。この1杯でも終わったら少し外をまわることにしようかね。

 

「そうします。珈琲おかわり貰えます?」

 

やっぱりもう1杯だけ飲んでからにしよう。

 

 

 

 

暇潰しにと思ってぶらぶらと宛もなく彷徨っているが、今俺の頭にあるのはリゼのことばかり。

別にあいつに特別な感情がある訳では無い。

むしろ関わりたくないくらいだ。

 

あまり干渉したくはなかったが…。

リゼのこととついでに調べたいのは隻眼の喰種…いや、半喰種かな。

20区(ここ)ではなるべく騒ぎを起こさないように徹していたが、どうも嫌な予感がする。

あまり遠くない未来に大きなことが起きそうな予感が。

 

「ま、どうにかするさ。」

 

そう、どうにかする。

行き当たりばったりで、即座に解決してやる。

俺は予知者では無いし、占い師でも、哲学者でもない。

 

嫌な予感だが、退屈しない気もする。

はは、楽しませてくれる…。

 

俺が少し思考の海に沈んでいる間にトーカちゃんから着信が入る。

 

「風雲だ。トーカちゃん、何かあったか?」

『誠一郎さん。話してた半喰種が──』

 

なるほど。これはお手並み拝見…かな?

 

「すぐ向かう場所は。」

 

トーカちゃんの情報通り目指すとしますか…。

西尾錦ね…。

ここの区の中にしては力をつけている喰種だな。

半喰種くんのことも気になるし、しばらく様子見してから乱入するとするか…。

 

 

 

指定された建物の屋上にはトーカちゃんが携帯を片手に一点を見つめていた。

喰種の聴力があるからこそ聞こえる戦闘音、おそらく彼女がいる場所からは見えるのだろう。

 

「トーカちゃん。彼らはどんな感じなんだ?」

「どうって想像してる通りだと思うよ。」

「やっぱりか。」

 

喰種になったばかりの赤ん坊のような半喰種くん、彼が西尾錦に勝つなんて、兎が蛇に勝つような者だと思っている。

あぁ、でもここには勝ってしまう兎もいるか…。

まあ、とにかく、無理だと思っている。

 

「あ、」

 

トーカちゃんは少し驚いた表情をして彼らを見つめていた。

俺も続いて彼らを見るが、そこに写るは赤、赤い爪(リゼの赫子)が西尾錦を貫き、滅多刺しにする光景。

 

「本当にリゼが使われたのか…。」

「ちっ、胸糞悪い。」

 

さて、参戦しますか。

恐らくは飢餓状態。

食欲のままにここら一体を荒らされたらたまったもんじゃないからな。

 

「彼には半分でもリゼが居る。…トーカちゃんは見てなよ。特訓の先生のちょっとした実戦をね。」

「…無理しないでよ…。」

 

はいはい。と手を振り彼の前へと降り立つ。

ダラダラとヨダレを垂らしながら倒れている人間に近づいていく彼はブツブツと呪詛のように何かを呟いている。

 

「おいおい、そこの半喰種くん。…飢餓状態は辛かろう。どれ、お兄さんが治してやるから──」

 

さっさとかかってこいよ。

 

 

「グ、ガァ、アアア!!」

 

獣のように雄叫びを上げ赫子をこちらに伸ばしてくるが、その赫子はリゼの物より一回り細く、動きも拙い。

飢えが本能で動かしているのか。

 

「ほれほれ、動きが単調だぞー。」

 

グウァと変な声を上げ睨みつけてくる彼だが、遂に遠距離による攻撃をやめ、急に間を詰めに入る。

人間からはとてつもない速さなのだろうが、まだ喰種からすれば少し早い程度。

今度は的確に腹を狙ってきたのだが、俺が避けることにより空振りに終わる。

そして無防備にも空ぶった赫子を俺は自分の赫子で断ち切った。

言葉になっていない悲鳴が聞こえるが、こんなものさっさと意識を刈り取ってしまった方が早い。

 

怯んだ彼の後ろに周りを拳を振り下ろす。

すると悲痛な呻き声をあげ倒れ込む半喰種くん。

 

「終了…と。」

 

彼相手には赫子を使わないようにしようと決めてたんだがなぁ。

予想以上に学習能力が高いのかもしれないな。

まだ完全に使いこなせてはいないし、肉体も出来上がってない。

やはり、彼は赤子だ。

まだどんな風にも成長できる。

 

それこそ、何も無い力のない喰種になることだってできるし。

力を振りかざす捕食者にもなれる。

 

それは彼次第だがな。

 

「お疲れ様、誠一郎さん…。」

 

いつの間にかそばに来ていたトーカちゃんに声をかけられる。

彼女に戦わせなくて良かった。

俺は無傷出終わったが、彼女だったら負けることはないと思うが怪我をしてしまうことだろう。

 

「四方さん、近くに来てるみたいだから取り敢えずあんていくまで連れていこう。」

「あいわかった。」

 

ゲロまみれの青年と半喰種の青年。

 

西尾錦は…置いてくか。

今回は自業自得ってことでな、まあ、奴だってここで終わるようなやつじゃない。

しぶとくどこかで生きることだろう。

 

「誠一郎さん…。」

 

不意に先導していたトーカちゃんが振り向き、俺は「ん?」と少し間の抜けた返事をする。

彼女は明るい笑顔を浮かべ、

 

「お疲れ様。」

 

もう一度俺に労いの言葉をかけるのだった。

それは少し傾いた太陽と被さり、眩しく美しいものだった。

 

 

 




誠一郎さんの赫子、そして、風雲についてはもう少し後で…。


本作において、もっとこうあればいいのに、こういう所が読み辛いなどのコメントは大募集ですので、そのような指摘コメントくださるとありがたいです。
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