七日後にTSする高校生   作:rairaibou(風)

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TSまであと四日

 放課後、学生達は解き放たれる。

 

 丁洲高校は部活動を義務とはしていない。だから部活をしたければ何らかの部に入ればいいし、帰りたければ帰ればいい、勉強したければ……そもそも勉強することを誰が否定するだろうか。

 

 だが、実際のところはよっぽど家で行う趣味に熱心でない限りは、部活動かもしくは委員会に所属することになるだろう。学生というものは、得てして暇だが金が無い。

 バスケット部の伊武、柔道部の山上と同じように、清雅も部活に所属していた。ボードゲーム愛好会である。

 

 

 

 

 

 

 校舎四階にある多目的教室は、週に一度だけ賭博場になる。

 当然、金銭はかけない。だが、彼らは一様にしてプライドをかけあっているのである。

 

「ポン!」

 

 清雅は教室に響き渡るような声を上げて、河から牌を拾い上げた。

 これで彼の狙った牌は大体揃った。後はいずれ溢れるであろう字牌で待つのみ。

 しかし、今持っている字牌のどちらで待つべきか。

 本来であれば牌を鳴いてから捨て牌を選ぶのはマナー違反であったが、気の知った部員たちは清雅の長考を咎めない、こんな部活程度のことでいちいち目くじら立てて何になるというのか。

 

「頼む!」と言いながら、彼は牌を叩きつけるように切った。

 だが、名残惜しいのかそれとも怖いのか、彼はなかなかそれを見せない。大分マナーの悪い行為だ。

 やがて、決意したかのように指を離す。

 

「それ、ロン」

 

 清雅が手を離した瞬間に、対面の男が嬉しげにそう言った。

 

「三暗刻トイトイ、満貫ね」

「なんでだよ~」

 

 慣れた手つきで倒される牌に、清雅は悲鳴を上げる。

 逆転を狙った危険な賭けは、見事に失敗に終わったようである。

 それどころか、先程まで悩んでいたどちらの牌を切っても上がられていたという有様だ。

 

「なんでそんな事があるんだよ!」

「ふふーん、麻雀ってのは結果がすべてなんだよ」

 

 対面の男は勝ち誇ったように紙袋の中から駄菓子を取り出してパクついた。有志のカンパによって安価な菓子の詰まったそれは、ゲームの種類に関わらず勝った人間のみが食べていい決まりだ。尤も、ゲームが終われば談笑しながらぱくついても誰も怒りはしないが、こういうのはいかにして勝ち取るかというところが重要なのである。

 

「いやあ、これじゃ痩せるのは夢のまた夢だなあ」

 

 対面の男は出っ張った腹を擦りながら煽るように言った。

 彼は斎藤勝(さいとうまさる)、清雅と同じ二年生だが、このボードゲーム愛好会の、否、恐らくはこの高校の教師を含める最強の存在であった。

 強いのは麻雀だけではない、入学一年と弱にしてこの学校の猛者すべてをそれぞれの得意ゲームで粉砕したのはすでに伝説である。

 むしろ麻雀は運の要素があるだけにその男に一撃入れることの出来る可能性が高いゲームである。だが、当然そんな事は斎藤も理解しているので話がややこしい。

 

「運が向いていないときには運が向いていないなりの戦いをするのが麻雀ってもんなんだよ」

 

 彼はアルコールティッシュで丁寧に手を拭きながら言った。

 

「カワリューはちょっと焦りすぎてるんだよなあ」

「だって上がらねえと勝てねえじゃん」

「いやあ、そんなのは相手が接待してくれるコンピューターだけの話だよ」

 

 彼は慣れた手つきで牌を混ぜくりながら続ける。

 

「対人ゲームというのは自分も相手も勝とうとしていることを忘れちゃ駄目なんだよなあ、完全に実力しか関係のないゲームならともかく、麻雀みたいな運要素の強いゲームだとどうしてもうまくいかない時が来る。そもそもが四人のうち一人しか上がれないゲームだよ。今は三人だけど。ねえ、部長」

 

 彼は卓を囲んでいたもう一人に向かって言った。一応ボードゲーム愛好会の部長という役職であったその痩せぎすの男は、青白い顔に笑顔を作りながら答える。

 

「ゲームは楽しむことが大事、カワリューくんが楽しいならそれでいいんだよ」

 

 三年生らしい達観した答えであった。

 だが、そもそも現状が楽しいのならば清雅は声を荒らげないわけで。

 

「よーしわかった!」

 

 彼はそう言って立ち上がると、制服を脱ぎ捨ててカッターシャツ姿となる。

 

「背水の陣だ!」

 

 どかりと座り込んで牌を混ぜる清雅に、部長と斎藤は目を丸くした。

 

「カワリューくん、まさかとは思うけど」

「そのまさかですよ! 負けるたびに一枚脱ぐ!」

「馬鹿だなあ」

 

 牌を積んだ清雅は、部長に目配せしながら言う。

 

「部長! 俺のストリップ見たくなかったら、牌を鳴かせてください!」

「そういうこと!?」

 

 牌を自由になければ当然上がるスピードは早くなる、当然ルール違反だ。

 あまりにも堂々としたイカサマ宣言だったが、斎藤は笑ってそれを流す。

 

「サンマ――三人麻雀の意――でそんな事やってもあまり意味ないと思うけどね」

「うるさい! 俺は今日こそ『おいしい棒』を堪能するんだ!」

 

 彼は勢いよくサイコロを振った。

 

 

 

 

 一時間後、そろそろ終わっとけよと多目的教室を訪れた顧問が見たのは、自暴自棄になりながらパンツに手をかけている清雅と、なんとかそれを止めようとしている二人だった。

 

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