昼と夜の間で 作:ののよ
「…………で、なんで、お前らここで飯食べてんだよ。」
まぁ、そこは前面的にそれは同意する。
私と前野さんは屋上のベンチ腰をかけてお弁当を食べていた。
お握りを食べ終わった不良少女、もといい星野川さきは不満げに言った。
「も、もともと、ひ、昼ごはん、食べに来た、だけだから。 か、勧誘は関係、ない。た、たまたま、誘っただけだから、断られたら、そ、それまで」
「そう言うこと、ここはみんなの屋上だからね。」
とは、言ったものの、前野さんのノリというか、勢いが凄い。
こんなキャラだったんだ、と、ビックリしてます。はい。
「はぁ、まぁいいや。 そのかわり、絶対にオレのこと誰にも言うなよ。」
大きなため息をつくと、星野川さきはスマホをいじりはじめてしまった。ここに来てようやく気がついたけど、あまり怖くない。
聞き取りづらい前野さんの話をちゃんと聞いていたし、結構優しいのかもしれない。
「で、でも、星野川さん、ど、どうして、そ、そんなにか、隠したいの?」
前野さんはそう言う。確かにそれは思う。日菜の学校にも子役が通っているらしいが、その子は隠していないと言っていた。
現役ならともかく、引退したのなら必死になって隠す必要もないとおもう。いや、引退したからなのか?
「はぁ……。 オレはもう星野川じゃない。北村咲、それがオレの本名だ。」
「芸名だったんだ。」
「まぁな、バレると怪我のこともあって、バレると『可哀想』とか言われてな、めんどくさくなるんだ。はっ、ふざけんなってな。バレたらバレたで仕方がないけどな」
そう言うと渇いた笑みを浮かべた。
その笑みに何が込められているのか、私には分からない。本当の意味で分かることは無いと思う。
「そういや、お前らってなんの楽器やってんだ?」
星野川いや、北村さんはふと、そう言った。
少し楽しげな表情をしており、音楽はまだ好きなのかもしれない。
しかし、『お前ら』か、そりゃ勘違いするだろうなぁ。
「私は楽器やってない。バンドにも入ってない。ただ、ここにはお弁当を食べに来ただけだ。」
「わ、わたしは、べ、ベースを……。3日前に密林でか、買った。まだ、届いて、無い。バンドメンバーも、まだいない。多分、き、今日、と、届く」
屋上に沈黙が流れた。
北村さんは目を見開いて驚いているようだ。私も驚きだ。
バンドメンバーを探してる張本人がズブの素人だったのだ。
だったら私も誘ってくれれば……。
多分、バレると日菜とかめんどくさいから、断ると思うけど……。我ながら面倒くさい性格をしている。
「は、ハハハハ! なんだよそれ! お前も素人で、メンバーもいないとか……。しかも、一緒にいる友人も……。てっきり、2人ともバンドメンバーかと、思ってたよ。」
「ひ、氷川さんは、なんだか、そう言うの、好きそう、じゃ、なかった、から。ホントは誘いたかった、けど。」
「………ああ、バレてたんだ。」
バンド、といつよりも音楽は紗夜や日菜を思い起こしてしまう。
嫌いでは無いが、やっぱり苦手意識は持ってしまう。前髪で顔の半分が見れないが前野さんは結構人を見ているのかもしれない。彼女なりの気遣いなのだろうか?それなのに、誘われてないと1人で勝手に寂しがる。自分で自分がうざったい。
「ま、いいや。てっきり、2人ともバリバリやってて、星野川さきってネームバリューが欲しいだけかと思ってたよ。」
「ね、ネームバリューって、い、いっても。ほ、ホワイトチョコは、あ、あまり、アイドルと、して、ゆ、有名じゃ、ない。き、曲はど、ドラマのしゅ主題歌だったから、みんな、知ってるけど。グループとしては、しょ、正直底辺。ね、ネームバリュー、狙うなら、べひ、氷川さん、の、方が、マシ」
た、確かに。パスパレの姉って立場はネームバリューとして、マシだろう。でも、そんな、言い過ぎだと思う。
「ぶっ殺すぞ! てか、氷川さんって、あ! お前ら! パスパレの氷川日菜の姉か! いや、世間は狭いな。」
「…………まぁな。」
「たしかに、不良少女な私誘うくらいなら、そいつを宣伝等にした方がいいか。ま、するなら、だけど、それより、お前が目指してるのって。あくまで
この流れは……。
「う、うん。で、でも、や、やるなら、そ、それなりに本気でや、やりたい。けど、プロを、目指す、とか、ライブ、イベントにさんか、したいとか、ない。た、楽しければ、い、いいかなって」
「はっ、いいぜ、なんだか気に入ったよ。参加してやるよ、お前のバンド。音楽は、楽しくなくっちゃな。ただし、
「ふ、覆面、ば、バンド?」
「ああ、オレは元とはいえ芸能人だ。そんなのが参加したバンドって、めんどくさくなるに決まってるだろ? それに……。」
そう言うと、北村さんは、私の方を見た。
「覆面なら、お前の苦手意識も消えるんじゃないか? せっかくならやろうぜ、バンド。」
ドクン、と、心臓が跳ね上がった。
まるで、鷲掴みにされてる気分だ。
もし、仮に私もバンドを始めたら紗夜は私を見てくれるだろうか?
けれど、もし、それでも日菜ばかり気にして私のことなんて興味ないままだったら、立ち直れない気がする。
「………。氷川さん。む、無理しなくて良いよ。き、今日だって、ぱ、パスパレの話、してるだけで、び、微妙そうな、顔してたし」
そう言ってくれる前野さんの言葉が甘く脳に響いた。
「ごめん。他の人を探してくれ。」
結局、断る事にした。