昼と夜の間で   作:ののよ

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第6話

「ふざけんな、ふざけんなよ。」

 

咲はは嘘がなによりも嫌いだ。

人を傷つけ、貶め、その上で自分だけが甘い蜜を啜る。そんな朝がなによりも嫌悪していた。

その、嘘をつかれたということが腹立たしく一言文句を言ってやる事にした。

 

(くそ、前野のやつ、ホントはお前ともバンドやりたいんだぞ……。)

 

そう心の中で騒ぎながらまりなの所に向かった。

並んでる人たちがいたけど、全員を退かし、睨みつけると譲ってくれた。

 

「まりなさん。スマホ、忘れ物にありませんでした?」

 

「……横入りは良くないよ。」

 

「……すんません。急いでいるんです。」

 

「…………はぁ。これ?」

 

「それです、ありがとうございます………。あと、氷川って人、来てませんか?」

 

「Roseliaなら、6号室だけど……。知り合い?」

 

「………まぁ、そんな感じです。」

 

スマホを受け取ると、咲は慣れた手つきで操作しつつ人の少ない場所へと移動した。

機嫌が悪いが我を忘れているほど怒っている訳ではない。

もしかしたら変装した氷川日菜と見間違えた可能性もある。そんな確率の低い可能性が頭に浮かび、ちょっとした知人に電話をかけた。

 

『もしもーし。咲ちゃんから連絡くれるの珍しいね。久しぶり。』

 

「……ご無沙汰しております。彩さん。」

 

電話の相手は丸山彩。パスパレのボーカルでリーダーだ。

かつては咲と同じ養成所に通っていた、先輩だ。デビューは咲の方が先だが、彼女の在り方には咲にとって眩しく、そして、憧れでもあった。

 

「あの、早速で申し訳ありませんが、"氷川日菜"と一緒にいますか?おかしな質問してすいません。」

 

『ん? 今一緒に事務所にいるけど………。どうしたの?』

 

「いえ、CiRCLE……ライブハウスで、見たような気がしたもので……。」

 

『ライブハウス!? また、歌う気になったの? よかったー。心配してたんだ……。』

 

「……いえ、……、その、はい。ご心配おかけしました。えっと、急いでいるので、ありがとうございました。失礼します。」

 

スマホをしまい、6号室の前に立つ。

防音はしっかりしているが、それでも微かに音が漏れている。悪くない、いや、とても綺麗な歌だ。

小さく深呼吸する。そして、扉を勢いよく開ける。

 

「オラ、氷川! ダチ騙すとはどういう了見だ!」

 

中に入ると、Roseliaの面々の奏でていた音は一瞬にして止まった。全員の視線が咲に向けられる。ドラムのあこと、キーボードの燐子は怯えた様子だ。

 

「私に何か御用ですか?」

 

紗夜は少し警戒ながらそう言う。その様子に咲は小さく舌打ちしたあと、ズンズンと部屋の中に入っていく。

 

「用も何もねぇよ。テメェが、音楽が嫌いだと思って誘わなかったが、前野は、あいつはお前とバントやりたいんだ。だのに、お前はバンドやってただ? ふざけんなよ! 言ってくれても良いじゃねぇか!」

 

自分が思っていたよりも、騙された事にたいして頭に来ていた事に驚きながら咲は言った。

 

(くそ、落ち着け、()()()は大丈夫。大丈夫。)

 

ーーー咲、ホワイトチョコで待ってるよ!

 

ーーーなんでも言って! 仲間じゃん!

 

ーーーうん、リーダーがこんな状態なんだから皆んなで助かるよ。

 

それ以来、離れて行った少女達を思い出した。

 

|()()()()()()()()

 

紗夜に近づく。リサが止めに入ろうとしたが、紗夜は静かに首を振った。

 

(あの制服……。そういうこと……。)

 

「いえ、大丈夫です。だいたい、状況が読めました。」

 

「あ? 状況が読めただと? 色々言いたいことがあるが、まずは詫びを入れろ。」

 

「……。申し訳ありませんが、私は明星ではありません。姉の………。」

 

「うっせぇ! つくならもっとマシな嘘つけ! 明星じゃねぇならお前は誰だ?! まさか氷川日菜とかいうなよな? 彼女なら今は事務所にいるぜ。 それくらいのツテは残ってる。」

 

「………いえ、だから、私は!」

 

「うるさい!うるさい!うるさい! どうせ!お前らRoseliaの活動にオレらが邪魔だったんだろ! だから嘘ついてまで隠したんだ!そうに決まってる! もう、2度とオレらの前に姿を見せるな!2度と屋上にも来るな! 良いな!」

 

そう言い切ると、咲は部屋から飛び出して行った。

腕を掴もうと紗夜は手を伸ばしたが届かなかった。慌てて追いかけ部屋の外に出たが既に居なくなっています。

部屋になんだ微妙な空気が流れる中、友希那が口を開いた。

 

「紗夜、彼女は知り合いなの?」

 

「いえ、知らない方です。おそらく、妹の知り合いでしょう。私と間違えたようです。」

 

「妹? それって日菜の?」

 

リサの返しに紗夜はかぶりを振る。

 

「いえ、もう1人、いるんです。」

 

そう言いながら、紗夜はどうしたものかと頭を悩ませた。

なにが原因なのか分からないが、かなり大きな誤解を与えてしまった。それも、人間関係が一瞬で崩壊してしまうレベルのもののようだ。

 

「………もう1人? 紗夜さんって3姉妹だったんですか?」

 

あこのそこ声に燐子も首を傾げた。

 

「わ、わたしも、ずっと2人だと思っていました。」

 

「そうですか? 確かに、あまり個人的な話はしてませんが……。」

 

いいのか悪いのか、Roseliaではあまり個人的な話をしない。音楽を極めるために集まったバンドなのだ。

 

「………すいませんが今日はもう帰らせて貰いますね。 明星、妹に今のことを話さないといけませんので……。」

 

「ええ、構わないわ。今のことが気になって練習にならないでしょう?」

 

「ありがとうございます。」

 

そう言って紗夜はCiRCLEを後にした。

 

(けれど、さっきの子、バンドとか言ってわね。明星もバンドはじめたのかしら? )

 

そう考えると、ふと、明星について何も知らない事に気がついた。

ずっと一緒に暮らしてきたのに苦手な日菜以上に何も分からない。その事実に紗夜はようやく気がつき、怖くなった。

 




明星の好きなものは、ジャンクフード、ガム・キャンディですが、特に順序は無いです。満遍なく好きです。


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