この橋渡る者無きこと長し   作:塵紙驀地

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羽ばたくに値する鳥

「私の夢です。ようこそ明晰夢へ」

 

 眠る前から、心臓がばくばくと鳴っていた。緊張で眠れるか心配していたけど、夢世界に入れたらしい。目の前の獏のお陰だろう。

 そう。夢のどこかに包丁があるはずだ。……あった。さとりが持っている。さとりも上手く夢に入れたらしい。

 ……まさか私の家に、手がかりになるかもしれないものがあるとは、思ってもいなかった。幸運ね。思えば、こいしが私の記憶を弄ろうとしてきた時、私は頭が上手く回っていなかった気がする。だから暗示をかけられたのかもしれない。だけれども、頭が上手く回っていなかったからこそ、この包丁のことを都合よく忘れていたのだと思う。その時にこいしに向かって包丁のことを言っていれば、必ず回収されていただろう。

 

「それらしきものを持ってきたわ」

 

「おお。……その者に纏わるものだと良いですねえ。こればっかりは、私にも分かりませんから」

 

「そうね」

 

 こいしが戻ってこなければ、さとりの笑顔が消える。これは間違いないと思う。こいしを連れ戻すためだけではない。さとりを助けるためにも、今、これに賭けるしかない。

 

「距離的にも、精神的にも随分と夢の位置が近かったのですが……。お陰で、夢を繋げることが非常に楽でしたけど」

 

「私とパルスィは隣で寝ていたからでしょう。パルスィもこいしを大切に思ってくれているから、気持ちは同じです」

 

 さとり、獏に対して妙に当たりが強い。……何か彼女に気に入らない所でもあるのかしら。何かされた?

 

「……そうですか。夢を繋げるのは、今回が最後です。できればしたくないのですが……。夢を繋げると、それが誰の夢か分からなくなってしまう。化け物を生み出すかもしれません。私は夢に関しては別格ですから、そんなこと起こりませんが」

 

「何よそれ。獏だからってこと?」

 

 ……世界の覇者。羨ましいわ。その能力や権威は別にそこまで欲しくないけれども、能力や権威自体は妬ましい。

 

「少し違います。私が長いこと夢で暮らし、慣れたからです。お二人も夢で暮らせばできるようになるかもしれませんよ? ……これはどうでもいいことでしたね。ここからが話の腰とも言える所。お二人はもう夢を見ていないことになっています。あなた方の夢は私が食べてしまいました。無意識の空間を泳ぎ、私の夢に着いた状況と考えてください。ここは、私の夢です」

 

「こいしはどこに? こいしが消えてしまう前に、早く。あの子、家出するとまで言い出したの」

 

 さとりは大分焦っているわね。気持ちは分かるけど。さとりには落ち着いていてほしい。……地底であれだけ苦労しているのに、こちらでも苦労するのね。

 

「でもパルスィ、焦らないなんて無理な話」

 

 ……それもそうか。確かに私も少し焦っているかもしれない。さとりが焦らずにいられるなんて、無理な話。

 

「……話は最後まで聞いてください。もしこいしが夢の中にいたのなら、何もなくても、追えることは追えます。捜索できる範囲は狭いですが。それと、捕まえられるとは思わないでください」

 

「そんな……」

 

 さとりのその表情は見ているこっちまで辛くなる。その顔をするなと私は絶対に言えるはずがない。さとりの、こいしへの思いとその表れの数々を知っているから。……手を貸したい。こんな手でもいいなら。身分の違う、卑しい妖怪の手だけど。

 

「もしこの包丁が彼女に深く関わっているのなら、そして、貴方の妹が夢に居たのなら。九割方こいしを見つけられる。そして、その夢を乗っ取って、私はこの包丁をこいしに刺す」

 

「……他の方法はないの?」

 

 さとりに同意ね。いくらなんでもこいしに刃を突き立てて良い訳がない。

 

「ああ睨まないで。私の見立てなら、こいしは死にません。……多分」

 

 多分とか……それは良くない。さとりの顔を見たら分かる。

 

「……本性を現し――」

「というのも、この包丁は概念体でして。これがこいしに関係あるものなら、見事にこいしに刺さる。……体にではありません。こいしという存在の中心に刺さります」

 

「……信じていいのですか」

 

「これは、貴方の妹が生身で夢の世界に入ってきていようが当てはまります。……生身で夢世界に入る者がいるなど信じがたいことですがね。今後は二度と無いでしょう」

 

 駄目だ。さとりはそれで分かるのだろうけど、私にはさっぱりだ。さとりが羨ましい。……まあ私がそれ口に出す必要はないか。さとりが分かればいいのだか――

「パルスィにも分かるように話していただける?」

 

「ほう? ……いいですとも。橋姫もなかなか気持ちを読み取るのがお下手なようで。貴方の今日の勘は当てにならなさそうですね」

 

 何が駄目なのか。

 

「一緒に探すって決めたでしょう」

 

 さとり、もしかして……、心細かったり?

 

「違いますよ」

 

 ……外した。最近はさとりの気持ちも理解してあげられていると思っていたのに。少しばかり……思い上がっていたかもしれない。……私にできることは、できるだけ心も体も寄り添ってあげることだけなのだろうか。

「それでいいの。貴方だけがこいしを知らないとか、許せないから」

 

 私の思っているよりも、さとりは私を親友だと思ってくれていたらしい。……さとりの手、ちょっぴり冷たいわ。

 

「良いですね? こいしは生身か精神か、どちらかの状態で夢にいる。……かもしれません。夢の中にいると仮定しましょう。そして、私の感覚だと、こいしは生身でしょう。その一方で、本物の包丁は、寝ているあなた方の枕元にあります。これは、その包丁の概念……包丁の精神と言っても良いでしょう。これは付喪神とやらになるかもしれませんね。こいしが包丁を長く使っていたのなら、この包丁の精神はこいしの精神と親和性が高い。……といいですね」

 

 この説明、何か昔から知っているような気がする。概念に概念を打ち付けて影響を及ぼす。……私がよくやっていたことではないのか。

 

「ああ、分かったわ。丑の刻参りと一緒ね!」

 

「貴方の夢に何度か出てきましたね。……そもそも夢でなぜそんなことしているのですか。まあ、大体それでいいです。こいしに本当に包丁が刺さる訳ではないのです。方法として、こいしが訪れている夢を乗っ取り、その夢の持ち主を追い払って私の夢にします」

 

「どうやって?」

 

「夢の中で、そいつを殺します。夢の中で死ぬと、すぐに起きてしまうでしょう? あれは夢を維持できないから。追い払う理由としては、夢の主にわざわざ姉妹喧嘩を――」

「違う」

 

「……失礼。他所の家庭内の話などというものは、他人に見せるものでもないですから」

 

「ああ、なら私はこいしが見つかり次第抜け出て――」

「駄目」

 

「え?」

 

「勝手に抜けるなんて、そうは問屋が卸しませんよ」

 

 ……さとりの雰囲気がいつもと違う。こいしを見つけるまでは一緒に探すと約束したけど、その後も?

 

「こいしと話したことは、貴方もあるでしょう。随分と楽しそうでしたね。……楽しそうでしたっけ」

 

 寝る前に押しかけてきたり、都合を無視して話してきたり、迷惑しか受けた思い出は……。あ、一度助けてもらったような。

 

「迷惑をかけたこと、こいしに謝らせなきゃ……。とにかく、勝手に帰しませんよ」

 

「……はあ。いいですか? その包丁を貸してください。運が良ければ、一度でこいしを見つけられます。もしそれが何でもないものなら、どうにもなりません。次の代物を探すか、ひとりでに帰ってくるのを待つか。ふむ、さっさとこいしとやらに土下座させたい……冗談です。怒らないで」

 

 人の物の気質を嗅いでその人の居場所を探す……。獏って犬みたいね。いつも帽子を被っているようだけど、その下には、耳があったりするのかもしれない。

 今ならさとりの心を読める気がする。顔は相変わらず綺麗。眉がハの字になっていなければもっと良い。これは心ではないわね。どうしても、私に心は読めない。……ただ、気持ちは分かる気がする。

 

「大丈夫。私も見つかるまで一緒に探す。例えその包丁ががらくたでもね」

 

「乗りかかった船です。私もそれなりに手助けしてあげましょう。……目的こそ違いますが。心の準備ができたら渡してください」

 

「……お願い」

 

「確かに受けとっ――! ……ふふふ。お二方。期待しても構いませんよ?」

 

 獏の夢から……変わる。景色が変わる。紫のあれみたいね。……何と言ったかしら。出てこないわ。

 

「星空……? 月?」

 

「宇宙です。どうでも良い。それよりもあれ。よく見てください。あの球体。随分と小さいですが、あれも夢。とても安定した物です。この包丁がこいしのものなら、あの夢の中にこいしがいるはずです。どこかで拾ってきていたなら、包丁をどこかで落とした、元の持ち主がいます。まあ二分の一といった所」

 

 期待させておいてそれか。二分の一。確かに二つ関門を突破していると考えたら、幸運かもしれない。一つは、こいしが夢世界にいたこと。もう一つは、包丁は使い捨てられたものではなく、こいしのものならこいしに刺さるということ……! 五里に跨がる霧の中でこいしを探すよりはずっと可能性は高い。

 

「いいですね? 行きますよ?」

 

「パルスィ」

「いつでもいいわ」

 

「よろしいようですね。獏に歯向かったらどうなるか、理解させてやり……貴方の妹を別に殺したりしませんから」

 

 ……なんだろう、なんだか上手く決まらないわね。格好をつけようとしていることが余計に滑稽に見える。

 

「……もういいです。ああ! 夢が崩れかけている! 行きますよ!」

 

 獏に少しだけ遅れて、夢に飛び込めば――危なっ! 赤い瓦礫が降ってきたわ。しかも、草は枯れているような色で……形もおかしい。で、羽の生えた少女。何か刺さっていたし、夢の乗っ取りは成功と見ていいのね? 

 

「こいし!」

 

 ……二分の一の賭けに勝った。こいしは目の前にいる。随分と困惑しているようだ。もし私がこいしなら、私だってそうなると思う。

 

「お姉ちゃん!? 嘘、動けない……包丁が抜けない?」

 

「その包丁にある思い出が貴方を縛っているわけで、もう動くことは叶わない。年貢の納め時よ!」

 

 思い出を用いれば、こいしでさえ縛れるのね……。さとりはこいしの手を固く握りに行った。概念体? とやらの包丁だけだと覚束ないけれど、握っているなら大丈夫か。

 

「どうでした橋姫。私、決まってました?」

 

「んー……。流石は夢世界の主ね。妬ましいわ」

 

「んふふ……。我ながら素晴らしいですよ。私……。決め台詞から、華麗なる夢の乗っ取り。決め台詞の言葉遣いが、少しおかしくなってしまっていたかも……、次はそうですね――」

 

 にやけ面の獏は放っておこう。それよりもあっちだ。二人は何を話しているのか。

 

「……パルスィまでいるの?」

 

「あら、家族水入らずの所に悪かったわね」

 

「違うの。……記憶、隠したはずなのに」

 

「貴方のことを一度忘れてしまったことは確かね。さとりに感謝よ」

 

 この手の呪いを、呪いを始めてすぐの初心者にかけられるとは……。才能の差を感じさせられる。妖怪だから、どちらかと言えば妖怪としての差か? どちらにせよ、嫉妬してしまう。

 

「私が思い出させたのよ。貴方のことを心配してくれたパルスィに酷いことしたのね」

 

「だって、みんなの記憶を隠さないと、家出に気付かれるし。……お姉ちゃん、家出しちゃ、だめ?」

 

 さとりがこいしの家出を許すはずがないだろう。こいしの家出とは、出家の方に近い。世を捨てるとともに、さとり妖怪である己を捨てようとしたのかしら。

 

「私のわがままを聞いて。こいしがどこに居てもいい。だから、……地霊殿で待っているから、必ず帰ってきて。家出は、止めて」

 

「ああ、失敗か。……おかしいなぁ。私。お姉ちゃんにもおまじないをかけないと家出に失敗するって、分かってたのに。矛盾してたのは私だった。どうしてだろ。どうして、家出するなんて紙を、お姉ちゃんの机の上に置いたんだろう」

 

 おまじないというより、呪いではないのかしら? うん。私が言うのだから間違いないわ。

 

「……どうして、家出なんかするって言うの。嫌なところがあったら、私はなんでも直すから」

 

 さとりが嫌なわけではないと思うのだけど。こいしが挨拶した次に言うことはお姉ちゃんはね、なのに。さとりの予想は大外れだろう。こいしも困惑しているようにみえる。

 

「ええ……? 違うよ」

 

「少しだけ安心した。……だったら、どうして?」

 

「愛探し。幸せ探し。ついでに、友達も。私ね、地底で羨ましい、とか、怒った! とかいろいろ知ったの。楽しいは知ってた。嬉しい、も。……お姉ちゃん。愛って、何? 幸せって、何なの? お姉ちゃんは持ってるのに、私は持ってないの。お姉ちゃんが羨ましい。地底にも無さそうだから、家出しようかなって」

 

「私は、こいしを愛してるのよ……」

 

「でもお姉ちゃん。私にも分かるように教えてよ。お姉ちゃんの愛は分からないし、私からお姉ちゃんへの愛はないかもしれないじゃん」

 

「そんな……」

 

 あれはさとりがかわいそうだ。あれだけ尽くしているのは、ひとえにさとりの愛だろうに。

 愛は嫉妬の大元。嫉妬とは、手の届かないものに執着して、結局成し得なかった者だけができるもの。……私だって、昔は嫉妬ばかりしていたわけではなかったのに。……過去を羨むのもまた嫉妬。私は嫉妬をせずにはいられない妖怪。嫉妬は後ろ向きなのよ。何も捨てきれない。それなのに、手の届かないものに手を伸ばすことすらしない。高嶺の花を掴みとる努力もしない。何も変えることはできない。あれだけ愛に近かった感情を、暗く、醜く、裏返したものが嫉妬。私は、何でも無条件で妬ましくなってしまう。

 私にはこいしが眩しくてならない。前に進もうとしているのだから。でも、彼女が前に進むには、『足手まとい』が多すぎた。ああ、こいしは後ろを振り向かざるを得なかったのよ。哀れな小鳥は足に鎖が巻かれていることを勘付いてはいたが、知ってはいなかった。本当に鎖が巻かれているか。地べたを這いずり回るのを止め、一度飛んでみれば、嫌でも分からされる。

 

「納得してもらえるか分からないのだけど……貴方は、実は家出なんてしたくなかった、と思うのよ」

 

「なんで……? 私は家出をしようとしたのに」

 

「貴方は、さとりが羨ましかったのよね」

 

「そう」

 

「それで、貴方はさとりを捨てきれなかったのよ。結局、さとりが持つ、こいしの記憶を消せなかった」

 

「やっぱり、捨てた方が良かった?」

 

 こいしって、物への執着が薄いように思えるけど、目に見えない『もの』に対してもそうなのかしら。

 

「こいし、私を捨て、捨てな……」

 

 ……さとりが本当にかわいそうになってきた。

 

「そうね。本当に愛を探すならば、姉との間に愛がないならば、とっととさとりの記憶は消すべきだったのよ」

 

「ねえ、パルスィ……? こいし? そんなこと……しないよね?」

 

「そう、私はお姉ちゃんの記憶を隠すべきだった。でも、できなかった。ああ」

 

 さとりにそんなに涙目になられたら、こっちが悪人みたいになってやりにくい。さとりはちょっと私の心を読んで、先を知っておいたら? ここまで切羽詰まっていたら、他のことに気が回らないのも仕方ないか。

 

「愛を探すという自分の目的よりも、取っておきたかったもの。愛を探すときに捨てきれなかった、さとりとの思い出。貴方の、さとりへの言い表しがたい感情こそ、愛ではないかしら?」

 

「……なーんか騙されているような気がするわ」

 

「愛は、しがらみなのよ。また、執着そのものなのよ。そのためには、己が我慢しようが構わない。貴方はさとりのために、家出を断念せざるを得なかったのよ」

 

 私には、これ以上話すことは難しい。実際にこいしは、家出を実行しようとした。断念せざるを得なかった、と良く言えたものだ。私はこいしの気持ちは分からない。されど、ある程度の自信はある。こいしは、さとりにまじないをかけられなかった時点で、家出を既に諦めていた。……外れていたら、赤っ恥だけど。

 

「……よく分からない。でも、わかった。私は妥協する。私はお姉ちゃんを愛してる。大好きって感情も、愛かなぁ」

 

「こいしっ!」

 

 ……家族って妬ましいわ。

 

「でもお姉ちゃんが私を愛してるとは限らない」

 

「こいしっ! ……ここに私がいることで、愛の証明にならない?」

 

「ちょっとまって、自分で考えるから。……………………そうだね、お姉ちゃん。パルスィの言ってることが正しいなら、お姉ちゃんは私のためにいろいろしてくれてたよね。私、家出しない」

 

「本当!? ……こいし。また、暮らそう?」

 

 あ、あー……。他人の夢で抱き合っちゃって。ここ、もともと他人の夢だし、今でも獏の夢なのに。はあ……。さとりの一番の理解者はこいしだし、こいしの一番の理解者はさとりだったわね。……私だって誰かの一番になってみたいものね。あーあ。さとりが帰ったら、どこかへ勇儀と遊びに行こうかしら。愚痴を言い合うのも悪くない。

 

「私ね、お姉ちゃんに探しに来てもらいたかったみたい。迷惑かけて、ごめんなさい。愛の探しかた、間違ってたかも。……パルスィも、ありがとね。いい夢、見られたかも。怒ってないし、多分幸せかな」

 

 となると、私は赤っ恥だ。こいしは無意識の内に、さとりに探してほしいと願ったのかもしれない。こいしは家出したいと思ったが、こいしに家出するつもりはさらさらなかったか。……なんとも難しい話ね。

 

「幸せなら、私に構わずに好きに暮らしなさい。嫉妬癖が移るわよ。前向きに生きなさい」

 

「姉妹二人で幸せな所失礼しますが、そもそもこれは夢ですよ。……貴方がこんなことしなければ、私がここまでする必要はなかったのに、……やってくれましたね」

 

 ドレミー、よくもあの仲に突っ込んでいったわね。その豪胆、他のことに生かした方がいいと思うのだけど。

 獏も面子がどうの……とか言っていたわね。こいしが悪いから、私からは何も言えない。

 

「む……。私が代わりになるから、こいしには何もしないで」

 

「なら良い機会です。月と幻想郷が戦争になった時、地霊殿は幻想郷に与することはなきよう頼みますよ。幻想郷と与すれば、月に勝てるとは思わないでくださいね。理由は、単純に面倒だから。……私も、もう少し悪どければ良かったのに」

 

 獏が捻り出せたのは未来の確約か。鬼相手でも無ければ、何の縛りにもならない。実質お咎めなしのようなもの。さとり相手だから手加減でもしているのか、あるいはお人好しか。……強いことは確かね。妬ましい。

 

「……ありがとうございます」

 

 さとりの返事が少し変だけど、心の中で何かやり取りをしたのかしら。二人とも位の高い妖怪。私程度には聞かせられない話だってあるのかもしれない。そっちが本当の約束かしら。

 

「あとは、夢で暴れたら怒りますよ。二回目など、ありません。……さっさと帰ってください」

 

 何はともあれ、さとりも、こいしも山場は越えた気がする。これからも、ずっと幸せでいてくれたらいいけど。

 

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