ヤンデレが怖いので炎帝ノ国に入って弓兵やってます。 作:装甲大義相州吾郎入道正宗
防振り二期の年内放送が絶望的なので、オリ展開を挟まざるを得ないこの頃。
あとアーチャー君はFGOを知らないです。
【小聖杯】
効果:
ゲーム内の1日1回のみ使用可能。
使用時に5分間だけMPが∞。
一定回数使用後にスキル【反転化】を強制習得。
「厄ネタにすぎるな…これはストレージに封印しておこう…」
時は遡り、大空洞での戦闘終了後。
報酬の分配時に確認したところ、この黄金の輝きを放つ聖杯と、クリスタルの見た目をした卵をミィとミザリーは認識出来ず、嫌な予感がしつつもアーチャーが入手する他なかった。
代わりと言ってはなんだが、彼は銀のメダル20枚全てを炎帝ノ国に譲ってその場を後にしている。
…正確に話すなら、手持ちすら含めて全部渡そうとしてくるミィの気遣いというか重さに引いて、逃げるように脱出したのが真実である。
そしてそれは心底正解だったと回想するアーチャー。
「ーーー快楽のアルターエゴ・メルトリリス。心底イヤだけど貴方と契約してあげる。光栄に思いなさい?」
あの後、メダル集めを再開する暇もなく、早々に卵から孵った『自称ペット』様は見た目も性格も全く同じどころか、先程戦った本人そのものであり、口上を述べた後はナメクジに叩きつけられた事をそれはもうご立腹で問い詰めてきた。
あわや再度の激戦かと思いきや、彼女からアーチャーへの攻撃は全て無効化されているようで、どれだけ刺されても斬られてもHPに一切減少は見られない。どうやら本当にペットとしてゲームに認識されているらしいと一息をつく。
彼女曰く、今の自分は完全に本体から切り離されたスタンドアローンの状態で、能力低下が著しく【クライムバレエ】を始めとしたチートスキルも使用不能だという。
…まさか本当に現実世界にアレが存在していると思えないアーチャーは、そういう設定なんだと思い込む事にした。
そして予想もしなかったのは、全3回まで強制命令が可能となるスキル【令呪】が、いつのまにか習得済みになっており、左手の甲に文様が刻まれていた件だ。
無論、生粋の女王様気質である彼女に、まさしくサーヴァントになれという状況を素直に受け入れているはずもなく、どちらが主従か明確に決めるまで動かないと主張され、時間ばかりが過ぎ去っていく。
しかし、ふとしたきっかけでペットの契約アイテムが『絆の架け橋』という指輪のアクセサリーだと判明すると、途端に上機嫌になってアーチャーに嵌めさせる。
無論、本来それはプレイヤー側の装備であり、間違っても左手の薬指にはめる物でも無いのだが、先程までの剣幕は何処へやら、月明かりに照らしては何度も確認してうっとりする姿に文句を告げる気もなくなって苦笑してしまう。
どうにもアーチャーには人が嬉しそうにしているとそこで満足して許してしまう悪癖があり、今回もそれが如実に現れる形となった。
それを偶然…偶然? 見咎めたのは通称『6日目の悪夢』として名を馳せる事になるサリー。
この時のアーチャーはフレデリカとの夕食時に変装アクセサリーを外して食事をして以来、怒涛の展開で再装備するのを忘れてしまい、素顔を晒していたのだ。
肌や髪の色を変えてはいるがバレない保証はどこにも無く、咄嗟に板についてきたロールプレイで他人のフリを決め込むが、メイプル並みの嗅覚が無いにも関わらず、彼女は最初から疑って掛かり質問攻めに合わそうとしていた。
しかも彼女の肩に乗る狐のペットが「この女の敵め」みたいな強い視線を浴びせて圧が強い。
焦るアーチャーと、問い詰めるサリー。
そこで面白くないのは当然、置いてけぼりにされた彼のペット様であるメルトリリスだ。
本質が人間嫌いかつ、またもや現れた恋敵と思わしき相手に彼女が容赦する筈もなく、長い袖の下に隠されている指輪をワザワザ見せびらかしながら煽りに煽った。
それに反応したブチ切れサリーはアーチャーが青年と同一人物だと確かめもせずに、交戦状態に突入。
もう勘弁してくれと思いつつも、戦闘能力が未知数のメルトリリスを戦わせるのは危険と判断。彼女を抱えて逃げる事に。
毎度お世話になっているスキル【仕切り直し】の効果でスタートダッシュを決めるアーチャー。しかし脚のヒールを避ける為にお姫様だっこをしたのが運の尽きだった。
「なに、してるのよぉぉぉぉ!【超加速】!!」
鬼気迫る顔で追い縋るサリーに何処までも追跡され、息をつく暇もない。
更に腕の中にいるメルトリリスからは、状況も考えずにサリーとの関係を尋問されるという二重苦に晒されて3時間が経過。性も根も尽き果てて、遂に全てをゲロってしまうアーチャー。
「そうね、そうだわそうだったわ。どこまでいってもドン・ファンだったわ、ね!」
と、ダメージは入らないが棘付きの膝蹴りを顔面にお見舞いしバランスを崩した所へ、一切の動揺も見せず超反応したサリーは短剣二本による刺殺を躊躇なく実行した。
一気に減少するHPゲージ。耐久値が低い彼に抗う術は見当たらず、0になるまでの短い時間で何とか振り返る。その時、視界の端で見せたサリーの表情は。
衝動的とはいえ愛する者を自ら葬った過ちに悲観し、信じられないように両の手を震えさせる。
しかしそれでも、己の手で散ったという事実に『歓喜』を隠せず、蕩けそうに歪む頬を必死に抑えても三日月の笑みは消えない。
ゲームの中だからこそ知ってしまった禁断の味。
長く、長く熟成された芳醇な香りは、いとも容易く理性のコルクを抜き去って赤い美酒を彼女に届ける。
それは原初の娯楽にして、罪深き禁忌の感情。
ーーー愉悦だった。
その吐息が届く前にデジタルエフェクトになって消え去るアーチャー。
つまり彼はサリーによるPK(プレイヤーキル)で文字通り死亡。
第2回イベントはリタイアという結果に終わった。
こうした多大な苦労の割に第一回、第2回共にイベントの公式記録が0のアーチャーは肩を落とすばかり。
次こそはと意気込むものの、告知された第3回イベントは『ギルド対抗戦』。自ら団体を立ち上げるか、加入しなければ参加すら出来ない。
学校での相談も無駄に終わって、しかも手首を痛めた彼は気を取り直すと、第2層にある石の街で掲示板のギルドメンバー募集の張り紙を探していた。
「ねぇ『アナタ』。鶏みたいな頭に何度も確認するけれど、私達のギルドホームはダンスホールか、劇場が備え付けてあるところ一択よ。そして何より大事なのは、他の団員なんていらないの」
「…それは無理だと言っているだろう」
当然のように密着する近距離で肩を並べるメルトリリス。
「あら不甲斐ない。そこは自分に全部任せろと男の器量を見せる所ではなくて?」
「生憎と不相応な見栄を張って後悔したくないのでね…」
ギルドホームと呼ばれる建物には維持費と呼ばれる資金の投入が不可欠。その金額は大きさに応じた相応の金額であり、先の希望を叶える場合、アーチャー一人ではとても賄い切れない。
メルトリリスの中では家=愛の巣という図式が成り立っているらしく、なかなか意見を引かずに食い付いてくる。
傍目に見れば新居を選ぶ新婚夫婦にも見える光景。
そしてその様子をネットの掲示板に書き込む誰かのプレイヤー。今日も彼のヘイトは高まり、アンチスレが賑わう事だろう。
「なら、『アナタ』の為なら何でもする熱狂的ファンとかいないの? …ああ待って、居ても困るからこの話は無しよ。どうせ女だろうし」
「勝手に期待して、勝手に失望しないでくれ…。それとさっきからアナタの発音がおかしくないかね? まるで夫婦の…」
「ーーーでもそうね。我ながら良い案かもしれないわ」
「なに?」
まさかの提案に驚く。
「この前の炎帝とか言う赤い女の所なら所属してもいいわよ。そこなら何とかギリギリ、えぇ薄氷一枚分の僅差で我慢してあげる」
「どういう風の吹き回しだ? 確かに炎帝ノ国のギルドホームは劇場がモチーフらしいが…」
その情報はイベント以降、伝令として現れた団員Bから直接伝えられたものだった。
基本的にネット検索や掲示板を利用せず、VRMMOも今回が始めてのアーチャーは情報に疎く、最近までチャット機能にすら気づいていなかった。
故に教えられた時は履歴に残る『ミィ999+』に驚き、その内容のほとんどが「会いたい」「今どこ」「連絡して」「私のこと嫌い?」で占められる事態に2度めの驚きを隠せなかった裏話がある。
そしていざ活用しようとしても、最近のバグの影響でチャット機能が使用不能になっているらしく。それならばとミィは世間話程度の話題を持たせて走らせたらしい。
…つまり完全に雑用なのだが、大空洞であれだけの目にあってもミィに忠誠を誓う団員Bの目は純真なままで、アーチャーにはあまりにも眩しく映った。
「炎帝ノ国のギルドホームの名前はたしか……」
「
「? まぁ元々顔見せくらいはと思っていたからな。訪ねてみるか。…喧嘩はするなよ?」
一瞬見せたメルトリリスの真剣な表情に後髪を引かれるが、2人は並んで目的地を目指すのだった。
「あぁ遅かったじゃないか! この席が君の居場所だよ、副団長として存分に寛いでくれ。ーーー大丈夫、炎帝ノ国全ての力を持って、君を【悪い女】から守ってあげるからね」
尋ねるや否や、その名を表すが如く豪華絢爛な装飾に彩られた黄金劇場の奥へ連れて来られた2人。
支配人室を模した内装は派手な劇場とは裏腹に、メリハリのついたシックな色合いで落ち着いた雰囲気を漂わせている。
そこで待ち受けていたのは団長であるミィの他に、彼女のストッパー兼お目付役として在籍する事にしたミザリーと、アーチャーにとって初見となる2人の男性だった。
ともすれば挨拶が先だろうと、そちらに向き合おうとした所で邪魔が入る。
「あら、悪い女なら私の目の前にもいるけれど。これってもしかしてこのギルドを献上するって遠回しのスポンサー発言なのかしら」
「おや? クルクル回るしか能がない羽虫の音がうるさいな」
「は?」
「は?」
「ーーーーーー」
「ねぇミザリー。この赤い弓兵、僕以上に目が死んでるんだけど大丈夫?」
「えっと…それもそうなのだけど。アーチャーさん、あの子って大空洞のボスですよね?」
「あっはっはっ! 噂の『弓兵』に元『ボス』かぁ!これまた濃いメンツが入ったなー」
予想通り、火花を散らすミィとメルトリリス。
ミザリーの疑問は当然なのだが、正確に答えられる訳でもなく適当に自分同様、元ネタゲームのロールプレイをしているとお茶を濁す。
言い争いは激化しているが、これでもメルトリリスは交渉に来た目的を忘れていないようで口論の間に、様々な要求や対価を持ち出している。
万が一の仲裁をミザリーに任せると、アーチャーは初対面の2人と話を進める事にした。
「…すまないが、このギルドに入るとは発言していないし、副団長という肩書きすら初耳だぞ」
「あれ、そうなの?」
「ウチの炎帝様は毎日1回は必ず弓兵は幹部にするって言ってたからなー。てっきり同意して来たと思ってたが、まぁ気にすんなよ!」
「気にするに決まっているだろう…。それと名前を教えて貰って良いかね?」
アーチャーの発言にミィとメルトリリスの雰囲気に当てられて自己紹介すらしていなかったのを思い出した男性陣の中で、まずは小柄な方の少年が声を出した。
「あぁごめんね。僕の名前はマルクス。設置魔法ぐらいしか取り柄が無い魔法使いだよ」
モノクロのフードとマスクで素顔を隠した彼は聞けば第1回イベントで10位以内に入った猛者らしく、謙遜しているが『トラッパー』という二つ名で知られる腕利きらしい。
「次は俺、『崩剣』のシンだ! よろしくな副団長!」
悪戯好きな笑いを浮かべるのは見るからに快活なイメージを持つ青年。彼も10位内の実力者で専用武器とそれに対応したスキル持ちでかなりの手練れだと紹介された。
「副団長は御免被るが…私はアーチャー。ただの弓使いだ。お手柔らかに頼む」
久しぶりの男同士の会話もあって話が弾む3人。
ややダウナーな所があるマルクスもアーチャーのフォローでうまく溶け込めている。
「へぇ、鍛治のスキルも取ってんだな」
「本職には劣るが、保全や修理程度ならば任せたまえ。中でも剣には拘りがあってね勉強させてもらう」
「見た事も聞いた事も無いスキルも沢山あるね…。僕だったら習得条件が厳しくて取れる気がしないけど…」
そう言われて第2回イベントも含めて今まで習得したレアらしきスキルを思い返すアーチャー。
【真祖殺し】
効果:
ボスモンスターに対して与ダメージが5%UP。
習得条件:
特定の条件を持つボスモンスターを単独で撃破する。
【アラヤ】
効果:
戦闘状態に移行した場合、時間経過で全ステータスが少しずつ上昇。
(最大値+?)
パーティメンバーが多いほど上昇までの時間が短縮される。
習得条件:
正義の味方・守護者・鉄心を習得する。
【心眼・真】
効果:
斬り払い、受け流し等防御系スキルのクールタイムを短縮する。
習得条件:
スキル使用無しで攻撃を軽減した回数が規定値を超える。
【鷹の目】
効果:
一定時間、目標物へのマーキング及び命中率に+補正。
習得条件:
スキル無しで隠しアイテムを規定数、発見する。
「言うほど難しくねぇんじゃねえの? てか俺ちょっと【心眼・真】取ってくるわ!」
「え。ちょっとシン!?」
「何というか…彼も濃いな」
「一応、言っておくけど僕は普通だからね…」
自らの情報をある程度隠して公開したアーチャーの言葉を聞くや否や、支配人室から飛び出していくシンとそれを見送る男2人。
マルクスはシンの様子から伝達事項を思い出したようで、最近の炎帝ノ国における方針を話し始めた。
ミィの指示はとにかく戦力増強に努める事。
その為に様々な方法で各方面にアプローチしているらしい。
例えば先程のように単独の性能強化を目的としたレベリングやスキルの習得をノルマ化。
武器や防具もお抱えの職人に頼むだけで無く、自由競争で品質を高める。
更にはまだ見ぬ優秀な人材を求めて野良のスカウトや、団員募集も幅広く行う。
「次は簡単な牛イベだろうに、随分と早急な話だな」
「牛イベ…? あぁ第3回イベントの事ね。うん、戦力の件はその次のイベントを見越してるらしいよ」
「ふむ…。ならばまだ余裕はあるか…」
「何か予定でもあるの?」
「野暮用がな。…メルトリリスは終わったかね」
ワザと視界に入れないようにしていた先では、ギルド内の設備が破壊不可属性でなければ消し炭になっていたであろう惨状が広がっていた。
書棚の本は全て灰になるまで焼き焦がされ、豪奢な刺繍が入っていた絨毯はズタズタに切り刻まれて見る影もない。
そして肩で息をするミィに対して、余裕そうな笑みを浮かべるメルトリリス。
「えぇ万事滞り無く。…では炎帝、強くなりたければ私の指示に従いなさい。代わりに無銘…アーチャーを副団長として貸してあげるから」
「ぐぅ…リターンが大きすぎて断れない…!」
「おっと? 本人の了承なく人身売買は辞めたまえ」
「このヘタレ女に襲う勇気は無いから気にしないの。…それと第4回イベントとやらが終了するまで私はここに詰めるから。毎日、薔薇の花束と恋の詩を用意して会いに来る事。いいわね?」
「……詳細を話す気は?」
「無いわね。なに? 指輪を渡したらもう亭主関白気取りなのかしら」
溜息を吐くアーチャーとは対照的に、自分のギルドに加入が決定したミィはとても嬉しそうに笑みを浮かべている。もし正気なら、亭主関白何某でまた暴れていたので一安心だ。
「君に薔薇を贈るなら1本にしておこう…。それと詩は勘弁したまえ、睦言ならば2人きりの時にでも囁こう」
「ふふっ、楽しみにしておくわ」
「ーーーあー、アーチャーにアンチスレが立つ理由が分かった気がするよ僕」
「この人、ロールプレイって言い張ってますけど、たぶんリアル側でも相当な女誑しですわね」
「謂れなき誹謗中傷は聞こえんな。…ミィ、大変だろうが帰ってきたらフォローを約束するよ」
「あぁ…本当に楽しみにしている」
そういってアーチャーは黄金劇場を後にした。
一度、石の街へ戻りマップを開いて行き先を確認する。
空中に浮かぶ平面のパネルをタッチ。周辺地図から街外の一角にある森林地帯を拡大してあらかじめピンを刺しておいた地点の名前を読み取り、呟く。
「ギルド『楓の木』…か。はてさて単なる毛刈り要員で済めばいいのだが…」
その先が魔窟だと分かっていても、第1回イベントの『取引』がある以上、出向かなくてはならない定め。
せめてもと、新たに自作した変装アイテム、仮面を装備して向かうのだった。
R-15版では、手足を切ってダルマにしてからヒールを掛け、長持ちするよう加工されるシーンでしたね。
大丈夫。必然的に依存してくれるので両想い。つまりヤンデレではないです。
展開が雑になってきたので毎日投稿は辞めますね…