ヤンデレが怖いので炎帝ノ国に入って弓兵やってます。   作:装甲大義相州吾郎入道正宗

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たぶん一日空いたので初投稿です。

たぶん内容も健全なお付き合いです。

たぶん気が付いたらいけない奴です。


天然二人とヤンデレの付き纏い行為

大きな切り株を思わせる『楓の木(魔王城)』のギルドホームは、緑豊かな森林の中に上手く調和する木造の建物だった。

窓や扉といった最低限の装飾だけを施し、木材の持つ温かみを存分に表現している見事なデザインだ。

 

実用性はともかく、別荘としてなら確実に抑えておきたいレベルだな…とギルドのドアを叩く前から感心した様子のアーチャー。

こことは真逆の、目が痛いほどに豪奢極まる黄金劇場を後にしたばかりで、余計にそう感じてしまう。

 

しばらく外観だけでも見ていたい気分だが、目的を間違えてはいけないと気を取り直し、ドアを叩く。

チャット機能が全面的に使用不可能になった現在のNWOでは、現代社会でスマホや電話が使えなくなったような不便さが蔓延しており、約束や待ち合わせを取り付けるだけでも一苦労である。

 

今回もメイプルとの『取引』がある為、こうして直接出向いているが本人がいない可能性がある。

最悪、出直しの場合はどこかでレベル上げかスキル取得を目指すか考え始めたところで、ドタドタと激しい割りに遅い足音が聞こえたかと思えば、勢いよくドアが開け放たれた。

 

「お兄ちゃん!」

 

「アーチャーだ。…あ、いや違った今日の私は謎の人物サンタム…」

 

「お兄ちゃん、見て見て! ここがね、ここが私のギルドホームなんだ! すごい? ねぇすごい??」

 

「……語彙が死んでいるぞメイプル」

 

開口一番、『取引』内容の対価としてプレイヤーネーム呼びを依頼したはずだが、速攻で破られてどうしてくれようかと思うアーチャー。

とりあえず、軽すぎる頬をむにぃと掴んでその口を閉じさせた。

 

「ふぁにすりゅの、おにぃひゃん…」

 

「取引内容を破るなら、このまま帰るぞ私は」

 

「! やらぁ!」

 

頬を掴む手を逆に両手でしがみつくようにロックするメイプル。だが悲しいかなSTR0の彼女では力及ばず、良いように嬲られてしまう。

 

2人がイベント時に交わした取引。

その内容は単純で、メイプル側にはアーチャーの正体を誰にも話さない事。アーチャー側は彼女がその秘密を守られる限り定期的にお願いを聞くという子供の約束に近いものだった。

 

ちなみに。本当は1回のお願いで済ませるはずだったがメイプルは定期的、という言質を引き出すまで麻痺の永続ループを繰り返してきたので渋々了承した結果となっている。

 

「じゃあ約束は守れるな?」

 

「ふぁい! がんばりましゅ」

 

「頑張るでは無くて、キチンと守る! はい復唱」

 

「まもりまひゅ!」

 

「よし、良いだろう。お土産に特製のクッキーアソートを持ってきたから、ギルドのみなさんと食べなさい。キッチンがあれば美味しい紅茶も用意しよう」

 

「わぁいやったー!」

 

「ーーーシスコンって罵倒しようと思ったけど貴方メイプルちゃんのお母さんなの?」

 

メイプルとのささやかなスキンシップを交わす内に奥から出てきたのは旧知の仲である女鍛治職人イズだった。

短剣ロストと鍋の件ですっかり疎遠になっていたが、既にギルド内に居た事からメンバーとして参加しているのが見て取れる。

 

「ご挨拶だなイズ嬢。年頃の少女の機嫌を取るならこれくらいするだろう」

 

「いや箱入りクッキー差し出すとか、完全に娘がお世話になってる人へ挨拶に行くシーンじゃない」

 

「………たしかに」

 

「鍋の件もそうだけど貴方って相当天然よね」

 

失礼な、と反論する前にいつのまにか後ろに回ったメイプルにぐいぐい押されてギルドホームの中へと案内される。

室内は外観から想像した通り、木材を中心にした家具が中心に配置されて保養地のログハウスを思わせる設えだ。

 

「雰囲気が良いな。家具もイズ嬢が?」

 

「私は武具関連ばっかね。そういえば最近来なかったけど武器とかちゃんと整備してる? 一応、アンタの師匠ポジションなんだけど」

 

「色々と勝手に記憶が改竄されているが、概ねな。最近はスキル付きの双剣を作ったが破壊してしまって反省しているよ」

 

「……は? スキル付き?」

 

「あぁ、ボスモンスターの素材で製作していたら偶然な。まぁ【投影】というスキルで幾らでも複製品が作れるから問題…どうしたイズ嬢、そんな怖い顔をして」

 

「アンタやっぱあたしの敵だわ」

 

「何故!?」

 

本来の流れならば、プレイヤー側がスキル付きの武具を製作可能になるのはまだ先の話である。

無知なアーチャーは知るよしも無いが、普通であれば例えボスドロップ品でもこんな仕様はあり得ない。

干将・莫耶はまるで()()()()()()()()()()()()ように手に入っていたのだ。

既に砕かれてしまったが、それでも【投影】に登録してある関係で幾らでも呼び出す事が可能。

後にこれを悪用してとんでもない事を思いつくのだが、その話は後述しよう。

 

その後もメイプルは上機嫌にあちこち説明しながらアーチャーの背中からハグも辞めずに密着した電車ごっこか、コバンザメのように張り付いて回る。

 

その様子にミーハーなところがあるイズは「あらあらまぁまぁ」と関係を邪推して口に手を当ててニヤついているが、もう一人いたギルドメンバーはその様子に納得いかないようで、ある程度メイプルが落ち着いた所でアーチャーに話し掛けた。

 

「…はじめましてだな、アーチャー。俺の名前はクロム。大楯使いだ」

 

「むっ、これは失礼した。この子の相手で失念して挨拶が遅れたな」

 

「それは構わない。だけどアンタ、随分とうちの団長と仲が良いんだな。まるで恋人みたいだ」

 

はてなマークを浮かべるメイプルと対照的に、普段温厚な性格をしているクロムには珍しい低い音程と煽るような口ぶり。

イズは何事かと訝しむが、間髪入れずに言葉を続ける。

 

「そういえば似たような関係の女性を何人も引っ掛けているみたいだけど、誰が本命なんだ? 教えてくれよ」

 

「……随分と喧嘩腰だな、クロムとやら」

 

「はっ、知り合いが毒牙に掛けられて冷静でいられるほど落ちぶれちゃいないんでね」

 

クロムは知る人ぞ知るメイプルちゃんを見守るスレの住人であり、第一情報提供者である。

それ故に第1回イベントで彼女と親しげにしていたアーチャーは要観察対象であり、その側から見れば爛れた女性関係を繰り広げている彼の動向を把握し、前々から敵視していた。

 

当の本人であるメイプルからは全く悪評は聞かないどころか、明らかに懐いた様子なのだが、元が天然な性格をしているせいで騙されているのでは? という疑念が常に付き纏い、遂にはアーチャーが新しい少女へ過激なファッションを強要しているとの報告を受け、直接問い質す必要があるとこの時を待っていたのだ。

 

髑髏をモチーフにした血塗れのユニークシリーズを全身に身を装備したクロムの圧迫感は強い。

特に頬当て部分は歯茎が剥き出しになった顎骨のデザインで、暗がりで出会ったら間違いなく幽鬼か死霊騎士に間違えられそうな不気味さを湛えている。

 

だが、普段からそれより恐ろしいものに晒されているアーチャーに一切の動揺は無かった。

 

「誤解、といっても聞き届けて貰えない雰囲気だな。出て行けというなら従おう、あくまで私は部外者だからな」

 

「おいおい逃げるなんて情けない真似すんなよ。男なら一人の女性に決めてキチンと責任を取れって話をしてんだよこっちは」

 

「あぁ、そういう事か…。ならお門違いも甚だしいぞ未熟者、憶測だけで他者を愚弄するなど凡夫の行いだ。気をつけ給え」

 

ヤンデレに付き纏われる気持ちが貴様に分かるか、と卑下の感情をぶつけられたアーチャーが切実な気持ちで返す。

 

「こっちにゃアンタの不純異性交遊の現場を収めたスクショを始めに証拠もたっぷりあるんだ。言い逃れしようとするんじゃねえ!」

 

「男女の機微に口を挟むのも無粋。付き合う段階で相手を一人に絞るのもナンセンス。第一、私は不純な関係など一度も持った事はない。…悪いが君が口を挟む事ではないな」

 

意訳すると、

「ヘタに彼女らに絡むと不幸が訪れるぞ。一人に絞ったら他の子から刺されかねないんだぞ。俺はまだ童貞だ悪いか。…悪い事は言わないから関わり合いにはなるな」

 

アーチャーなりに気遣いのつもりだったのだが、言葉選びを間違いすぎてクロムの怒りを更に買ってしまう。

 

「良い度胸じゃないか…。表に出ろよ。ーーー俺は決してアンタを認めない」

 

「ちょっとクロム! 冷静になって」

 

「止めるなイズ。これは男同士の戦【パラライズシャウト】うがっ!?」

 

「あひんっ!?」

 

「またか!?」

 

クロムが注意すべきだったのは傲岸不敵に見えるアーチャーではなく、その後ろにくっついていたメイプルである。

ギルド長権限でフレンドリーファイアをONにして、クロムはおろかイズとアーチャーも麻痺で床に沈めてしまう。

 

「もうクロムさんってば、お兄ちゃんを悪者にしたら駄目ですよ! 喧嘩両成敗です」

 

「お、俺は君や彼女達の事を思ってだな…」

 

「あばばば…私、完全にとばっちりなんだけ…ど」

 

「………あ、やっと麻痺耐性(小)が取れたな。ハハハ…」

 

「じゃあちょっとお兄ちゃんと探索してきまーす!」

 

痺れて倒れ伏す2人に断りを入れながらも、アーチャーと冒険出来るのがよほど嬉しいのか、そのまま彼を引き摺りながら外へ出て行くメイプル。

 

その様子を見届けざるを得なかったクロムは誤解したまま憤慨し、色々と事情を察しているイズは、ここにサリーが居なくて本当に良かったと安堵する。

 

そして麻痺が自然回復し、ようやく起き上がった際、未だ怒り収まらぬといった様子の彼に改めて質問を飛ばしてみた。

 

「それでクロム、らしくも無い行動ばっかり取るぐらいアーチャーが気に入らないの?」

 

「…オレはただ一般論をだな」

 

「はい嘘ー。なに? お兄さんポジションが取られそうで嫉妬しちゃった?」

 

「なんでさ」

 

普段はそれこそ年上として、ギルドメンバーを始めとした相手に世話を焼く穏やかな性格のクロムがここまで感情を露わにするのは本当に珍しい。

それは彼本人も自覚しているらしく、指摘されて少しは頭が冷えたのかバツが悪そうに身体を竦める。

 

「ただ…なんていうかな。アイツを直接見たらどうしてか、許せないって気持ちばかりが先行して冷静さを欠いちまったのは事実だ」

 

「まぁ相性が悪いって相手はいるしね。…そうよ私もアイツ嫌いだったわ。あはははっ」

 

「そのリアクションでどんな感情を読み取ればいいんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところ変わって石の街。

 

運良く街に入る前に麻痺から解放されたアーチャーは、ニコニコ顔で歩くメイプルの後ろを付き添いながら歩き、質問した。

 

「元の予定はイベント用の羊毛集めではなかったかね?」

 

「えっとね、そっちはさっき終わったんだー。【発毛】ってスキルで自分から生やして切って貰ったの!」

 

「自分から羊になっていくのか…」

 

「お兄ちゃんも取る?」

 

「不要だ。というか呼び方を…はぁ、まあ知り合いが近くに居なければ問題なかろう」

 

何だかんだでメイプルに滅法甘いアーチャーは、度重なる連呼に諦めてアッチヘふらふらコッチにふらふらと、興味の対象を秒単位で変えながら街を練り歩く子供のような彼女の後ろをついて行く。

 

途中、何度かアーチャーが足を止めて後ろを振り返る場面が何度かあったが、特に知り合いがいるわけでもなく、首を捻っていた。

 

やがて、いつも行かない道に行きたいと路地裏に入った所で、とうとう自覚なき天然2人組がやらかそうとしていた。

 

 

 

「ーーーあぁ騎士様! どうか娘を助ける為…私を北西にある退魔の泉へお連れ下さいませ」

 

【クエスト 博愛の騎士 が発生しました】

 

「なんかクエスト始まった?」

 

「ふむ…マップで見るとだいぶ遠いな」

 

どうやら謎の症状で病床にある娘を救うべく、母親と共に行動する内容らしい。目的地まではモンスターの多い平野を突っ切った上で見通しの悪い森林を抜かねばならず、中々の難易度を誇ると思われた。

 

しかし、メイプルは私に任せてと母親を連れて広場に出るとアーチャーも見たことのある指輪を取り出す。

 

「それは…【絆の架け橋】か。メイプルもペットを?」

 

「そう! シロップっていってね可愛い亀さんなの」

 

「亀? それで何をするつもりかね」

 

自信満々のドヤ顔でメイプルは手乗りサイズの亀を召喚したかと思えば、高らかに宣言する。

 

「シロップ! 【巨大化】そして【サイコキネシス】!」

 

「か〜め〜!」

 

「ぬおっ!?」

 

そこに現れたのは10人は楽に触れるであろう大きさまで巨大になった亀のシロップが、フワフワと宙に浮いていた。

するとメイプルは当然のように背中に乗ってアーチャーを手招きし、胡座で座らせるとすっぽりその間に収まり座椅子代わりにして動こうとしない。

そしてそのまま母親も乗せて北西に発進するのだった。

 

「シロップのおかげでね、最近は凄く移動が楽なの」

 

「楽というか、ズルいというか。モンスターに感知すらされない高度で飛べるのは一方的過ぎるな」

 

眼下にはゾンビや狼がプレイヤーを求めてウロウロしているが、こちらに気がつく様子は全く無い。あからさまに巨大な影が空を覆っているにも関わらず、決められたルートをひたすら巡回している。

 

そこで暇になったアーチャーは、ふと思いついたように右手を掲げて詠唱した。

 

「ーーー【投影】、開始(トレース・オン)。干将・莫耶。そして【鷹の目】【投擲】!」

 

陰陽の夫婦剣が出現するや否や、自動追尾と遠投のスキルを組み合わせて下を横切るゾンビへ大雑把に投げつける。

クルクルと回転しながら目標に近づく双剣は、高所からのダメージボーナスと探知範囲外からの奇襲効果で、容易くゾンビを引き裂いて地に落ちる。

 

「おぉ〜、お兄ちゃんがよくやってるえふぴーえすみたい」

 

その様子を感心するように見つめるメイプルだが、アーチャーはまだだとばかりにもう一度、干将・莫耶を【投影】すると同じように投擲。しかしここからが違う。双剣が敵に届く前に手を伸ばし、再び詠唱したのだ。

 

「【投影】、更に【投影】、もう一つおまけに【投影】、開始!」

 

回転する二本の刃が四本に分かたれ、更に六本、八本と増えて放射状に広がると、それぞれが別のモンスターを狙う。

 

最初の四本は敵を貫き、五、六本目は突き刺さって消滅。残る七、八本目はダメージこそ与えたものの、倒すには至らなかった。

 

「ふむ、現状の火力では6体同時が限界。…擬・鶴翼三連、といった所か」

 

メルトリリス戦以降、【投影】が実は魔法と同じ判定で遠距離からでも行使可能と知ったアーチャーは、本来なら近接武器の間に合わせしか使えないこのスキルと【投擲】持ちの干将・莫耶、ホーミング性能を付与する【鷹の目】を組み合わせて、弓無しでの遠距離攻撃を手に入れていた。

 

しかも今回は見晴らしのいい上空から投げつけているので、モンスターがどこにいるか丸分かりである。

 

MP消費コストも投影品を繰り返し使用しているので消費量は低下。更にシロップに座って休憩状態なので自動回復速度も上昇。

そのお陰で道行くモンスターを片っ端から葬り去ってもまだお釣りが来る勢いだ。

 

そうして退魔の泉に辿り着く頃には、進行上に立ち塞がったであろうモンスター全てが切り刻まれて、拾えなかったドロップ品があちこちに散乱する結果となった。

 

「む?」

 

【スキル: 投射 を取得しました】

効果:

投擲の効果を持たない武器を空中から射出する。

獲得条件:

投擲のスキルのみで一定数のモンスターを撃破。

その間、ドロップ品を回収しない。

 

 

 

「あぁ〜もう、シロップで飛ぶのは卑怯よメイプル!」

 

 

 

 

後にこの様子を目撃したプレイヤー達からは『メイプルが爆撃機になった』『無敵空母メイプル』『殺戮するみそボンシステム』と畏怖され、全容が明かされる第四回イベントまで都市伝説として語り継がれる事になる。

 

そして更に

 

【クエスト 博愛の騎士2 が発生しました】

 

「連続クエストか…思ったより時間が掛かるかもしれんな」

 

「えぇと指輪がいるらしいけど…もしかしてこれ?」

 

「身体を強くするならSTR、つまり筋力だろう。こっちの指輪も付けてみるか」

 

【クエスト 博愛の騎士3 が発生しました】

 

「早いな!?」

 

「娘さんも早かったよ!? 追いかけよう!」

 

まさかのクエストアイテムを事前入手していた事で、大幅にイベントをスキップした2人。

 

因みにアーチャーは特に深く考えず、以前ミザリーから受け取った『濃炎の指輪』を試してみたらメイプルの指輪をトリガーに走り出した娘に持ち逃げされてしまうバグが発生。

二度と返却される事はなかった。

 

ミィは泣いていい。

 

続けて超高速で走り去った娘を探して、常闇の神殿と呼ばれる場所へまたもや母親付きで移動する事になった。

 

朽ち果てた内部中央の広間には割れた外壁から光が差し込み、ある程度光量が保たれ、倒れ伏せた娘がポツンと横倒れているのが見える。

普通の親ならその時点で走り寄りそうなものだが、これはゲームの世界と言わんばかりに無反応だ。

 

「ああいう広い場所はボス部屋と決まっているらしいな」

 

「あっ、それサリーも言ってたやつだ。ちゃんと回復とか準備を怠らないようにって」

 

「そうだったな…ではなくて、そういう事で万全を期すとしよう」

 

何やら何度もスキルを使用してはMPポーションで回復して、用意を整えるアーチャー。

その間、やる事がないメイプルは少しうたた寝するように彼の肩に頭の乗せてリラックス状態になっていた。

 

「む、ポーションの数が足りんか…メイプル、すまんが少し貸して」

「私のを使って良いよ」

「助か…!?」

 

突然の相槌に驚いて勢いよく振り返るアーチャーだったが、周囲には呆然と立ち尽くす母親ぐらいしか姿は無い。

気のせいか? と思い再び彼女を起こして作業を再開する。

 

そして改めて広間に突入した一行を待ち受けていたのは取り囲むように現れた死霊系モンスターの群れだった。

普段から大楯によるタンクを任されているメイプルは普段のおっとりさを感じさせない動きで【カバームーブ】【カバー】で瞬時に母親のガードに入る。

 

「ならば私はこいつらを殲滅させて貰おう!」

 

ガードに気を裂く必要が無くなったアーチャーはニヤリと笑い、取得したばかりのスキルを使用する。

 

全【投影】連続【投射】(ソードバレル・フルオープン)………!!!」

 

彼の背後から現れるのは無数の投影剣。アトラス院での反省を活かして死霊系特攻の切り札として用意していた品だ。

 

弓も使わず、剣すら携えず、ただ掌を向けて放つ。

 

剣群は一斉に死霊へと襲い掛かり、 避ける隙間すらない弾幕の厚さで圧倒する。

 

直後に巻き起こったのはもはや形容しがたいレベルの騒音を撒き散らす金属音と、モンスターに突き刺さる鈍い悲鳴だった。

 

死霊系には物理攻撃が通りにくいのは百も承知。

だからこその死霊特攻。そして肝心のバトルは始まってからほんの10秒ほどで終了し、敵反応は消え去る。

 

「わぁい楽勝だー!」

 

「やはり何事も仕込みが重要だな。丁寧に灰汁を取ったスープは見た目も味も良くなる」

 

さぁこれで終わりだろうと、母親と娘の家に帰る2人。

しかし、そこで待ち受けていたのは。

 

 

「む?」

 

「およ?」

 

【身捧ぐ慈愛】 【七つの円環】

 

 

 

2つのエクストラクエストだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




R-15版では、路地裏でエッチなお店を発見した2人がモジモジしていたら頬を染めて恥じらう、サリーに首を刎ねられる修羅場シーンでしたね。

大丈夫。首だけになってもバッグに入れて「中に誰もいませんよ」と言われるくらい愛されているなら、何やかんやでヤンデレではないです。

ここで二話前のサリーの発言を見返そう。無自覚な人って怖いよね…。
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