ヤンデレが怖いので炎帝ノ国に入って弓兵やってます。   作:装甲大義相州吾郎入道正宗

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誤字脱字修正兄貴達すきあいしてる。

前回と今回のお話で勘のいいエドワード兄貴は、世界観と対立構造を推理したかもしれません。

正解者の一名様には、ちょっとした錬金術の応用で犬と一緒になる権利を差し上げます。




第三イベとヤンデレのR-15行為

「なるほどそれで? 狐なんて畜生に負けた情けなさで、今日まで顔すら見せずに落ち込んだ挙句、この私を放置していたと」

 

「…まったくもって申し訳ない。加えてリアル側では試験前でね、君に宣言した約束すら守れなかった。出来る限り埋め合わせをさせて欲しい」

 

黄金劇場内に割り振られた一室、マイルームというべきその空間は他とは一線を画す内装が施されて、元の姿は見る影もない。

 

調度品全てが淡い水色を放つクリスタル製に統一。

白のみで彩られた色調は病的なまでの清潔感を放ち、塵一つ足りとも落ちていない。

ただ、場違いなペンギンのぬいぐるみだけがベッドの上で、こんにちわしている以外、静謐そのものを現わす設えで満たされている。

 

そしてその部屋の主と自称するメルトリリスは不機嫌さを隠そうともせず、お気に入りの水晶椅子に座って、正座させたアーチャーを責め立てた。

 

「対価は勿論、要求します。しかし仮にも私の所有物であるアナタが土を付けられるなんて我慢ならないのよ。ブランドというのはね、常に品格と一定以上の質を示すもの。無様に逃げ帰る前に打てる手は無かったのかしら?」

 

カンッと刃のハイヒールを床に突き立て、威圧する。

姿勢のせいで必然的に見上げる角度から表情を伺うアーチャーは、冷酷な目線で見下し、今にも彼の首を蹴り落とそうな勢いで苛立ちを籠めるメルトリリスに口を開く。

 

「すまないな。君がそんなにも私に会いたいとは思っていなかった」

 

「はぁっ!? 何をどう聞き間違えたらそうなるの!」

 

「打つ手段とは、つまるところ君を【令呪】で呼ぶ事だろう? 手を煩わせる位ならと遠慮していたが…今日までの日も含めて、いやはや求めてくれるのならば吝かではない」

 

虚を突かれた返答に驚き、ムキになる。

アーチャーは、彼女が遠回しに頼られなかった事に対する不満部分を だけを掬い上げる事で論点ずらしに成功した。

 

「拡大解釈の頭オカメインコよアナタは。自己評価が高すぎて、独りよがりの求愛ダンスを見せられている気分」

 

「だが強ち間違いでもあるまい。…蔑ろにしたつもりじゃないんだ、すまない」

 

「ーーーはぁ、もういいわ。私のアドリア海より広い慈悲に感謝しなさい」

 

ここで話は終わりと脚を組み替えて、首ごと視線を逸らすメルトリリス。その頬が少しだけ赤いのは気のせいだろうか。

 

(さて、とりあえず白鬼に言われた通り、勘付かれないようにしたつもりだが…ここからどんな目が出るかは賭けだな)

 

 

 

思い返すは謎のクエストで出会った白鬼の事。

 

彼の言う通り、強大な力を誇る九尾の狐はメイプルとサリーを必要以上に痛めつける事は無く…というよりダメージを全く与えられず逆に追い詰められていたが、言葉自体に偽りは無かった。

 

そして死闘じみた戦いが始まると思えば一太刀合わせた所で、失望顔の駄目出しされてしまい、話がこんがらがってしまう。

 

「駄目だ駄目だ、棒振り小僧未満の赤子じゃねえか。刀なんて預けられん」

 

口調だけなら失望して突き放す発言だったが、彼は九尾の狐に向き合うと、さも当然のように口を開いた。

 

「おう、面食いの稲荷大明神の使徒さんよ。ちょっくらコイツと儂の周りだけ時間を早めてくれねぇか。せめて火入れに耐えられるまで叩き上げたいんでね」

 

「ちょっ…ちょっと待ちたまえ! 何が目的なんだ。時間加速までして私をどうしたい」

 

「あー、詳しい話は分からないっつたろうが。儂はただ刀を預けるに足る男にしてやるだけだ」

 

つまり、勝つまで戦え。と白鬼は言いたいらしい。

 

「ーーー構えろ。仮初めの身体で剣士ですらないこの身を超えられないなら、この先誰かを守るなんざ夢のまた夢だ。そんなのは…嫌だろう?」

 

「ッ…」

 

否応無しに、外界から時間が切り離され加速した影響でメイプルとサリーの動きが停止したように鈍い。

 

「なに、ちぃとばかりキツいだけだ。及第点を超えたら奥の手を一本打ってやるから頑張んな」

 

始まるのは永劫無限かと錯覚するような剣戟の応酬。

斬っては突き、突いては斬るをひたすら繰り返す。袈裟斬り、唐竹、水平、突き、薙ぎ払い。緻密に練り上げ、寸分違わず構築し、どこまでも、どこまでも『収斂』だけを言祝ぐように技を磨く。

 

やがて時間経過も気にならない程の鍛錬に明け暮れ、何週間、何ヶ月、もしくは何年も経過し、時間加速の負荷に脳が耐えられない限界時間ギリギリまでを費やして、とうとうアーチャーは白鬼に認められた。

 

「よぉし、ここまで。儂みてえに剣を振る才能は無いが、なかなかどうして一端の顔になったな。どんな鈍らだろうと研いで磨けば、野菜も切れる、人も切れる、妖もバケモンも纏めて斬り捨てられる。お前さんはそういう人間だ」

 

「……白鬼」

 

「儂からの餞別だ。まずはそいつを受け取んな」

 

中空に手を差し出して放り投げたのは何の変哲もない【一振りの刀】。

外見から既に感じる凄まじい畏怖に反して、抜刀した抜き身の刀身は些か冴えに劣る。一流品には間違いないが、鞘と柄に比べると格が釣り合っていない気がしてならない。

 

「おう、そいつは間に合わせの竹光擬きだからな。本命が打ち終わるまで繋ぎに使ってくれ。一等良いのを用意してやるからな」

 

【明神切村正】

種別:刀

STR+50

【防御貫通】【バフ倍加】【耐久値半減】【収斂】

 

とはいえ、これだけでも充分規格外の性能を誇っている。ならば彼のいう本命とやらはどこまでの強さを秘めているのだろうか。アーチャーは思わず息を飲む。

 

「最後に雇い主からの忠告だ。…つっても明確に言葉にされた訳じゃねえから齟齬があると思うが覚えておけよ」

 

白鬼はいつのまにか役目は終えたとばかりに、金色の粒子に身体を変換しながら別れも惜しまず言い放つ。

 

「ーーー『水月こそが本命。癌細胞に惑わされるな』」

 

「まさか…まさか本当にアレが実在するというのか? いやその言葉通りならもしかして…」

 

「おっと大前提を忘れてた。何でも奴さん、ここの世界を乗っ取るまで別の場所へ干渉出来んらしい。つまりここが踏ん張りどころってなわけだ。…頑張んな」

 

一本の刀と言葉を残して夢幻のような邂逅は終わりを告げた。

 

元の時間速度に戻った世界では、九尾の狐がまるで人のようにお辞儀をしてから消え去り、気が付いた時には大洞窟半ばの通路で三人もろとも倒れ伏せていた。

 

メイプルとサリーに記憶を擦り合わせようとしても、時間加速での話は彼女達には届いていない。

ただ、この疑問を打ち明けるにはアーチャー自身の脳内整理が追いついていないと不思議に思う2人を引き連れ、入口へと取って返す。

 

そのタイミングで、真剣な心情とは真逆の軽快な効果音を鳴らしてテロップが流れる。

 

 

【スキル:天覆う七つの円環(ローアイアス) を取得しました】

効果:

スキル発動時にVIT100相当の盾を最大7枚まで展開させる。

1枚毎に最大MPの10%を消費。

遠距離攻撃に対してはVITの値を2倍で計算する。

 

 

「これが本来の報酬か? ならあれは…」

 

白鬼は『儂から』とワザワザ付け足していた。

とくれば、この刀は彼が個人的に面倒を見てくれた言葉通りの餞別だったのだろう。鍛錬も含めて厳しい口調の割りに面倒見の良い御仁だったと苦笑する。

 

そして、知識通りならメルトリリスは『月側』の勢力である。彼女の最後をゲームで知っている以上、その心根に改心の要素が無いとは言い切れないが、それでも生まれからして警戒対象になり得る相手に違いない。

 

だからこそ、自分でも歯が浮くような台詞回しで誤魔化しながら、動向を探ることにした。

しかし出来れば敵対はしたくないと、アーチャーは即座に彼女を切り捨てる判断を下さず思い悩み、第三回イベント当日までログインする事すら出来なかったのだ。

 

何はともあれ、関係を深めるのは無駄ではないとアーチャーは考えて出来るだけ機嫌を取るように心掛ける。

この黄金劇場も、場合によっては魔窟と化す可能性があるのでセーフハウスの設置も視野に入れなければならない。

正座から立ち直して彼女に向き合う。

 

そのまま表情を変えずに思い悩むアーチャーに、一つ小さな咳払いをしてからメルトリリスは話題を振った。

 

「それで今日はどうするのかしら。ギルドは牛追いなんて野蛮なイベントに参加中だけどアナタは合流するの?」

 

「あぁ…それなんだが、私のキャラビルドはソロ特化だからね。本隊とは合流せずにメイプルと狩りをしようと思う」

 

「メイプル…?」

 

「おっとまだ紹介していなかったな。彼女はギルド『楓の木』の代表で私の友人…まぁ隠す話でも無いが、リアル側では幼馴染の関係でね。兄と妹のように育った仲でもある。昔からなかなか隙の多い性格だが、芯は朗らかで天真爛漫といって差し支えないな。少しばかり痛がりで毎年インフルエンザを患う癖があってね、病弱では無いんだが、昔から目を離せないんだ。今年はまたマフラーでも編もうか…。そうそう元はデジタルゲームを苦手にしていてね。幼い頃はよくおままごとに誘われてはなぜか母親役ばかりやらされて困ったものだよそこはいつも通りお兄ちゃんじゃないのかってそれと「シャラップ!」どうしたメルトリリス?」

 

メチャクチャ語り出したアーチャーの勢いに突っ込まざるを得なかったメルトリリス。頭痛を抑えるよう額に手をやって率直な感想を述べる。

 

「アナタ…シスコンだったのね」

 

「なんでさ」

 

「自覚症状が無いとか、嘴みたいに脳がスカスカよ。年頃の男女が睦み事も無しに距離が近いなんて、シスターコンプレックス以外あり得ないわ」

 

そして彼女は小声で呟く。

 

「この前の女といい、泣き虫炎帝に加えて幼馴染の妹。何で月も関係無いのにライバルが増えてるのよ!」

 

「メルトリリス?」

 

「! 何でも無いわ。…それと気が変わったから、今日はアナタに同行してあげる。ステキなデートスポットにでも案内しなさい」

 

「いやメイプルとの約束が…」

 

ある。と言い切る前に棒立ちの鳩尾めがけて膝蹴りを見舞う。

案の定、ダメージは無いが反射で前屈みになると、そこを狙って両の手でガッチリと顔を挟み込まれる。

 

そして唇に冷たく柔らかい膨らみが、少しだけ密着した。

 

「ーーー私を優先しなさい。これは命令よ」

 

言うや否や。

そこで終わると思った唇同士の触れ合いは、にゅるりと口内に侵入する舌の感触で継続が確定する。

なぜ、全年齢向けのNWOでこんな行為が出来るのか不明だが、彼女という存在ならばシステムを弄るくらい造作も無いのだろう。

 

近すぎて顔が見えないが、歯の一本ずつまで愛撫するような丁寧さで口の中を侵される。

互いの粘液が絡まり、混ざり合い、唾液が分泌されすぎてクチュクチュと音が漏れるくらいになってようやく舌が引き抜かれた。

 

そこで見えた彼女の表情はまさしく陶酔。

 

美酒に酔ったうら若き少女はニヤケながら舌舐めずりをして、男の太い太ももに、自分の細い両脚を絡ませてピッタリと密着する。

前屈みの姿勢からの接触は、まるでバレエのように大きく上半身を反らすキツい動きだったが、彼女の柔らかさからしてみれば苦しさの一つもない自然な動きで負担などどこにも無い。

 

手足の感覚が鈍い体質のせいか、代わりに全身で彼を感じられるように隙間なく身を這わせては上下に動かして摩擦を味わう。

 

見上げるメルトリリスは本人は隠しているつもりでも、間違いなく興奮していた。指摘は出来ないが、あからさまに下半身の動きが早くなってきたからだ。

 

ゴクリと喉を鳴らすと、彼の方が興奮している証拠だと機嫌を良くして再び熱烈に口付ける。

激しい加虐体質を持ちながら、彼女の中に秘められた真逆の心情である『奉仕欲求』。

それに従い、気持ちいいと感じる行為を積極的にこなしていく。

 

快楽のアルターエゴ・メルトリリス。

 

糸を引くディープキスを終えて淫猥に微笑む姿は、見ようによっては毒婦であり、たしかに名前負けしない魔性の女だ。

 

少なくとも今の彼は、そう思う他なかった。

 

「ーーーご馳走さま。とにかく、今日は私の貸切よ、反論弁論は一切受け付けないから覚悟しなさい」

 

「……仕方あるまい。だが、彼女側から接触してきた場合は無視できないからな」

 

「ふんだ。この広い第三層でチャット機能も使えず偶然出会うなんて伝書鳩でも無ければ不可能よ」

 

そう言い放ち、メルトリリスはここ最近篭りっぱなしだったマイルームから出て先を行く。

メイプルには途轍もなく申し訳ないが、今日ばかりは仕方ないと機嫌をとる事を優先する。しかしあのメイプルだしな…。とほぼ確定した未来を予知したアーチャーは先程までの快楽を少しでも早く忘れる為に、天を仰いだ。

 

 

 

 

 

「あっ、お兄ちゃん! こんな所にいたんだ」

 

「ーーー嘘でしょここイベントに全然関係ない山頂よ!? どういう思考回路をしたら辿り着けるのよ、ていうか亀が飛んでるんですけど!?」

 

「まぁ…メイプルだからな」

 

雪の降り積もる岩山のてっぺんでプレイヤー達を見下ろしたいとオーダーを下した彼女を担いで行く千里。登頂部でようやく一息ついた所に、空飛ぶシロップに乗ったメイプルがふよふよと浮きながら接近してきた。

 

この邂逅より30分前。

 

流石にメイプルの先約を無視してそのままデートするのは心が引けるアーチャーは、メルトリリスが不機嫌になるのを承知で彼女に断りを入れた。

しかし、イベントに貢献しなければいけないギルド長としての立場よりも最近甘え癖が再発してきたメイプルは、何だかんだと引き下がらず。

メルトリリスから「もし私たちを見つけられたら同行を許可しましょう」と、かくれんぼ式の提案を持ち出されて渋々承諾していた。

 

そして20分の時間差で街を出たはずのメイプルは、空飛ぶシロップによるルート無視と、野生のお兄ちゃんレーダーで位置を特定するとRTA並みの記録で追いついてしまったのだ。

 

「よおし、見つけたから私も一緒に行くね!」

 

「くっ…幼馴染属性を油断していたわ」

 

「そういう話なのか…?」

 

変な所でサブカルチャーに詳しいメルトリリス。

その悔しそうな顔とは対照的に嬉しそうなメイプルは、シロップのゆったりした移動時間も勿体ないとばかりにアーチャーに向かって身体を乗り出して手を伸ばし…亀甲の端からズリ落ちた。

 

「!? 危な…ッ!」

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

しかもぎりぎりアーチャーの服の裾を掴んだせいで両者諸共、山の斜面を転がり落ちていく。

突然置いてけぼりにされたメルトリリスとシロップは唖然とそれを見送るが、転がり落ちる音はいつまで経っても鳴り止まず、しかも遠ざかっていく。

 

「…とりあえず降りるわよ」

 

「…かめ〜」

 

メイプルからの【サイコキネシス】が無くなり、巨大化も解かれたシロップは彼女に抱かれながら下山していく。

本気を出せば真っ直ぐ降下しても無傷で済むが、砂や埃が付く事を嫌って慎重にステップを踏みながら後を追った。

 

一方その頃、アーチャーの耐久力では落下ダメージに耐えられない筈だったが、メイプルの咄嗟の機転による【発毛】に飲み込まれて、毛玉と化す事で難を逃れていた。

 

斜面を転がるモコモコのパンジャンドラムは、途中でポップしたモンスターを跳ね飛ばしながらダイナミック下山。

しかし球体であった事が災いし、地面に激突しても勢いは収まらず、道無き道を駆け抜けていく。

 

「うにゃぁ〜〜!」

 

毛玉の中で攪拌されるメイプルは反射的にアーチャーへしがみ掴もうと四方八方へと手を伸ばす。

しかし激しく天地上下が入れ替わる内部では方向が分かるはずもなく、偶然外に出た手が硬いアイテムを掴んだ感覚はあっても彼の元には届かない。

そのままゴロゴロ転がって特大の衝突音と共にようやく動きが止まった。

 

「め、目が回った〜」

 

「ぐぅ…な、何がどうなったというんだ」

 

毛にまみれて外が見えない彼らは知るよしも無いが、毛玉が停止した場所は以前【身捧ぐ慈愛】で訪れた教会である。

 

そこへホールインワンした2人に、奥で待ち構えていた悪魔騎士風のボスモンスターが登場。何事かを喋りながら戦闘態勢を取っているが、未だ混乱の最中にある頭では状況を判断出来ない。

どうやら早速攻撃されているらしいが、実はこの毛玉の防御力はメイプルと同等という見た目に反した超装甲なので、まるで効いた様子がない。

 

やがて毛玉の2人は目を覚まし、何事かを相談しながら行動を起こした…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぎゃああああ! メイプルがまたやらかしたぁ!』

 

『どうしたどうした、あの子がやらかすのは前から知ってたろ』

『最近だと慈愛クエの、あのショートカットは驚かされたね〜。でも浮遊アイテム実装前に気付けて良かった〜』

『不具合発見の一例になってるからな! 多少は目を瞑っても…』

『【かつての夢】のキーアイテム取られた…』

 

『『『ーーーはぁ!?!?』』』

 

『待て待て、待て! あれ第三層用の、しかもエンドコンテンツ用クエストだろ!? 何で今入手してるんだ』

『どうも森の中に設置したアレをリアルラックで見つけたみたいで…』

『そんなの砂漠の中で針一本見つけるようなもんだぞ!』

『でも実際問題、見つけてしまってるんですよ!』

 

『……あの〜、どうしたんですか皆さん。随分と焦ってるようですけど〜』

 

『し、新人ちゃん…これはその…』

『メイプルっていうプレイヤーがいてね〜。その子が毎回のように規格外のプレイを引き起こすから〜焦ってるの〜』

『ほうほう…つまり不正行為はしていないけど厄介な行動が多くて困っていると』

『あぁ…そうなるね。お前ら、キーアイテムだけで手に入れられるクエストじゃないし一旦、落ち着け』

『チーフ…あの…』

『アップデートまで時間はある。今日の業務が終わったら対策を』

『チーフ!』

『何だよ落ち着けって言っただろうが』

『メイプルと弓兵が【滲み出る混沌】のクエスト始めてます…』

 

『『『………???』』』

 

『全員見事にフリーズしてますね…』

『え、何で…あ、そうか慈愛持ってるから…まさかノーヒントで教会に入ったのあの子!?』

『しかもまた弓兵と一緒かよ! 今度は何をやらかすつもりだ!』

『あの…このライブモニターを見れば一目瞭然かと…』

『あっ、私も視聴しますね。えっとぉ〜♫ ……………何これ』

 

『毛玉?』

『毛玉だな…』

『その毛玉から剣が生えてるぞ』

『360度な…』

『ウニじゃん』

『うわ、ボスAIが予想外の行動取られて困惑してるぞ』

『何とか殴り掛かったけど、剣に刺さってどんどんHPが減少してる…』

『無敵かよ』

『お、落ち着けお前ら…こいつはHPが減れば形態変化して火を吐く。このウニ…じゃなかった毛玉はそれで燃え落ちる筈だ』

 

『……あれ?この毛玉動いてね?』

 

『歩いてる? でも中に引き篭もってるから方向は分からないはずだよな』

『あ〜【呪縛】の鎖でボスと繋がってるから、中で引っ張ってるのかな』

『なるほど…って、おいおいおいおいおい!?』

 

『『『ボ、ボスがウニに押し潰されたぁ!!』』』

 

『うわぁ〜…』

 

『ひいっ! 無理に動こうとするから余計に突き刺さってる』

『どこの拷問器具だよこれ!』

『ヤバイぞ、継続ダメージ扱いでボスの形態変化が機能してない!』

『げっ、弓兵が出てきた』

『あら無銘。じゃなかったアーチャーさんじゃないですか。へぇ〜ここでもそんな呼び方なんですねぇ〜』

『すっげえ悪そうな顔してるぞ…』

『この上で何をする気だ?』

『スキルか?』

『おぉ〜綺麗な花が天井に咲いたね〜』

『これってアイツが作った天覆う七つの円環(ローアイアス)とかいうシールドだよな?』

『だな。それを使って……はぁ、そうくるかー』

 

 

『『『ウニごとボスを押し潰すと………』』』

 

 

『…貴方そんなぶっ飛んだ性格してましたっけ?』

『あっ、死んだ…』

『圧殺死とか始めて見たわ』

『ヒドラを食ったのも驚いたが、今度は拷問かよ…』

『勝利のハイタッチしてる…』

『駄目だ公式イベント中なのに、こっちがハイライトすぎる』

 

 

 

運営たちが頭を悩ませる中、新人と呼ばれた彼女だけがじっとモニターを見つめる。

メイプルとアーチャーを…いや『彼女』だけに注目して、口を歪めた。

 

 

 

 

「ーーー()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 




全年齢版では、毛玉の中で組んず解れつの態勢になって「お兄ちゃんのエッチ!」とビンタを食らい「そりゃないよー」でフェードアウトする回でしたね。

大丈夫。SMでも平手打ちは普通に痛いので、ヤンデレではないです。

次回、第四回イベント編。初期の予定では最終章。
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