ヤンデレが怖いので炎帝ノ国に入って弓兵やってます。   作:装甲大義相州吾郎入道正宗

21 / 23

今までのネタバラシ回。

人によっては展開を選ぶので注意。


弓兵不在とヤンデレの献身

集う聖剣ギルドホーム『チェイテ城』執務室。

 

ギルドマスターでありNWO最強と名高いペインは、数多い団員の中から中核戦力として期待している3人を集めて会議を開いていた。

 

「さて、皆に集まって貰ったのは他でもない、第四回イベントについてだ」

 

「ん? ついこの間、情報収集に努めるとか言ってたやつか?」

 

「もう進展があったんだ」

 

「ワザワザ俺らを集める必要があるって事は問題発生かね」

 

重斧使いのドラグ、多重魔法のフレデリカ、神速のドレッド。

机を挟んで椅子に腰掛けるペインの前に並んだ三人はそれぞれ別の反応を返す。

そして彼らのまとめ役である彼は単刀直入に切り出す。

 

「イベントに挑む上で要注意対象としていたメイプル、サリー、アーチャーの引退説が流れているのは知っているかい?」

 

「え…嘘でしょ!?」

 

いの一番に食いついたのはフレデリカ。第2回イベント以降、ネットの噂でよろしくやっていると勘違いしてから接点を持たないようにしていたが、予想外すぎる展開に思わず声を張り上げた。

その剣幕に若干驚くペインだったが、状況を共有する為にも話を続ける。

 

「まず始めに3人共ログインすらしていない。しかもまったく同じタイミングで。そして炎帝ノ国メンバー…仮にDと呼ぶ人物からアーチャーが事件に巻き込まれたとの情報が流れている」

 

「じ、事件…?」

 

「あぁ、どうも彼らのクラスメイトらしくてね。詳しい話はプライバシーに当たるから朧気なんだが…アーチャーが危篤状態に陥って予断を許さないそうだ」

 

「うげ…マジでヤバい話なのかよ…」

 

「メイプルとサリーも並々ならない関係者という事で、ゲームする暇など無いのだろう。言葉は憚れるが最悪の場合はログインどころか…」

 

「……話は分かったからよ、そういうのは明言を控えようぜペイン。フレデリカをよく見ろよ」

 

ドレッドの指摘でハッとした彼の目に映るのは、明らかに憔悴した様子で立ち尽くす姿だった。

本人は事実確認のつもりで話したが、知り合いがいる前でする話題では無かったと今更ながら後悔する。

 

「すまない、俺の浅慮だったようだ。ただ彼の容態が回復する場合もあり得る。気に病みすぎて君まで体調を崩さないようにしてくれ」

 

フレデリカは小さく言葉を返すが、心ここにあらずといった様子でマトモに話を聞き分けられる状態では無いだろう。

3人組と特に接点が無いペインとドラグはそれほどでも無いが、第1回イベントでまんまと策略に嵌められたドレッド、いつかの再戦を望んで戦いを重ねていただけに同情と同じくらい虚無感を感じていた。

 

「言うまでも無いが、この話はトップシークレットだ。公言だけは避けてくれ」

 

ペインの一言にそれぞれが頷く。

その後、彼らはバラバラに退出して執務室に残るのはペインのみ。暖炉で燃える赤い火を背中に受けて物思いに耽る姿は金髪美形の容姿と相まって眉目秀麗という言葉が相応しい。

しかしその表情は真面目というよりも、苦悩する顔つきで何かに耐えているようにも見える。

 

「ーーー彼ならば、或いはと…思っていたんだが」

 

彼以外、無人の室内に声が響く。

片手でコンソールを呼び出し、手慣れた指使いで自身のステータスを確認すると、そこに並ぶ高い数値以上にじっと見つめる項目がある。

 

 

【宝具】◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎

ランク:A+

種別:対軍宝具

レンジ:20〜40

最大補足:300人

 

 

「なぜ、こんな規格外が存在するのか、必要なのか。…恐らく原因は君にあるのではないだろうか? 少なくともアレはそう思っているようだが…」

 

誰よりも強くなりたい。負けず嫌いの彼はただひたすら己を鍛え上げて【宝具】を得るに至った。そして『ある人物』に声を掛けられる。

 

最も強くなりたくはないかと。

 

提案を持ち掛けるそれに、彼は迷いなく断わってみせた。

研鑽とは自分自身の為に行うものであり、他者の介入などあって良いものではない。唐突に横からしゃしゃり出て、目的の為には手段を選ばない気質は、特に彼の神経を逆撫でた。

 

その精神性を心底馬鹿にした人物は、徹底的な煽り文句や脅しを駆使するもペインは一切揺るがない。そして言葉の節々でアーチャーやメイプル、サリーと思わしき名前が上がったのを彼は覚えていた。

 

 

「事件が無関係でないのなら、彼らは何かしらに巻き込まれている…もしくは黒幕側なのか。見定めなければいけないな」

 

 

彼は全力で取り込んでいるこの世界を。

何に変えても守りたいと、心に誓っているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

人工呼吸器と最新の医療器具だという電子バイザーに繋がれて、常にバイタルチェックを受けているのは一人の青年だった。

昨日未明、自宅を出た瞬間に刃物による刺突を受け、大量出血。幸い自宅内にいた母親の通報が早く一命は取り留めたものの、原因不明の昏睡状態に陥り、未だ意識は戻らない。

しかも犯人は未だ捕まっておらず、周辺地域では通り魔による犯行も考慮して、厳戒態勢が敷かれるほど事件は大掛かりになっている。

それだけの騒ぎに囲まれても青年はまったく目を覚まさず、懇々と眠り続けて一週間以上が経過していた。

 

ベッドの横では普段の自堕落さを全く感じさせない、憔悴した顔で看護している母親の姿。

青年の父はゲーム好きであっても仕事に就くサラリーマンであり、夜遅い時間帯にしか見舞いに来れない。

もう一人の家族である妹は、何だかかんだお兄ちゃん子だったせいで事件当時の惨劇を直視して卒倒。ゲームもプレイせず寝込む日が続いている。

よって一日の大半は母親と過ごす事が多いが、毎日夕方が近くなるとすっ飛ぶように現れる女の子達がいる。

 

「失礼します…」

「おばさん、ご飯買って来たよ」

 

ありがとうと力なく笑う姿に、普段を知るメイプルとサリーは胸を締め付けられる。何よりベッドで横たわる青年の安否が気になって、まともに学校生活を送っているとはいえないが、周囲に諭されて登下校だけは済ませている。

折り畳み椅子を持ち出して青年の側に並ぶ。

 

「ねぇ、お兄ちゃん。もう第三層が解放されたし、イベントも近いんだよ? 早く起きて遊んで欲しいよ…」

 

メイプルの顔色はかなり悪い。元から睡眠不足の兆候はあったが、今回の事件で睡眠の質も悪くなり、毎日をうなされるように過ごしている。

無言で彼の少し冷たい手を握るサリーも同様だ。三度の飯より好きなゲームはおろか、彼に秘密で集めたコレクションを愛でる事もなく、頭の中は安否の心配で一杯だ。

 

二人は無反応な青年をあえて気にしないように、いつものような口調を心掛けて話題を振るが、精彩を欠いた声量は物悲しく聞こえるばかり。

 

どうしてこんな事になってしまったのか。

 

サリーはあの日、確かに不審人物を見た。タクシーに乗る目出し帽に高襟コートの少女を。

しかし嫌な予感に従いすぎて、すぐにバスから降りたのが災いした。どれだけ全力疾走しても、自動車の速度に追いつけるはずもなく、途中から最悪の事態を想定して青年の帰宅ルートをショートカットで駆け抜けた。

オレンジ色の夕暮れがやけに眩しく、前が良く見えない。それでも彼の為に足を動かす。そして悪い予感が的中するように、自宅前には先程の少女が右往左往しながらインターホンを押そうとしているではないか。

 

呼び止める事も忘れて猛然とした勢いのまま、少女に飛び掛かろうとする。

 

許さない、許されない、許されるものではない。

 

他の何においても、青年を害して良いのは自分だけなのだと、教え込んでやる!

サリーはこの時、確かに肩を掴んだ。

 

 

「ん、お客さん?」

 

 

自責の念に駆られていたサリーの耳に、メイプルの声とノックの音が入る。

どうやら悩みすぎて結構な時間が経過していたらしい。窓の外はあの日のように夕闇に包まれ始めていた。

そして母親の許可を得てメイプルがドアが開けると、そこにいたのは一人の少女。

 

今しがた思い浮かべた、目出し帽に高襟コートの姿。

 

それを認めたサリーは即座に反応して立ち上がり、声を上げた。

 

 

 

 

 

 

「来てくれたのね、ミィ!」

 

「うん…でも、私…直接アーチャーさんを見るのが怖くて…全然来れなくて…」

 

「その気持ち分かるよ。でもさ、ちゃんと生きてるんだから会わないと損だよ? せっかく逃げないんだからさ」

 

「そ、そうだよね。この人、すぐ目移りするもん…」

 

久しぶりに見せる茶目っ気のある表情を浮かべるサリーに、美人の枠に収まる綺麗顔をプクリと頬を膨らませるミィ。

キョトンとする母親とメイプルだが、どうやらNWOで青年とかなり親しいフレンドと紹介されて納得する。そういえば事件当時に居合わせた子だったと。

 

そう、

 

ミィとサリーは事件当時、二人で話し込んでいたのだ。

 

そもそも、ミィはかなりの引っ込み思案であり喫茶店でお茶を楽しむだけでも団員を総動員するレベルのビビりである。

サリーが現場に間に合ったのも、インターホンを鳴らすという行為だけでもテンパって、ウロウロしていたからだ。

興奮が乗じて直接逢いに来たは良いが、真正面から会う勇気も無く怪しげな格好に変装。

更に仲の良さそうなメイプルとサリーを見て、彼が最初に話していた『幼馴染と友人から離れてゲームを楽しみたい』という事情から勝手に仲違いをしていると思い込んでいた。

 

嘘をついた。騙された。裏切られた。

 

だけど、その程度で彼から離れるほど、この気持ちは軽くない。

たとえ何がまた受けようと私は受け入れてみせるし、嫌われたからハイ終わりなんてのは認めない。

 

私を好きになるまで付き纏えばいいんだから…!

 

むしろ不幸なのは敵意=危害を加える、と自分の性癖で暴走したサリーによって押し倒された時のミィである。

完全に血走った目で息を切らせながら掴み掛かる姿は完全にホラーだった。

 

その話を聞いて、母親は頬をヒクつかせながらも続きを促す。

どうやら息子のプレイボーイぶりは、年齢と共に右肩上がりのようだとため息を吐きながら。

 

その後、青年の話題で互いに盛り上がり、事件が起こるまで二人で話し込んでいたらしい。

当然、犯行現場近くにいたので危害を加えた人物を見たはずなのだが、どうにも歯切りが悪い。

 

何せ相手が『黒い人影で音も無く現れた』のだから。

 

呆然とする二人とは逆に、入れ違いで現れた母親は倒れ伏す息子を認めると即座に救急車を手配。応急手当で急場を凌いだ。

 

「暗くてよく見えなかったの?」

 

「…正直、夜目に慣れ始めた所に街灯が点いたからハッキリとみたわけじゃないわ、でも…」

 

「本当に『人の形をした影』だったの。まるでNWOみたいな世界から抜け出してきたモンスターみたいに」

 

こんな事を警察に話して正気を疑われるか、まともに取り合って貰えないかの二択だろうと誰にも話していなかった。

しかし旧知の仲であるメイプルと母親には事実を話しておきたいと前々から思っていたらしい。

こんな事を話されても困るだけだろうと、謝罪するサリーだったが、困惑するメイプルとは逆に、母親は何か真剣に考え込んでいる様子だ。

 

やがて言葉を選ぶように確認する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その影…もしかして、『黒いノイズ』みたいじゃないッスか?」

 

 

 

 

病院内の面会時間が終わり、親族以外が退出させられる時間になっても母親は病室にいた。もう30分もしない内に旦那が忙しい時間を縫って顔を見せてくれる。

 

ーーー 一度は絶望した人生だけど、家族に囲まれてアタシは今も生きている。

 

「ねぇ息子くん。こうやって寝てる君を眺めるのは何年ぶりッスかね…。情けない母親で迷惑ばかり目立つけど、ちんまい頃はよくこうしてシーツを掛け直したりしてたんスよ?」

 

大きな眼鏡から覗く瞳は、悪戯げに歪みながら慈愛の光を湛えていた。

 

「……むかーし、昔のボクの体験談。今でも覚えてる?」

 

昔を懐かしむように、沈黙したままの彼をどこまでも優しく撫でながら語る。

 

「お父さんとお母さんが死んで、何もかもが嫌になって、どんな願いでも叶えてくれるって話に乗ったら、訳わかんないくらい恐ろしい場所で戦わされる羽目になったお話」

 

ほんの小さな自信は、本当の天才や規格外の化け物に一瞬で踏み潰されて、震えながら死を待つしかなかったあの時。

何の価値も無く、何もせず。諦めて、諦めるのが怖くて引き篭もった校舎でのひと時は今でも鮮明に覚えている。

 

「途中で現実突きつけられて、戦わされたけど。やっぱり全部諦めれば良いって自暴自棄で迷惑掛けまくったんス」

 

ただの凡人が癇癪を起こしただけ。そう判断されて切り捨てられても仕方がなかった。

 

「でも、本当に死にそうって時に、助けてくれた人達がいたんス。無駄に元気で、無駄に声がでかくて…本当は誰よりも不幸な坊さんと、無口で愛想が悪くて誤解ばかり招く…凡人に過ぎない僕には、全くもって不釣り合いな大英雄」

 

どちらも、ありのままの自分で良いと、命を持って教えてくれた大恩人達。今の姿を見せたらきっと度肝を抜くに違いない。

 

「でも、それはもう無理なんスよね…。二人とも居ないのに合わせて、地球に帰ってみればビックリ仰天ここは『並行世界』。でもお父さんとお母さんも既に居なくて、僕も行方不明扱いになって驚いたッス」

 

幸いパーソナルデータはまったく同じだったから、本人だと認識して貰ったけど、あそこを乗り越えなければ人生は全く方向性が変わっていただろう。

未だに何故この世界なのかは分からない。けれど。

 

「何事も ()()()()()()と思えば受け入れられる。何かを為さなくても、何かを求める権利までは奪われない。…そのおかげで息子君と娘ちゃんに恵まれて、僕は本当幸せ者ッス」

 

だから、もうここまでで良い。

 

もう充分に()()は受けたのだ。そろそろ自分もそちら側に回らなければならない。

 

「それが親、ってやつなんだから」

 

そっと胸に手を当てて、一心に乞い願う。

これ以上は息子を苦しませたくない。うまくいくかなんて保証はどこにも無いけれど、何故だか確信だけがある。

 

あの時。月の聖杯戦争で唯一の生還者となった彼女には、とある理由があった。

インドに名高き大英雄が纏いし黄金の鎧。

その力によって、ムーンセルによる魂の分解すら退けて生き長らえた。

それは今も消える事なく。むしろ()()()()()()という規格外の存在のまま、彼女の中で眠り続けていたのだ。

 

身に付ける者への凡ゆる外的干渉と死を無効化する効果ゆえか。加齢による老いすら寄せつけないのは予想外だったが、未練はない。

 

「だから……」

 

だから、もう一度だけ奇跡を。

 

一人の人間として見てくれた私のサーヴァント。

貴方のお荷物でしか無かったけど、どうかワガママを聞いて欲しい。

正真正銘、これが最後の願いだからーーー。

 

「ーーーカルナさん、息子を助けて…!」

 

かつて、

 

ジナコ・カリギリと呼ばれた女性の身体が黄金の光を放つ。

 

やがてそれは神々しくも収束し、輝く球体となって青年の胸へ導かれるように吸い込まれていく。

そこから生じる変化は劇的だった。

不動の身体は脈打つように跳ねて頬にも赤みが差し、そしてドイツ人のクォーターである彼の髪は、亜麻色から絹のような白髪へと染まる。

耳に現れたほんの小さな飾りはお守りのように暖かく輝き、誰の加護を受けているか、ジナコにはハッキリと分かった。

 

 

こうして英霊カルナの宝具【日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ・クンダーラ)】は今、青年へと正式に譲渡されたのだ。




TRUEND到達フラグ1.

1.メイプル、サリー、ミィの好感度を平均的に上げる。
(高すぎる場合は前話で個別ルートに分岐)

2.自宅の選択肢でキッチンに寄る。
(そのまま出ると即死END)

3.メルトリリスに勝利し、仲間に引き入れる。
(好感度は参入時点でMAXなので上げる必要無し)


ちなみにアーチャーはジナコの正体を知りません。
入籍して名字が変わっている上に、ヒロイン?の名前が母親と同じだったら無意識に避けちゃう心理です。

ここまでのお話で気になった点をお教え下さい。

  • Fate味が強すぎる
  • 文章が未熟で読みにくい
  • ヤンデレ要素が足りない。理解出来ていない
  • 展開が雑。
  • キャラ改変が酷い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。