ヤンデレが怖いので炎帝ノ国に入って弓兵やってます。   作:装甲大義相州吾郎入道正宗

3 / 23
初期ミィちゃんは絶対可愛い(確信)

炎帝ミィちゃんも絶対可愛い(真理)

そこに何の違いもありゃあしねぇ!


炎の少女とヤンデレのプライベート侵害

唐突だが、青年はRPG(ロールプレイングゲーム)を額面通り受け取って、『NewWorld Online』でキャラクターを作成する際、自分の思い描いたキャラクターになりきって遊ぶ事にしていた。

別に痛い趣味が暴走しているとかではなく、日常的にプレイしているFPS系ゲームでは情緒のない罵り合いや暴言に晒されるのが日常茶飯事であり、偶には紳士的な態度で他人と接してみたいと常々思っていたのだ。

 

そこで彼が、このゲームをプレイする上で目指す目標として掲げたのは【正義の味方】。

 

弱きを助け、強きを挫く。

 

男なら小さな頃に一度は夢見る文字通りのヒーローに、昔から強く憧れていた彼は、それを電脳世界で目指してみたいと強く願い、モチベーションが高くなる。

ただ、そのまま人助けをしつつ強くなっていくだけでは味気ない気がした青年は、ふと一計を案じる事にした。

 

それが、ロールプレイ。役になりきれば、多少中二病的な台詞を吐いても精神的に余裕が持てるし、何よりそういった言い回しが好きな自分がいると彼自身も理解している。

 

そこで参考にしたキャラクター像は過去に一代ムーブメントを引き起こした、とあるゲームに登場する主人公の姿だった。

正義の味方を志しながらも理想と現実の狭間で苦しみ、死後ですら捧げてきた男。紳士的だがニヒルな役回りは男として憧れるし、何より世話焼きと家事が得意という共通点から親近感もある。

 

そして万が一の可能性だが、あの【友人】と【妹分】が同じゲームを始めた場合、他人のふりをする事が出来る。

別に彼女達を嫌っているわけではないが、たまには友人や知り合い無しの状態からゲームを楽しみたいのだ。

 

無論、顔つきだけはどうにもならないので髪色を白髪に。髪型も逆立てた感じに変更。肌を褐色へ変更すると元ネタと大分雰囲気が似ている上に、青年とは思えない見た目の変化に自画自賛する。

最後にキャラクター名をそのまま彼の名前にするのは露骨すぎると自重して、プレイスタイルも考慮した【アーチャー】を名乗る事にした。

 

「これで俺は……いや、私は正義の味方を目指していくよ」

 

ログイン画面では己のアバターというべきアーチャーが待ち受けている。

青年はVPMMO特有のヘッドギアを身に付けてゲームの世界へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ…やっぱ魔法使いソロでレベリングはキツかったかなぁ…」

 

森の鬱蒼と覆い茂る草木を掻き分けて、赤髪の少女が恐る恐る前へと進んでいく。

しばらくすると、目の前の草むらから林檎のウサギを象ったモンスターが周囲を警戒しながら飛び出してきた。

周囲に敵モンスターがいる気配も無く、まさに狩り頃といえるだろう。

 

「…火球」

 

少女はそっと魔法の名を口ずさむと、掌に炎を灯して下手投げの要領で投擲する。

 

炎はウサギに着弾すると、フワッとした投げ方に反して一瞬で燃え盛り、魔法を放った相手にヘイトを向ける間も無くデジタルのエフェクトとなって散っていった。

 

「よしっ…!」

 

グッと胸前で小さなガッツポーズを取るが、すぐ正気に戻って悲しげな顔で地面に体育座りをしてしまう。

一般人から見れば、突然の奇行に首を傾げるばかりだが、ある程度ゲームに精通した人間から見れば彼女が何をしているのか推察できるだろう。

手持ち無沙汰で自分のステータス画面を流し見る少女はMP(マジックポイント)の数値に注目し、やがて全体の5%ほどが自然回復したところで深い溜息を吐いた。

 

 

「やっぱり回復時間の待ちが長いよぉ…でもMPポーションは高いし、低レベルの内は我慢しないとだけど…」

 

NWOは一般的なMMORPGと同様、MPは時間経過と共に自然回復していく。

特に魔法使い系は威力が高い魔法を扱う分、消費も激しく装備やアイテムによる補強を受けられない序盤や、代わりに戦闘や補助をこなしてくれる仲間がいない場合、レベリングの効率が極端に下がってしまう。

 

かといって、引っ込み思案な性格をしている少女…【ミィ】にとって見知らぬ相手に話しかけるというのはかなり難易度が高く、サービス開始間も無い時期特有の全体的に焦った雰囲気にも飲まれて、一人で狩り続ける事態となっている。

 

イジイジといつも通り一人時間を潰すミィ。しかし、いつもより運が悪かったのか周囲にモンスターが次々とポップし、自然の包囲網が形成されていくのに対して、頭の中で妄想に耽ったり、今後の育成や方針を思い浮かべているせいで反応が大幅に遅れてしまう。

 

「……んぅ?」

 

何気無しに顔を上げると、そこにいたのは自身の身長を2倍は上回ろうかというオオムカデの姿。表情にピシリと亀裂が走り、思わず後退りするが視線を動かす度に周囲からこちらを覗き込むモンスターの数が増えていく。

 

「あ、あははは…」

 

乾いた笑いは虚しく空を切り、ゴクリと喉を鳴らした瞬間。ミィは涙目で一目散に駆け出した!

 

「無理無理無理無理! 範囲魔法はまだ覚えてないもんー!」

 

木々を掻き分けながら逃げの一手を尽くすミィだったが、移動速度に影響するAGIのステータスをあまり割り振っていない為、足の速いモンスターから順に近づかれてしまう。

このままではジリ貧だと、なけなしのMPを捻出して魔法を放つが、まさしく焼け石に水。魔法威力を高める為にINTを上げているので一撃毎に数を減らせるが、明らかに数的劣勢を覆せる物では無かった。

やがて大樹に道を阻まれて行き場を無くすと、後ろから迫るモンスター達は確実にトドメを差すべくミィを中心に半円の包囲網を敷く。

 

「あぁ…ここで私は死ぬんだ…お父さんお母さん、ごめんなさい…」

 

別にゲームなので死に戻るだけなのだが、精神的摩耗が激しいせいで辞世の台詞じみた言葉を最後に、解釈を待つ罪人のように目を瞑ってお祈りのポーズを取る。

 

次に生まれ変わる時は、リア充になれますように…。

 

儚い思いと共に、モンスターは一斉に飛び掛かろうと準備態勢を取る。その瞬間。

 

「ーーー助太刀させて貰おう」

 

「え?」

 

鋭い風切り音と共に男の声が、ミィの耳朶を打った。

 

そして続けざまに放たれる音の嵐。それはモンスター一体一体を満遍なく打ち据え、彼女へ向いていた敵対心、ヘイトを移し替える為の攻撃だった。

ミィからは見えていないが、男は案外付近にいるらしくガサガサと近くの茂みを鳴らして移動しているのが分かる。

間髪入れずに叩き込まれる連撃は途絶える様子もなく、ひたすらモンスターを穿ち続け、

やがて全てが男のいる方向に集まっていくと、今までの音の正体。つまり攻撃手段が判明する。

 

「ゆ、弓矢…?」

 

不遇として逆に有名な武器の活躍に動揺を隠せずにはいられない。

しかも放たれた矢はまるでオートで狙いでも付けているかのようや正確さでモンスターの頭を狙う。

ただ威力が低いせいでどれもが倒し切れておらず、このままでは殺到されて自分と同じ目に合うだけだと直感したミィは、気弱な自分を叱咤して叫ぶ。

 

「あの! わ、私は大丈夫ですから…その逃げて下さい!」

 

それはあからさまな強がりだ。『NewWorld Online』ではプレイヤー側への痛覚が実装されており、攻撃を受ける度に痛みが走る。

それを自分の油断で招いた事態に巻き込むのは申し訳ないと思ったのだ。

しかし弓矢の主は、草むらから顔を出すと浅く笑いながら弓を持つ手を片手に構え、

 

 

 

 

そして【反対側の手で剣を番えた】。

 

 

 

 

「なけなしの鋼鉄剣だ。存分に味わえ!」

 

 

限界まで引き絞り、放たれたのは極光の一矢。

 

群がっていたモンスター達に知る由もないが、彼はヘイト管理によって一直線に並ぶよう位置を調整していた為、その全てが巻き込まれて爆散していく結果となった。

中には森の序盤でも要注意モンスターとして数えられるフォレストクインビーも含まれていたが、凄まじい威力のソレは木々を薙ぎ倒しながら1匹残さず消し飛ばしまう。

 

「え…え、ええええええええぇぇぇ!?」

 

【スキル:正義の味方 を獲得しました】

 

修羅場から一転。場違いな電子音と共にミィは目の前の光景が信じられず、叫んでしまう。その声を聞いた男は振り返り、顔を彼女に晒す。

 

浅黒い肌に短く切った白髪。初期服すら着ていないタンクトップ姿だが、筋肉質でガッシリした身体のおかげか妙に似合っている。

 

「さて、横殴り…という奴を仕出かしてしまった訳だが邪魔だったかな?」

 

男は常識外れの破壊を撒き散らしたと思えない軽い笑顔で問いかけてくる。

その顔に、何故か胸を高鳴らせるミィは唇をキュッと締めると、頬を紅潮させて礼を述べた。

 

「あの、いえ、私の方こそありがとうございました! 横殴りなんて…貴方がいなければ、そもそも生き残れるなんて思ってもいませんでした、ので…」

 

「なに、正義の味方を目指す者として当然の…いや今、心意気を台無しにするスキルが手に入ったような…む、怪我をしているのかね? ポーションがあるが」

 

モジモジと両の手を擦り合わせて俯くと、男は勘違いをして回復アイテムを差し出そうとするので慌てて止める。そのまま話すのは恥ずかしいと感じたミィは気になった所を聞くことにした。

 

「た、助けて貰って失礼かも知れないんですけど…弓矢ってそんなに威力が出るものなんですか?」

 

「む?」

 

「Wikiとか見てると威力が低いし、エイム力が必要とされるから当てるのも一苦労って載ってたので気になって…」

 

「それは…」

 

ミィの言葉に声を詰まらせる男は顎に手を当てて、悩むような顔つきで天を仰ぐ。

やがて絞り出すかのような声色で告げられたのは驚きの事実だった。

 

「あの威力の正体なら、これだ」

 

「これって…片手剣?」

 

それはゲーム開始時に選択式とはいえ、全てのプレイヤーに与えられる最低限の威力を持った武器、俗に言う初心者の剣だ。

 

「そうだ。この武器に限った話ではないが、弓矢を使う際は矢を専用のスロットにセットしなければ攻撃そのものが出来ない。しかし最近、気が付いたのだがね。このスロットに【剣も装備出来る】」

 

「え…剣を、弓使いが装備出来るんですか!?」

 

「まぁ、スキルの類はあまり身に付かない仕様のようだがね。だが大事なのは剣を矢として扱う場合、木の矢がSTR+1に対して初心者の剣ならば+12。攻撃力は弓×矢の乗算で算出されるはずだから…」

 

「じゅ、12倍の攻撃力!?」

 

「さっきのは鋼鉄剣だから20倍になる。無論、使い捨て用のスロットに装備しているせいで一度使えばロストしてしまうのが難点だがな」

 

それでも単発火力が初期装備で跳ね上がるのはバグじみた話であり、ネットでこの情報が拡散すれば弓使いの地位が一気に向上するかもしれない一大的な発見だ。

 

「そんな仕様があるなんて…」

 

「他の弓使いが同じ手段を取らない所を見ると、恐らくはステータスの影響で装備の可否が決定されているのかも知れないな」

 

「なるほど…弓使いならDEX上げが基本ですから、特殊なビルドで効果を発揮したかも…」

 

「…そうだな。普通はそっちに割り振るな」

 

「え?」

 

その後も青年と話を重ねたミィは、Wikiや掲示板を確認するのを疎かにして情報不足で苦労していた事、地雷扱いされるビルドで落ち込んでいたなど、愚痴や不満もチラホラ混ざった相談を投げかけられる。

その様子にさっきまで感じていた頼りになるイメージからのギャップが可笑しくてクスリと笑う。

 

そうして緊張感から解き放たれたミィは男にフレンドがいない&レベルも近い+優しそうな人柄から思い切って話を振ってみた。

 

「私と…その、フレンドになって頂けませんか! それとしばらくここを狩り場にするので…パーティを組んで貰えたらなって…」

 

最後の方は小さく聞き取れない程だったが、男は意外そうな顔をした後

 

「こちらこそ宜しくお願いしよう。…それで失礼だが名前を伺ってもいいかな?」

 

「あっ!? 私はミィって言います」

 

「なるほど…あぁ、すまないこちらから名乗るべきだった。……私の事はアーチャーと呼んでくれ」

 

「アーチャー…さん」

 

「あぁ、どれぐらいの付き合いになるか分からないが宜しく頼むよ、ミィ」

 

「は、はい! 私もよろしくです。アーチャーさん!」

 

ここにやがて炎帝と呼ばれる少女と、その副団長と(勝手に)目される弓兵が邂逅を果たした。

 

本来の物語であれば、ワントップ型の組織を率いる羽目となり、本来の性格と求められるカリスマ性の狭間で苦しむ彼女だったが、彼という心の拠り所を【得てしまった】場合。展開がどう切り替わっていくのだろうか。

 

そして今はまだログインすらしていない2人の【規格外】の存在。

まともに対抗出来るのは廃人ただ1人とされる野生のラスボスに、炎帝と弓兵が挑み掛かるのは、まだ先の話である。

 

 

 

 

 

スキル【正義の味方】

効果:

STR・VIT・AGIを+30%

 

取得条件:

自身のステータスを上回る20体以上のモンスターから、ターゲッティングされているプレイヤーを無傷で守り切る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん? 理沙、こんな所で何してるのー」

 

「楓…ちょうど良かったこっち来て」

 

「およ?」

 

夕暮れに包まれる閑静な住宅街。その一角で年頃の女の子2人が電信柱の影に隠れて、何かを伺っていた。

視線の先には何の変哲も無い一般家庭の家屋のみ。

しばらく時間が経つと二階の一室に光が灯り、人影が動き出すと理沙はその様子を 瞬きもせずに熱心に見つめ続ける。

しかし事情が分からない楓は純粋に疑問を口にした。

 

「お兄ちゃんと遊びに行きたいなら、私と一緒に来る? 合鍵なら持ってるよー」

 

いやそれはこの前コピーしたから良いや

 

「え」

 

「それよりも、あの動き気にならない?」

 

問題はそこでは無いとばかりに、明かりのついた部屋を指差すとカーテンに遮られているせいでぼんやりとしているが、人影は椅子に座った姿勢にも関わらず、激しく手を振ったり身体を逸らしたり、室内にも関わらず何かと戦っているような仕草だ。

 

「んー勉強とかじゃないよね、何だろ」

 

「たぶん…VRMMO関連だと思う」

 

「そうなの?」

 

「そう。つまりはオンラインゲーム、仮想空間で人との繋がりを持てるという事。それは私たちの許可なく女と遊んでる可能性があるのよ、楓」

 

「えぇー! そんなのヤダよー」

 

「大丈夫、そんなのは絶対許さないから…ちょっと楓は探りを入れてくれない?」

 

「うん、わかった!」

 

青年は気付かず、今日も『NewWorld Online』に没頭している。

しかしその裏では間違いなく包囲網が狭まっているのだった。




R-15版では部屋の窓にサリーが張り付いて監視。ベッドの下にメイプルが待機しているシーンでしたね。

この小説はとても健全なので大丈夫です。
合鍵を飲み込んで「さぁ取ってみて❤︎」とディープキスを迫るまではヤンデレではないです。

いったい何ミヤなんだ…。

今後のお話に必要なエッセンスは…

  • 3人をもっと病ませるべきそうすべき
  • キャラ改変はNG 硬派な雰囲気を求む
  • バトル展開! 防振り王に俺はなる!
  • 甘い甘いラブ路線。作者は嫉妬で死ぬ
  • オリキャラとか…どう? 出そう?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。