ヤンデレが怖いので炎帝ノ国に入って弓兵やってます。 作:装甲大義相州吾郎入道正宗
「どうして他の女を見るの!」グサー
メイプル=純真系ヤンデレ
「あははっ、そっか足があるから逃げるんだ!」グサー
ミィ=思いつめ系ヤンデレ
「ごめんなさい捨てないで捨てないで捨てないでぇ!」グサー
「お兄ちゃん。私、今度『ΝewWorld Online』ってゲーム買うんだー」
なん、だと…。
青年は幼馴染にして妹分の楓から飛び出た爆弾発言に思わず耳掃除の手を止めて、聞き間違いが無いか聞き直す。
全体にピンク色が散りばめられた彼女の部屋でベッドに座り、いつものように世話を焼いていた所へ青天の霹靂である。
基本的に新しくルールを覚えて頭を使うゲーム関連が苦手な彼女から出る言葉ではないので再確認しようとするが、急に耳かきを止められたのが不満なのか、膝の上に乗せた顔の頬をふっくら膨らませて無言の抗議をしてくる。
「む〜〜〜…」
仕方なく、昔ながらの竹の棒で耳奥をくすぐって上げるとニコニコ顔で「いやぁん❤︎」と甘えた声を出して丸くなる。
年齢の割に幼い顔立ちと仕草に苦笑して、しばらくはご機嫌取りとして彼女の望むままにしておく。
やがてポツリポツリと漏らす言葉の中から、どうやら理沙が入れ知恵したらしく、猛烈なオススメをされて通販での購入を決定したとの事だった。
これに焦ったのは青年だった。
彼女が苦手なゲームに挑む事自体に異存はない。むしろ、天然すぎて予想外の事態を引き起こす謎の才能を、オンラインゲーム上とはいえ人付き合いを増やして自覚し、矯正出来るのではないかという一抹の願いすらある。
だが、長年の付き合いから青年が確信しているのは、同じゲームをプレイしているのが分かれば、楓と発起人の理沙はオンラインゲームにも関わらず、何だかんだ理由を付けて確実に【彼の家へ入り浸る】。
これは自意識過剰でも単なる予想でもなく、過去、実際に前例があったからこその危惧であり、そして何より恐ろしいのはVRMMOというゲームの特性上、ダイブ用のヘッドギアを被ると現実側の感覚が鈍くなる点だ。
もし、ログインしているのを感づかれて家探しされようものなら、一般的性欲を持ち合わせている青年の私物を探す為に、床をひっくり返す勢いで家宅捜索が行われるのは間違いない。
それだけは何とか回避しなければ…。
膝の上では耳かきの心地良さに夕飯前だというのにスヤスヤと寝息を立てる楓の顔。
そっと横に退こうとしても、むずがる子供のようにズボンを掴まれて抵抗されてしまう。
こんな純真な子にシモな事情を明かしたくない兄貴分としての感情が顔を出す。今後バレないようにどうするか、彼女の母親が呼びに来るまで真剣に考えるのであった。
「むにゃむにゃ…えへへー食べちゃいたいなぁ…」
夢の中で楓は青年と楽しそうに遊んでいた。
物心ついた時から一緒に居る彼は、どれだけ側にいても不快にならないどころか、お気に入りの枕やぬいぐるみのような安心感を与えてくれる『お兄ちゃん』である。
彼女自身あまり自覚は無いが、昔から天然な性格をしているせいで思春期の男子にからかわれて虐められる事があった。
けれどその度に助けにやって来てくれる彼は、楓の中で立派な【正義の味方】に映り、怒ったりもするけれどそれは自分を戒める為に、あえて強い口調を使ってくれているんだと、一人っ子の楓は兄として彼を認識するようになった。
そこに年齢は関係なく、今でも平然とお兄ちゃん呼びを繰り返しているほどだ。
青年は夢の中特有の、何でも有りな見た目を駆使して巨大な毛玉になったかと思えば毒々しい紫色になったり、天使の羽を生やしたり、挙句に機械的なパーツを生やしたりと、謎の行動を繰り返している。
「あははー、お兄ちゃんってば変なのー」
何処からか、「お前が言うな」と聞こえた気がしたが、どうせ夢なので楓は毛玉な彼をベッド代わりにして、ここが夢なのに更に眠り出した。
意識を手放す前に思うのは当然、お兄ちゃんの事。
昔、3人で近所の林へ肝試しをした時、遠くで光る車のヘッドライトを人魂と勘違いした理沙は、腰を抜かしてまったく動けなくなった事がある。
その状況が、中学生に上がる前の子供にどれだけの恐怖を与えたのかは想像に難くない。
恐怖に駆られて泣きじゃくり、涙を流す理沙に釣られて何だか楓も怖くなって目尻に涙を浮かべた時、青年は2人を勇気付けながら同時に背負って林から抜け出したのだ。
同学年の子がその重量を運ぶのは確実に無理だったはずなのに、彼は一言も文句を溢さず、心配する声すら絶やさずに2人を自宅に送り届けてくれた。
この時、楓は思ったのだ。あの場で動けなかったのは理沙だけ。それでも私を連れて逃げてくれたのはきっと。
ーーー私だけが特別だから。
微睡む意識の中で、今では当たり前になった彼女の価値観だけが怪しく存在感を主張していた。
「すまない。遅くなった」
「あっ、アーチャーさん! そんな私も今来た所ですから気にしないで下さい」
初期村の自然囲まれた長閑な風景に溶け込んだ噴水広場でアーチャーとミィは、いつものように待ち合わせをしていた。
言葉とは裏腹に、明らかに待ちぼうけをさせてしまったミィにキチンと謝罪をしたい所だったが、彼女はその嘘がバレていないと思っているのか、それとも一緒に遊べる仲間と出会えて嬉しいのか、これ以上話題を引き摺るつもりは無いらしく笑顔が眩しい。
気分を取り直して、今日の目標について話し合う。
「さて、森の狩り場に関しては、ほぼ敵無し。…というより場所を変えてレベリングか、ドロップ品を狙ってダンジョンに挑戦したい所ではあるな」
「だったら東の奥に毒竜のダンジョンがあるらしいので、そっちに行ってみません?」
「毒竜か…。あからさまに解毒薬を用意しておくようにと忠告されているようだな」
「フフッ、たしかに」
最初は引っ込み思案な性格だったミィも、リアル側で物心ついた時から幼馴染を世話して来た経歴の持ち主であるアーチャーから溢れ出る父性…というか母性に後押しされて随分と表情が明るくなってきている。
特にアーチャーがロールプレイの一環で意図的に口調を変えていると話題にした時には、臆病な自分でも楽しくゲームが出来るのではないかと、随分と興味深そうに聞いていたので、近いうちに彼女なりの楽しみ方が出来るかもしれないと微笑ましく思うようになった。
そのまま確認事項やたわいもない日常会話の後、ダンジョンに向かおうとして、はたと気付く。
「……そういえば君も私も初期装備のままだったな」
「えっ…あっそういえば…」
視線を街中に移せば、サービス開始から1ヶ月も経たない短い期間にも関わらず、多くのプレイヤーが彩り豊かな服装や武具に身を包んでいる。
赤い大楯を背に歩く偉丈夫や、身の丈を超える斧の持ち主、あえて全身をマントで隠したレンジャー系と分かる人物など。
折角のファンタジーゲームなので個性的な見た目にも拘る人は多そうだと思うミィ。
「一度、装備更新と回復薬の補充でもしておこう。こういう時はテンプレ装備? というのがあるのかね」
ゲーム内の知識については、ミィが何でも聞いてくれと申告してきたので、あえてWiki類の情報を絞っているアーチャーは質問を投げ掛ける。
それに頼られる事が嬉しいミィは、最近有名になってきたある職人の名を出す。
「テンプレも良いですけど、この街にイズって生産職専門の女性がいて、何でもオーダーメイドの武器や防具。その人にあった装備をおススメしてくれるらしいんです」
「ほう…? 一プレイヤーにしては随分と親身になってくれる人なのだね」
「かなりのやりこみ派らしくて、もう自分のお店まで構えているみたいですよ」
「それは凄いな」
「はい! なので私達の変則ビルドでも力になってくれるかと思って…」
そういえばそうだったとアーチャーは思い返した。
自身はSTR特化で通常攻撃こそ弱いが、剣弾による一撃で纏め狩りを基本とする戦闘スタイルだ。そのせいか被弾する事態は今まで訪れず、防御や回避は余り考慮してこなかった。
むしろ初期服を間違って売り払ってしまい、裸扱いのタンクトップ姿に慣れてしまっていた。
そして最初期こそ必要経費として木の矢を購入していたが【矢作成Ⅰ】のスキルをショップで購入し、そこら辺の木を破壊して素材を集めれば、簡単に量産出来るようになったのと、初心者の剣ならばタダ同然で手に入る値段なのが幸いして、資金的にはかなり余裕がある。
ついでに言えば、掲示板ではお金さえ払えば取得できる【矢作成Ⅰ】を前提にSTR型ビルドが否定されていたが、こういった作成系のスキルに関する習熟にはステータスのSTRが一定以上必要になって来る。
つまり本人はまだ気がついていないが、生産職としての側面も彼は持ち合わせており、今後消費コストが高くなるであろう剣ですら、自前かつ望んだ性能で製作していけるヤバそうな可能性を秘めていた。
対してミィの戦闘スタイルはINT特化の短期決戦型。最近では強力な範囲魔法を手に入れ、大量のモンスターを薙ぎ払う火力の持ち主となっている。
反面、アーチャーの資金面と比べてMPへのステータス割り振りが少ないビルドのおかげで息切れを起こしやすく、MPポーションの消費が激しいせいで、やや心許ない。
単純な防御力やINTを強化するより、MPを確保できる装備が彼女には好ましいだろう。
彼女を連れ立って、目的地であるイズのお店に向かって石畳の街中を歩いていくと丁度、人が捌けた後で暇そうにしている女性がカウンター越しに見える店舗を発見した。
「あら、いらっしゃーい」
ドアのカウベルを鳴らしながら店内に入るとライトブルーの髪を揺らす店主と思わしき女性が笑顔で出迎えてくれた。
NPC相手のローカルゲームならいざ知らず、身振り手振り全てが伝わるVRMMOゲームにおいては相手は本物の人間である。
キチンと礼節を持って接するロールプレイを重んじるアーチャーは丁寧に言葉を選んで返した。
「お邪魔するよ、美しいお嬢さん。少々装備品について店主の方に相談したいと思っているんだが、取り次いで貰えるかな?」
「まぁお上手。でも店主はこの私、イズよん」
「ほう、これは驚きだ。生産職として名を挙げる一流の腕を持ちながら、見目麗しい美人でもあるとは…いやはや天は二物を与えずというが、貴方を見ていると僻みより先に目を奪われてしまうな」
「うふふ、なになに〜。もしかして私ってばナンパされてる?」
「フッ…貴方を素直に褒め称えたいと思っただけさ。高嶺の花といえど、言葉を紡いで愛しむくらいは許してくれるだろう?」
アーチャーの中では歯の浮くような台詞も原作キャラが喋ってそう、という免罪符でスラスラと口を突いて出てくる。
幸い、イズもそのノリを理解してくれているようで軽い調子で話を合わせて談笑が続く。
だが、それを快く思わない同行者は動揺がバレないよう視線だけを右往左往させてから、意を決したように口を開いた。
「ーーーすまないがイズ殿。彼と私の分の装備を見繕って貰えないだろうか」
普段の一歩引いた態度と口調から一変したミィに誰よりもアーチャーが驚いた。
なぜか無言で睨みつけられるが、心当たりがない彼は狼狽えるばかり。
しかしミィという人間をこの場で初めて接したイズは彼女が男顔負けの偉丈夫だと勘違いしてしまう。
ーーー内心の彼女は「えぇ〜…焦ってたら固い言い方になっちゃったよぉ…」と顔こそしかめっ面だが、真逆の感情に揺れ動いていた。
「あらあらゴメンなさいね。装備のご相談という事だけど、2人はどんな戦い方をしているの?」
そこから告げられた内容に顔を顰めるイズ。
ミィに関しては資金に難があるのでMP上昇の補助アクセサリーだけの販売となるが、有ると無いとでは大違いだ。
そして彼女の鮮やかな髪と同様に染色した【魔法のコート】をオマケしておいた。
毒竜の付近ではMP自動回復量を底上げする防具がドロップする事も告げておいたので、しばらくは資金集めに余裕が出来るはず。
彼女に関しては消費アイテムも含めればこれぐらいが妥当だろう。
しかしアーチャーの装備については頭を悩ませる。
弓使いは絶対数が少なく、有効な武器や防具の情報が不足している上に彼はSTR特化。
必然的にHP、VIT、AGIといった耐久や回避面が疎かになっている。
重い近接武器ならばHPかVIT。軽武器か魔法職ならAGIかそもそも、火力に振り切るかでビルドが明確に振り分けられるのだが、そのどれでも無いSTR特化というのは何とも判断に困ってしまう。
無意識に唸り始めたイズに申し訳なさを感じながらも時間が掛かると判断したアーチャーは、店内を見て回る事にした。
「………」
棚や壁には剣や槍、斧といった武器から服や鎧に装飾品が所狭しと並べられ、調べて見ればどれもが高性能な代物であり、如何にイズが評判通りの腕前を持っているのかよく分かる。
「………」
残念ながら、弓のラインナップはごく僅かだったが、初心者の弓とは比べ物にならない強さだ。まずはこの辺りから調達すべきか、とアーチャーは考えて資金と性能を吟味していく。
「………」
「……ミィ、先程からずっと私の背後に張り付いているが、何かの遊びかね?」
「へぁ!? べ、べべべ別に気のせいで…おほん! 気のせいだよアーチャー」
「口調まで変わって、気のせいは無理があるのでは?」
イズとの会話以降、ミィとの距離が(物理的に)狭まっていた。
アーチャーが右に進めば右に、左は左へ。そして一歩前に出ればすり足で近寄る。
気になって話を向ければ、ボロこそ出るが凛々しい顔をしてキチンと受け答えが返ってくる様は、以前の彼女とは思えない別人のような立ち振る舞いであり、それが以前打ち明けたロールプレイの一環だと彼は気づいた。
なぜ、このタイミングで?
という疑問はあるが、ミィは頬を赤らめながら何故だか嬉しそうな顔している所を見るに、きっと役を演じるのが楽しいのだとアーチャーは解釈しておいた。
耳を澄ますと荒い鼻息が聞こえるが、女性相手に指摘しずらいのでそこはスルーしておく。
やがて、とある一角に何とも琴線に触れる武器が展示してあるとアーチャーは手を伸ばして性能を確認した。
「イズ嬢。これは…」
「ん? あぁそれ? スキル上げの為に製作したのは良いけど、装備ボーナスがDEXだから人気が無いのよね…ってまさか」
「あぁ、気に入った。…まずはこれを貰おう」
そう言ってアーチャーが取り出したのは弓でも矢でも無く、
【黒と白の双剣】だった。
『ΝewWorld Online』では職業によるキャラクターの住み分けは存在せず、装備する武器種や戦い方によって獲得するスキルが変化して多様性を生み出している。
別に魔法使いだから剣を持ってはいけないという縛りは存在しないせず、装備ボーナスが高ければ優先して使う事もあるだろう。
ただそのまま剣を使い続けて魔法剣士のようなビルドが可能かと思えば、先にアーチャーが述べたように使い続けている武器種にスキル優先度があるらしく、育成は困難を極める。
「うーん、単純にステータスUPの装備品扱いでも良いと思うけど、それなら防具を充実させた方が…」
「心配ないさ」
アーチャーは自信たっぷりに笑い、双剣を手に取ると、まるで曲芸のようにクルクルと回転させて順手、逆手と持ち替えて手触りと重量を確かめる。
その動きは明らかに初心者では無く、手慣れた強者を思わせる滑らかな動き。彼が最初から双剣使いと呼ばれても納得できる巧さだ。
そして、両手の剣を十字に交差させて、感触に満足いったアーチャーは含み笑いで告げた。
「弓兵が双剣を使うのも、面白いとは思わんかね?」
「「は?」」
繰り返し告げるが、アーチャーは【あの幼馴染の世話役】である。
本人は普通のつもりでも、少なからず影響を受けているのは間違いない無かった。
R-15版は、耳かきの時に「ここで告白してくれなきゃ鼓膜を破る」とメイプルから逆に迫られる純愛シーンでしたね。
この小説はとても健全なので大丈夫です。
メイプルが耳舐めAMSRをするまではヤンデレではありません。
普通に欲しい(素)
今後のお話に必要なエッセンスは…
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3人をもっと病ませるべきそうすべき
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キャラ改変はNG 硬派な雰囲気を求む
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バトル展開! 防振り王に俺はなる!
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甘い甘いラブ路線。作者は嫉妬で死ぬ
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オリキャラとか…どう? 出そう?