ヤンデレが怖いので炎帝ノ国に入って弓兵やってます。 作:装甲大義相州吾郎入道正宗
お話しの流れを知りたい方は前話にGO!
ヤンデレ好きな方はこっちだけでも見ていってね!
期待に胸を膨らませていたのはリアル側の彼女も同様だった。
あぁどれだけ今日という日を待ち望んでいたか! 私、白峰 理沙は意気揚々と暗がりの道を歩いていく。
制服が夏服に変わって動きやすい季節になったのは良いけど、日が長くなるとコッソリ動きにくくなるのが弱点なのよね。
今だって本当はもっと早くから動き始めたかったけど、ママに勉強してるってアリバイも作らなきゃだったし、ここに来るまで結構苦労してしまった。
でも、今から起こる一大イベントの前では全てが薄く霞むわ。
だって、楓もアイツもゲーム側のイベントで『一定時間は確実に無防備』になる千載一遇のチャンスなのだから! つまり終了まで誰にも邪魔されず、好き勝手出来る夢のようなひと時。
普段からこういった機会が無いとは言わないけれど毎回、楓が謎の直感を発揮して邪魔されるのよね…。こういう時、幼馴染って関係は本当厄介。勝手に家内に入って怒られたり、警察に通報されたりしないもんね。
でも今なら、アイツとメイプルが同じゲームをプレイしている時こそ、その心配は一切無い。
むしろママからゲーム禁止を言い渡されてラッキーまであるわ。
一緒に遊ぶなら後からでも良いしね!
やがて毎週張り込ん…よく見かけるアイツの一軒家が見えてくると、後はもう少し。合鍵は既に手に入れているし、将来の家族は全員ゲーマーでこの時間帯は各々の部屋に篭って出てこないのは確認済みだ。
一応念のため、玄関の扉をゆっくりと解錠して中を伺う。
伽藍堂の廊下には人気が無く、1階の部屋から大音量の電子音が鳴り響いている事から、お義父様、お義母様揃ってゲームに夢中になっているのを物語っている。
私は後ろ手に鍵をかけ直して、抜き足差し足忍足で奥へと進む。
あぁ、ここからでもアイツの匂いが漂って思わず立ち止まってしまう。
目的の為なら真っ先に部屋に向かわないといけないのに、足が勝手にお風呂場へと向かっていく。駄目だけど…駄目じゃない。だってこんなに匂いをさせてる方が悪いの、むしろ被害者だわ…本当に困じゅるり…。
万が一に備えて照明を点けず、洗濯物カゴへ一直線に向かった私は、ガサゴソと中を漁る事なく一発で引き抜いたそれを見て、海賊王の秘宝を想起した。それはまさしく彼の。
『脱ぎたてのパンツ』
「ふぅ…ふぅ…… スーハー、スーハー…ぐぅぅ…!」
落ち着け、落ち着くのよ理沙。目的を取り違えたら駄目。ここでトリップして時間を消費するわけにはいかないの!
握り締めたパンツから香る魔性のフェロモンから逃れるために、二の腕を思いっきり抓って理性を保とうとする。
危ない危ない…。私は冷静に心を落ち着けて懐から取り出したアイツが持っているパンツと同じ品を交換して、ゲットした方をジップロックへ丁寧に仕舞い込む。
残念ながら下着は一枚しか無いので、ここでの収穫はもう諦めよう。もう一声分、靴下くらい欲しかったところだけど高望みはいけないわね。
盗聴器だけセットしておこっと。
最後にパックに閉じ込めた匂いを肺一杯に吸い込んでから、アイツの部屋へと進路を向けた。
無論、その部屋にも鍵が掛かっていたが合鍵を用意するというのは、ここも当然あるという事。玄関以上にゆっくり慎重に扉を開けて様子を伺う。
そこに広がるのは 普段から盗撮しているから見慣れているが、実際に目にするのは久しぶりなアイツの部屋。
楓がピンク、私が青、ここは赤色が多い特徴が出た内装はシンプルかつ機能的に物が配置されて、普段使いを意識したらしさが現れている。
その中央。周囲にぶつからないよう配慮した位置取りでゲーミングチェアに腰掛けるアイツが言葉を漏らしながらゲームをプレイしている。
来るのが遅れた為、既にイベントが始まっているらしく聞こえるのは力んだり、相手を煽ったりするような一言二言ばかりだが、夢中になっている分、更に気づかれにくいはず。
私はゆっくり…ゆっくりと背後に忍び寄り、スッと見下ろす。
ついにここまで来た……ゴクリと無意識に喉が鳴り、両手がワキワキと蠢いてつい乱暴に触ってしまいそうになる。
今、自室というこの閉鎖空間にいるのは私とコイツだけ。2人っきり。
やや蒸し暑い初夏という事もあって服装は薄手の黒いカッターシャツを素肌に身につけただけの軽装で、毎年この季節になると着ている定番の姿。
もっとだらしない服の方が楽だと思うけど、昔からキッチリした服が好きなのよね。
そう思いながら、確認するようにシャツに片手で触れる。
VRMMOでは現実の感覚をデジタル信号に変換する都合上、リアル側での反応が著しく低下する仕様がある。特に顕著なのは五感の内、触覚、聴覚、視覚の三つで没入感を高める為に半ば催眠状態のように感じてしまう。
つまりそれは残る味覚、嗅覚さえ刺激しなければ、ちっとやそっとの事では動じないという事。
「だから触るわよ…?」
シャツから素肌へ。指を這わせて内側へと潜り込ませると、暖かな体温を地肌から感じる事が出来る。あぁ…凄い。こんなにゆっくり触ったのはいつ以来だったっけ…。
分かっていても興奮が止められない私は、鎖骨に両手を置く。
感じる体温はより直感的に私側へ伝わり、手先の感覚から心臓の鼓動と肺の動きをリアルタイムで感じ取る。
コイツの命を今、私だけが知っている。
その事実が心の内側にある感情を突き動かし、常識という只の枷を取り外そうとする。
駄目だ駄目だと分かっても、どうしてもやってみたい…。
私は期待感から震えながら、そっと首筋に唇を近づけて小さく口を開ける。
あぁ…このまま…このまま無抵抗のコイツの…。
頚動脈を噛み千切ったら、
どんな顔をしてくれるだろうか?
ゾクゾクと駆け上る『支配欲』のうねりに身を焦がすような高ぶりが追随して震えが止まらない。
助けてと哀願するのかな?
訳もわからず見つめるだけ?
怒って拳でも振るう?
あぁ…。
どれにしても、どうしても彼は命尽きるまで私だけを想って逝くのだと、そう考えると愛の告白か、それ以上の愛情表現だと確信している。
死という永遠の離別は悲しいけれど、彼の存在にまさしく永劫、私が刻まれると考えるだけで息が荒くなってしまう。
でも、年相応に恋心を持つ私だっているのも事実。グッと力を入れたい気持ちを抑えて、妥協でその首を舐め回す。
「んっ…ちゅっ…んあ……」
皮膚のすぐ下に大事な血管があるのを確認しながら、べったりと舌の粘膜を擦り付ける。
一瞬、ビクついたように仰け反って頭がかち合ったが気にせず続ける。というより辞められない。
「はぁはぁ……好き…大好きなの……んむっ」
いつもなら決して口に出来ない思いの丈を、聞こえていないのを良い事に連呼しながら、汗ばんで来た彼の汁を舐め取り嚥下していく。
私がここまで彼に夢中になったのは、忘れもしないあの時から。
それ以来、私はずっと恋して、彼を愛する日々を過ごしている。
小学生最後の夏。
夏休みの宿題が終わらないと泣きつく楓に付き添って私とコイツを合わせた3人で夜遅くまで図画工作や日記を捏造していた時、不意に楓が日記の思い出作りにリアリティが無いとか言い出して急遽、肝試しっぽい事をする羽目になったのよね。
…昔から幽霊とかお化けの類が、生理的に寄せ付けない私は断固拒否の姿勢だったんだけど、当時はそこら辺にいる男子程度しか見てなかったコイツと楓が2人きりになると、悪い事が起こるかもっていう謎の恐怖心から、止せばいいのに付いていっちゃった。
肝試しの場所は近所の林。街中でぽっかり空いた未開発の雑木林は今にして思えば、学校のグラウンド程度の大きさしか無い小さな小さな土地。
でも、その規模ですら夜の暗さで先が見えない林が放つ得体の知らなさは、漫画やアニメで見たお化けが出てくる恐ろしい雰囲気そっくりで、楓は能天気に突撃して行ったのとは反対に、私は入る前から足を震わせて立ち竦むのが精一杯。
…だからアイツは、最後尾で私を見守っていたんだと思う。その内、引き返して来た楓に引っ張られてズイズイ進まれると、怖くて振り切りたくても親友の腕を離すのはもっと別の意味で怖くて、目的地であるゴミの不法投棄場所に辿り着くまで私はぎゅっと目を瞑って為すがまま。
明るく「お宝だー!」なんて洗濯機の丸い覗き窓を掲げてはしゃぐ楓を見て、あぁ…これでやっと帰れると気を抜いた瞬間、当時の私にとって何よりも災難で、今の私にとって最大の転機が訪れた。
「ひっ…! あ、ぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
森なんて呼べない、ざっくばらんな木々の枝葉の影から、道路を走る車のヘッドライトが隙間を縫って私を照らしたのだ。
それを恐れていた幽霊か人魂と勘違いした私は絶叫を上げて座り込んでしまう。
楓は心配して何度も声を掛けてくれたけど、感情を制御できない私は嗚咽混じりの涙声を上げ続けて自分の殻に閉じ籠ってしまった。あの子もそれを不安に感じて、とうとう泣く寸前まで追い詰めてしまう。
守りたいと思った親友に迷惑を掛けて、お化けが怖くて動けない私は申し訳なさと恐怖が入り混じって何も考えられ無くなってただ、震える事しか出来なくて。
それを、そっと掬い上げてくれたのが『彼』だった。
ほとんど変わらない背丈なのに、器用に楓を抱き締めるとママがしてくれるようにポンポンと背中を叩いて落ち着かせていく。
その間にもアイツは、「大丈夫、大丈夫。悪い奴はやっつけたから」と私に励ましの言葉を投げ掛け続ける。
やがて隣に腰を下ろすと、「お化けはいないから、休憩しよう」なんて提案して来た。…これも私の中にあった置いて行かれるかもという恐怖心を感じ取って、ここを動かないという意思表示だったのかもしれない。
楓も落ち着いて来たのか、しゃくり声を止めて大人しくなった頃。
ここから出ようと宣言されるも、私は産まれて初めて腰が抜けたせいで、その原因がお化けの仕業だと勘違いして、オーバーフローした恐怖心から気絶してしまう。
次に目覚めた時、最初に感じたのはドクン、ドクンと力強く鼓動を鳴らす心臓の温かみだった。
放心状態で目を開ければすぐ隣にはいつもみたいに朗らかに笑う楓の顔。そしてその下にはアイツが腰を90度近くまで曲げて、荷台みたいに私達を背負う姿があった。
女とはいえ、同い年の子供が2人を纏めて背に乗せるなど普通は耐えられる筈がない。だけどアイツは弱気なんて一つも見せずに、苦しそうな声を出しても、まったく私を責めるなんてせずに笑っていた。
「正義の味方だから」そんな言葉を繰り返し何度も口にして、お化けなんてもういない、だから安心と。林を出て悲鳴を聞きつけた大人がやってくる最後まで勇気付けてくれた。
満足に力も入れられない私は当然背負われるまま、何も出来ない上、叫びすぎて声も出ない。だけど何もしないのは申し訳なくて、感謝の気持ちを伝えるようにぎゅっと抱きついた時、気がついた。
あぁ…ここに生きてる人がいるんだ。
お化けなんて吹き飛ばしてくれる。私を守ってくれる、私だけの正義の味方は本当にいるんだと、実感した。
今ここで生きているという感覚が、空虚な恐れを弾き飛ばして心に暖かな余裕を生む。
けどそのせいで、この時をキッカケに。
死と生を短時間に繰り返し味わった私の中で、決定的に価値観がズレてしまったのかもしれない。
死んでいるのは怖い。怖いけれどヒーローが助けてくれる。
助けてくれるなら。死んでしまえば私の元に来てくれる。
私の元に来て欲しい。だから、
死ぬほど想いを捧げなきゃ。伝わらない。
「もっと私だけを見て…? 好きなの、大好き愛してる…。ずっとずっと前から未来永劫愛してるの。楓と一緒に居てもいい、最後には私を選んでくれるって信じてるから…。好きな事全部してあげるから…どんな酷い事されても受け入れるから…ねぇお願い……私ね、私はヒーローの貴方をーーー」
自分でも分かるくらいネットリした口調で囁きながらも、心の底から愛しさを口にして私の中の熱がジンジンと高まっていく。
いつバレてもおかしくない距離まで近づいて、
陶酔した気持ちで耳に呟いた。
「殺したいくらい、愛してる」
数分後、イベント終了時間前になった私はバレないよう早めに彼の家を出て、ホクホク顔で帰路に着いた。
その直後に楓から怒涛のメールと着信履歴が鳴り響いたが、家に着く10分程度ならお風呂だったとアリバイを誤魔化せる。
ママには突然の外出に驚かれるかもしれないけど、ゲームはしてないし気分転換とでも言っておけば怪しまれもしない。
戦利品も手に入れた事だし、今日は何て充実した時間を満喫出来たのだろう。
口の中には彼の汗と私の唾液が、混ざり合って循環している。
これをあと1時間は楽しんでから、夕ご飯と一緒に飲み込んでしまおう。
そして、そろそろゲーム禁止令も解けるはず。まだどんなプレイヤーで遊んでるか分からないけど、今度からはリアルでもゲームでも一緒にいられる。
そんな当たり前が訪れるのを楽しみで、仕方ない。
楓さえ抑えれば、私の勝ちは揺るぎないのだから。
ーーーその後、白峯 理沙はサリーという名でゲームにログインし、
メイプル、ミィ、そしてまだ見ぬヤンデレ達と、彼というカット出来ないケーキに群がるのだった。
R-18版では、完全にベッドシーンでしたね。(直喩)
大丈夫。今回はもう、何ていうかヤンデレの数え役満みたいなもんだからノーコメント!
さーて次章からのヤンデレさんは…
サリー参戦(ゲージ3本)
炎帝な自称彼女(自己申告)
待ってそっちに腕は曲がらない(曲げる)
つまり、ミィちゃんが本気で病むみたいですよ?
今回のヤンデレさんを見てどう思いましたか? 今後の方向性について。
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もっとエロティックでいいんじゃない?
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ほらほらもっとホラーにして
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純真な告白はヤンデレの特権
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やはり王道を往く、ギャグとか笑い
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BADルートのおまけ単話で独立