雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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おまたせ♡

十刃達の日常?です。

 


幕間:あらんかる達のイチャイチャ

 

 

 

 

 

 

「──よしっ、これでいいかな」

 

 

 英霊宮殿(ヴァルアリャ)での宴会が終わり、所変わって"第10離宮"。

 

 シロちゃんの輝きを堪能し、断界(だんがい)の二千倍時間で愉悦と尊味の発作に一週間ほど悶え愉しんだ桃ちゃん。

 程よく落ち着いたので思考を切り替え、あたしはヤミーの腕を再生させるために彼の離宮へお邪魔していた。

 

 あの山爺の【残火の太刀】に焼き尽くされたのだ。治療は念のため【反膜の糸】による霊体再構築能力を持つ有能ロカ姉貴も一緒のパーフェクト布陣である。

 

「どうですか、調子は? 感覚のズレとか無いといいんですけど…」

 

「ああ、大丈夫だぜ。霊圧も万全以上だ」

 

「よかった。何か問題があればいつでもおっしゃってくださいね」

 

 グーパーを繰り返し腕の様子を確かめるヤミーの姿に、あたしは自然と笑顔が浮かぶ。今回の原作ブレイク"十刃(エスパーダ)再結成"作戦における最大のサプライズが、彼の奮闘だった。

 

 BLEACHのストーリーから逸れる一大計画であり、あたしは失敗防止に考え付く限りのオサレ展開を演出した。そのための場を整える役目を負うヤミーが自由に戦えるよう、彼の従属官(フラシオン)を避難させるなどの布石もあらかじめ撒いていた。

 

 だけどまさかもまさか!

 護廷隊の隊長達があの山爺を含めて八人も虚圏(ウェコムンド)に来るとは思わず、しかも彼ら相手にヤミーがあそこまで粘るなんて更に予想外。

 本人には申し訳なかったが、準備万端な破面軍に「ヤミーさんの誇りを見守りたい」と咄嗟に言い訳して一部始終をこっそりみんなで見物してしまうくらいの高オサレシーンだった。あれにはオサレ警察のあたしもニッコリ。

 

 やっぱり十刃の古参メンバーはヨン様の影響で特にオサレな人たちが多いと思うの桃ちゃん。一気にヤミーの株価がストップ高となった一日でした。

 今後は兄貴と呼ばせてくれ。

 

「では体も元に戻った事ですし……はいっ! クッカプーロです!」

 

「! そいつは…!」

 

 あたしは隠していたヤミー兄貴のワンコ従属官(フラシオン)を抱えて優しく渡す。

 本当は虚圏で彼を救い出す時にザエルアポロに手渡しさせて、【飼い犬との感動の再会】OSRボーナスを狙いたかったが、肝心のピンク野郎があたしが抱いてるクッカプーロをゴミのような目で見ていたため断念したのだ。なんでや。

 まあ戦場は危険だから安全第一にしたと割り切ろう。

 

「…こいつ、雛森さんの飯が旨くてデブったか?」

 

「いや流石にドッグフードは作れませんよ? あたし」

 

 なんかジーッとワンコを見つめてると思ったらそんな事考えてたのか、ヤミーさん。もうちょっと優しい抱っことか見れるかなとギャップに期待してたけどダメそうですね…

 でもワンちゃんとのいちゃいちゃはあたしの目が気になってるだけかもしれないので、ここは長居せずにお暇しましょう。

 

「…雛森さん」

 

「はい、なんでしょう?」

 

 別れの挨拶を交わし、手持無沙汰なロカ姉貴と一緒に離宮の部屋を出る直前。あたしは去り際の兄貴の声に振り向く。

 

「あー…その、なんだ。他の連中もだけどよ」

 

「?」

 

 言い淀むヤミーくんの言葉を待っていると、こちらに背を向けたまま床に胡坐をかく彼が、ムスッと一言呟いた。

 

 

──くたばってねえで何よりだぜ

 

 

 一瞬固まるも、意外と雛森ムーヴの台詞はスラスラ口から出てくるものだ。

 

「…い、いえ。こちらこそご心配おかけしてごめんなさい。ヤミーさんのおかげでこうしてまた皆さんと一緒に暮らせるんですから。本当にありがとうございます、流石"第0十刃"ですねっ!」

 

「お、おう。別にあんなの何ともないぜ」

 

「ふふっ、頼もしい限りです。また夕食時にお話聞かせてくださいね」

 

 呆けた頭で早口に賛辞を贈り、あたしとロカは今度こそ"第10離宮"を後にする。

 

 そしてしばらく無言で廻廊を進み、どちらともなく立ち止まって顔を見合わせた。

 

 

 

 

「………誰、あれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 ここは楽園、虚霊坤(ロスヴァリエス)

 

 起床の鐘が鳴る一時間前。美しい桃色に輝く大星雲に照らされながら、"第3十刃(トレス・エスパーダ)"ティア・ハリベルは一人で廻廊を散歩していた。

 

 敬愛する主人が創造した新たな拠点・英霊宮殿(ヴァルアリャ)へ居を移して早一晩。女王の臣として最低限、城の間取りを頭に叩き込んでいなければと見回る彼女の目は、真剣そのもの。

 

 

「──あら、ハリベルも散歩?」

 

 

 突き当たりの小広間を通り過ぎようとしたハリベルは、そこで先客に呼び止められた。

 

「…ネリエル」

 

「久しぶりね。前にこうして二人で話したのは、あなたがまだ虚だった時かしら」

 

 振り向いた先にいた緑髪の美女を見て、ハリベルは眉を寄せる。長い間空席だった第3十刃の前任者であり、十刃同士の諍いで地位を追われた破面ネリエル・トゥ・オーデルシュヴァンク。

 先の大戦では敵である黒崎一護一味に付いた──裏切り者だ。

 

「貴様が出歩いているという事は、我々への反逆行為を雛森様は咎めなかったと判断していいのか────ネル・トゥ?」

 

「…ありがたい事にね。あの方にはまた大恩が幾つもできてしまったわ」

 

 綺麗に治った仮面の名残を撫で、ネリエルが首を竦める。霊圧が上がっている様子から察するに、古傷の治療のため崩玉で再破面化して貰ったのかもしれない。羨ましい限りだ。

 

「一護達がここに来た時の案内役も任されたし、ホント至れり尽くせり。怖いくらいに…」

 

「ほう、ウルキオラを差し置いてか?」

 

「一護達の客間は"第4離宮"の中だし、彼はそっちの仕事を任されてるはずよ」

 

 霊界秩序における破面軍の地位確立のため、心優しき我等の新女王は他勢力との友好関係の構築に熱心だ。ネリエルへの慈悲は彼女の持つ現世の人間達とのパイプを評価した側面もあるだろう。

 

 ハリベルは主人の決定に異を唱えるつもりはない。この女の裏切りも藍染への造反だったと見れば情状酌量の余地はある。そしてかつての彼女の軍団長への過度な忠誠心と、それ故の地位剝奪も、大いに同情に値する経歴だ。

 

「…いいだろう、私もお前を認めてやる。共に雛森様を盛り立てよう」

 

 ひとまずそう言ってやると、ネリエルは恐縮しながら忠告を一つ口にした。

 

「光栄だけど、あの方は今も変わらず藍染を王として崇めておられるから、言葉には十分気を付けて」

 

「…そうか」

 

「謁見の時に思わずあの男の事で口が滑ったら笑顔で威圧されたわ。雛森様が私達に傅かれる事を好まれないのも、多分…」

 

 恐怖が蘇ったのか彼女が顔を青褪め俯く。ハリベル自身も薄々気付いてはいたが、未だ藍染惣右介を慕っている一途な女王陛下には困ったもの。やはり今の雛森体制を維持するには上も下も意識改革が必要だ。

 

 とは言え、何よりまずは自分が臣に相応しい者にならねばなるまい。

 

「私はこれより練習場を見て回る。お前も来るか?」

 

「ええ、そうしようかしら。私も体の感覚を取り戻さないと戦士としてお役に立てないから」

 

 互いに苦笑し、踵を返すハリベル達。先日同胞が見せたあの大奮闘を頭に描きながら、二人は「負けられない」と大天蓋へ向かって行った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 虚夜宮(ラスノーチェス)を参考に創造された巨大建築、英霊宮殿(ヴァルアリャ)。その中央大天蓋の下には前例通りの広大な砂漠が広がっている。天蓋内部はあらゆる能力の使用が許可された練習場となっており、ハリベル達が訪れた時には起床前にもかかわらず十名前後の破面が自主的な鍛錬を行っていた。

 

 そして彼女達は、そこで手合わせを行っていた意外過ぎる顔ぶれにポカンと顎を垂らす。

 

 

「──ぬぅぅうッ!! 足りん! 足りぬわ! この程度で儂の【死の息吹(レスピラ)】は抜けぬぞ一番(プリメーラ)ァッ!!」

 

「──勘弁してくれ爺さん…! こちとらあんたと違って魂削って攻撃してんだ、気楽にぽんぽん撃てるかよ!」

 

 

 背筋が震えるほど膨大な霊圧がぶつかり合う。砂塵が晴れた上空に、二人の十刃が互いに全力の帰刃(レスレクシオン)状態で戦っていた。

 

「何を臆する、魂なぞあの女に頼めば幾らでも回復できよう! つべこべ言わずその狼共を一匹残らず投じて来んか、若造ッ!!」

 

「…チッ、くたばるんじゃねえぞクソジジイ!!」

 

──群狼の霊閃(セロ・アルマス)──

 

 交差する光と闇。吹き荒れる爆風。周囲から上がる従属官(フラシオン)達の歓声。

 そんな光景を唖然と見つめるハリベルとネリエルは、一分近い間を置きようやく正気に戻った。

 

「……誰あれ?」

 

「俄かに信じがたいが……少なくとも外見と霊圧、能力はバラガンとスタークのものだな」

 

「よかった、私だけまだ鏡花水月にかかってるのかと…」

 

 まるで勇猛な戦士のようなギラギラとした闘志を放つ男破面達。元の傲岸不遜な老王と自堕落な引きこもりとは真逆の戦いを繰り広げる二人の姿に目を疑い、ネリエルは近くで騒いでいた"第2従属官(セグンダ・フラシオン)"へ恐る恐る問い掛ける。

 

「ちょ、ちょっとフィンドール。あなたの主人どうなってるのよ、ヘンな薬でもヤったの?」

 

「…おや、誰かと思えばいつぞやの元No.3殿じゃないか。君も陛下──いや、バラガン様の雄姿を見に来たのかい?」

 

「"雄姿"って、あなた…」

 

 訳がわからず立ち尽くす彼女へ、"破面No.24(アランカル・ヴェンティクアトロ)"フィンドール・キャリアスが感涙と共に語りだした。

 

「ああ、懐かしい…! 君達新参共には意外に映るだろうが、かつてのバラガン様は数多の虚の軍勢を相手に一騎当千のご活躍をされる生粋の戦士であられたのだ」

 

「……あのバラガンが戦士ですって?」

 

「"正解(エサクタ)"! そして虚圏(ウェコムンド)の全てを手中に収めた御方は戦士から王となり、神となられた。君達の知るバラガン様は王になられてからのお姿。あの御方の長き覇道の一部に過ぎないのさ」

 

「えぇ…」

 

 話の胡散臭さに語り部へジト目を向ける美女。そんなネリエルが見えないほど興に乗ったフィンドールが、パリーンと己の仮面を割りながら霊圧と声量を爆増させる。

 

「だ・が! 御自ら、司る"老い"の力に蝕まれたあの戦場にて、虚圏の王バラガン・ルイゼンバーンは崩御あそばされた! そしてバラガン様は復活と共に宣言されたのだ!」

 

『──"最早この身は王に非ず。ただの戦士バラガン也"──とな!!』

 

「うっ…」

 

 途中で会話に加わった他の従属官五人の合声に気圧され仰け反るネリエル。

 

 聞くにバラガンは雛森桃に屈服させられた後、己の最大の誇りである"老い"の能力で戦死した事を契機に、王としての生き様に終止符を打ったらしい。そして生まれ変わった今、王の矜持を捨て去った自由の身で、改めて一から覇道を突き進み己の新たな栄光を築き上げるのだと豪語したそうだ。

 

「…つまりアレは別に性格が変わったとかじゃなくて、昔に逆戻りしただけって事?」

 

「"不正解(ノ・エス・ エサクト)"! 逆戻りではなく"再誕"だよ、元No.3殿」

 

「おお、御身の"老い"の力すら超越せんと心の"若さ"を取り戻されたバラガン様のなんと神々しい事か…! 刮目しろ、俺達は新たな神話の誕生を目の当たりにしているのだ!」

 

「偉大なる戦士バラガン様、万歳!!」

 

『万歳!!』

 

「そ、そう…幸せそうでなによりだわ」

 

 あれが俗にいう内輪ネタで盛り上がる男子という奴だろうか。馬鹿従者達から距離を取り、ネリエルはもう一方の"第1十刃"陣営から戻ってきたハリベルと合流する。

 

「どうやら一番さんの方も心境の変化があったみたいね」

 

「ああ。実際に死を体験したバラガンほどではないが、どうやらヤミーの奮戦を見て思う所があったらしい」

 

「へぇ…」

 

 共にクスリと微笑む女破面達。フィンドールの話には出なかったが、バラガンの方も少なからず影響を受けているはずだ。

 何故ならなんだかんだ言っても、こうして練習場に訪れた自分達もそうなのだから。

 

 

 

「──あァん? てめえ等こんな所に集まって何してやがる?」

 

 

 

 噂をすれば何とやら。近くに新たに巨大な霊圧を感じ、場の一同が一斉にその声の方へ振り向く。上空で戦う二人の十刃も矛を下ろしていた。

 

 投げられた問いに緊張気味に答えたのは、ハリベルと話していた"第1従属官"の童女リリネット・ジンジャーバック。

 

「…ふ、ふんっ、何してんだはこっちの台詞よ! ねぼすけのあんたらしくない早起きじゃない──ヤミー」

 

 彼女達の視線の先には、眼下の同胞たちを楽しそうに見下ろす一人の巨漢が佇んでいた。

 

 

 "第10十刃(ディエス・エスパーダ)"ヤミー・リヤルゴ

 

 粗暴な風体や態度に反し、高い忠誠と不屈の心を持つ戦士であり、前の大戦において敵主力の隊長達八名を相手に大立ち回りを見せた殊勲人だ。普段のギャップも合わさり、彼の英雄的な奮闘にはネリエルも心の底から感服していた。

 

 もちろん誰もが相手を褒め称える素直さを持っている訳ではなく、リリネットのように皆にチヤホヤされるヤミーが気に食わない者もいるが。

 

「大体あんた雛森様にゆっくり養生しろって言われてるでしょ! 一人だけあの人に優しく看病して貰って鼻の下伸ばしちゃってさ、ちょっと頑張ったからってチョーシ乗んないでよねっ!」

 

「伸ばしてねえよメスガキ! いや、雛森さんに腕治して貰ってから霊力があり余ってしょうがなくてよォ」

 

 肩をぐるぐる回しながら「ちょっと暴れてくる」と砂漠を歩き去っていくヤミー。子供相手に凄む大人げなさも以前から変わらないが、隣のハリベルも今はどことなく注意しづらそうに黙している。一目置かれる人物独特のオーラがそうさせるのだろうか。つい先日まで話すのも億劫だった、獣同然と蔑んでいた男だと言うのに。

 

 …なるほど、これはリリネットの気持ちも多少はわかるわね。

 

 

「────ねえ、ヤミー?」

 

 

 らしくないのは端から承知。あるいは崩玉による治療で霊圧が増し、気が大きくなっているのか。

 気付けばネリエルはこの傍若無人な英雄サマを引き留めていた。

 

「あァ? てめえは…」

 

「元"第3十刃"のネリエルよ。十年前の同僚の顔も忘れたの、10番さん?」

 

「知るかよ、十刃の椅子すら守れねえ"雑魚(プリバロン)"なんか」

 

 面倒くさそうに「さっさと用を言え」と顎で急かすヤミーへ、女破面は青筋を立てながら含み笑顔を作る。

 

「よければ私があなたの相手をしましょうか? こちらも雛森様に治していただいた怪我明けのリハビリがしたいし、頑丈な的が欲しかったの」

 

『…!』

 

 ネリエルの挑発に一同が息を呑んだ。相手は"第10十刃"とは言え帰刃(レスレクシオン)を行えば実力差はいくらでもひっくり返る。

 

 だが仲間の自殺行為をリリネットが止めようとした瞬間。

 

「──面白い。私もお前の胸を借りさせて貰おう、ヤミー」

 

「ハリベルまで!?」

 

 ネリエルの案に現"第3十刃"が便乗した。

 

「ちょっとあなた、人の戦いに…!」

 

「こちらも散々カスだの雑魚だの言われて黙ってはいられないのでな。奴の言葉、必ず撤回させてやる」

 

 彼女もネリエルと同じく、秩序を重んじる"人"である以前に"十刃"。誇り高き最強の一角だ。敵だろうと味方だろうと己を侮る者に容赦はしない。

 

 しばしの睨み合いの後、遂にネリエルは折れた。

 

「はぁ…好きにしなさい」

 

「そのつもりだ。気に食わんのなら三つ巴でも構わんぞ」

 

「そう、なら私も遠慮はしないから」

 

 口角を勝気に吊り上げ、斬魄刀を抜く女破面達。二人の鋭い眼光が射貫く先は、最強を豪語するヤミー・リヤルゴ。一触即発の緊張が辺りに満ちる。

 

 …しかしそこへまたしても邪魔が入った。上空より事の一部始終を見下ろしていたスタークとバラガンだ。

 

「フン、小娘共など前座にもなるまい。暴れたいのならさっさとそいつ等を片付けて儂の相手をしろ、ヤミー」

 

「おいおい、あんたら腕試しはいいが喧嘩は止せよ? …あ、バラガンの爺さんが終わったら今度俺な?」

 

「ならば先にせい。儂の後ならば塵も残らん」

 

「おお、言うじゃねえか爺さん」

 

「あ、あなた達まで…!」

 

 どんどん大事になっていく話に頭の熱が冷えたネリエルは頬が引き攣る。言い出した身ながらどうやって収拾を付けようと頭を抱えている彼女、そして割り込んだ戦意十分な三人の上位十刃達。

 

 だが彼らは忘れていた。意思も確認されずに無理やり話が進み、巻き込まれた最後の当事者の事を。その男が司る力の源を…

 

 

 

───てめえら、随分楽しそうな事相談してんじゃねえか。あァ?」

 

 

 

 突如真っ赤な熱風が広大な砂漠に吹き荒れた。咄嗟に振り向いた一同の目に映ったのは、皮膚が罅割れマグマの如き霊圧が煮え滾る、憤怒の怪物。

 

「そんなに遊んで欲しいってんなら、ごちゃごちゃ言ってねえで『纏めて潰してください』って頭下げやがれ──クソカス共がァ!!」

 

『!!?』

 

 早まったかもしれない。肌を焼く凄まじい霊圧に震えるネリエルの視線の先にいたのは、最強の破面。

 

 "第0十刃"ヤミー・リヤルゴが、凶悪な笑みで自らの斬魄刀を解き放とうとしていた。

 

 

「…ぶち切れろ!!」

 

 

 

 

── 憤 獣(イーラ) ──

 

 

 

 

 

 

 

 …なお、戦闘に夢中で起床の鐘など当然聞き逃した彼等は、東仙統括官の卍解で一網打尽にされ無事一週間の飯抜き地獄を言い渡される事になる。

 

 

 かくして本日より英霊宮殿(ヴァルアリャ)の平和な日々は始まるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

バラガンさんは最初期のドワーフっぽいのを意識してます。

次回は多分また幕間。
尸魂界の桃ちゃんです。

 

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