雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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お待たせしました。
すまぬ、時間かかったけど原作シーン進めるだけの回です…

 


全部…修行さんが居たからじゃないか…!

 

 

 

 

 

 

 

†††

 

 

 

 

 

 

 

──黒崎一護と接触した

 

 

 草木が萌える五月初週、夕暮れ時。突如鳴り響いた着信音に携帯を開いた茶渡泰虎は、開口一番の言葉に目を見開いた。

 

『"信用した訳じゃない"とは言われたが、興味はあるようだ』

 

「ム…」

 

 淡々と『俺達の名刺を渡しておいた』と連絡してくる通話の相手。話の内容に茶渡は静かに高揚する。

 

 数度の確認の後。携帯を懐へ戻し、青年はポツリと呟いた。

 

「……一護、やはりお前は…」

 

 家族を、仲間を、大勢の人々を護るため。あいつは今の無力な平穏を捨て去る葛藤に直面している。それは茶渡の心の天秤を大きく傾ける事実だった。

 

 拳を握り締める彼は、一月前の出来事を思い浮かべていた…

 

 

 

Welcome to Our

eXeCUTION

 

 

 

 高三の始業式の帰り。

 銀城空吾と名乗った男から謎の霊能者組織に勧誘された茶渡泰虎は、彼が明かした組織の目的を聞き、思わず応接室のソファーから立ち上がった。

 

──俺達の目的は黒崎一護の  

  死神の力を取り戻す事だ

 

 彼等は多くの事を知っていた。茶渡自身の特異な霊能についても、それが人間に宿る理由についても。全てが衝撃であり、戯言と断じる事の出来ない話ばかりだった。

 

 特に、親友の黒崎一護の持つ、一つの未来の可能性については。

 

「俺達の能力は(ホロウ)の力の影響で芽生えたものだ。お前はまだ力に目覚めて間もなく、味方も居たからわからないだろうが…」

 

──俺達は、この力が疎ましい

 

 銀城のその言葉が真実ではないと茶渡にはわかっていた。入会試験とやらでメンバーの何人かと戦ったが、彼らは皆自身の能力を声高々に自慢し、霊能者としての自分に誇りを持っているように見えた。

 本当に力が疎ましいのなら、かつて虚化を使った一護のように苦しそうな顔をしながら戦っていただろう。

 

 だが、それでも茶渡は彼等の誘いに乗った。こいつ等の本音より大事な事があったからだ。

 

「……本当に一護の力を取り戻せるんだな?」

 

「ああ。昔の仲間だった半死神の協力で実証済みだ」

 

 真実はわからない。確認する術もない。それでもこの出会いは決して逃せない大きなチャンスだった。

 

 たとえ死神の力が戻らなくても、一護に自分達のような霊能、完現術(フルブリング)の才があるのなら。それを開花させるだけであいつは前に進もうとする筈だ。

 

 故に、茶渡泰虎は銀城空吾と握手を交わした…

 

 

 

「───ん?」

 

 そんな希望に満ちた未来を思い描いていると、はたと妙な気配…視線を感じた。霊圧とも敵意とも違う、形容し難い不思議な感覚。

 

 だが気配を辿ろうと茶渡が一歩を踏み出す事はなかった。顔を上げた先の無人の路地。そこに例の気配の正体が、いつの間にか佇んでいたのだ。

 

「……!」

 

 それは、学校で毎日見るあの灰色の女子制服を着た、小柄な女。そしてこちらを見つめるその顔にあったモノに、青年は硬直する。

 

「ま、待てっ!」

 

 直後、不意に女が踵を返した。

 あり得ない。どういう事だ。慌てて追いかける茶渡の中で驚愕と困惑が渦を巻く。

 

 …奴は真っ白な仮面を被っていた。かつて彼の親友、黒崎一護が被っていた──あの虚の仮面と同じものを。

 

 全力で走る茶渡は容易に女の背中に追い着く。されど青年の伸ばした手が、彼女の華奢な肩に届く寸前…

 

「消えた…?」

 

 住宅の塀の角を曲がり、視線が途切れた一瞬。開けた川辺へ飛び出た青年は、仮面の女の姿を見失った。

 

 焦りながら周辺を見渡す茶渡。

 すると、不意に彼の耳に聞き知った男の声が聞こえた。

 

 

 

「───未練がましいのは嫌いなんだよ」

 

 

 そこに居たのはオレンジ頭の青年。この十七ヶ月間、茶渡がずっと頭を悩ませている元相棒・黒崎一護だ。

 

 こんな所で何をしているのか。だが例の仮面女を見なかったか訊きに行こうとした時、彼は一護が起こした凶行に絶句した。

 

「な…」

 

 か細い飛翔音の後、ポチャンと水面が揺らぐ。

 そして一瞬にも永遠にも思える余韻を残し、青年は放り投げたソレへ振り返る事無く、川辺を去った。

 

「…ッ!」

 

 ハッと我に返った茶渡は、靴を脱ぎ棄て川へ飛び込む。

 

 どこだ、どこへ行った。追いかけていた仮面女の事も忘れ、懸命に川底へ潜る青年。

 

 …一護が代行証を投げ捨てた。あいつの手元に残った、死神・黒崎一護の最後の証を。

 

 そこに込められた意味に気付いていながら、茶渡は必死に川を探す。親友が呟いたあの一言が頭を離れなくて。

 

「一護…! 諦めるな、一護ッ!」

 

 やっと希望が見つかったんだ。失った力を取り戻せるんだ。届きもしない声援を彼へ、自分自身へ送る茶渡泰虎。

 

 お前に未練があるのなら、お前が護る力を欲してくれさえすれば、俺は今すぐにでもお前を銀城の元へ連れていく。

 浦原さんのような胡散臭い男だ。信頼できるかはわからない。だけどもし奴がお前の期待を裏切り、誇りを傷付けたなら、俺は必ず奴等と戦い、倒してみせる。

 そのために俺は、この拳を振るうと誓ったのだから。

 

 

「約束しただろう…一護ッ!」

 

 

 濁った水を掻き分け汚泥を掬い、そして遂に、茶渡は見つけた。

 

「ッ、あった…!」

 

 沈んだはずの代行証が浮き上がり、橋下の波の合間を縫うように浮かんでいる。

 霊力を失い、尸魂界も浦原商店も手を引いた孤独な黒崎一護。その彼の手に残った最後の誇りへ、青年は我武者羅に手を伸ばした。

 

 

 …そんな自分を川岸から見つめる仮面の女に、茶渡が気付く事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

†††

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街灯が照らす夕暮れの空座町。

 暗い橋下の河川敷に、ポゥッと緑の霊圧【完現光(ブリンガーライト)】が瞬く。

 

 

「───しーんじらんない!」

 

 

 濡れた服を完現術(フルブリング)で脱水する茶渡へ、迎えに来た仲間の少女──毒ヶ峰リルカは怒鳴り散らしていた。

 

「うとうとしてて川に落ちたですって!? 橋の手摺りで寝るとか一体どーいう神経してんのよ!」

 

「…すまん…」

 

「"すまん"じゃないわよホントにもー。探しに行かされるあたしの身にもなんなさいよね!」

 

 半裸の青年に罵声を浴びせながらも、リルカはポーチのハンカチを投げ渡す。愚図でノロマな馬鹿でも仲間は仲間。風邪を引いたら可哀そうだと心配する程度の人間性は彼女にもあった。

 

 …尤も、こういう時に相手の隠し事をスルーしてやるのがカッコいい女の条件なのだろうが、生憎自分にそんな気の利いた事はできない。

 

「ねえチャド。その代行証、どうするつもりなの?」

 

 茶渡が例の"黒崎一護"と親しい事は銀城から聞かされている。組織の目的に関わる問題を見過ごせず問い質すと、青年は悲しげな顔で白状した。

 

「…あいつが…一護が力を取り戻したいと言うまで、俺が預かる」

 

「何よ、まだ悩んでんのあいつ?」

 

 銀城の誘いに戸惑う優柔不断さといい、どうやら黒崎一護は相当女々しい男らしい。また辛気臭い奴が組織に入るのかと少女は顔を顰めた。

 どうせ"霊界の英雄"などとチヤホヤされて調子に乗っちゃった、冴えないヒョロガリ陰気男に決まってる。

 

 そんな具合に、出会う前の彼に対するリルカの評価は低かったのだが…

 

 

 

 

「──カッコいい     

    じゃないの➜!!」

 

 

 

 …即落ちだった。

 

 戻った薄暗いアジトに招かれていた黒崎一護を散々罵倒した後、「見定めてやる」と彼の顔を懐中電灯で照らした彼女は、ドシャッと崩れ落ちた。

 

 クッキリとした目鼻立ちに透明感のあるヘーゼルの瞳。鮮やかなオレンジの髪が印象的なチョイ悪細マッチョ系イケメンが、床に座り込む自分を心配そうな顔で見下ろしていた。

 

「……大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫じゃないわよ…」

 

 おまけに初対面で罵ってきた女にまで優しいとか無敵かこいつ。

 

 完全に決まってしまった両者の力関係に涙し、毒ヶ峰リルカの心乱れる甘酸っぱい日々は始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

†††

 

 

 

 

 

 

 

 物質の魂を使役する力、完現術(フルブリング)

 

 完現術師(フルブリンガー)と呼ばれる能力者達は物に宿る魂に働きかけ、物そのものを動かし、エネルギーを抽出し、時に形状すら変形させる。

 だがその力が最も強く発揮されるのは、能力者が長く共に接した"愛用の道具"だ。

 

 

「"()()()()()()()()"わ」

 

──ドール・ハウス──

 

 

 その掛け声を合図とし、黒崎一護の姿は少女趣味な箱の中へと吸い込まれた。

 

「な、なんだこれ!? ここで修行すんのか…?」

 

「そうよ、これがあたしの完現術(フルブリング)。気に入ったモノ同士を自在に詰め込み収納する能力よ!」

 

 毒ヶ峰リルカは誇らしげに胸を張る。

 

 完現術の能力は様々な形で具現化するが、彼女の力は根幹の"愛用の道具"という枠組みに入るモノを、自らの好みで無数に増やせるという異様な性質を持つ。

 今回は愛用のボックスの中に一護を招待する形で発動させ、小人となった彼に自由に()と戦って貰う計画だった。

 

「何逃げとんじゃボケェ! さっさと掛かって来んかァァァい!」

 

「うおおおおおお!? なんだこのデカい豚! 暴れるし喋るぞ!?」

 

「近所で拉致ったヤクザのオッサンよ。見た目が可愛くなかったからあたしの"ブタ肉さん"の中に入ってもらったわ。さっさと倒して頂戴──完現術を使ってね」

 

「無理に決まってんだろ!!」

 

 情けない悲鳴を上げながら"ブタ肉さん"の攻撃を回避する一護にベーッと舌を出し、リルカはバーカウンターの沓澤ギリコにお菓子と紅茶を注文する。

 戦う相手はぬいぐるみ。余程当たり所が悪くない限り怪我の心配もない。タイマーの十五分までいじめてやろう。

 

「……そんなに気になるなら助けてやったら? 凄いソワソワしてるわよ?」

 

「は、はぁ!? 別にしてないけど!? 負けるならその程度の奴だったってコトだし!?」

 

 仲の良い同胞のアフリカ系美女──ジャッキー・トリスタンの呆れ声に図星を突かれ思わず狼狽えるリルカ。だが甘さを見せてはならない。これは散々人の乙女心を騒がせた仕返しなのだ。

 

 …少なくとも、リルカ自身はその程度の軽い考えで一護の修行を放置していた。

 

 

 

『───時間です』

 

 

 

 だが開始より十五分が経過し、急に雲行きが怪しくなる。

 

「ぐ…ゥウ、ウォオオオ"オ"!!」

 

「な、何だ…?」

 

 不気味な声音に続き、突如ぬいぐるみが苦痛の叫びを上げながら暴走し始めた。その体はブクブクと泡立ち、リルカが好きだった可愛い"ブタ肉さん"は醜い肉ダルマへと変じてしまう。

 

「何よ…あの()()()()──ッ!?」

 

 しまった。

 リルカは自らの失言に焦る。

 

 少女の能力【ドール・ハウス】はその性質上、一瞬でも「かわいくない」あるいは「好きじゃない」と思ってしまったモノは能力の支配が弱まる。

 

 今、無力な人間である一護の安全を保障する手はどこにもなくなってしまった。

 

「ッ、ギリコ! あんた何してくれてんのよっ!」

 

 焦燥に駆られ、リルカはこの事態を引き起こした犯人へ食い掛る。

 

「はて、一護サンの修行にワタシの能力を貸してくれと言ったのは貴女でしょう?」

 

「方法の話をしてんのよ! なんでワザワザあたしの制御を引き剝がすようなマネを…!」

 

「それが最善と思ったまでの事。ご自身でおっしゃったではありませんか──"負けるならその程度の奴だった"と」

 

 済ました顔で仲間(いちご)を見殺しにするとほざく眼帯の初老男、沓澤ギリコ。唖然とするリルカは、そこで彼の本性を思い出し青褪める。

 

 人間社会に生まれながら"普通の人間"として生きる道を断たれた完現術師(フルブリンガー)は、皆その生い立ちから心を病んでいる者ばかり。だがこの男はその中でも飛び切りの狂人だった。

 

 ギリコの完現術の名は【タイム・テルズ・ノー・ライズ】。定め捧げた"時"を対価に一つの願いを叶える、神との厳格な契約だ。

 

「契約の破棄は神への裏切り。ワタシの定めた時間が経過する前に修行を中止すれば、全てが時の炎に焼き尽くされる」

 

「…ッ!」

 

「信用できない新参者に慈悲など不要。そう思ったからこそ、貴女もワタシに依頼したのでは?」

 

 人選ミスを悟ったリルカは歯軋りしながら一応のまとめ役である男へ詰め寄る。

 

「くっ…銀城! あんたも何か言って──」

 

「このまま続けさせろ」

 

「なっ!?」

 

 だが彼女が望んだ答えは返ってこなかった。

 真剣な面持ちで一護を見守りながら、銀城が語る。

 

「黒崎一護という男はな、"絶望のどん底"という助走があって、初めて上へ飛躍するんだよ」

 

「何よソレ…!」

 

「お前のやり方じゃ一護はいつまで経っても力に目覚めない。言い方は悪いが、あれはギリコなりの一護への期待だ」

 

 始解も、卍解も、虚化も。一護がこれまで手にしてきた力は、全て大きな試練を乗り越えて得たものだ。

 彼の完現術が覚醒するきっかけがあるのだとしたら、それは甘えの無い"本物の絶望"でなくてはならない。そう銀城は断言する。

 

 

「……いや、それだけでは無理だ」

 

「ああ、そうだ。まだ足りない」

 

「な、何? どういう事?」

 

 その推測に隣の巨漢が頷いた。リルカは心配そうに彼、茶渡泰虎へ振り向く。

 

 ぬいぐるみの怪物の攻撃を回避する一護。何かを待っているように、その一方的な展開をジッと見つめる茶渡。

 

 そして、戦う親友の瞳の震えが止まった瞬間…

 

 

「───受け取れ、一護!」

 

 

 茶渡が懐から取り出した片手大のソレを箱の中へ投げ込んだ。

 

「これは…"代行証"? なんでチャドが…?」

 

「すまない…! 偶然だったが、あの時俺は近くでお前の事を見ていた」

 

 木板を手にした一護が目を見開く。

 

「あの時お前が何を考えて、どんな覚悟でそれを捨てたのかは訊かない…! だが今のお前には別の覚悟があるはずだ! 昔のお前がどんな絶望を前にしても失わなかった、戦う覚悟が!!」

 

「…チャド、お前…」

 

 取り戻した代行証。最後の思い出だったソレを握り締め、青年は親友の想いに笑顔を返す。

 

 …だが、肝心なのはここからだ。

 

 

「──グォオオ"オ"ァア"ッ!!」

 

「! ヤベッ…!」

 

 立ち止まった一護に襲い掛かる怪物。辛うじて避けた彼に茶渡は吠える。

 

「一護、よく聞け! 完現術(フルブリング)が目覚めるにはきっかけになる道具やモノが必要だ!」

 

「ッ、わかってるよ! それがこいつなんだろ?」

 

 勝気な笑みで「丁度そうだと思ってた所だ」と代行証を掲げる一護。

 愛用している道具ならギターや携帯、筆記用具など色々ある。だが一護の"戦う力"を引き出しうる愛用品は、今この場に一つだけだ。

 

 そして、その道具の魂を引き出すために必要な想いが…

 

 

──"誇り"──

 

 

「思い出せ一護! お前が死神の力に誇りを持った時の事を!」

 

「死神の力に…」

 

 そうだ。茶渡は叫ぶ。

 俺がじいちゃん(アブウェロ)のお陰で自分の肌に、メスティーソの血に誇りを持てたように。

 

「その代行証は死神だったお前の最後の象徴だ! お前の死神としての誇りの全てを受け止めた時、代行証は必ず応えてくれる!!」

 

 懸命に伝えると、一護が自らの心へ潜り込むように目を閉じた。迫りくる敵の巨腕の目の前で無防備に。

 

「一護ッ!?」

 

 リルカが仲間の末路を幻視し悲鳴を上げる。

 あらゆる現象が遅速再生のようにゆっくりと動いて見える。

 

 …だが茶渡の心に波紋はない。

 

 知る事は全て伝えた。力の源、希望の有無。それさえあれば、あいつは必ず立ち上がる。

 

 

──また一緒に戦おう、一護。

 

 

 そして茶渡の確信の通り。己の希望を掴んだ親友、黒崎一護は…

 

 

 

 

 

『───!?』

 

 

 

 

 その時。

 突然、青年の代行証から、紅色に燃える漆黒の光が噴き出した。

 

「ぐっ…!?」

 

「な、何が起きて…ッ!」

 

「…この霊圧は…!」

 

 膝を突く者。胸を押さえ縮こまる者。まるで周囲の重力が激増したかのような圧迫感に体が軋む。あの十刃(エスパーダ)達との戦いを思い出す凄まじい力の波動。

 

「何だあれは…?」

 

 直後、吹き荒れる霊圧が二つの形に凝固した。

 

 一つは卍字の鍔。

 一つは光の鎖。

 かつて一護が持っていた斬魄刀【天鎖斬月】を彷彿とさせるそれらが、怪物ぬいぐるみの攻撃を寸前で受け止め、巻き付き、一瞬で敵の体をズタズタに絞り千切る。

 

 

 そして解けた鎖が一護の背後に集まり──仮面を被る白い死覇装の女を象った。

 

 

「…ッ、まさか!」

 

 その時。

 茶渡は思い出す。悟る。

 

 夕暮れの空座町で、あの女子制服姿の仮面女が自分の前に現れた理由に。彼女を追いかけた先で、代行証を捨てる一護と偶然遭遇した理由の正体に。

 

 振り向き呆ける一護と、彼を見下ろす仮面の少女。恐ろしい鋭利な眼孔の奥で、涙に潤む琥珀色の目がニッコリと笑った。

 

 

 

 

『───やっと……      

 

             …やっと、()えた……っ』

 

 

 

 

 かくして霊界の英雄・黒崎一護は、霊力を取り戻した(フルブリンガーとなった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

白森「お、お久しぶりです…」

 

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