雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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お待たせ♡
アニ鰤と小説とオリ設定があるのでご注意

詠唱とか術名とか考えてたら時間かかって月島さんの活躍までシーンが進まなかった…すまぬ

 


全部…戦友さんが居たからじゃないか…!

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

「───てめえら、下がれ」

 

 

縛道(ばくどう)の八十六・千幵皎嶂(せんげんこうじょう)

 

 

 それは誰もが呆けた僅かな隙。突如地上の四つの戦場から無数の輝く結晶が聳え立った。

 

「なっ!?」

 

「くそ、鬼道か…ッ!」

 

 捕らわれたのはギリコ、ジャッキー、雪緒、獅子河原の四人。だが慌てて抵抗するも幾重に犇めく霜柱のような拘束術はびくともしない。

 

 

「ほぉ…随分腕を上げやがったな、冬獅郎(とうしろう)

 

 

 一心(いっしん)の感嘆を聞き、銀城の鎖に囚われていた黒崎一護(くろさきいちご)はハッと気付く。

 術者の声。辺りに満ちる懐かしい霊圧。そして見上げた夜空に浮かぶ幾つもの人影。

 

「────!!」

 

 その顔ぶれを見た一護は、自然と彼らの名を歓呼していた。

 

 

冬獅郎(とうしろう)!」

 

恋次(れんじ)!」 「一角(いっかく)!」 

 

   「剣八(けんぱち)!」

 

白哉(びゃくや)まで…!」  

 

 

 忘れる筈がない。かつて共に破面(アランカル)の軍勢と戦い、自分と仲間達の命を救ってくれた護廷十三隊の死神達。

 

 更に驚きはもう一つ。

 

 

「スゥゥゥゥゥ───ッ、なんやねん…! ただ懐かしの現世の空気吸うただけやのに…なんでこない涙が止まらへんねや…!?」

 

「……は? おまっ

 

───平子(ひらこ)!?」

 

 

 何がどうしてそうなったのか、あの(ホロウ)化修行で一護が世話になった仮面の軍勢(ヴァイザード)のおかっぱ男まで一緒に居る。「現世時代よかったなァ…」などと半べそをかいている理由もその死覇装と隊首羽織にあるのだろうか。

 

 そんな驚きと混乱の最中。鋭い目つきで周囲を見渡していた冬獅郎が強烈な霊圧を放ち始めた。

 

「…よし──やるぞお前ら!」

 

「ッしゃあ、目にもの見せたる! 誰もシクんやないで!」

 

「…(けい)に謂われる所以はない」

 

 天才少年の掛声に応えたのはその平子と、長髪の青年朽木白哉(くちきびゃくや)。神速の瞬歩で三人が間合いを改める。

 

 だが彼らの見据える渦中に居たのは、敵ではなかった。

 

「! な、何だお前ら──」

 

「騒ぐな黒崎、少しジッとしてろ」

 

 冬獅郎たちが囲んだのは他ならぬ一護自身。そして鎖に縛られた死神代行へ向け、三人が一斉に何かの詠唱を開始した。

 

「…四象(ししょう)連ねて双爻(そうぎょう)遍し。七柱の曲輪(くるわ)。二十八手の城門。我、銀河の瀬戸にて(かささぎ)を呼ぶ

 

 

織星(しきせい)(けん)

 

 

 凄まじい霊圧と共に現れたのは、光輝く不思議なカギ。水平の鍵歯が扇状に広がる歪で巨大なそれに、妙な既視感を覚える一護。

 

 だが冬獅郎たちの術は尚も続く。

 

亀身(きしん)卜甲(ぼっこう)。        

    (まじな)いを記す白き典巻(てんかん)

 

婺星(ぼうせい)(けん)

 

 

蛇身(じゃしん)骨牌(かるた)。        

    鏡映しの獣の相」

 

須星(しゅせい)(けん)

 

 

 一護の左右で平子と白哉がそれぞれ新たなカギを作り上げる。併せて三つのそれらが放つ霊圧は最早戦慄を覚える規模。

 

勘くて(ひら)(つるぎ)の光錠。  

   羽衣・封霊・天梭(てっさ)の娘」

 

 呪文を受け、稲妻を走らせる光のカギが一斉に一護へ近付く。

 そして遂に…

 

合わさる牙紋が王鼎(おうてい)を認む──』

 

 

 

反鬼相殺(はんきそうさい)牙錠解印(がじょうかいいん)

 

 

 

 黒崎一護を中心に、三つのカギが一つに嚙み合った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 ────カチッ…

 

 

「!? …そういう事かよ…!」

 

 最初に異変に気付いたのは封印の鎖を操る張本人、銀城空吾(ぎんじょうくうご)だった。その彼の驚愕の直後、一護に巻き付く光の鎖がジャラリと力なく解け落ちる。

 

「解呪成功だ」

 

「! 力が戻って…!」

 

 自由になった一護は体の調子を確かめ、慌てて解けた鎖へ目を向ける。

 

「安心しろ、黒崎。あの雛森(ひなもり)の義魂は無事だ」

 

 そんな彼の背に冬獅郎の声がかかった。

 

「【反鬼相殺(はんきそうさい)】。対象の鬼道の霊圧、術式、言霊の指向性を反転させた同等の術をぶつけて掻き消す。つまりお前にかけられていた封印術だけを相殺する鬼道だ。宿る雛森の義魂そのものを傷付ける効果は論理的に存在しねえ」

 

「…ッ、そうか…よかった…」

 

 白髪の少年隊長の説明に一護は胸を撫で下ろす。銀城の霊圧にも変化がないため間違いはなかったのだろう。

 

「……」

 

「…冬獅郎?」

 

 ふと視線を感じ振り向くと、隣の少年がジッと何かを含むような目をしていた。再会を喜ぶのとは違う何か。

 不機嫌そうに唇を尖らせる彼がしばしの後に、ポツリと呟く。

 

「…随分、仲イイんだな」

 

「?」

 

 主語が分からず聞き返すも、少年はそのままつーんとそっぽを向いて歩き去っていく。「何なんだ」と追及しても訊く耳持たずな彼に、一護は首を捻るしかない。

 

 

「──久しぶりだな、一護」

 

 

 その微妙な空気の中に声が入り込む。見知った仲の赤髪男と、その数歩後ろからこちらを見つめる坊主の槍使いだ。

 

「恋次。一角も」

 

「一護…」

 

 思い詰めた顔で何かを言い淀む阿散井恋次(あばらいれんじ)班目一角(まだらめいっかく)

 だが二人がその胸の内を明かす前に、新たな足音が沈黙を破った。

 

 

「白哉」

 

 

 佇む人物は鋭利な美貌の大貴族、朽木白哉。彼の無言の咎めに副官が言葉を詰まらせる。

 

「朽木隊長、俺…」

 

「その話はしばし待て、恋次」

 

「っ……、……はい…」

 

 数度の逡巡の後、恋次が渋々引き下がった。そんな重い空気の死神達を一護は気まずい思いで窺う。

 

 さりとて白哉の第一声は、彼の予期せぬものだった。

 

 

「黒崎一護。(けい)と話がしたいと申す者が居る」

 

 

 唐突な話に目が瞬く。この四大貴族家当主が斯様な改まった前置きを必要とする相手に一護は心当たりがない。

 

「え…?」

 

「もし、(けい)に否がないのであれば…()()がここへ来るのに冒した数多の危険も、対価に足り得よう」

 

 "立場上、現世へ足を運ぶ事が容易く叶わぬ者だ"。そう述べた白哉が背後を一瞥し、道を空ける様に一護の左手側へ後退した。

 

 

 

 

 そこに居たのは──幼い童女。

 

 

 古風で楚々とした佇まい。隊長達のものに近い詰襟の白い羽織。頭頂に結われた冠型の牽星箝(けんせいかん)。そして彼女を守るように囲む恋次ら一部隊長格たちの凛とした姿勢が、当人の高貴な身分を表している。

 

 とはいえ、その小さな口から発せられた声は外見相応にたどたどしかった。

 

 

「…お初に御目文字いたす、二代目死神代行・黒崎一護殿。私は中央四十六室(ちゅうおうしじゅうろくしつ)四十賢議員、阿万門(あまかど)家二十五代当主阿万門ナユラ(あまかど    )と申す」

 

 

 まじまじと相手の子供を見つめてしまう一護。離れた所で成り行きを見守っていた一心も彼女を凝視している。

 "ナユラ"なる童女が名乗った地位は、死神にとっての絶対の掟を司る立場。瀞霊廷(せいれいてい)を支配するその最高権力者の一席であった。

 

 無理を言い朽木家の御所(びゃくや)殿に同行させて貰ったと述べた彼女が、沈んだ表情で一護に語り掛ける。

 

「黒崎殿、我等の悪名については其方も少なからず聞き及んでいる事と存ずる」

 

「"悪名"…」

 

「然様。其方が救った朽木家の姫君(ルキア)の処刑を決定し、其方を藍染惣右介との戦いの先兵として利用し……そしてこの十七ヶ月間、其方にただの人間として生きる事を強いた者達。これまで貴殿を苛んだあらゆる苦痛の責は、我等にある」

 

 そう始まったナユラの話は、瀞霊廷(せいれいてい)上層部の腐敗と堕落を赤裸々に自白するものだった。

 

 長い尸魂界(ソウルソサエティ)の歴史を記す大霊書回廊の元司書長で、知に富む阿万門ナユラ。しかし京楽春水(きょうらくしゅんすい)吉良(きら)イヅルなど貴族出身の護廷隊士達と共に隊舎や流魂街(るこんがい)を視察し、彼女は四十六室の醜い本質を知ったと言う。

 

「藍染の投獄後、黒崎殿に死神の力を改めて譲渡すべしという意見は多く寄せられていた。…だが、当時の私はそれらの進言を退けた」

 

「……」

 

尸魂界(ソウルソサエティ)の掟は全ての人間と魂魄を保護するためにある。私は遥か古の世に作られたそのカビだらけな法を遵守し判を押した。それが英雄である貴殿の望みか否かも確認せずに…」

 

 ナユラは他の者達と同じく、藍染の四十六室虐殺の後に就任した新任賢者である。故に意思決定の大半を過去の例に頼らざるを得ず、また虐殺で揺らいだ権威を取り戻すため令より律に重きを置き、結果藍染誅伐の立役者に多くの不義理をしてしまった。

 

 彼女はその事を深く恥じ、今回の護廷十三隊の独断専行を黙認した責を負うと同時に──公的には叶わずとも──中央四十六室を代表する者として、黒崎一護の前に立っていた。

 

 

「黒崎一護殿。この阿万門ナユラ、我ら死神の因縁に其方を深く巻き込んだ事…更に受けた恩を恩とも思わぬ穢多賤人が如き所業を──切に伏してお詫び申し上げる」

 

 

 そして童女が、深々と頭を下げた。

 

「…私は従来の、天律に範を取った中央の悪習を改めようと考えている。当代の賢者には同じ考えを持つ者も少なくない。彼らと共に貴族層に蔓延る令治の忌風を掃う事が出来れば…尸魂界(ソウルソサエティ)は大きく変えられる」

 

「…!」

 

「覆水不返、我々の犯した罪が消える事は永劫ない。せめてもの償いとして、我が生涯を中央四十六室の改革に捧ぐ事をこの場で誓う」

 

 首を垂れたまま言を重ねる彼女が、声に力を籠める。

 

「そして我等の改革が叶った暁に、他の何よりも先んじて…」

 

 

──改めて、黒崎殿の下へ   

   謝罪と報告に参上いたす

 

 

 そう締め括り、阿万門ナユラは閉口した。

 

 

 長い沈黙が場を支配する。死神達も、現世の仲間達も、XCUTIONの完現術師(フルブリンガー)も。一護達の蟠りを余所にニヤニヤ強敵を吟味していた更木剣八(ざらきけんぱち)も、驚きを顔に浮かべている。

 ナユラ自身が形容した、"青臭い子供の理想"。未熟な身で多くの悪をみてしまったのであろう彼女の夢に、誰もが聞き入っていた。

 

 一護は謝罪する童女を見る。

 固く握り緊められた小さな拳。緊張に竦む華奢な両肩。その宣言に込められた覚悟は如何程のものか、青年には分らない。

 

 だが。黒崎一護という男は、妹より幼い姿の少女の健気な勇気を認められない程狭量な人間ではなかった。

 

 

「…頭、上げてくれよ」

 

 

 ビクリと震えるナユラに苦笑し、一護は彼女の髫髪を優しく撫でる。

 

「ありがとな、あんた。小せえのに色々頑張ってくれて」

 

「…っ」

 

「助かるよ。あんたがそうしてくれた方が、多分──恋次たちも暗い顔しなくて済むと思う」

 

 そう言い残し、青年はナユラの後ろで俯く死神達へ笑顔を送った。

 

「一護…」

 

 目を潤ませる厳つい男共を可笑しく思いながら、大袈裟にドン引きの仕草をする一護。

 

「だーもう! 誰だよお前ら、さっきからどんよりしやがって! 辛気臭えんだよ、気持ち悪っっる!」

 

「き、"気持ち悪い"!? お、俺達はお前に山ほど負い目が…ッ」

 

「そーゆーのが辛気臭えって言ってんだって!」

 

 尚も緊張が残る彼らに溜息一つ。一護は地面を見つめながら、肺に溜まった熱を吐き出した。

 

「……正直、俺もここ最近はかなり凹んだよ。代行証の事とか、前々から"変だな"って思ってたモンが一気に来たりしてさ…」

 

 今でも不満がないと言えば噓になる。

 

「でも、ルキアが来てくれた。浦原さんも頑張って俺の力を取り戻す方法を用意してくれた。恋次たちも、俺の為に死神の力を渡してくれた」

 

 それに何より。

 

 

「お前らは命令違反してまで、俺を助けに来てくれた」

 

 

 一護にとって、それだけで十分だった。

 

「お前らとはお互い大切なモンのために、敵としても、味方としても戦った。お前らがどういう奴らかってのはそん時に解りきってんだ」

 

「…!」

 

「ルキアを救って、それをお前らが認めてくれた時、気付いたんだよ───護廷十三隊(おまえら)は…俺の仲間なんだってな」

 

 元より護廷十三隊の抱える組織的しがらみについては朽木兄妹の件で理解していた。今も恋次たちを見れば彼らなりの深い葛藤があったのだと納得できる。彼らでもどうしようもなかった事をぐちぐち言うのはカッコ悪い。

 

 ボソリと「お前って奴は…」なんて苦笑する恋次を見て、これ以上の言葉は要らないはずだと一護は面映ゆい気持ちで笑う。

 

「いや、それでも謝らせてくれ…! すまなかった、この通りだ!!」

 

「だから別にいいって言っただろ? ったく、調子狂うぜ…」

 

 それでも謝罪してくる死神達の律義さに胸の閊えが完全に消えきった一護は……曇りなき眼で、一人の男へと向き直った。

 

 

「──そう言うワケだ、銀城!」

 

 

 見据える先には言動巧みに護廷十三隊との決別を唆してきた難敵、銀城空吾。

 

「あんたやこいつ等から色々訊いたけど、やっぱり尸魂界(ソウルソサエティ)そのものについては何とも言えねえ。勿論例の"中央なんちゃら"ってのも、この子(ナユラ)が変えてくれるまで仲良くなりたいとは思えねえ」

 

 否、"唆した"と両断するのは穿ち過ぎか。銀城の話に嘘はなく、その溢れる憎悪と悲憤は確と一護の心に響いていた。

 

「だけど、あんたにとって尸魂界(ソウルソサエティ)の全てが憎くても……俺にとっては気に食わねえモンが全部じゃねえ」

 

 そう。彼と自分、違う所があるのだとすれば…

 

「だから悪ィな。俺はあんたと出会うずっと前に」

 

 

──戦友(なかま)を信じるって…   

 

        俺の〝魂〟に誓ったんだ

!!!   

 

 

 それは、彼らのような信を置ける友人達との、出会いの有無なのだろう。

 

 

 

「……そうか」

 

 銀城が一言、そう呟く。一護と、彼を囲む死神達の絆を遠目に認めながら。

 

 

 

残念だ──

 

 

 

『ッ!!』

 

 直後、男が全身から爆発的な霊圧を放った。

 

 

「…白状するとな、こうなる事は最初から解っちゃいたんだ」

 

 巨大な力の奔流が大気を震わせる。その中心でゆらりと項垂れ、不気味に語る銀城空吾。

 

「ただ、確証が…いや、自分を納得させるだけの"本物"ってモンをこの目に焼き付けねえといけなかった。俺とお前の何が違うのかってのをよ」

 

 彼の、本心からの言葉だった。遺憾の未練に別れを告げ、銀城が閉じていた目を開ける。

 

 そして。

 

 

 

月島(つきしま)ァ!!」

 

 

 

 轟く男の声が、無事な最後の仲間の名を呼んだ。

 

「いつまで遊んでやがる! 腹を括れ! 祈りを済ませろ! 俺はもう、要らねえモンは全部捨てたぞ!!」

 

「ッ、まさか……チャド!!」

 

 一護は咄嗟に周囲の霊圧を探る。

 だが、無い。最恐の敵との一騎打ちを申し出た親友の霊圧が、不自然なまでに消えている。

 

 

「──それが君の答えなんだね?」

 

 

 その時。狼狽する一護の前に突如、一人の男が現れた。

 激しい戦闘を物語る、荒んだ姿の月島秀九郎(つきしましゅうくろう)

 

「どうした、随分苦戦させられてんじゃねえか。井上と戦ったギリコみてえに雑魚と油断したか?」

 

「馬鹿言え銀城。君が呑気に一護(オモチャ)とおしゃべりしてたから僕が代わりに色々気を配る羽目になったんじゃないか」

 

 片や交渉、片や暗躍。悪態吐きながらも二人は勝気に笑い合う。それは何人たりとも間に入らせない互いの強い絆を誇示するようで、されどどこか達観したような、虚しい笑顔だった。

 

「…お陰で決心がついたよ。元々君に拾ってもらった命さ、最期まで付き合ってやる」

 

「ハッ、何ふざけた事言ってんだ! "最期"なんてモンは永遠に来ねえよ!」

 

 そして、栄あるXCUTIONの創始者である二人の完現術師(フルブリンガー)が、互いの剣を、霊圧を交差させ…

 

 憎き死神達へ突き付けた。

 

「何故なら俺とお前が組んで倒せねえ敵なんて」

 

 

 

 

 

 

──この世の何処にも居ねえんだからよ

!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

シロちゃん、臓器鍛錬で基礎力UPと鬼道重点戦法伝授で悦森式OPB英才教育済み。
ちなみに【連述詠唱】は限られた漫画ページ数で同時に複数名のOSR値を加点できそうと悦森が【牙錠封印】解除に採用。元ネタは原作ルキア処刑の"燬鷇王"発動に鬼道衆が使った詠唱法です。

ナユラちゃんは閉幕話以来の抜擢。J読者の四十六室ヘイトを唯一清算してくれる天使。本誌で出せ定期
なお悦森を探るなどSAN値的意味で月島さん素質大。今はまだ無事


次回:今度こそ月島さんSAN値チェックその1(ほんへ








───────────────










『────ハッ、「愛の鞭」か』


 蒼い摩天楼の精神世界に、白い青年の人影が一つ佇んでいる。邪気に満ちた彼の声はとても楽しげだ。

『らしくねえ甘っちょろい言葉を使うじゃねえか、"斬月"さんよォ』

『……』

『そんなに心配か? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 核心を突くような"白"の言葉に、しかしもう一人の住人は無反応。その様子が愉快だったのか、青年が真逆の色を纏う男へ探るような流し目を送った。

『それともあれか、消えちまった仮面の姐さんになんか思う所でもあんのか? …ククク、わかるぜ。似た者同士の境遇だからな、あんた等はよ』

 果たしてそれにどのような裏があったのか。だが事実。黙していた黒ずくめの男は、"白"の嘲笑に初めて眉を顰めた。

『…随分と上機嫌だな、ホワイト。自由の身が余程喜ばしいか?』

『おいおいキレんなよ、これでもあんた等には同情してんだぜ? 俺の母上サマも、千年後の■■■■■■も、どっちも面影皆無なトンでもねえ化物だって話だからな!』

 堪らなかったのか『ハハハハ!』と笑い転げる青年を、男が鋭く睨む。

『あぁ、愉しみだ! あの人が俺達の為にどれ程デケえ戦場を用意してくれんのか…! 想像するだけで涎が止まんねえ!』

 一頻り笑った彼は、摩天楼の森へと去りゆく途中。凶悪に口角を吊り上げたまま最後にそう言い残した。

『気張れよ、"斬月"さん。こっからだぜ? 直に来る地獄を一護が生き延びるには───あんたの協力が不可欠なんだからよ』




 そして残された男は、徐に一人空を見上げる。
 彼の心の内は、風にはためく闇の外套が物語っていた。

『…聞こえているだろうか、名も無き哀れな人形よ』

 切なげに、男は遠くへ問いを投げる。十年を超す時を共に過ごした悲運の友人を、慰める様に。

 否、聞こえずともよい。無垢な一護(こども)へ優しい嘘を吐いてやる事くらいしか、あの仮面の少女にしてやれなかった己の言葉など。彼女の耳に届く価値はないだろう。

『…ならばせめて、同志として。御許へ戻るお前に一つ、伝言を頼みたい』

 我等の声を、覚悟の証を。


──『思い違うな』と



 男は虚空を強く睥睨する。奴の目に映るように。耳に届くように。

 その先に居るであろう、可憐で傲慢な観察者へ…


()()()よ。一護を導くのはお前などではない。あの子に正しき道を示すのは』






──この私だ










 

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