雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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おまたせしました
それとごめんなさい、リアルの生活環境が変わって執筆時間がどれほど取れるかまだ分からないので、とりあえず書き終えているところまでで投稿します。
次回の更新は未定ですが、今月中にはエピローグという形でもう一話投稿して、月島さん篇を締めくくりたいと思います

千年血戦篇はまだ何も決まってないので見切り発車な設定ガバガバ展開か、本編開始までの破面軍陣営や尸魂界の日常的な話を数話投稿しつつプロットを練っていく感じにします
そちらもお楽しみに!


…ちなみにコメントでご指摘頂いた例のアレは実用性より容姿OSR値を重視した悦森氏の自己犠牲()なので、用の際には毎回ホックを外す手間をかけてます(どうでもいい情報

 


全部…銀城さんが居たからじゃないか…!

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 それは突然起きた。凄まじい冷気の暴風が肌を裂き、慌てて振り返った月島秀九郎(つきしましゅうくろう)は、そこで堪らず絶句した。

 

 自宅の洋館裏の雑木林にぽっかりと空いた陥没地。まるで隕石跡のような破壊の光景は極地もかくやと凍てついており、見渡す限りの木々草々が余さず生気を奪われパラパラ、ポキポキと氷の灰へ化してゆく。

 

 その銀世界の中央に、小さな人影が蹲っていた。

 

「な……」

 

 胸を貫き完全に戦意を奪ったはずの死神が、起き上がっている。かつてない規模の霊圧の奔流に身を包んだ少年、日番谷冬獅郎(ひつがやとうしろう)が。

 

 

 

「────驕ったな、月島」

 

 

 

 氷の地獄に木霊する幼げな声。直前の瀕死の奴とは真逆の、威厳すら感じるそれに月島は思わず息を呑んだ。

 

「……解せないね」

 

 それでも冷静さを失わないのは意地か、はたまた元の達観した精神の賜物か。純粋な疑問を胸に月島は少年の様子を観察する。

 特に、その背後に浮かんで然るべき三つの造形のありかを。

 

「もう君の卍解の解放限界は過ぎている。なのにあの氷の花が散っても卍解が解けないどころか、霊圧が増している」

 

 その力の源は一体なんだ。

 

 本心の問い掛けだった。だが倒したはずの敵が蘇った事に驚きこそすれ、青年は心のどこかでその答えを知っていた。

 

 かつて黒崎一護(くろさきいちご)がそうであったように。異なる過去を生きながら彼の絶望に涙を流した井上織姫(いのうえおりひめ)のように。そして先程の茶渡泰虎(さどやすとら)のように。

 あるいはこの子供も"そう"なのか、と。

 

 

「…らしくねえ疑問だな」

 

 見えない何かに魅入る月島の心中を余所に、冬獅郎が静かに口を開く。

 

「背中の氷花が散るまでが卍解の解放限界、か……確かにそうだ。俺の卍解は完全に会得したとは言えねえ不完全な状態。てめえらにガキだの未熟だのと罵られて当然だ」

 

「……」

 

「だがな、俺が一体いつ…」

 

 

──この花弁が、卍解自体の 

   『時間限界』だと言った?

 

 

 その一言に月島はピクリと瞼を顰め、瞬時に脳裏の【本】を捲る。だが冬獅郎の周囲の死神や敵が彼の卍解について推察を述べた"過去"はあっても、冬獅郎自身がそれを肯定した場面は一度もない。

 

「一年半前の弱え俺は、どれだけ無茶をしても雛森を止められなかった。あいつの斬魄刀(とびうめ)に『口ほどにもない』って嘲笑われて…氷輪丸も随分とキレてやがったぜ。自分の本当の実力はこんなモンじゃねえってよ」

 

「…まさか」

 

 そして月島の得心を、少年自身が言葉にした。

 

 

「俺が今まで卍解を長時間使用しなかったのは、霊圧を持続させられなかったからじゃねえ。俺の未熟な体が──【完成した大紅蓮氷輪丸(だいぐれんひょうりんまる)】の巨大な力に耐えられなかったからだ」

 

 

 綴られた真実に呼応するが如く、冬獅郎の霊圧が爆発的に高まっていく。

 

「てめえは倒れた俺を捨て置くべきじゃなかった。銀城空吾(ぎんじょうくうご)から貰った力に驕り、たとえ俺が立ち上がろうといつでも仕留められると慢心した。奴を援護するにおける最たる悪手だ」

 

「…言うじゃないか、偽りの過去に翻弄される弱者のクセに」

 

 真に己の力に驕っているのはどちらの方か問うまでもない。確かに今の冬獅郎の状態は、月島が集めた【本】にすら載っていない秘中の秘。余程自信があるようだが、何故そこまで傲慢になれるのか理解に苦しむ。

 たとえどれ程強大な力であろうと、過去を操る僕の完現術(フルブリング)の前には全てが無力。人の心も、霊圧も、何もかも。

 

 だが…

 

 

「──それが"驕り"だと、言った筈だぜ」

 

 

 少年がそう断言した直後。

 

「なっ…!?」

 

 月島が異界で綴る"過去"の物語。同時に戦う五人の護廷十三隊の隊長格を題材とした五冊の【本】に、信じ難いページが現れた。

 

 

 

 

†††

 

 

 

 

「──ごちゃごちゃ五月蠅えよ、秀九郎」

 

「──ハッ! 更木隊を舐めてんじゃねえのか、月島サンよぉ!」

 

 月島の弁舌を両断し、更木剣八が、班目一角が凶悪な笑みを浮かべる。

 

 本物だろうが偽物だろうが、俺と殺合(しあ)った実力に変わりはねえ。なら空虚な思い出に浸るより、今目の前の快楽に集中しようじゃねえか。

 強え奴と相見えた十一番隊は、何よりもその幸運に感謝する。過去も未来もそこにはなく、そいつを斬れる大義があるのなら惜しまず己の武を振るう。あの人の背中を見てきた俺達は皆その愉しみを知っちまってんだよ。

 

 そんな刹那的な欲望が剣の嵐となって月島秀九郎に襲い掛かる。

 

 

「──戦いの狂気に浸る愉しみか」

 

 更木隊長(あの獣)の性を理解する屈辱に見合う代償だ。

 瞬時の機転。朽木白哉が掌に隠し持った刃の花弁が、月島の胸を穿つ。十全な鍛錬に裏打ちされた強さとはかけ離れた彼らしからぬ暗器の一撃は、故に全てを既知とする青年の完全な隙となった。

 

 

「──わからねえ。だけど、感じるんだ…!」

 

 あいつの想いを。あいつの"魂"を。

 

「──一護(あのハゲ)は寂しがり屋やからな」 

 

 皆から「頼り甲斐ある~」て人気な平子隊長が面倒みなあかんねん。

 

 阿散井恋次が、平子真子が、恩人を斬る悲痛をねじ伏せ挑んでくる。口々が綴る名は、あのオレンジ頭の死神代行。

 初代たる銀城空吾とは違う道を選び、そして立ち向かった──黒崎一護の名であった。

 

 

「…なんの冗談だい、これは?」

 

 剣撃をいなしながら、防ぎながら、喰らいながら、崩れ落ちながら。彼等との戦いで不覚を取った【月島秀九郎】たちは、其々に問う。

 

 …こうなる予感はあった。それでも対策を講じなかったのは、無自覚にもしかしたらと、期待と形容するにも満たない塵芥のような好奇心があったのかもしれない。

 

「僕は君達の英雄だろう? 黒崎一護と何も変わらない…君達の心の闇を掃った恩人じゃないか」

 

 なのに一体何故、こんなにも違うのだろう。僕と接した過去は黒崎一護より長く、深いものだったのに。

 僕とあいつの一体何が、君達の中で違うというのだろう。

 

 日番谷冬獅郎の復活とほぼ同時。異なる過去世界で死神達の逆転劇を目の当たりにした青年は、湧き上がる激情に自らの理性が削がれる様を自覚していた。

 

 そんな月島の動揺を、死神達の一人──朽木白哉(くちきびゃくや)の台詞が煽情させる。

 

「認められぬか? 偽りの過去が敗北した事実を」

 

「…!」

 

 然も在りなん。かつての我等であれば彼の力の前に膝を屈していただろう。月島秀九郎を無二の恩人として崇め、その正体に絶望しただろう。

 

 しかし、我等は知っている。百万年の不変を覆し、尸魂界(ソウルソサエティ)を変えた者を。我等に新たな道を示し、誇りを護ってくれた真の英雄を。

 

 月島が築いた偽物の絆が敗れたのは、たったそれだけの、大きな大きな差だった。

 

 

「……(けい)は確かに、私の恩人だ」

 

 倒れ伏す月島へ、死神が感謝と共に答える。

 亡き妻と本家の蟠りを解した一生の恩がある大貴族の当主。掟の為ならば義理の妹すら捨てると一族の墓前で誓った、厳格な男。

 

 そんな死神が…

 

「だが、(けい)は」

 

 

──黒崎一護の敵だ

 

 

 ならば相手が誰の恩人だろうと、殺すに瑣少の躊躇いも無い。そう言い残し、死神は二百年共に連れ添った親友に踵を返した。

 

 そしてそれは──あまりに理不尽なその答えは──月島にとって酷く、酷く腹立たしい事だった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「……ふざけるなよ」

 

 

 大気を軋ませる膨大な霊圧。

 

 望まざる結末を迎えた脳内の【本】を投げ捨て、月島は右手の剣を力の限りで握り締める。

 溢れる怨嗟の矛先は眼前に佇む無垢な子供。奇跡を信じて手元へ呼び寄せた、日番谷冬獅郎だ。

 

「死神風情が…アイツを裏切った連中が…! 今更何を偉そうにほざいてんだよ…ッ!」

 

 凍り付いた大地を蹴る。卓越した完現術(フルブリング)の技が瞬く間に少年を月島の間合いに捉える。

 

「何故お前等までもが"それ"を持っている! お前らと他の奴等の何が違う!」

 

「……」

 

「そんなに誰か一人のためにこの僕と戦えるなら…! 本当の恩人を忘れない気高さを持ってるなら…! なんで…」

 

 そして無言で閉目する幼い死神へ、青年は有らん限りの霊圧を叩きつけた。

 

「なんでアイツを──」

 

 

 

銀城(ぎんじょう)を裏切ったんだ!!

 

 

 

 …それは空虚な喚声だった。同時に彼の偽らざる本当の怒りだった。

 

 だが、振り下ろした刀の衝撃で爆発する雪煙の中にて。

 月島の渾身の袈裟斬りは、硬質で冷たい何かに阻まれた。

 

 

「───黒崎には感謝してる。俺が忘れかけてたモンを、あの場で思い出させてくれた」

 

 

 声が聞こえる。子供特有の幼い甲高さが消えた、凛々しい声。

 そして風に流れる吹雪の渦の、その奥で。

 

 月島は見た。

 

「なんだ、その力…その姿は…!」

 

 思わず零れる唖然の声。そんな彼へ、吹雪に包まれる日番谷冬獅郎は、有り丈の想いで返答した。

 

 

 …愛する少女を二度と泣かせない、誰よりも強く純粋な想いで。

 

 

「一瞬だけ見せてやるよ、月島秀九郎。コイツが俺の…」

 

 

────雛森(ひなもり)を護り抜く…

  

        誓いの証だ

!!!   

 

 

 

 直後。

 月島の支配する全ての【本】が、四界の隅々に至り──凍り付いた。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

──すまねえ、月島… 

 

 

 激しい金属音が深夜の鳴木市に響き渡る。始まりの相棒に背中を向け、銀城空吾(ぎんじょうくうご)は長年の悲願の果てに、一人の人間の青年と対峙した。

 

 青年の名は黒崎一護。

 奇しくもこの身と同じ死神代行。尸魂界(ソウルソサエティ)の闇の断片を背負わされた、哀れな後輩だった。

 

 

「…俺が憎いか、一護」

 

 

 剣撃の合間、銀城は相手を試すように問い掛ける。

 

「甘ちゃんのお前が"殺す"とまで恨んだ月島に、お前の妹や仲間達との絆を奪わせたのは俺だ」

 

「……」

 

「お前の弱みに付け込み味方のフリをし続けたのも俺だ。穿った解釈で仲間の死神共を貶し、お前と尸魂界(ソウルソサエティ)の仲を引き裂こうとしたのも俺だ」

 

 一つ一つ、黒崎一護の心を乱すように。

 

「忘れたのか? お前の(ホロウ)を抑え込み、空座町を滅ぼそうとする藍染を止め、無力を嘆くお前の新たな力になってくれたあの大切な仮面女も…俺が辱めた。無理やりお前の魂から引き剥がし、健気に『嫌』、『戻して』と必死に抵抗するのを組み伏せ、その意思と人格を奪ってやった」

 

 重ねる挑発。

 しかしそれに返された一護の反応は無言。代わりに交わる剣が、相手の静かに澄みわたる胸の内を伝えてくる。

 

「どうした、クソガキ。ぶつけて来いよ…!」

 

「……うるせえよ」

 

「家族や仲間達の過去が戻っただけであの恨みは晴れんのか? 死神共との蟠りが解けただけであの屈辱は全部消えんのか? てめえの怒りはそんなモンかよ、一護ォ!!」

 

 黙する一護から答えを叩き出さんと、銀城は大剣を振り下ろす。凄まじい霊圧が衝突と同時に爆ぜ、視界が一瞬で白色に包まれる。

 

 だが。

 

「…何度も言わせんな、銀城」

 

 立ち込める煙のベールを通して聞こえたのは抑揚の変わらぬ平坦な声。そして驚く銀城へ向け、微かに映る人影が右手の大刀を突き付けた。

 

 噂に聞くその"構え"が繰り出す奥義は、奴の代名詞。

 

 

─ 卍 解 ─       

(てん) () (ざん) (げつ)

 

 

 瞬間、霊圧の竜巻が鳴木市の夜空に立ち上る。咄嗟に距離を取り目にした相手の存在感は、別次元なほどに強大。

 

 

「──もう、終わりにしようぜ」

 

 

 そこでは破けた燕尾のような闇色のコートに完現術(フルブリング)の残滓を纏った黒崎一護が、同じ色の太刀を手に佇んでいた。

 

「……」

 

 その眼を見た銀城は思わず閉口する。

 幾度と絶望に突き落とされ、そして潜り抜けてきた者の眼。目の前の相手を理解し、認めようとしている、強い心を映す眼だった。

 

「……チッ」

 

 全く、馬鹿なのか聡いのか分からない奴だ。青年の決意に僅かな未練さえも掻き消され、銀城は遂に覚悟を決める。

 

 内なる(ホロウ)の封印が解かれた影響か、完現術(フルブリング)の覚醒に伴う魂魄強化か。あるいはその両方を備えた一護の霊圧は最早戦慄を覚える程。流石は女神ご自慢の勇者、あの藍染を追い詰めた霊界の英雄だ。

 

 先程の月島を含むXCUTIONの仲間達へ力を分け与えた銀城に、一護と戦えるだけの霊圧は最早無い。倒されたギリコ達から無理やり奪い取るのは、日番谷の縛道(ばくどう)に圧し潰される寸前の彼らを見捨てるのと同義。

 そして、最後に共に戦ってくれた月島も、敗北した。

 

 男に残された道は、たった一つだった。

 

「…死神の力(こんなモン)に頼りたくは無かったんだがな」

 

 

── (ばん) (かい) ──

 

 

 荒れ狂う光の暴風。全身に漲る忌々しい深紅の霊圧。心を蝕む(ホロウ)の力。

 全てを捨て、最後に残った死神への憎しみすら呑み込んだ銀城空吾の最終奥義は…

 

 己の心に背いた矛盾だらけの男に相応しい、獣と骸が混濁する、邪悪で醜い異形の姿をしていた。

 

 

「…ああ、そうだな。こいつで全部…」

 

 

 

──終いだ、一護 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

伝わる。

 

 

裏切られる辛さ

復讐の虚しさ 

 

 

感じるんだ  

 

 

剣を通して  

こいつの心が 

 

 

 

悲しみしかねえんだ

 

 

 

あんたが月島の能力で  

俺の仲間を嵌めたのも  

 

俺から距離を取った   

浦原さん達を貶したのも 

 

 

俺にその痛みを知って  

欲しかったからなんだろ?

 

 

     十分だ

 

 

 

 

…なあ、銀城      

 

 

 

 もし俺がルキアと   

 

  あいつ等と     

  出会ってなかったら…

 

 

 

 

 

俺は、お前と────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

先先週に頂いためありい様の支援絵です!

https://img.syosetu.org/img/user/252605/81464.jpeg

完成度高杉恐怖の無地BLEACH?巻と意味深な栞、一体何書家の陰謀なんだ…(困惑
これの真実に気付いた元の月島さんは今頃名も無き終わりの本に囚われている事でしょう

めありい様、素敵な支援絵大変ありがとうございました!
ご紹介が遅れてすいません(汗


それでは次回のエピローグをお楽しみに!

 
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