雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」 作:ろぼと
大変お待たせしました、ようやく再開できます!します!
半年近くご無沙汰だった悦森さんによるプリングルス篇の総括です。
ホント久しぶりなんで違和感あったら許して♡
←このへんのやつ失礼しました
「───ふぅ…よかったよかった」
無数の映像画面が犇めく
諸々の確認作業を終えたあたしことニュー新生ry
いやーでも原作イベは我等の主人公一護くんがオサレに活躍してくれていいよね! 無力に苦しむ彼の様子はちょくちょく確認してたけど…正直見ててゾクゾク興ふn胸が痛む光景だったなぁ⤴!?
やっぱチャン一は暗い顔より年相応にイキリ散らかしてる方があたしの好みだと再確認できました。これは逆説的にあたしがまだ愉悦の沼に堕ちきっていない証と見なしてよろしいですね?
『──シロちゃんが一護に嫉妬してた時のお姉さまはどんな顔をしてましたか…?──シッ、言っちゃダメ──あぁもうっ、シロちゃんってホント何であんなにかわいいのっ!──はぁ~えがった…──』
なんか脳内にニチャニチャやかましい輩がいっぱい居るけど桃ちゃん無視。シロちゃんに関して言えば、今回あたしは彼がメインの曇らせ作戦は何も計画していない。
その通り。あたしが
大人シロさんの切り札をここで切らせ、その姿が月島さん以外の目に触れないよう雪煙を桃玉に増やさせたのも、【謎多き新技】のOSRボーナスを次の戦いに引き継がせる為だから。
そして美少女幼馴染とそっくりな人造魂魄と仲良くしてるイケメン一護にシロちゃんがヤキモチ焼いちゃうのは恋する少年の摂理だから。
今回彼が見せてくれた尊い輝きは、全部あたしの愉悦的意図とは関係ない不可抗力の産物だったのだ。
「…ハァハァハァハァ…!」
『──ハァハァハァハァ…!──』
『……よだれと息切れと愉悦で酷い顔になってますわよ、貴方達』
ジュルリ…おっと、失敬。はしたない主人と石ころを窘めてくるのは相棒の飛梅ちゃん。
尤も私はこいつらとは違うわ的な顔してる彼女も【大紅蓮氷輪丸】の新技を後方腕組み彼氏面で眺めてて割と末期だったのあたし忘れてないからね?
反撃が怖いのでお口チャックしますが。
…さて。
こうして原作漫画BLEACHにおける中編ストーリー『死神代行消失編』、通称チャド篇あるいはプリングルス篇と呼ばれる一連の出来事がこの世界においても無事に完結した。
この原作ストーリーの肝は二つ。
①一護が死神の力を取り戻す事。
➁
勿論比較すれば本誌とは全然違う推移で進んだのだけど、終わり良ければ総て良しの開き直りメンタルで最初から臨んだあたしにとって委細は細事。そもそも原作的に今回の銀城事件は後のための前座みたいなものだし、重要事項がクリアできたら他は割と適当でいいのです。
『──ガバとお遊びのせいでほぼ別物だったんですが──あたし達が発現させたカリンちゃんの
「ねえネーミング解説されるの恥ずかしいからやめて?」
…こほんっ。
と、ところで諸君はあたしがこの主人公復活イベの為にかなり前から布石を打っていたのを覚えているだろうか。
まあぶっちゃけ雛森ィィィィ!とは無関係だと思ってたのでそこまで情熱を注いだ訳ではない。だがしかし原作後半における一護の無様な戦いを悔しく思うのは読者あるあるで、さりとて安易に彼の力の源である
そんな健全なファン心理が働き生まれたアイデアが「強化ホワイトを
『──敵キャラの悲しい復讐心を利用し尽くした鬼畜計画──どっちが悪役なんですかね──これには藍染隊長もニッコリ──あ、計画準備は桃玉融合前だからあたし達はセーフ──』
『全く。そんな事してるからあの
「んなっ!?」
己の手腕を自画自賛してたら聞き捨てならない事を飛梅ちゃんがぬかしやがった。
全く、言葉には気を付けたまえ。それはこの原作イベにおけるあたしの一番の不満にして疑問なのだ。
【悲報】雛森桃、初対面の月島さんに何故か嫌われる
そう、あれはXCUTIONが本格的に動き出す少し前。原作再開が間近に迫りワクワクしていたあたしは、ふとあの無敵の月島さんが謎に憔悴しているとの妙な情報を掴んだ。
心配になって密かに様子を見に行ったら桃ちゃん驚愕! なんと彼が銀城にあたしの事を邪神だの魔女だのとんだ悪名を吹聴していたのだ。
意味がわからない。というか会ったこともない女の子を化物呼ばわりなんて普通に失礼! あたしはまだあなた達に何もしてなかったのに!
『…"まだ"ってなんですか。あんな不気味な手紙を送ったり、桃玉の力を使って黒崎少年の仲間達を手助けしたり、どの道手を出す事になるのなら愉快犯に変わりはないわ』
「あ、あれは少し腹が立って仕返ししただけだし! 先に酷いコト言い出したのは月島さんの方だもん!」
違うんだ、頼むから聞いて欲しい。あたしは本当に何もするつもりは無かったのだ。
強いて言えば原作で伏線未回収だったチャドや夏梨ちゃんたち現世組を活躍させたかっただけで、それも大筋的には大した影響はなかった筈なのです。
なのに月島さんは最初からあたしの事をまるでCoCの宇宙的恐怖であるかのように嫌っているし、そのせいでXCUTIONの動きが読めなくなるし、軌道修正しようにも何がガバって裏目に出るかわからず散々だった。
ヤケクソになったあたしはつい拗ねて「そんなに邪神邪神言うなら」と前世のTRPGスキルを動員し、あの
月島さんには何してもええやろ。そんな魔が差したとはいえ、あたしが彼に行ったのは軽いちょっかいだけだ。それであの反応とかホントなんなの。
桃ちゃんはただ下種野郎のグレーゾーンでコサックダンスしてるだけの可愛い美少女なのに…
『──でも確かになんで彼は"読書家"の事をあんなに怖がってたのかしら?──誰かからお姉さまの実力を聞いてて警戒してたのかも──だけどあのユーハバッハの侵攻にさえ動じなかった月島さんがお姉さまに怯えるかな?──お姉さまの魂に染み付いた強烈な愉悦臭にドン引きしてたんでしょ──』
「その愉悦臭ならクローンのあなた達からも漂ってる事になるけど?」
一緒に愉しんでたのを棚に上げるのはともかく、桃玉の疑問自体はあたしも気になるところ。
原作読者に説明は不要だが、月島秀九郎はクトゥルフTRPGで時々見る「常人を演じるSAN値ゼロ狂信者」である。彼は恩人の銀城のためなら敵の白哉と二百年以上も友情を育み、気が狂うほどのその手間を一切苦痛に感じない。
そんな狂った彼が作中で取り乱したのは、銀城が一護に倒された時の一度のみ。まあ依存先が消えたんだから当然だけど、故に月島さんが動揺するのは全て銀城が関わる事だと推理できる。
だからこそわからない。
あたしは銀城に関してはマジで何の悪さもしてなくて、むしろ強化チャン一と良い勝負ができるように奪う一護の
それなのに月島さんが「やめろ銀城!」とあそこまで狂乱するのは最早"読書家"アレルギーに等しい。隣の一護と異口同音異義で、見てるあたしも本当にワケわかめな絵面だったよ…
そして何より、時系列的にあたしが邪神ごっこをしたのは月島さんが銀城に"読書家"の事をdisった後。彼があたしを忌避し始めた理由とは因果が噛み合わな──
「……あれ?」
その時、桃ちゃんの頭に電流走る。
そうだった。時系列なんて過去を操る月島さんにとって最も意味の無い概念だった。彼の記憶や思考はそれらの要素に、つまり過去現在未来の因果に一切左右されない事になる。
え、ちょっとまって? それってもしかして…
『──月島さん、誰かの過去でお姉さまと何かあったのかも──居る筈ない時間軸に彼が居たらお姉さまなら「月島さんチィーッスwww」って気付くよね──もし他人の過去世界の雛森桃全員がそうだったら…──あっ(察し──』
『
一心同体の相棒たちも気付いたらしい。口々に述べる仮説や分析はどれもあたし的に納得しかないもので、謎の冷や汗が背中を伝う。
「…いや、待って待って! てことは何? 過去のあたしは織姫さんの過去でも茶渡くんの過去でも同じく月島さんを見つけて彼をニヤニヤからかってたって事!?」
『──ルキアを助けに皆が尸魂界に来た時に遭遇したんでしょうね──うわ、想像したらお姉さまの面白がってる顔がありありと…──全ての過去世界で何故か月島秀九郎が異物だと知ってる後の超越者──そりゃ警戒するわ──』
おいこら、なんだそれ。こいつ等あたしを一体何だと思ってるんだ。
月島さんの事は大好きだけど、流石のあたしもあんなチートキャラで火遊びするほど馬鹿じゃない。たとえ原作的にその場に居る筈のない彼を見つけてもちゃんと知らんぷりするし、このあたしが他人にかまけてシロちゃんを輝かせる使命を放棄するなんてもっとあり得ない。
違うから! いくら何でもそこまで考え無しじゃないから! じゃない、ハズ…
……うん。
『はい解散』
「えっ、ちょ」
『──くっ、羨ましい──何してもいい過去世界で月島さんと何度も遊べるなんて──いいなぁ、ズルいなぁ──さぞお姉さま一人で愉しんだんでしょうねぇ?──』
「ち、ちがっ…! 知らない知らない、そんなのあたし知らない! た、確かにそんな女はすごい不気味だろうけど……で、でもそれだけであの月島さんがあんなに怯えるはずないって! そうでしょ? ねえ! ねえって! 話聞いてよぉ!!」
結局呆れて斬魄刀の世界に帰ってしまった飛梅ちゃんと、嫉妬の念を捲し立てる桃玉の協力拒否のせいでこの話は終了。仕方なく、あたしは事後処理として
実際に月島秀九郎の"読書家"への恐怖はより深く、根源的なものだったのだが──まあ最期はなんだかんだでリルカや白哉たちのオサレ台詞で幸せそうに逝ったから、いい…のかな…?
***
そんなこんなでこの世界における死神代行消失編(Feat.あたし)の余韻をじっくり堪能し終えたら、困った現実と向き合う時間がやってくる。
ここは場所を移して
「あの、そろそろ話を聞いてくれませんか? ───"仮面のあたし"さん」
目の前に薄い桃色の水晶状のカプセルが鎮座している。その中で、雛森桃と瓜二つな少女がむっすりと不貞腐れていた。
『……知りません、あなたのような酷い人なんか』
「いえその、あなたと一護くんへおかけしたご迷惑の数々は本当に申し訳なく思っておりましてですね…」
『ふんっ』
いや"ぷいっ"じゃないから、かわいいかよ。流石原作雛森ちゃん再現、不謹慎だけど養殖ヒロインのあたしとは大違いにキュートで少し凹む。
この娘はかつてあたしが仲間の霊性科学者であるDJ-KANAMEこと
一護のホワイトを強化した分必要になった封印機能を司り、彼を支えてOSR値を稼ぎやすくするサポートキャラ、そして何よりも先程の死神代行消失編において活躍した彼の新能力
『……どうしてなんですか?』
不意に、そっぽを向いていた仮面桃ちゃんが問い掛けてきた。目をぱちくりさせるあたしに苛立ったのかその声には棘が。
『っ、だから…! どうしてあたしを生かしたんですかって聞いてるんです!』
「えっ?」
『あたしはもう自分の役割を、あなたに生み出された役目を終えたはずです。あの子にもちゃんと…ちゃんと笑顔でお別れを言えたのに…っ! なのになんで処分せずにこんなところに閉じ込めたまま生かしてるんですか!』
処分とは随分と自分の運命を悲観的に捉えている仮面桃ちゃん。しかし「何故生かした」と噛みつかれても、その、困る。
実際は銀城の計画を利用する関係上そのまま彼女の人格は消えるものだと思っていたし、その予定でもあった。
正直、ガバです。
とにかく風前の灯火とはいえこうして自我を維持したまま戻って来てくれた以上、彼女の魂魄を構成する【霊王の欠片】を予定通りに抜き取ってお役目ご苦労するのは忍びない。任務完遂の報酬と迷惑かけた罪滅ぼしになんとか延命させているというのが現状だ。あたしと桃玉達が安全な抽出方法を確立させるまではそのカプセルの中で存在を保っててください。
…一〇の悲願? 上司をオモチャにして遊ぶセクハラ蛇野郎は永遠に待たせときゃいいのよ、ペッ。
「それとも、本当にもう生きるのは嫌?」
『…ッ』
「あたしはあなたに負い目があります。今は善意であなたの自我を保たせてるけど、もしこのまま消える事が心からの望みなら……あなたの意思を尊重するわ」
カプセルの延命装置の説明をすると仮面桃ちゃんが沈鬱な顔で俯いた。脈ありと感じたあたしはできるだけ優しく彼女を諭しにかかる。
「あなたの役目は確かに終わったけれど、一護くんの戦いはまだまだ続きます。これからあの人はかつてない強大な敵と戦うことになる」
『! ッ、あなたはまだ彼を巻き込もうと──』
「いいえ、あたしは一護くんの運命を全て知った上で手助けをしているだけ。あなたにもそう教えたはずだけど…」
確認すると彼女が悔しげに押し黙った。どうやら一応そちらの記憶は備わっているみたいで桃ちゃん安堵。
「どうかな。あなたさえよければもう一度、一護くんの戦う力としてあなたを彼の下へ送り届けたいのだけど」
『…!!』
「一護くんは強いわ。でも彼はまだ一人前になったばかり。心配に思うのはあたしもあなたも同じはずよ」
悪い創造者の甘言に誑かされたくない、でもどうしても心揺れてしまう提案…! そんな面白いくらいに目が泳いでいますね。
しかし手ぐすね引いて待ち構えるあたしの手を、彼女は辛うじて振り払った。
『…あなたを……あなたを信じられませんっ』
悲痛な声がラボに木霊する。
『あの子の味方なら、どうしてあんなに酷い試練を与えるんですか…! あなたが助けてくれなかったせいで彼がどれだけ苦しい思いをしたか…全部分かってるんでしょう…!?』
涙目で睨んでくる彼女と、その信用の無さに涙目なあたし。
ぶっちゃけ彼女がここまで一護と仲良くなってしまったのは想定外と言うか、天然ジゴロ主人公を侮ってたと言うか、織姫ちゃんendは果たして大丈夫なのかと不安と言うか。まあでもこんなに健気なヒロインオーラ香しい女の子だし、一護の心にぶっ刺さってしまうのもある意味当然かもしれない。銀城に奪われた時の彼の慟哭も頷ける。
うん、大正義「原作的に必要な事だから」の価値観のせいで麻痺してたけど、こうやってどストレートに責められると何も言えねえ…
だけど大丈夫、これからの桃ちゃんはちょっと違うのだ。もう一護勝利!の結末以外原作を再現するのは止めるわけだし、あたしも我々鰤ファンの最高のヒーローをもっと大胆に支援する気満々なのです。
黒崎一護の曇り顔は確かに魅力的だ。でもやっぱり一番好きなのは、SS篇でルキアに「じゃあな」とカッコつけてお別れした…
──清々しい勝利の笑顔なんだ。
「…そうね。味方同士で反目し合うのは彼のためにならないから、特別に見せましょう」
『!』
隠していた霊圧をちょっぴりお漏らしして笑顔を浮かべる。ギョッと瞠目する仮面桃ちゃんに見えるよう、あたしは自分の後ろで輝く二対の翅を起点に、ここマイ
『な…によ、それ……っ』
怯える彼女は知らないだろう。自分が召し上げられたこの地がどういう世界なのかを。目の前にいる創造者が、桃玉との融合によってどんな存在になったのかを。
そして、原作であの藍染惣右介が集めた大戦力が、この地でどれほどの進化を遂げたのかを。
『あ、ぁ…』
虹色の歪みの隙間から覗くのは、十数人の怪物達。
青白い霊圧を縞状に帯びた双尾の豹王。漆黒の鎧に包まれた六つ鎌の巨人。純白に輝く三対翼の悪魔。紅色の槍を操る半人半獣の女戦士…
見覚えのある面影を残す姿。感じた事のある懐かしくも恐ろしい霊圧。しかし一護と共に目にしたそれらの記憶を掻き消す怪物達の途轍もない存在感が、一斉に仮面の少女へのしかかった。
「彼らは一護くんの、昨日の敵。今日の友。世界を救うヒーローは黒崎一護一人ではないと、これまでの十七ヶ月で知った…」
自慢の勇者たちよ
それはあたしなりの彼らへの敬意。死神達の間で有名な"読書家"の名ではない、あたしを"王"と称える彼らとの絆の証。
ここは三界から別たれた泡沫の世界、
「あたし達と一緒に、戦ってくれますか?」
確信を胸に水晶のカプセルへ近付くあたし。その中で震える割れた仮面の少女は、長い沈黙の末、遂にあたしの差し出す手を取った。
『……従い…ます……っ』
まあまあ、そんな薄い本の脅迫されてる女騎士みたいな絶望顔はやめてもろて。一緒にこの鰤界の主人公の活躍を後押ししよ? 同じファンとして一護が絨毯化したり卍解即折れしたり「終わりだ──」したりする姿を見るのは嫌だもの、ね?
そう彼女と同じ雛森フェイスで優しく微笑むと、何故か「ひっ…」と怯えられた。
…最近あたしに対して周りのこういう反応多いんだけど、なんで?(涙目
ウチの桃ちゃんって基本こういうあたまおかしい感じだったよね…?
イメージ違ったら超越者化して十七ヶ月過ごした影響とでも言い訳しとこう(小声
そんなこんなで次回から千年血戦篇を開始します。お待たせして面目ねえ…
ちょびっと出てきた十刃たちや尸魂界などの原作十七ヶ月の変化は本編中に描写する予定です
お楽しみに!