雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」 作:ろぼと
おまたせしました。
一体いつから…今年の投稿はもう無いと錯覚していた…?(2021年残り90分
アニ鰤発表動画を無限ループしながら年末休みに鰤二次小説を執筆する幸せ
oh can you be the number one!(チャン一のテーマ
欠けた月が照らす悪霊達の世界、
想い人の無事を知らせる報告に胸を撫で下ろした井上織姫は、
「――つまりアナタ方は"
「その通りだ。ネリエル様があの金髪ロン毛にやられた直後に援軍を要請したのだが…」
「うぅ、雛森様ぁ……オラ達どうすればいいでヤンスか~…」
情報共有を行っているのは浦原喜助とペッシェ・ガティーシェ。織姫にとっては二人とも大切な仲間ではあるが、当の彼らは死神と
特に両者の共通の知人、黒崎一護と縁が薄い他の
「おい
「コイツはあの
「…珍しくおサルさん達と意見が合いますわね。そこの
そう口々にペッシェを責め立てるのは三体の女性
無論、だからこそ彼女達も他に状況打開の手段がない事は理解している筈。その隙を理と利で突くのは浦原の十八番だった。
「まァまァ、そう邪険にしないでくださいよ。アタシはただ今回の戦争でアナタ方の力をお借りしたいだけッス」
「……死神の争いなんかに興味ないね」
「アナタ方も先程の
重傷のネリエルの治癒に付きっ切りの織姫は、ハラハラしながら隣の剣呑な空気を見守る。
「"雛森"サンとの連絡が途絶えた理由として真っ先に考えられるのは
「…ッ、ばっかじゃないの? あの化け物じみた雛森サマがあんな連中に後れを取る訳ないでしょ!」
「そ、そうよ! さっきのロン毛の
新たに口を開いたのは──確か、ロリとメノリといったか──織姫も知る二人組。侍女として側にいたからだろう、自分達のトップの強さを畏怖する気持ちが強く見える。
しかし彼女らの震える台詞に周囲から同意の声が上がらない。同胞の
そして、そんな彼女達の胸騒ぎは、当然の如く浦原の観察眼に捉えられていた。
「…気付いてるんでしょう?」
「──ッ」
「霊子技術で妨害できるのは霊波通信だけッス。
彼の言葉に逃げ道を塞がれ、破面たちが一様に唇を噛む。
ここに来て織姫もようやく事の深刻さを理解した。
良からぬ事が起きたのだ
「ま、"雛森"サンは中々やり手のお姫様ッス。アナタ方が反対するのを予期して、アタシや黒崎サンと協力関係を構築する既成事実を作ろうとしているのかもしれません」
「……だからあたし達を放置してるってのか?」
「その線は否定できないッスね」
ただ一つ言えるのは此度の敵が、あの"雛森"サン──【読書家】が率いる新生破面軍でさえ独力での戦いを避けたがる程の大勢力だという事。
浦原喜助はそう断言し、他ならぬ織姫の許へ近付く。
「え…?」
そして彼女の膝元で目を閉じ続ける、破面部隊のリーダーへ、右手を差し出した。
「手を組みましょう、ネリエルさん。今の我々はお互いに……これ以上仲違いしている暇はないんスよ」
…その一言が決め手となった。徐に瞼を開けた緑髪の女性破面が重い溜息を吐き、長い葛藤の末、口を開く。
「───宜しく…お願いするわ…」
破面達を説得した浦原がいつもの剽軽な顔に戻った。だがその眼は冷やかで、どこかここではない別の場所を睨んでいるようにも見える。拙い織姫にさえ彼の真意は当人の言う「破面達との共闘」とは別にあると推し量れた。
何がどうなっているのか。
朽木さん達の傷は? 浦原さんの本音は?
死神と
現世の仲間でただ一人、あの桃色の大星雲が煌めく
(…ウルキオラ君……)
何も知る事が許されない非力な少女は、あのニヒルな友人の無事を祈る事しかできなかった。
***
空を仰げば曇天が一瞬で快晴になり、ビルの窓を覗けば急に壁一面のガラスが砕け、町を歩けば突然目の前の道路が陥没し、公園や広場などの開けた区画では原因不明の集団死。
近隣の市町村では何年も語り継がれるような大事件も、この地の人間で三日と覚えている者は当事者くらいのものだろう。
多発する超常現象に常識が麻痺している訳ではない。むしろその逆。
そんな事より彼らには他に、己の限りある脳細胞を割かねばならない事があるのだから。
「いらっしゃ──いませー…」
その日の、とあるファッション店に勤める若い女性店員も、一空座町町民たる自らの運命を実感していた。
カラン、コロン、と。ここ数年の親の声より聞いたドアベルに顔を上げた彼女は、現れた二人組の容姿を確認して即座に直視を控える。マニュアル通りの挨拶を言い切った自分が拍手喝采に包まれる幻聴すら覚えた。
「──あ"あぁぁ…クソ! いつ来ても空気が不味いぜ、現世ってのはよォ」
「余計な騒ぎを起こすな、ヤミー。帰りたいならさっさと選べ」
見上げる程の躯体の色黒な巨漢と、病的なまでに色白の美青年。明らかに普通の、どころか人間とすら思えない異様な来店客が、無遠慮に革ジャンの陳列棚を漁り出した。
「あ? 何だこの脆い服、抓んだだけで破れやがった」
「ならそれも買え。言っておくが出費を増やせば、次に行く店の"A5和牛サーロイン"とやらが食えなくなるぞ」
「おいふざけんな! そんなルール訊いてねえぞ!?」
ドガーン、と。聞き慣れた破壊音を起こし、怒れる巨漢の拳が店の壁を粉砕する。コンクリの粉塵が舞う店内から朧げに見えたのは、察しの良い通行人たちがそそくさと店先の歩道から離れていく光景。
命を守る行動を最優先に。実に模範的な空座町民である。
しかし怪人二体と共に一人店に残された女性店員の"日常"は当然終わりではない。二年前の活発期に耐えかね異動した外様の元店長ほど軟弱な神経はしていないが、それでも流石にここまで物事の中心に巻き込まれたら弱音の一つや二つ吐きたくなる。
「おい、女。この四着を寄越せ」
「…ッ! は、はい!」
来た。女性定員は鼓膜を突き破らんばかりの己の心音に頬を引き攣らせながら、カウンターへ近付く小さい方の怪人へ笑顔を向ける。隣の大きい方を視界に入れる勇気はなかった。
「れ、レザージャンパー白が二点、ライダーパンツ黒が一点、デザインベルト白が一点。以上で87230円になります」
「──あァ!? おいウルキオラ、3000も残んねえじゃねえか! ステーキ買えねえぞクソッタレ!!」
ズドン、と。巨漢の台パンにへし折れたカウンターが天井に突き刺さる。先程の壁も同様店の損害賠償については不問とすべきだろう。この世に人を裁く法はあっても災害を裁く法はないのだ。
その災害が、女の手首程もある太い指で、可愛らしいピンクのがま口財布から紙幣を取り出す様は何かのシュールギャグにしか見えなかった。
「行くぞ、ヤミー」
「な、待ちやがれクソが! てめえだけ金使わなくていいの狡ィぞ!」
「俺の服は
「俺のは似合ってなかったって言いてえのかよ!?」
かくして嵐は去った。見るも無残な有様になった店内で立ち尽くす女性店員は、しばらくの放心の末、ぽつりと呟く。
「……これ、"雛森様"って人を訴訟すればいいのかしら…」
どこかで誰かがビクリと背筋を震わせる光景を幻視しながら、彼女は今日も一日愛する故郷で生き残れた安堵に、フラフラと床に座り込むのであった。
***
星々の海に浮かぶ永夜の宮殿。
その一角を通る列柱の回廊に大小二つの人影があった。
「"豆腐バーグと夏の温野菜"だァ? チッ、やっぱさっきステーキ買えなかったの響いてんじゃねえか!」
不愉快そうに舌打ちし、巨漢は握り潰した献立表を道中の中庭へ放り捨てる。
現世の某所でとあるファッション店が閉店したのと時を同じく。纏う新しい衣類に目もくれず、
「昼食の献立如きで一々騒ぐな。嫌なら自宮で寝てろ」
「ンな事したら
「知らん。それが雛森様の定められたルールだ」
どこまでも相方の我儘に無関心な黒髪の青年──ウルキオラ・シファー。
まるで緊張感のない幼稚な雑談。しかしその二体の
彼らの正体は万人を平伏させる悪霊達の頂点、
「────ヤミー、ウルキオラ」
ふと、回廊の分路の奥から低い女の声が聞こえた。馴染みのあるソレに気付いたヤミーが相手を一瞥し、片眉を顰める。
「何だぁ、ハリベル? いつもぞろぞろ連れてる雑魚共はどうした?」
「…アパッチ達ならネリエル麾下の臨時部隊で
「
美味なホットドッグの思い出に埋もれていた今朝の記憶がヤミーの頭頂に浮上する。"最強"たるその格に相応しい彼の傲慢に、しかし下界を走る激震を冷静な目で見下ろす女破面──ティア・ハリベルは溜息を吐いた。
「…ウルキオラ。雛森様が何方におられるか知らないか?」
三人が連れ立って食堂へ向かう途中。先程の現世任務について延々とボヤく相方を無視し歩いていた青年は、ハリベルからそんな質問を囁かれた。
「アパッチ達について少しな。この二年間で昔の下位
「…確かお前の
「ああ……だが敵もかつてなく強大だという。その後の様子が気掛かりだ」
部下の心配でもしているのだろうか。趣旨を履き違えている愚かな同胞を、ウルキオラは鼻で嗤う。
「くだらん。雛森様はどんな低位の
「相変わらず変なお人だぜ、ウチの女王サマは。死ぬ奴は役立たずのゴミだから捨てろつってんのによ」
「その
利用価値があるから死なせない。自分の所有物だから死なせない。
僅かに胸を擽るナニカを隠し、ウルキオラはいつも通り機械的にそう呟く。
「…そうか…そうだな。失礼した」
「余計な情で戦意を乱すな。俺達はあの方の望みによって蘇った死霊。力も、命も、魂さえも」
雛森様の為に存在する
立ち止まり謝罪する女十刃へ、そんな彼らしい不動の宣言を残し、ウルキオラ・シファーは同僚の巨漢と共に先へと去って行った。
「……"遍く全て"、か…」
青年の翻る長い燕尾を見つめ、ハリベルは彼の台詞を口内で転がす。それはあらゆる自由が許されぬ事を意味する言葉。意思無き虚ろな兵隊である事を望む言葉だ。
ならば。ハリベルは一抹の切なさを胸に思案する。
何故、あの方は…
「自我の源たる"心"を──"虚無"のお前に与えようとしておられるのだろうな…」
***
「────はい、カットぉ!」
先刻のユーハバッハの雛森桃バレ発言に合わせた、あの"読書家"の笑い声セリフである。
「うん、みんなご苦労様! 凄く不気味で無邪気な悪者っぽかったんじゃない?」
『──ふふんっ──このくらい当然ですわよ──それっぽく演じられたぜ──演技なんかしてないんだよなぁ──』
一〇や月島さん、仮面桃ちゃんに化物扱いされた事でムキになった結果すっかり邪神RPが板についてしまったあたし達。不本意だった気持ちは最早過去の彼方、今ではノリノリで愉しんでる事実を指摘されると少し恥ずかしい…
まあでも今回はこの前やった月島さんへの意趣返しみたいな感情的な行動じゃない。
そう、せっかく死神桃ちゃんが意識不明に追い込まれる悲劇的な状況を演出できたのだ。あれをポテトのOSR値調整だけで終わらせるのは勿体ない。最大限活用するべく、あたしは何か手はないかと色んな所へ目を飛ばしていた。
ちなみにポテト戦の開始前に
そんな最中、ふと見たらバッハとポテトが意味深なオサレトークをしているではないか。こんな餌を見つけたら即シュババババ!と喰い付いてしまうのがあたし達OPB信者の悲しき性なのです。
以前からどこかで"読書家"と雛森桃の繋がりを匂わせたいと機を窺ってたけど、過去にもあれ以上に良いタイミングはなかったと思う。死神桃ちゃんの敗北も存分に活かせたから満足だ。
…シロちゃんについては最早言うまでもないよね?
『────戻ったぞ、雛森』
と、そんな感じに桃玉とハァハァ今後の展開に期待を寄せていると、
シロニウムパラダイスまでまだ時間があるので、あたしから門前広間へ向かう。好き勝手できるマイ
「お帰りなさい、
「ああ、ただいま……ん?」
合流した彼が挨拶を返し、懐の報告書を取り出す。そしてそのまま固まりあたしを凝視した。
え、何すか突然?
「雛森、お前……
「ふぇっ!?」
予想だにしていなかった質問に思わずヘンな声が出た。え、なんでわかるの? 逢ったのは死神桃ちゃんだから今の
「決まってるだろう。お前の顔がそんな愉快な事になっている時はあの御方と何か悪巧みをしている最中くらいだ」
「ちょっと待ってあたし今どんな顔してるんですか!?」
咄嗟にムニムニと頬を触ってみても全くわからない。そこまで一目瞭然なんだろうかと狼狽していたらDJに笑われた。
「私は盲目だが、だからこそ見えるものもある。余人の気付かぬ人の心の機微がな。それだけだよ」
「…あ、そういえば東仙隊長って目が見えないんでしたね」
「………何故五十年以上共に過ごしてそれを忘れる?」
そしてあたしは時間を気にしつつしばらくヨン様の話をしてあげた。DJはどこか嬉しいような切ないような顔をして遠き主に思いを馳せていたが、直ぐに頭を振って本題の報告書へ視線を戻した。
書かれている内容は
「敵の機密に触れる情報は少ないが、概ねお前の想定していた通りだったぞ」
「ではやはり
「
DJが難しい顔で「拠点を
当時のヨン様が
…ちなみにあたしはシロちゃんに夢中で全然考慮してませんでした、はい(素直
しかしDJもだけど、原作の護廷十三隊も
『──その割にはバッハ達にガバが多いような…──未来視に未来改変もできるのに──シッ、言わないの────』
「……」
脳内でヒソヒソ読者目線の正論を呟いている桃玉達はさておき。実際あの
思うに彼らの情報ガバは二つ。
そも、得られる情報が
そしてヨン様に
("影"自体は
そう考えると本編であんなに暴れていた
『──お姉さまが自室とかでニチャニチャ素を出してたのもバレてなさそうだし──あれワンチャン"影"に見られてた可能性もあったよね…──』
(そ、そんなにニチャってないし…!)
…バッハ達がガバってると思ってたらあたしの方がガバってた。
た、多分それはあたしの凡人ムーヴのおかげで当時はノーマークだったんだよ…! 密会の場もヨン様なら防諜完璧だったろうしね!
『──まあそれはそうだろうけど──お姉さま色々と危なっかしい…──』
(む、昔の話だから…)
言い訳がしんどくて草も枯れる。てか今更だけどあたしってヨン様が居ないとガバガバすぎない…?
順調だった【一護オサレ化計画】が急に先行き怪しく思えてきたんだけど大丈夫かな…
「そ、それで東仙隊長。イーバーンさんの報告書はどんな感じですか?」
不安になったのでDJに縋ってみる。なお桃玉のあたしdisからここまでざっと一秒。
「奴に埋め込まれたユーハバッハの力の断片だが……面白い事が解ったぞ」
「!」
どうやら吉報のようで桃ちゃんホッと一息。口角を擡げたDJが書類を眺め、委細を語り出す。
現世の要塞アジトにイーバーンを匿って程なくし、
DJの話を聞いたあたしは、ソレが"何"かを即座に理解する。そしてゆっくりと、デカすぎる成果にほくそ笑んだ。
…これがあれば、ラスボスを含む全ての
黒崎一護が活躍できる世界を、取り戻せるのだ。
「…その金属はどれくらいの量になりましたか?」
「例の光が降り注いだのはごく僅かな時間だ。イーバーンを犠牲にすれば数
それでもDJの顔に影はない。ならば、とあたしはマイ
「! それは…」
「
DJが初めて口を噤んだ。
言わんとしている無茶振りに気付いたのだろうか。でもあたしは十分できると思う。
忘れがちだけど、この東仙要はヨン様陣営の頭脳を担った人物。浦原さんやマユリ様には及ばないかもしれないが、代わりにこちらにはあたしの原作知識と桃玉の
これであらゆるガバはリガバリーできる。DJも忙しくさせておいた方が自分の正義について色々と悩まなくて済むはずだ。
あぁっ、あたしはなんて仲間思いな人なんでしょう。
リーダーは有能な怠け者であるべきだ、って…ステキな言葉だね!(最低
「東仙隊長、あたし達なら可能です。これらの霊圧の共通性質を解析して…」
再現してみませんか?
芳ばしいガバのにほいを最後に2021を締めくくる桃ちゃん
今年も一年応援ありがとうございました
アニ鰤発表に読み切りに鰤展とファン的に盛りだくさんな年でしたね
寒い日々ですのでご自愛ください
良いお年を!