雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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バラガン戦の完全勝利の解説



解説ィィィィ!

 

 

「──よし、今日はここまで! 全員解散!」

 

『ハッ!』

 

 

 酉ノ刻の暮れ六ツ。夕暮れ時の隊舎練習場の修復という雑用を終えたあたしたち新入隊士三名は、班長の命令でドサッと地面に座り込んだ。

 

「き、キツい…」

 

「あはは…阿散井くんも吉良くんも顔真っ青だね…」

 

「ひ、雛森こそ…」

 

 青息吐息な二人の新人死神の姿はこの時期、どの隊舎でも見られる風物詩。そんな彼らに交ざって疲れたフリをしている霊圧オバケなあたしに、班長が優しく声をかけてきた。

 

「──ふふっ、泥んこ。お風呂入りに行きましょうか」

 

「か、蟹沢班長」

 

 そう。あの茶髪さくらんぼサイドテールの正統派美人、蟹沢ほたる元六回生だ。

 原作では例の魂葬演習で見事なリョナシーンを披露したのだが、あたしの個人的矜持のためにその活躍(?)の場を剥奪された残念な人物である。ここ五番隊にいるのはどうやらあの事件で落ち込んでいたときヨン様の甘言に引っかかり、以後優しい藍染隊長のファンになってしまったらしい。雛森桃としては思うところがありすぎる…

 

 それにしてもこの蟹さん、あたしやルキア程ではないが華奢で中々リョナ映えしそうなスタイルをしている。これは一気に巻き返して来そうなポテンシャル、油断大敵…(女王目線)

 

「あの、雛森さん…」

 

「あ、はいっ。何でしょう」

 

 男性陣と別れ隊舎の浴場で二人汗を流していたら、ふと彼女に殊勝な顔で話しかけられた。

 

「その、今まで中々機会が無くてちゃんと言えなかったけど──あのときは助けてくれてありがとう」

 

「えっ…?」

 

 神妙に礼を言われ困惑する。前にも事件直後に六回生トリオで感謝された記憶があるけど、確かに対面でというのは初めてだ。あたしはいつもの原作雛森ムーヴで応える。

 

「──そ、そんな…! あ、あのときはあたしも何が何だかわからなくて、えっと…そ、そんなに言われちゃったら何だか恐縮で…」

 

「…ふふっ、噂通り謙虚なのね。でも救われた身からしたらやっぱり受け取って貰いたいわ。檜佐木(ひさぎ)君も青鹿(あおが)君も貴方にお礼を言いたがってたし、今度また改めて三人でお礼に伺います」

 

「あうう…」 

 

 どこかすっきりしたような顔で「困ったことがあったら何でも言ってね」と残し、蟹さんは浴室を去って行った。ん? 今何でも(ry

 

 しかし別に謙虚ではないが恐縮してるのは本当だ。あれはヨン様面接で全力を出すのに邪魔だったから穿界門へポイしただけで、死なれると困る恋次侘助69以外はただのついでだったんだよなぁ。

 

 まあ恩に着てくれているのならそれを利用するだけなのでありがたく信奉者の一人として歓迎しよう。何でもしてくれるんですよね?(聞き違い

 

 

「…ふう」

 

 一人になったので疲労困憊な新人の演技を止めたあたしは、湯船に浸かりながら昨夜の出来事の余韻に浸っていた。

 

 

【速報】雛森桃、オサレ【朗報】

 

 

「──ふふっ、破面(アランカル)化前とはいえ作中屈指のチート能力持ち相手に初めてオサレムーヴ出来ちゃったっ」

 

 大虚(メノス)バラガンを屈服させ、残りの雑務を東仙子飼いの虚たちに任せて虚圏(ウェコムンド)を後にしたあたしは、その後無事五番隊の秘密地下室へ凱旋した。

 

 このバラガン戦の勝利であたしは一つ確信したことがある。

 それは、BLEACH世界の真理とは能力より霊圧、そして霊圧よりOSR値だと言うことだ。

 

 確かに卍解に至ったお陰で爆発的に増えたあたしの霊圧は大虚バラガンより勝っており、加え霊力の扱いもプロの上位隊長たちによる扱きといぢめでかなり上達していた。あたしが霊圧及び技量的にバラガンを上回っていたからこその勝利、というのは間違いではない。

 

 だがコアなBLEACH読者なら、固定化された設定上の能力勝負や霊圧比較ではなく、常に流動的な勝負展開の中バラガンがあたしのカウンター挑発で狼狽えたシーンの一点のみで「あっ、勝ったな」と察せたと思う。

 

 そう、あの戦いにおいてあたしが完全勝利を成し遂げられた理由は、バラガンより霊圧が高かったことが全てじゃない。このBLEACH世界の真理である【オサレポイントバトル】を十全に把握していたからだ。

 

 

【オサレポイントバトル】

 

 正式名称:A&COPB(Active&Count Osare Point Battle)。

 それはギャップ効果とフラグ効果、そして強者/弱者ロールを総合的に数値化したターン制の高度な勝敗計算式である。

 有り体に言えば「戦闘全体を通して、よりかっこよくお洒落な展開に持ち込んだほうが勝つ」というものだ。

 

 この"かっこよくお洒落な展開"とは、専門的に記述すると──外見・発言・表情・行動・状況などの各要素で別途に加算した毎ターンの【OSR値】の最終フェイズまでの合計【総合OSR値】が高い状況のことを指す。

 

 そしてBLEACH世界の戦闘の勝敗は彼我の霊圧差と、この【総合OSR値】の比較で決まる。チート特殊能力などの能力優劣はあくまでOSR値の一部(能力解放:〇〇)として換算されるため、その後のオサレ行動や展開で幾らでも覆すことが可能となる。

 

 バラガン戦におけるあたしの場合は──初回と言うこともあり──能力解放や解説を終盤まで控えたり、積極的に挑発を繰り返したり、相手の能力を正面から撃退すると言ったオサレ行動や発言などの基本を押さえた感じだ。

 切り札の【過去回想】や【仲間への謝罪】【初披露:卍解】などの人生一度きりのボーナスを除けば、実にシンプルなオサレムーヴといっていいだろう。

 

 これに加え、あたしは自分のポイントを稼ぐだけではなく、相手のOSR値を直接削る基礎戦術もしっかりと行っていた。そう、言わずと知れた【カウンターOSR】である。

 

 聞き馴染みのないライト層の読者諸君にはこの代名詞的セリフのほうが親しみがあるだろう。

 

 

 ──【特別台詞「なん…だと…」】

 

 

 それはOPBにおいて最も多用される必殺技【カウンターOSR】を喰らった者が確実に取ってしまうリアクション台詞である。

 

 【カウンターOSR】とは、各ターンのOSR値の比較で相手を上回ったときに行使出来る特殊オサレ行動であり、「次ターンにおける敵の行動制限」と「自身の一時OSR値分のダメージを敵OSR値に与える」の二つの効果がある。

 この特殊攻撃を受けた敵は多くの場合に大幅OSR値ダウンとなり、尚且つ次のターンに高OSR値行動が取れない極めて不利な状況に追い込まれる。

 

 例えば有名なエドラド戦で斑目一角が行った卍解は【初披露:卍解】【不利からの解放Lv.5】【異例の席官卍解】【流儀による秘匿】【オサレ名称Lv.2】【オサレ意匠Lv.3】【スロースターター】という七つのOSRボーナスが付与され、それまでエドラドにボコられ一桁台の底辺を彷徨っていた一角のOSR値が一瞬で四桁近くにまで膨れ上がった。この数値は絶対的な霊圧差をも無視し十刃すら倒せてしまうほど。弱者の究極のギャップ奥義と言えよう。

 

 こういった状況でよく聞くあの名台詞「なん…だと…」は、土壇場で高ポイントの【カウンターOSR】を許し一気に大量のOSR値を削られてしまったサインリアクションである。

 卵か雛かの違いだが、この「なん…だと…」はついうっかり言ってしまう失言でもあり、同時に大OSRダメージを喰らったことをわかりやすく相手にアピールする、いわばOPBにおける対戦マナーでもあるのだ。

 あたしも敵の【カウンターOSR】を喰らってしまったときは「なん…ですって…」とか「そんな…」とか「うそ…でしょ…」とか言わないといけないだろう。死ぬのは嫌だがやはり鰤界の名物なので、一度はマジシーンで言ってみたい。

 

 【カウンターOSR】はもちろん百発百中ではなく、各自の持つ基本ステ【カウンターOSR耐性】によって抵抗を試みることが出来る。そしてバラガンがああも簡単に「なん…だと…」を口にしてしまったのは、彼の耐性値が低かったのが原因だ。

 この耐性値は情報収集能力の高い浦原喜助、そして自らの不利を楽しめるヨン様などのキャラが高く、逆にバラガンのような傲慢チート能力頼りきり系キャラは最低値に近い。

 彼は今までのチート能力【能力解放:老い/+500】の規格外な基礎OSR値に頼りきった無双状態が長かったため、ちょっと予想外の結果になるとすぐ「なん…だと…」してしまう。

 あたしはこれを逆手に取り、向こうの自慢の攻撃を何度も打ち砕き【カウンターOSR】を多用することで相手のOSR値を削り、自身は卍解などの奥の手を隠して【カウンターOSR耐性】を常に高く維持しつつ、順調に自分のOSR値を積み重ねていったのだ。

 

 相手の手の内がほぼ完全にわかっている原作知識持ち転生者は、この【カウンターOSR耐性】が全作中キャラの中でもずば抜けて高い。十分な霊圧さえ持っていれば、バラガンなどのチート能力持ちはあくまで基本の能力解放OSRボーナスが多いだけだと割り切れる。こちらに圧倒的に有利なこのシステムは、あたしの最大の強味と言えよう。

 

 

(──あとは引き出しの多さか。ネタじゃなくてホントに黒棺が欲しくなってきた…)

 

 確信を持てたので、これで多少相手の能力や霊圧が優れていても怯えることはない。他のメンバーも必ず十刃に入れてみせる。原作名シーンは可能な限り実現させるのが鰤ファンの嗜みだ。

 

 …そんな感じに勧誘したバラガンがなんかあたしの部下になるとかいう意味不明なことをヨン様が言ってたけど、あれはなんだったんですかね? バラガンの配下には何故か主より強い全盛期ザエルアポロがおり、この二人は後の十刃(エスパーダ)。そして十刃は藍染惣右介直属の組織。あたしはただのスカウトだよ? 勧誘()任せろ!

 

 そう意気込むあたしだが、こう言うときいっつもフラグになるので万全を期すためにオサレバトルのイメトレや日頃の鍛錬と鬼道の種類を増やすとしよう。

 

(まずは八十番台の上級鬼道をもっと習わないとね)

 

 明日は鬼道衆への入団だ。鬼道はただ使うだけなら霊圧があまり関係ない世界なので、演技の必要のないオールフリーで修行が出来る。虚圏では霊圧も晒した鍛錬をしているがそれはそれ。鬼道の天才、雛森ソウルが火を噴くぜ!

 

「鬼道衆かぁ、どんなトコなんだろ」

 

 楽しみが続く日常とは、よきものだ。あたしはお風呂でぶくぶくしながら胸を高鳴らせ、その日の夜に最高にオサレな完全詠唱の黒棺を使って+300くらいのOSR値を獲得するオサレマスターな自分の姿を夢で見た。

 

 そして朝に夢だと気付いてちょっと泣いた。

 

 

 




 
次回鬼道衆はかなりオリ設定入るからご容赦ちょ
 
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