雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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一大イベントの三部作はじまり
その序章ィィィィ!
 


準備ィィィィ!

 

 

 

 真央霊術院卒業から二十年。

 

 五番隊に配属されてから同じ年月が経過し、振り返ればそれなりに大きな変化が目に付くようになる。

 

 身辺では恋次が五番隊の"斬拳走鬼統合"の理念を断念し斬術一本の十一番隊へ。そして侘助も何を思ったのか四番隊を経由して三番隊へそれぞれ転属していった。なお五番隊内では鬼道がoh…な恋次は厄介払いされたとの醜聞が広まっているが、裏ではヨン様の暗黒微笑が見え隠れする意味深な異動である。ついでに理吉も恋次に付いていったので、今の五番隊にいる原作キャラはあたしとヨン様だけに落ち着いた。

 

 あたし自身のことだと、まずつい先日五番隊で五席から三席に昇進した。

 虚圏(ウェコムンド)で卍解習熟を頑張っていたらつられて始解の威力調節も上達したので、ようやく地面を硝子化させないプチ飛梅ちゃんをここ尸魂界(ソウルソサエティ)の五番隊で披露。上位席官になったし解放ぐらいしてるとアピールしないとね。

 十年で二十席からここまでの昇進はかなり凄いが、実は侘助も吉良を解放し既に三番隊で三席になっている。ちなみに恋次はまだ六席でちょっと落ち込んでいるらしい。贅沢言うなよお前の幼馴染なんてシスコン兄貴の過保護でまだ平隊士やってるんだぞ!

 

 なおあたしと侘助の早めの昇進にはヨン様の粋な計らいがあったりする。それはもちろん…

 

「──おいふざけんなッ。なんで俺が昇進すると決まってお前の席次も上がるんだよ…! ウチの髭め、お前んトコの藍染隊長と示し合わせてるんじゃねえだろうな…」

 

「なっ、藍染隊長がそんな不公平な理由で部下を出世させるワケないでしょ! あたしの実力だもん、残念でしたー」

 

「ふふっ、二人とも目出度いことさね。今日はお夕飯食べてくかい?」

 

『食べるっ!』

 

 久しぶりに休日が被りおばあちゃん家でおでこを突き付け合うあたしと幼馴染。そう、ヨン様の粋な計らいとはこのシロちゃんとあたしのマウント合戦への協力だ。

 

 ──俺がお前より強くなったら…

 

 あの宣言ヘタレ事件から早十七年。当代一の神童シロちゃんは十番隊であたしと同じ三席になっていた。飛び級で四年分の基礎鍛錬時間を面倒な隊士の雑用や任務で失いながらも辿り着いた上位席官の地位。その成果は十分誇るべきではあるのだが…どうやら彼はあたしのことしか見えていないようだ(ニヤァ

 

 もっとも原作で日番谷冬獅郎はこれから四年後に乱菊さんとの二人三脚で副隊長相当の地位となる。その原因がヨン様陣営であり、つまりこれからも変わらずシロちゃんはあたしの愉悦を満たしてくれると言うことだ。感謝の気持ちに牡丹肉を多めにお椀に装ってあげよう。

 

「ほらシロちゃん、育ち盛りはいっぱい食べてっ」

 

「チッ、また子供扱いしやがって…オメーだってチビじゃねーか」

 

「な、酷い! チビじゃないもん、小柄だもんっ」

 

 悪態吐きながらもちゃんと受け取ってくれるところに好意が見えてあたし満足。ちなみに女性のスタイルの話なら前世では織姫ちゃんがタイプだったが、TS転生した今は雛森ちゃんの庇護欲をそそる華奢ボディのほうが好みだ。とくに首と腕と足が細くてめっちゃ綺麗。この身体であざといミニスカニーソの絶対領域とか作ったらシロちゃんの性癖がぶっ壊れそうなので私服は普通の小袖で露出ガードしています。

 ぶつぶつ「なんでこんなのが男共に人気なんだよ…」と他人の美意識に文句を言っている君はそろそろあたしが尸魂界最高峰の美少女だという事実を認めたまえ。

 

 

 と、話を戻すと護廷隊での変化はそんな感じだが、実は鬼道衆の方でも大きな進歩があった。むしろこっちを先に言うべきだろう。

 

 そう。あたしことCN(コードネーム)緋燕(ひえん)は最近、鬼道衆・一之組第七班班長に抜擢された。そして班長と言うことは、つまり! あれから二十年。遂に、遂に…

 

 

 ──黒棺を使えるようになった!

 

 

 ッドヤアアアァァァッッ! まさに幾星霜と言うに相応しい、黒歴史との長く苦しい戦いだった。これは鬼道衆において九十番台最速到達の偉業らしい。流石天才雛森ソウルだ、ひゃっほい!

 

 でもまあ完全詠唱でギリギリそれっぽいのが出来るようになっただけなので威力も全然だし、詠唱破棄なんてまだ絵に描いた餅だ。とはいえ絵にすら描けなかった新人時代よりは遥かに進歩している。これから原作開始までの二十四年間、虚圏で練習練習練習ゥッ! 威力を上げて目指せ詠唱破棄で隊長格瞬殺! さぁて、離反時には誰に生贄になってもらおうかなぁ?(皮算用

 

 

 そんな感じであたしの表の立場での変化は以上だが、裏の変化についても述べたい。

 

 まずは虚夜宮(ラスノーチェス)破面(アランカル)軍。あたしは何故か、原作には影も形も無かった【"十刃"軍団長(ヘネラーリャ・デ・エスパーダ)】とかいう何のためにあるのかよくわからない地位を押し付けられた。ようはヨン様DJ一〇あたしの中で一番暇しているあたしが虚や破面たちをまとめろということなのだと思い、とりあえず言うこと聞かない人は飛梅ちゃんのストレス発散に付き合ってもらったりしていたら、表面上はみんな従ってくれた。例えばウルキオラ一人探すのに二十年もかけているのに未だみんな熱心に捜索してくれるくらいには従順だ。おかげでDJから「秩序維持ご苦労」とより一層の信頼を寄せられている。【虚圏統括官】の仕事が半分くらいあたしに回って来てるのでは…

 

 それはさておき。実はこの【"十刃"軍団長】、仰々しい名前に反し権限があまりはっきりしていない。多分ヨン様はそんなことよりソレをあたしが何のために使うのかに興味があるのだろう。何のためにって原作再現ですがなにか?

 ということで現在絶賛"十刃"や従属官(フラシオン)などの原作キャラを集めて然るべき立場にぶっこむ作業を行っております。全員揃ったら誰か褒めて。

 

 

 …さて。久々の家族団らんも楽しめたし、そろそろ席を立とう。

 

「──鬼道衆の仕事か?」

 

 玄関まで見送りに来てくれたシロちゃんがちょっと寂しそうに尋ねてくる。んもー、そんなにあたしに愉悦してほしいなら言ってくれればいいのに。しょうがないにゃぁ…

 

「ううん、藍染隊長のお手伝い。今日は副隊長が任務でいないから代わりにあたしが消灯までお側にお控えするのっ!」

 

「……この時間に、二人でか?」

 

 今度は不審そうに眉を顰めるシロちゃん。年頃の女の子と憧れイケメン上司、夜間に二人きり。一つ屋根の下。何も起きないはずがなく…(邪悪な企み)

 なお雛森ちゃんは自分のことにすっごく鈍感な美少女なので無防備にこれをスルー。

 

「うん、藍染隊長お忙しいからこの時間もお仕事なさってるよ? ふふっ、あの人の私服姿って雰囲気が凄く柔らかくてステキなんだぁ」

 

「! な…ッ」

 

「じゃあ行ってくるね!」

 

「まっ、おい雛森ッ!」

 

 今のあたしは憧れの男性のプライベートに特別感を見出す純情乙女ムーヴ中。焦燥するシロちゃんに別れを告げて瞬歩で夜の流魂街を駆け抜ける。感知には遠ざかる彼の霊圧が。全く、こういうときに全力で追い駆ける気概がないから君はいつまでも"シロちゃん"なんだゾ。

 

 そして日番谷冬獅郎は、このときの雛森桃を止められなかったことを生涯、後悔するのであった…(フラグ)

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 突然だが、前述の通り現在の時間軸は原作開始の二十四年前である。

 

 これまであたしが関わって来た大きな原作イベントは三つ。霊術院の現世実習巨大虚(ヒュージ・ホロウ)襲撃事件、虚圏のバラガン屈服及び虚夜宮(ラスノーチェス)占拠、そして志波海燕殉職のメタスタシア改めテンタクルス実験だ。特に最後の件はちゃんと再現するためあたしがイベントの場をほぼ全て準備するなど、最早完全に悪の元凶になってしまっている。

 ルキアちゃんからすれば正気を疑う巨悪であり、あたしからすれば「あのイベ無くしてお前一護に原作ほど情湧かないだろ」という具合に当事者と原作知識者には大きな視点的隔たりがあるのが何とも言えないが──実はこれから行おうとしていることは、まさに神目線としか言いようのない常軌を逸した大計画だ。

 

 …お気付きの方も多いだろう。原作開始より二十年前。この時期に起きた最大のイベントと言えば例のアレをおいて他にない。

 

 

 ──一護の原点【ホワイト実験】。

 

 

 ヨン様の暗躍魔人っぷりがこれでもかと描写された、原作BLEACHにおける最重要イベントと言っても過言ではない一大実験。主人公の誕生と彼が操る数々の能力は全てここから始まるのである。

 

 一応原作での展開を述べておくと、一護のパッパ(死神)とマッマ(滅却師(クインシー))が出会い、マッマにヨン様の実験虚【ホワイト】が偶然寄生し、結果一護は親の死神・滅却師・虚の全ての力を持って生まれたハイパーサラブレッド主人公となるワケである。あとついでになんか完現術(フルブリング)も。血筋・才能・勝利!を完璧に押さえる近年ジャンプヒーローの鑑。

 

 その一護が主役の原作BLEACHを開始させるには、この【ホワイト実験】は何が何でも黒崎真咲(くろさき まさき)寄生&志波一心(しば いっしん)結婚エンドにさせなくてはならない。これらが過不足なく再現されないと主人公が強くなる土台が消えるどころか、そもそも生まれすらしないのだ。

 

 …仕方ない、主人公の原点という原作最重要イベだ。

 もしものときは手遅れになる前にヨン様にある程度原作知識を伝えて強引に正史展開に持っていくとしよう。

 

 

 

「──幾人もの死神の魂魄を素体とした最上級大虚(ヴァストローデ)と同格の寄生型虚か…」

 

 そういうことで、只今あたしは毎度の虚研究家・東仙要氏の研究所へお邪魔しております。

 

「先日崩玉の大規模強化が終わり破面たちをより死神へと近付けることに成功しました。ですがあれではただの死神と虚の両方の特徴を持った霊体に過ぎません。絵具を混ぜて霊力量が増えただけで高次元へ至っていない」

 

「言わんとしていることは理解出来る。私もアレらが到底藍染様が望んでおられる"霊格の到達点"だとは思えん。あまりに脆弱だ」

 

「はい。なのでもっとデータが必要です。確か藍染隊長が以前崩玉に死神の魂を与える研究をなさってましたよね? あれを参考に、虚化させた死神の魂を蠱毒で強化する研究成果を【テンタクルス計画】に応用して再実験してはいかがでしょう。最上級の研究素材同士を掛け合わせて魂魄限界の変化を観測するんです」

 

 いけしゃあしゃあと「何か光明が見えるかもしれません」とか言ってDJを誘導。特に死神の魂魄をベースにした強力な寄生型最上級大虚(ヴァストローデ)を作るという点は絶対に外せない。仮に弱い寄生型虚を使ってしまえば、後にソレを継承する一護の力が大幅に弱体化しかねないのである。

 

 ただでさえ一護は最終章で敵が伝統のOPBではなく別漫画の能力TUEEEバトルを始めたせいで環境に適応出来ず、惨敗して絨毯化したり新卍解が即折れしたりと散々だったのだ。力の源たる【ホワイト】が弱すぎてあれより凡才になってしまったら絨毯どころか養生シートになってしまう。そしてあたしは一護が活躍できないBLEACHなんて見たくありません。一護は曇り顔ではなく仲間を救えて晴々してる笑顔が似合うオサレな男なんです。

 

 ジッとDJの反応を待つ。今、彼の研究者としての優れた頭脳で様々な計算が行われているのだろう。

 そして少し考えた東仙が顔を上げ、あたしを()た。

 

「…お前の特異性は以前、藍染様より一度だけお聞きしている」

 

 彼の霊圧が漏れ出している。話の内容といい、思わず背筋を伸ばすあたし。

 

「私には到底理解出来ないことであったが…お教え頂く代わりに、お前が何か強く望むことがあれば必ず叶えろとのご命令も頂いた。今がそのときなのだろう?」

 

「!」

 

 驚いた。まさかヨン様がそんなことを…

 

「…わかった、全面的に協力してやろう」

 

「東仙隊長…!」

 

「幾人もの死神の魂魄を素体とした最上級大虚(ヴァストローデ)と同格の寄生型虚、とのことだが──具体的にどの程度の力を望む? お前がこれほど熱を上げる計画だ、ハリベル程度ではあるまい」

 

 あたしは東仙の言葉にこくりと喉を鳴らす。

 熱意と言えばあなたもそうでしょうに、と彼の吊り上がった口角を見てつい笑ってしまう。メタスタシア改めテンタクルスくんから始まった寄生型虚実験の最終到達点。かつて何度と共に手を取り合った頼れる虚研究者・東仙要の助力を手にしたあたしは、同床異夢にチクリと痛む胸を隠し、満面の笑みでこう答えた。

 

「決まってますよ。我らのかつての最高戦力…」

 

 

 

 

 

 

 ──元第0刃(セロ・エスパーダ)ザエルアポロ・グランツと同格の大虚です。

 

 

 

 

 

 

 

 …一護くんよぉ。

 

 お前、あたしにこんだけお膳立てしてもらって千年血戦篇で「終わりだ…」とか心折れやがったらもう許さねぇからなぁ?(ツンデレ

 

 

 

 

 

 

 

 




 
最近色々祟って中々感想返しが出来ずに済まぬ…
全部読んで励みになってるのでこれからもいっぱい下さい、好き(素直)

次回:ホワイトくん作成
 
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