雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

23 / 145
 
邪悪&グロ注意
 


白虚ィィィィ!

 

 

 

 毎度の虚圏(ウェコムンド)虚夜宮(ラスノーチェス)

 

 尸魂界(ソウルソサエティ)瀞霊廷(せいれいてい)並みに巨大なこのお城の一角に、緑の豆大福みたいなキモい建物が建っている。あたしは東仙との相談を終え、一人その施設の主人に会いに来ていた。

 

 

「──これはこれは、麗しき軍団長閣下。ようこそお越しくださいました」

 

 

 先触れを送っておいたおかげか律儀に出迎えてくれる紳士的なインテリ破面(アランカル)。その甘いマスクの裏に隠れた本性を知る者としてはまるで演技中のヨン様を見ているような気分になるのだが…流石にあれほどじゃないか、失敬失敬。

 

「あ、はい。わざわざありがとうございます──ザエルアポロさん」

 

「いえいえ、またこうして閣下の可憐なお顔を拝見出来て光栄です」

 

 ニコと微笑む桜髪の胡散臭い眼鏡系男子。うーん、この教本のように完璧な営業対応。以前とは別人のように霊圧が落ちているが、どうやら本人の顔を見る限り例の兄(イールフォルト)の呪縛とやらから解放されて清々しているようだ。いい空気吸ってそう。

 

 ザエルアポロ・グランツ。

 

 原作BLEACHにおける第8十刃(オクターバ・エスパーダ)の地位を持ち、恋次と石田眼鏡をボコりネムちゃんに出産プレイを強制し遊んでいたところをみんなのマユリ様に成敗されたKBTIT師匠の大のお気に入りキャラである。女に転生した今は正直ネムのシーンが印象的過ぎて思わず身構えてしまいそうになる変態だ。

 

 とはいえ彼の毒牙があたしたちヨン様陣営首脳部に及ぶことはない。このザエルアポロは人間時代の名残か虚時代から闘争より霊的科学に興味があり、バラガンやヨン様などその庇護者パトロンには恭しく遜るなど妙に謙虚なところがある。あたしが勧誘した時も今のように丁寧な挨拶でさらりと仲間に加わってくれた。

 

「ところで本日はどのようなご用件でしょう?」

 

「えっと、単刀直入に言いますと…強力な最上級大虚(ヴァストローデ)の霊体構成と戦闘データが欲しいんです。具体的には、その──破面化前のあなたの、とか」

 

「ほう…」

 

 目的を伝えるとザエルアポロが眉間に微かに皺を寄せる。彼の黒歴史なのはわかるが、こちらも一護を強化するために絶対に必要なことである以上引き下がれない。

 なにせこの虚圏の史上最強の虚はかつての已己巳己巴(いこみきどもえ)でも大帝バラガンでもヤミーでもスタークでもなく──最上級大虚(ヴァストローデ)時代の彼だったのだ。

 

 第0刃(セロ・エスパーダ)ザエルアポロ・グランツ。実はこの男、全盛期はとんでもない化物だったと小説で明らかになっている。

 

 人間時代はマッド錬金術師で、死後軍人の兄を始めに霊魂を喰い漁り強者へと至り、その力はあのバラガンさえも自陣に引き入れたあとはノータッチだったほど。破面化した彼の実力は更に凄く、なんとあの完全虚化一護と同等以上の戦績を上げるほどで、そのヤバさは更木剣八とマユリ様を合体させたモンスターと例えられる。

 

 あのウルキオラ戦での完全虚化一護の強さを見る限り、多分原作の東仙はこの最上級大虚(ヴァストローデ)ザエルアポロを【ホワイト】の霊性参考にしたのだとあたしは見た。なので是が非でもそのデータをゲットするため、こちらは対価に桃ちゃんラボの研究資料を差し出そう。

 

「その、ご不快はもっともですけど非常に重要な研究なんです」

 

「なるほど…」

 

「あたしが管理している浦原喜助の義骸技術に関する研究資料と交換してくれませんか?」

 

 ザエルアポロが目を見開く。確か以前からヨン様に要求していたはずだ。

 揺れてるところをテレビ通販のノリで畳み掛ける。

 

「あっ、お望みでしたら新しい"十刃"の座もまたご用意しますよ」

 

「"十刃"…それはそれは」

 

「以前の第0十刃(セロ・エスパーダ)はもうヤミーさんで埋めちゃいましたけど、やっぱりあなたのいない"十刃"は寂しいですから…」

 

 そうだぞ、お前がいないと"十刃"の登場シーンは半分くらい消えるからな、連載話数的に。それにネムちゃんのあの名シーンはBLEACHに必要不可欠だ。流石のリョナ女王雛森ちゃんも出産プレイは守備範囲外です。

 

 そう、かつては小説キャラ特有のぶっ壊れチートだったザエルアポロも、今や"十刃落ち"(プリバロン・エスパーダ)。その弱体化の理由が本人の目指す「完璧な生命」に不必要な「感情」を物理的に捨て去った故と言うのが中々にBLEACH的でオサレだが、"十刃"という破面軍最上位の立場は平穏な研究生活を望む彼にとっても魅力的なはずだ。

 

 ちなみにその捨てた感情は現在、実兄イールフォルトの破面(アランカル)として元気にグリムジョーの金魚のフンをしてます。

 

「…閣下よりこれほどの御慈悲を頂いて断るのは野暮というもの。僕の醜い過去をお見せするのは恥ずかしいですが、どうぞご自由にお使いください」

 

 よし! 浦原さんが尸魂界追放時に残した遺産を渡して無事最上級大虚(ヴァストローデ)ザエルアポロの霊性データゲットだ。彼は小説で人造大虚(ロカ・パラミア)を作ったりと浦原さんと通じる研究を色々していたので、あたしの資料は役立つだろう。

 頑張ってくれ。

 

 

 その後、無駄な世間話はせずさっさとサラバしてDJラボで即刻研究開始。

 極上のデータなのだ、これで少なくとも原作より弱くなることはないだろう。

 

 後はいつもヨン様がやってるように、部下の虚でおびき出したその辺の上位席官を何人か拉致して素体にし、ヨン様謹製の崩玉で虚化すれば完成するらしい。微塵の慈悲もない、東仙の死神に対する憎悪で溢れかえっている。ヒエッ…

 

 というワケで、早速護廷隊の原作無関係な上位席官たちに犠牲の犠牲になってもらいます。

 おう、八番隊副隊長。女性死神協会で七緒ちゃんが愚痴ってたが何やら隠れてセクハラしまくってるそうだな? 三番隊元三席、侘介に席次取られて色々彼にシャレにならない嫌がらせしてるの聞いてるゾ? ウチの五番隊副隊長は…特に嫌いでも親しくもないけどヨン様に聞いたら「あげる」とのことなのでありがたく頂戴する。

 なおこの大量拉致の結果、護廷隊全体で上位席官のポジションがいっぱい空いたので続々と原作キャラたちが昇進したのは我々だけの秘密だ。

 

『──オオオオォォォォ…』

 

『──アアアァァァ…』

 

『──ォォォ…』

 

『──…』

 

 上は副隊長、下は七席。ここ虚夜宮を支配してから二十四年の間に拉致監禁してきた実験用死神の中で最も霊圧が高く斬魄刀の能力に偏りがない十三名を全員強化済みの崩玉で虚化し、実験施設で互いに喰らい合わせる。響く絶叫と咀嚼音、飛び散る血潮、瘴気のようにおぞましい霊圧の膨張。とんでもない光景だ。これにあたしがどっぷり関わってるとか眩暈がしそう。

 隣を見上げれば鬼畜スマイルの東仙さん。人間色々麻痺してくると笑ってしまうらしいが、多分あたしも笑っている。これも愉悦の一つなのだろうか、奥が深いなぁ…(遠い目)

 

 そして色々とあたしが吹っ切れた頃…

 

 

「──なるほど、確かにコイツはこれまでの雑魚とは格が違う」

 

 

 その辺の最上級大虚(ヴァストローデ)とは一味も二味も違う、死神の力と親和性の高い凄まじい潜在能力を秘めた怪物の誕生だ。

 

 百年以上の研究より更に四年をかけた計画。崩玉というチートアイテムで相当数の中上位席官を素体にし、完成した蠱毒大虚がこちらになります。

 

 

『──……』

 

 

 容姿は原作に限りなく近い、黒い鎧に包まれた純白の肉塊。細菌型と生体型の両方の特性を併せ持つ、寄生型虚研究の到達点にして最高傑作だ。

 この規格外な最上級大虚(ヴァストローデ)ホワイトくんを制御出来るのはユーハおじさんの協力を得た原作主人公の一護だけだろう。

 

「…素晴らしい、細心の注意を払い素体らを吟味した甲斐はあった。これほどのものはもう二度と作れないだろう…」

 

「この状態で既に現"十刃"級の霊圧ですからね。寄生標的の──純血滅却師(クインシー)と融合したら凄いことになりますよ」

 

 感無量といった面持ちで培養器を見上げる東仙。だがあたしの言葉には未だ懐疑的だ。

 

「本当にコイツを黒崎家の遺児に寄生させるのか? 相反する滅却師との魂魄融合など実例がない。力が反発し合い魂魄自殺で終わるとしか思えん」

 

「はい、確実にそうなるでしょうね」

 

「…何を考えている、雛森三席」

 

 訝しむ彼へ、あたしは持ち前の原作知識を披露する。もちろん理論上は辻褄の合う推理という形で。

 

「昔、東仙隊長が細菌型寄生虚で虚化させた元五番隊隊長・平子真子(ひらこ しんじ)以下護廷隊隊長格および鬼道長格の八名は未だ存命ですよね。浦原喜助に匿われて」

 

「市丸の報告にあったな。ヤツは研究施設の霊力を賄うため現世の重霊地を点々としているらしい。藍染様は既に想定されておられたようだが…」

 

「はい。その人たちは八十年も魂魄自殺を免れてます。あるいは既に死神として高次元の霊格に至っているのか。ほぼ確実に、藍染隊長が警戒されている浦原喜助の技術力のおかげでしょう」

 

 今の時代の重霊地はヨン様による分析が進んでおり、大体の場所も把握している。そしてあたしはその予測範囲にある一つの町を実験場に選んだ。

 あたしの話を聞くにつれ、東仙の顔が強張っていく。

 

「まさか、お前がやろうとしていることは…!」

 

 戦慄する彼へ雛森桃の可愛らしい笑みで微笑む。あたしにとっては特別な事ではない。ただ原作で起きた偶然、奇跡の出来事を──我ら藍染惣右介一派が必然に変えるだけだ。

 

 

 

「使えるものは全て使う。浦原喜助をおびき出すと共に──彼にもあたしたちの研究にご協力いただきましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …で、肝心の我らが主人公一護くん。よく色んな人にメンタルの弱さを心配される少年だけど、君はこの怨念凄まじいホワイトくんをちゃんと制御出来るのだろうか?

 

 

 

 

 




 
ストックさんが危篤なので次回もしかしたらお休みするかも…
 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。