雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」 作:ろぼと
邪悪&グロ注意
毎度の
「──これはこれは、麗しき軍団長閣下。ようこそお越しくださいました」
先触れを送っておいたおかげか律儀に出迎えてくれる紳士的なインテリ
「あ、はい。わざわざありがとうございます──ザエルアポロさん」
「いえいえ、またこうして閣下の可憐なお顔を拝見出来て光栄です」
ニコと微笑む桜髪の胡散臭い眼鏡系男子。うーん、この教本のように完璧な営業対応。以前とは別人のように霊圧が落ちているが、どうやら本人の顔を見る限り
ザエルアポロ・グランツ。
原作BLEACHにおける
とはいえ彼の毒牙があたしたちヨン様陣営首脳部に及ぶことはない。このザエルアポロは人間時代の名残か虚時代から闘争より霊的科学に興味があり、バラガンやヨン様などその庇護者パトロンには恭しく遜るなど妙に謙虚なところがある。あたしが勧誘した時も今のように丁寧な挨拶でさらりと仲間に加わってくれた。
「ところで本日はどのようなご用件でしょう?」
「えっと、単刀直入に言いますと…強力な
「ほう…」
目的を伝えるとザエルアポロが眉間に微かに皺を寄せる。彼の黒歴史なのはわかるが、こちらも一護を強化するために絶対に必要なことである以上引き下がれない。
なにせこの虚圏の史上最強の虚はかつての
人間時代はマッド錬金術師で、死後軍人の兄を始めに霊魂を喰い漁り強者へと至り、その力はあのバラガンさえも自陣に引き入れたあとはノータッチだったほど。破面化した彼の実力は更に凄く、なんとあの完全虚化一護と同等以上の戦績を上げるほどで、そのヤバさは更木剣八とマユリ様を合体させたモンスターと例えられる。
あのウルキオラ戦での完全虚化一護の強さを見る限り、多分原作の東仙はこの
「その、ご不快はもっともですけど非常に重要な研究なんです」
「なるほど…」
「あたしが管理している浦原喜助の義骸技術に関する研究資料と交換してくれませんか?」
ザエルアポロが目を見開く。確か以前からヨン様に要求していたはずだ。
揺れてるところをテレビ通販のノリで畳み掛ける。
「あっ、お望みでしたら新しい"十刃"の座もまたご用意しますよ」
「"十刃"…それはそれは」
「以前の
そうだぞ、お前がいないと"十刃"の登場シーンは半分くらい消えるからな、連載話数的に。それにネムちゃんのあの名シーンはBLEACHに必要不可欠だ。流石のリョナ女王雛森ちゃんも出産プレイは守備範囲外です。
そう、かつては小説キャラ特有のぶっ壊れチートだったザエルアポロも、今や
ちなみにその捨てた感情は現在、実兄イールフォルトの
「…閣下よりこれほどの御慈悲を頂いて断るのは野暮というもの。僕の醜い過去をお見せするのは恥ずかしいですが、どうぞご自由にお使いください」
よし! 浦原さんが尸魂界追放時に残した遺産を渡して無事
頑張ってくれ。
その後、無駄な世間話はせずさっさとサラバしてDJラボで即刻研究開始。
極上のデータなのだ、これで少なくとも原作より弱くなることはないだろう。
後はいつもヨン様がやってるように、部下の虚でおびき出したその辺の上位席官を何人か拉致して素体にし、ヨン様謹製の崩玉で虚化すれば完成するらしい。微塵の慈悲もない、東仙の死神に対する憎悪で溢れかえっている。ヒエッ…
というワケで、早速護廷隊の原作無関係な上位席官たちに犠牲の犠牲になってもらいます。
おう、八番隊副隊長。女性死神協会で七緒ちゃんが愚痴ってたが何やら隠れてセクハラしまくってるそうだな? 三番隊元三席、侘介に席次取られて色々彼にシャレにならない嫌がらせしてるの聞いてるゾ? ウチの五番隊副隊長は…特に嫌いでも親しくもないけどヨン様に聞いたら「あげる」とのことなのでありがたく頂戴する。
なおこの大量拉致の結果、護廷隊全体で上位席官のポジションがいっぱい空いたので続々と原作キャラたちが昇進したのは我々だけの秘密だ。
『──オオオオォォォォ…』
『──アアアァァァ…』
『──ォォォ…』
『──…』
上は副隊長、下は七席。ここ虚夜宮を支配してから二十四年の間に拉致監禁してきた実験用死神の中で最も霊圧が高く斬魄刀の能力に偏りがない十三名を全員強化済みの崩玉で虚化し、実験施設で互いに喰らい合わせる。響く絶叫と咀嚼音、飛び散る血潮、瘴気のようにおぞましい霊圧の膨張。とんでもない光景だ。これにあたしがどっぷり関わってるとか眩暈がしそう。
隣を見上げれば鬼畜スマイルの東仙さん。人間色々麻痺してくると笑ってしまうらしいが、多分あたしも笑っている。これも愉悦の一つなのだろうか、奥が深いなぁ…(遠い目)
そして色々とあたしが吹っ切れた頃…
「──なるほど、確かにコイツはこれまでの雑魚とは格が違う」
その辺の
百年以上の研究より更に四年をかけた計画。崩玉というチートアイテムで相当数の中上位席官を素体にし、完成した蠱毒大虚がこちらになります。
『──……』
容姿は原作に限りなく近い、黒い鎧に包まれた純白の肉塊。細菌型と生体型の両方の特性を併せ持つ、寄生型虚研究の到達点にして最高傑作だ。
この規格外な
「…素晴らしい、細心の注意を払い素体らを吟味した甲斐はあった。これほどのものはもう二度と作れないだろう…」
「この状態で既に現"十刃"級の霊圧ですからね。寄生標的の──純血
感無量といった面持ちで培養器を見上げる東仙。だがあたしの言葉には未だ懐疑的だ。
「本当にコイツを黒崎家の遺児に寄生させるのか? 相反する滅却師との魂魄融合など実例がない。力が反発し合い魂魄自殺で終わるとしか思えん」
「はい、確実にそうなるでしょうね」
「…何を考えている、雛森三席」
訝しむ彼へ、あたしは持ち前の原作知識を披露する。もちろん理論上は辻褄の合う推理という形で。
「昔、東仙隊長が細菌型寄生虚で虚化させた元五番隊隊長・
「市丸の報告にあったな。ヤツは研究施設の霊力を賄うため現世の重霊地を点々としているらしい。藍染様は既に想定されておられたようだが…」
「はい。その人たちは八十年も魂魄自殺を免れてます。あるいは既に死神として高次元の霊格に至っているのか。ほぼ確実に、藍染隊長が警戒されている浦原喜助の技術力のおかげでしょう」
今の時代の重霊地はヨン様による分析が進んでおり、大体の場所も把握している。そしてあたしはその予測範囲にある一つの町を実験場に選んだ。
あたしの話を聞くにつれ、東仙の顔が強張っていく。
「まさか、お前がやろうとしていることは…!」
戦慄する彼へ雛森桃の可愛らしい笑みで微笑む。あたしにとっては特別な事ではない。ただ原作で起きた偶然、奇跡の出来事を──我ら藍染惣右介一派が必然に変えるだけだ。
「使えるものは全て使う。浦原喜助をおびき出すと共に──彼にもあたしたちの研究にご協力いただきましょう」
…で、肝心の我らが主人公一護くん。よく色んな人にメンタルの弱さを心配される少年だけど、君はこの怨念凄まじいホワイトくんをちゃんと制御出来るのだろうか?
ストックさんが危篤なので次回もしかしたらお休みするかも…