雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」 作:ろぼと
早めの投稿なお察しオサレ回
長らくおまたせ隊士暗躍篇最終話!
ホワイト事件が無事に終わった。
あたしは長らく頭を悩ませていた問題が一段落したことに胸を撫で下ろし、協力してくれた
「──ありがとうございました、ザエルアポロさん。経過観察は必要ですが多分成功したと思います」
「それはそれは、おめでとうございます軍団長閣下。私も新たな力の研究が順調ですので直にまた閣下の指揮を賜る名誉を頂戴しに参りましょう」
「わぁっ、
インテリな美青年スマイルとキュートな美少女スマイルが交差する。大変絵になる光景だが言葉の裏に籠る意味は実に邪悪だ。あとその「
「それとロカさんの件ですが今後も東仙隊長の研究室へ派遣して貰ってもいいですか? あの人の能力はとても助けになったので」
「お望みとあらばいつでも。元より廃棄しようと思っていたところです」
「そ、そうでしたか…」
有能な部下への扱いが雑なのは自分の新能力への自信の表れなのだろうか、ロカかわいそす。
このロカ・パラミアの話は彼女の【反膜の糸】の力を我々DJ側の研究施設で借りられないかという打診だ。色々面白いことが出来るのでDJラボの派遣研究員に採用です。
ホワイト計画で一護パッパの義骸にぶち込んだ霊力転送装置もこの【反膜の糸】の応用で、一護マッマの義骸とパスを繋いでより効率的にパッパの力を注ぎ込めるようにしたもの。元々パッパはホワイトより強い死神なのだから霊力量は最初から問題なく、あたしはただ浦原さんがもっといい霊力転送装置を作るまでのつなぎになっただけだ。ザエルアポロは「一日で作った玩具」と言っていたが、そのうちの殆どはブラックボックス化に費やした程度のものらしいので原理自体はシンプルなのだろう。詳しいことは知らない。
「ところでノイトラさんが何やら不穏な動きをしてるそうですが、ザエルアポロさんは何かご存じですか」
ふと、思い付いたことを脈略なく尋ねる。すると少しの間をおいてザエルアポロが答えてくれた。
「…ええ。ネリエルと仲が悪いようでして、彼女を排除しようとしている様子。ですがあの獣は閣下の御威光に平伏しておりますので気になさる必要はないでしょう」
あ、その話もう上がっていたのか。ということは今コイツあたしとノイトラ、ひいては自分の"十刃"の座を天秤にかけてあたしの信用を選んだな。いや「気にするな」とも言ったしどっちに転んでもいいようにしたか。
くっ。ネリエルいい子だが、これも葦名…じゃなかった原作のため…
「別にネリエルを排除しても構いませんよ?」
「…おや。彼女は閣下随一の臣と伺っておりましたが?」
「"十刃"は強さが全て。決闘だろうと闇討ちだろうと不覚を取る弱者に
ネルちゃんを一護と出会わせる布石を撒いておく。というかみんなそんなにあたしに遠慮してんのかよ。するくらいなら原作通り動いてくれ、頼むから。
致し方無し、ちょっと軌道修正するか。
「それに"十刃"は藍染隊長の戦力として組織された軍団です。藍染隊長じゃなくあたしに忠誠を誓ってしまってるネリエルさんは、その…そうですね、不適切な人材…ということで」
「…なるほど。真の臣とはまさに閣下のこと。御見逸れいたしました」
うるせぇ皮肉かメガネ割るぞ。"真の臣"とか全く巧くねぇよ。すまぬネリエル、これも全部あのリョナ好き最高神が悪いんや…
最低限の詫びだ、代わりにこちらを気を付けてください。
「殺すのは絶対に止めてくださいね」
「閣下の御慈悲、確と承りました」
仰々しくパトロンへ礼をするザエルアポロへ何とか笑みを作り、あたしは彼の研究所を後にした。
完成した
今回のホワイト計画で起きる表面的な変化は、実はそう多くない。
あの虚の魂魄には幾つか細工が施されており、そのうちの一つが【牙錠封印】。仰々しい名前だが、ようはカギと鍵穴のように後で外部から力を封印しやすいよう事前に準備がされているのだ。
霊能の継承遺伝というのはそれなりによくある事象で、例えば七緒ちゃんの家などは女系男難の呪いとそれを引き起こす斬魄刀という先天的・後天的な二つの因果がある。
あたしはこれを参考にして自陣営の頭脳派たちと一緒にカギのような封印を作り、その鍵穴をホワイトの魂魄に埋め込んだ。あとは一護が生まれてから先天的に有しているその鍵穴へ、あたしが後天的にカギを差し込めば封印は完璧となる。
ここに
この鍵穴とカギは一つの魂魄──霊王の欠片を二つに割って作られてある。両片は一度合わせば元の霊王の欠片として再生し、その欠片を一護の魂魄から抜き取れば封印は解除される仕組みだ。なので一護がホワイトの真の力を使えるようになるのは
よって、あたしが関わるヨン様篇では一護の状態は原作とそう変わらないはずだ。内なる虚に悩まされる頻度が多少増え、その対価に多めに力を引き出せ、彼の総合OSR値が上がるくらい。ストーリー上の大きな変化とはならないし、何よりオサレ漫画の主人公がよりオサレになるというのは読者として歓迎すべきではなかろうか。
…まあ隠す程のことでもないので本音をぶっちゃけると、あたしはオサレポイントバトル信者である。
そして千年血戦篇で我が物顔で大暴れする【
そう拗ねていた最中、主人公誕生の切っ掛けの全てを起こすはずのヨン様がそれをサボりやがった。代わりにあたしがやる羽目になったら…やるべきことは一つだよなぁ?
というワケであたしは彼らがイキりまくる千年血戦篇へ【ホワイト強化】という一石を投じることにしたのだ。
ふん、新参の滅却師共め。あたしたちのオサレ主人公舐めんじゃねぇぞ。ホワイトくんだって陛下に奪わせねぇからなぁ?(フラグ)
もしあたしがヨン様敗北後も何かの拍子で生き残ってしまったら、虚圏か現世に潜伏して原作再現を一切考えないフリーダム転生ライフにチャレンジしてみたい。見えざる帝国進撃時には破面のみんなを連れてどっかに避難しとこうぜ(戦略的撤退)
余生にも楽しみを残す完璧な人生設計、転生者の鑑かな?
さて、一護の封印の続きは彼が生まれてからだ。
それまでにあたしは原作展開と「雛森ィィィィ!」に必要な残りの準備を終えるとしよう──
***
──何もない。
常闇の中、命が生まれた。
七人の闇の堕仔たち。互いを貪り、喰らい、闘争に明け暮れる黒獣の一党。
その中に、一人──"白"がいた。
牙も、舌も、口さえも持たないその"白"は、六人の堕仔たちが死に絶え、朽ちる、深い闇の中で、ただ一人、白く浮かんでいた。
──何もない。
ふと。"白"の唯一にして、たった二つの目に、一筋の光が差し込んだ。
闇の果て。未知の導。そこに何かを求め、"白"は闇を這い上がる。
辿り着いた先には白があった。
変わらぬ闇の底に浮かぶ、白い砂漠の果てなき大地。
だが触れる指先は殻に覆われ、熱も、冷たさも、さらさらと零れ落ちる微粒の白砂も、何一つとして"白"の生に意味を成さない。
この身にある、たった二つの目に映るものがこの世の全て。
されどそこに如何なる美も情も理も見出せず、"白"はただ、果ての無い白の大地を歩き続ける。
時折目にする獣たち。口を持ち、鼻を持ち、砂に・大気に・血に・肉に・骨に・己に──何かに触れることが出来る者たちがやってくる。それらを都度々々薙ぎ払い、"白"は彼らに問いかけるのだ。
己にないソレらで
答えなどない。獣に言葉などなく、言葉を解す獣も獣に相応しい無意味な単語の羅列を叫ぶのみ。無意義で無価値な、空虚な存在。
それがこの世全てであった。
──何もない。
白の大地の果てに"白"は見る。空の闇すら覆い尽くす──深く白い森を。
辺り一面、己と同じ、白の世界。
天と地を別つ黒はなく、獣も、砂も、大気を揺らす風もない、虚ろな地。
この世で最も無に近いその森で、"白"はその身を横たえる。
景色が溶け、音すら聞こえず、時の流れも、自分の名も、自我さえも消えて行くような常白にうずまり眠る、白き闇の堕仔。
何もかもが白に染まっていく中で、何もかもを手放していく"白"は、そこに初めて──生の幸福を覚えていた。
──パキリ。
音だ。
無に溶けゆく"白"が、その
パキリ、パキリと近付く音。石英の森に響く、無の終わり。
そして果てしない白の世界に、かつての常闇に反を転じる──"黒"を見た。
「──やっと見つけました」
人だ。
木でも、砂でも、獣でもない。言葉に意味を持たせ、触れるものに意味を見出し、"白"には見えない世界を見る、一人の"黒"。
──誰だ。
"白"が問う。
「あなたは?」
"黒"が問う。
──虚無だ。
"白"が答える。
「愉悦です」
"黒"が答える。
「世界にはたくさんの景色があります。目に見えるものに意味を見出だせないなら、見えないものに見出だせばいい」
──見えんものなど信じん。
「信じられますよ。何故なら希望も絶望も幸福も不幸も、それら全てが目には見えない世界の一部。人だけが持ち得る、人を人たらしめる人の証──
──心…
"白"は脳裏でその言葉を想起する。目に見えないものなど在りはしない。それはこの世に、己の生きる
「でしたら他のものを教えましょう」
──何。
"白"は、目の前に腰を下ろした"黒"を見る。口を持ち、舌を持ち、鼻を持ち、皮膚を持ち、何もないこの世に意味を見出す、人。目しか持たない己に欠けた全てを持つ、人。
「あなたに口を与えましょう。あなたに歯を、舌を、鼻を、皮膚を与えましょう。あなたが知らない世界をたくさん見せてあげましょう。この世は白と黒の箱庭ではなく、数えきれないほどの幸福と不幸に溢れているのだと。世界とは、その目に映るものよりもっともっと広いのだと。それら全てを見て、触れて、食べて、嗅いで、感じてみましょう。あなたが心の在りかに気付く、そのときまでに」
"白"は目を見開く。己の世界の全てを開く。
"黒"は笑っていた。満面を使った影なき顔。それが"白"の生まれて初めて見る、人の笑顔だった。
「あたしは雛森桃。あなたの世界を広げる水先案内人です。あなたのお名前を聞いてもいいですか?」
目の前に、白い手が差し出される。その白はあの白い砂漠とはまるで違う、生きた人の肌の白。爪に、殻に覆われた己の手で触れたそれは、臆さず、傷一つ付くことなく、優しく"白"のそれを握り返してきた。
この世には何があるのか。獣ではないこの"人"が、死神が、見せてくれるというのか。
虚無ではない、この世界を…
──ウルキオラ・シファーだ。
かくして
これにて隊士暗躍篇は終幕です、お付き合い頂きありがとうございました!
感想評価マイリス応援いつも励みになってます
それと済まぬ…ストックさんの霊圧が消えたのでこれからは一日おきの更新になるかもです
大体22時か23時のどっちかに上げますのでお楽しみに!