雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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ディ・ロイが死ぬと言ったな、あれは嘘だ。
差し込めるタイミングが今しかなかったので予告詐欺の桃ちゃん強化フラグ。

ブレソルネタがあるので知らない人は雰囲気で察して♡


 


食事ィィィィ!

 

 

 

 

 

 

 

「──と言うワケで買ってきました」

 

 

 一護くん調査報告会も終わり、あたしは厨房で現世買い出しの成果を自慢していた。

 虚化の準備に色々とラボで忙しそうにしていたDJもダッシュで駆け付けてくる。それほど虚圏(ウェコムンド)は食材や調味料が年中不足状態なのだ。

 早速ロカを呼んで【反膜の糸】でコピペさせる。犯罪みたいだが、死神を現世の司法行政が捕らえて裁く法律も、食材を完全複製する行為を咎める法律もないのでこれは犯罪じゃない(断言)

 

「…雛森、ちゃんとオーガニック製品を選んだか? 最近の現世の調味料は添加物ばかりで味が雑になるからな」

 

「ばっちりです。鳴木市のスーパーに専門コーナーがあったので全種類まとめ買いしてきました」

 

「ありゃ? そやけどこっちの箱は駄菓子ばっかやね。桃ちゃんいーけないんだー」

 

「べ、別にいいじゃないですか。ロカさんの再現が終わったら市丸隊長も食べていいですよ」

 

 元護廷十三隊隊長格三人が頭を突き付け合いながら段ボール箱三つをガサゴソ漁る姿は実にシュールだ。一〇なんか旨そうにパピコしゃぶってるし。だからコピーした後にしろって言ってんだろ!

 

「早速なんか作ってみませんか? 量が多いのでオリジナルの傷みやすいものは早めに使い切っちゃいましょう」

 

「以前お前が作った豆腐ハンバーグは藍染様もお気に召した力作だった。私の鰤大根とレシピを交換してほしい」

 

「なんや、ハンバーグ言うたら合挽き肉やろ。桃ちゃーん、ボクのはいつもので頼んますー」

 

 ハンバーグと聞いて食材コピペ中のロカがピクリと反応する。以前から仕事のご褒美によくご馳走していたが、無感情キャラもやはりメシには勝てないようですね。

 そう言えば現世で知ったけどヤミーも期待してくれているらしい。ウルキオラも破面になって口を手に入れたので食事に関心を持ってるはず。

 

 …あ、そうそう。その前にまずはヤミーの腕を治さないと。

 

「──【天挺空羅】」

 

「しれっと使いはるなぁ」

 

 この鬼道も慣れたものだ。丁度ロカがいるので腕を持って厨房まで来いとあの巨漢を呼び出す。ついでにウルキオラにもハンバーグを食べさせてあげよう。

 しばらくして、食事の用意が出来たナイスタイミングで二人が現れた。霊子天国な虚圏(ウェコムンド)ではあたしたち魂魄は飲食の必要はないが、旨いものは旨いのだ。テーブルに広げてビュッフェ式にいただく。

 

「どうですかウルキオラ、美味しいでしょう?」

 

「…これが、味覚…」

 

 目を見開いて少しずつフォークを口に運ぶオサレ破面。実はこの食を提供することもウルキオラを勧誘した時に交わした約束の一つだったりする。本当は織姫ちゃんの手作りを初めてのご飯にしてウル織ばんざいしたかったが、あの子はメシマズ疑惑があるので断念。

 そしてメシウマ桃ちゃんの料理はどうやら良い思い出になってくれたようだ。よかったよかった。

 

 

 …しかしすごい平和な光景である。ヨン様陣営の死神と破面たちがお皿片手に立食。まるであの破面篇完結記念のパーティー絵そのままでつい笑ってしまう。

 

 そうだ、せっかくだしヨン様にもこの舐めちらかした空気を楽しんでもらおう。どうせ覗いてるんだろうし、あたしは厨房の監視装置に豆腐バーグのタネを見せ「お届けします」のジェスチャーをする。和気藹々と美食を堪能するあたしたち裏切り者四人の姿を見たら護廷隊発狂間違いなしですよ、これぞ愉悦。

 

 その後あたしは料理を載せたカートをコロコロ押しながらヨン様ラボへと向かい、ドアをノックし入れてもらう。

 藍染隊長、桃ちゃんズ洋風豆腐ハンバーグの差し入れです。

 

 

「──懐かしい味だ。五番隊時代はよく君に作って貰ったね」

 

 ご満悦なヨン様に桃ちゃんニッコリ。原作雛森ちゃんも料理上手だし、シロちゃんの胃袋を掴むために今世のあたしもかなりスキルを磨いたので時折隊のみんなに振舞っていたのだ。特にヨン様には色々と協力してもらっているので一層真剣に作ったよ。

 

 食後は現世で買ってきた農園直送SFTGFOP1等級の紅茶を淹れる。50グラム四千円近くする市販最高級の夏摘み新茶ダージリンなので味わって飲んでくれ。

 紅茶独特の豊かな香りに包まれ場が和んだので、少しきょろきょろラボを見渡して気になっていたことを尋ねてみる。二人きりだし多少核心的な話をしても大丈夫だろう。

 

「そう言えば藍染隊長」

 

「何かな」

 

「研究室でなんかヘンな研究をなさってると市丸隊長に聞いたんですけど、何してらっしゃるんですか?」

 

 そう、またヨン様が暇にかまけて原作ブレイクムーヴをしそうなのだ。あたし提唱の臓器鍛錬で五十年かけて霊圧を上げていたのも驚いたけど、出来れば本誌のようなラスボスムーヴにももうちょっと情熱を注いでいただけたら…

 

「君のためだよ、桃」

 

「あたし?」

 

 ヨン様がこちらのオウム返しに鷹揚と頷く。紅茶が好みだったのか少し機嫌が良さそうだ。

 

「君は未だ個として脆弱でありながら、既に魂魄の限界に到達しつつある」

 

「…むぅ」

 

「恥じる必要はない。高みを求める者は皆何れはぶつかる壁だ」

 

 【共眼界(ソリタ・ヴィスタ)】であたしの戦いを見て確信したのか、最近停滞気味なこちらの現状を突き付けてくるヨン様。

 確かに日課の鎖結・魄睡いぢめや斬拳走鬼の鍛練で霊圧の伸びが少なくなってきたのは事実だ。死神としての限界が近いのはわかっている。

 

 だが、精神の次元が異なる超越者としてあたしを見ている上司のヨン様はそれではご不満らしい。無茶言うな。

 

「藍染隊長は崩玉との融合で壁を越えようとなさってますけど…」

 

「ああ、だが恐らくあの少年の成長速度には追い付けないだろうね?」

 

「…ソンナコトナイデスヨ?」

 

 紅茶の香りを楽しみながら、ラスボスがあたしの反応を見て薄い笑みを深める。なんかもう一護がこの鰤界の主人公だとか全部バレてそうで怖くて、せっかくの高級ティーを楽しむ気分が台無しだ。

 

 …とにかくこの流れは精神衛生上よくないので軌道修正を試みる。

 

「え、えと。あたしが死神の限界を超えるとしたら東仙隊長が計画中の虚化とかですか?」

 

「わかりきったことを聞く。そちらの役割は既に黒崎一護が担っているとも」

 

 呆れるような溜息で否定するヨン様。

 虚化が一護の役割…? 原作ヨン様にとっての一護の役割と言えば"進化速度メーター"ではなかったか。

 

 BLEACH本編で藍染が最後まで一護に鏡花水月をかけなかったのはちゃんと理由がある。

 かねてより一護の凄まじい潜在能力を把握していたヨン様は、死神・虚・滅却師・完現術者の、この世に存在する全ての霊的な力の才能を持つ一護の成長速度と戦闘力を超えることが、崩玉を従えた真の超越者の証だと考えた。

 つまりヨン様にとっての一護とは、よく言えばライバル、悪く言えば物差しや定規という扱いになる。だから鏡花水月をかけず、強さの指標として狂いが出ないよう洗脳しなかったのだ。

 

 

 …はて。

 となると先ほどヨン様が言った「そちらの役割」の正しい含意は虚化した(・・・・)ライバル(・・・・)という意味になるのだが…

 

(それって彼が鏡花水月をかけてないあたしも一護と同じヨン様のライバル兼物差しと言う意味に聞こえなくもないんだけど…)

 

 チラリと彼の様子を窺うと、ニチャァ…とか酷い擬音が聞こえそうな笑みがその美貌を台無しにしていた。

 

 

 …おいコラちょっと待て!

 

 

「あ、あの藍染隊長? あたしは少し人とは違う記憶があるだけの、ちょっと趣味が変なだけの凡人だって前も言いましたよね…?」

 

「面白いことを言う。それはこの私さえも遊戯の玩具とする君を示す言葉としては不適当だ」

 

「いや(あたし)をいつも玩具にしてるのはあなたですからね!?」

 

 あまりの言い様に思わず立ち上がってビシッと指を突き付ける。

 全く、最近はデレ期なのか優しいことが多いヨン様だけど、やはりこちらをからかって遊ぶ雛森弄りの趣味は変わらないらしい。

 

 あたしは確かに頭がおかしな部分もあるが、感性は一応マトモだと自負している。原作再現と愉悦趣味に命を懸けてることを除けばごくごく普通の人間なのです。

 ヨン様はそれを全て知った上で、やれ神だの軍団長だのライバルだのとプレッシャーをかけて慌てふためく女の子をいぢめて愉しんでいるのだ。

 

 ほら、玩具はどっちだ。

 

 

「…で、結局藍染隊長はあたしで何をしたいんですか?」

 

 と、そんな風に脳内でぶちまけた自論を全部言い切ってやりたいが、あたしは大人な雛森さんなので我慢する。代わりに尋ねるのは彼の真意だ。

 

 元々原作雛森ちゃんは、死に物狂いの努力で卍解未解放の副隊長になるのがやっとのリョナキャラ美少女だった。この世界では臓器鍛錬という狂気と、ヨン様陣営の全面サポートがあったが、やはりあたしの戦闘力はここが限界だと思われる。ブレソルで言う☆5Lv.100みたいなものだ。

 

 東仙のような虚化破面化がダメなら限界突破の望みは薄い。一護みたいな血統サラブレッドじゃない純死神に残された他の手段なんて、それこそヨン様みたいに崩玉と──

 

 

 …おいコラちょっと待て!(二度目)

 

 

「まさか、藍染隊長が研究してることって…」

 

 顔が引き攣るあたしに口角を吊り上げるヨン様。

 悦に浸るような邪悪な笑顔でそう宣言した彼は、楽しそうにあたしの空のカップに紅茶を注いだ。

 

「神に最も近い君で"何をしたい"か…そんなこと決まっているだろう」

 

 

 

 ──君が彼ら(・・)に行っているのと同じことだよ、桃。

 

 

 

 ふわりと立ち上るマスカテルの芳香に包まれながら、あたしはその白磁の底を彩る琥珀色が、まるで空虚な世界を自分好みの色で満たそうとしている藍染惣右介の意思に思えてならなかった。

 

 その「彼ら」は誰を指しているのか、そして「君がしている事」とはどれを指しているのか。ヨン様の考えはわからない。

 だけどあたしは一つだけ、自分が近い未来に関わることになる新たな原作ブレイク展開を把握できた。

 

 

 

 ──【速報】雛森桃(悦)、劣化崩玉×1で☆6覚醒の実装が決定する!

 

 

 

 この日、錯乱したあたしは某ゲームの曜日クエスト報酬を求めてザエルアポロの研究室に浦原商店のような地下修行場を作らせる奇令を命じたが、当然強化石も崩玉もドロップすることはなかった。

 

 ちなみに今年の空座町凧揚げ大会の景品も町内会の搗きたてお餅5kgだった。

 

 

 運営ァ!(無関係)

 

 

 

 

 

 

 




 

【崩玉】

☆5のキャラをエンドコンテンツ☆6に覚醒(艦これでいう改装)させるために必要なアイテム。平気で一度に三つとか五つとか使ったり、浦原商店の地下練習場で拾えたり、新年会で山爺が配ったり、凧揚げ大会の参加賞になったりとFGOの聖杯以上に雑な扱いをされるが、やはりないと困る重要アイテム。

ちなみに雛森さんもちゃんと☆6覚醒が実装されているので崩玉悦森はBLEACHコンテンツブレイクとはならないのだ!(迫真


と言うことで次回こそディ・ロイ死す!


 


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