雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

45 / 145
 

コメで紅茶好きな愉悦部員を見つけてワイうれc
ヨン様は絶対に農園物の最高級の新茶しか飲まないくっそ我儘で態度デカい紅茶ガチ勢、異論は認めない。
悦森ちゃんは農園物の違いを覚えようと頑張って挫折して結局デンメアとかハース&ハースのウィーン系ブランド物フルーツティーにハチミツたっぷり入れたもので満足しちゃうお子様舌。
雀部さんはきっと農園物もブランド物フレーバーもブレンドティーもそれぞれちゃんと分けて評価して全部堪能する懐の広い聖人のようなお人。

ちなみに破面篇は原作の作中時間で九月初頭から十一月での出来事だから夏摘みダー様も鰤界の日本の鳴木市で出回ってる…はず?

 
 


先遣タィィィ!

 

 

 

 

 

 

「──俺が行く」

 

 

 その噂を耳にしたとき、日番谷冬獅郎は反射的にそう答えていた。

 

 死神代行黒崎一護と成体破面(アランカル)の戦闘。逆賊藍染惣右介一派の襲撃を受けた現世の空座町へ阿散井恋次が援軍に派遣されると聞いた少年は、真っ先に同行を申し出た。

 理由は無論、十二番隊からの追加報告だ。

 

 ──破面と現世戦力の戦闘中に雛森桃の霊圧を観測。

 

 彼女の名を聞いてじっとしていられるほど冬獅郎は大人ではない。副官の松本乱菊と共に根回しを済ませた彼は見事正規部隊【日番谷先遣隊】を組織することに成功し、乱菊と恋次に加え十一番隊の班目一角と綾瀬川弓親、そして十三番隊の朽木ルキアの五名と共に現世へ赴いた。

 

 任務内容は来たる藍染との決戦に備えた現地勢力との連携の構築と、敵の情報収集である。かくして敵と戦った当事者、黒崎一護の下へと六人が向かったのは当然の成り行きだった。

 

 だが訪ねた黒崎邸で冬獅郎を待っていたのは、信じ難い悲劇的な事実。

 

 

「──雛森が、破面共を率いる軍団長…だと?」

 

「は、はい。敵の大柄な男の人が確かそんなことを言ってました…」

 

 最も長く襲撃者と接触した一護の仲間、井上織姫の証言に先遣隊の面々は息を呑んだ。

 雛森桃が破面共と関わっていた期間は、半世紀にも亘る。仮に例のヤミーなる破面の言葉が真実であれば、それはつまり…

 

「う…嘘だ、ありえねえッ! だって五十年前っつったら──」

 

「私たちが霊術院生の頃ではないか…ッ!」

 

 彼女の同期の恋次とルキアが驚愕に体を震わせている。

 当然だろう。共に同じ校舎教室で斬拳走鬼の授業に出席していた学友が、まさかその同じ日に陰で宿敵たる大虚(メノス)の軍勢を率いていたなど。そんなこと一体誰が信じられると言うのか。

 無論、それは雛森の最も近しい人間だと自負する冬獅郎も変わらない。

 

「…ただの院生がそんなこと出来るワケないだろう。藍染の【鏡花水月】の能力さ」

 

「そ、そうッスよね! あいつがそんなふざけたこと出来るワケがねえ!」

 

「大虚を従えるなどそれ自体が前例のないこと。如何に雛森が優秀とは言え不可能なものは不可能だ…!」

 

 弓親の推理に口々に同意する恋次ら同期組。二人には友人を信じたい思いはもちろん、共に切磋琢磨するライバルだと思っていた少女に一人圧倒的な高みからずっと見下ろされていたなどと認めたくない矜持もあった。

 だが藍染の恐るべき演技力を知ってしまった彼らには「もしかしたら本当は雛森も…」という疑心を完全に掃うことは出来なかった。

 

 

「──その【鏡花水月】ってのがどれほどヤバいのかは知らねえけど、井上は嘘なんか吐いてねえ。だけど俺も…あの人が悪人だとは思えねえ」

 

「一護…?」

 

 その時、先日雛森と遭遇したもう一人の青年、黒崎一護が口を開いた。そして所々口籠りながらも述べられた彼の話は、己の常識と友情を疑いそうになっていた日番谷先遣隊の面々の胸にストンと落ちるものだった。

 

 ──あの人は無理をして悪人を演じている。

 

 たかが十六歳の人間の少年が感じた印象。それでも彼が可能な限り客観的な視点で語った彼女の姿は、放った強力な破道をワザと外すなど、節々で只ならぬ葛藤を感じさせる場面が多く見られた。

 他にも破面たちの暴挙を叱りつつその怪我を労わるなど人の良さが垣間見え、実際に現場にいた一護と織姫の現世組は雛森桃に悪印象を抱いていない。

 

「…フン、悪人だろうが善人だろうが敵は敵だ。裏切り者は殺す。余裕があれば捕らえて四十六室が裁く。戦場じゃ剣に迷いが出たヤツから死んでいくんだ、腹ァ括ったほうが身のためだぜ」

 

「そうだね。どんな理由があろうと尸魂界の敵となった者に我々護廷十三隊が慈悲をかけることは許されないよ」

 

 無論、しかし彼らは素人の子供とは異なる護廷の猛者。十一番隊コンビの一角と弓親の冷静な意見こそが死神のあるべき姿で、隊長格や上位席位を持つ冬獅郎たちも当然理解している。

 

 …それでも握った拳が震えているのは、雛森桃の行動の数々が──藍染と違い──彼女の変わらない善性を密かに伝えてくるからか。未だ雛森が尸魂界を裏切った事実を認められない者たちは、その無数に散りばめられた希望の断片をどうしても手放せずにいた。

 それが"迷い"なのだと理性では理解していながら…

 

 

「──これ以上はいくら考えても埒が明かねえ。今は次の襲撃に備えるぞ」

 

「隊長…」

 

 重苦しい空気を掃わんと、冬獅郎は一時場を解散させる。彼自身も立て続けに雛森の暗い裏の姿を知らされて、既に理性の限界だった。

 

「雛森をどうしたくとも、てめえが弱けりゃ全部絵に描いた餅だ。迷う暇があんなら敵の一体でも捕まえてみせろ。情報が増えれば取るべき手段も自ずとわかってくるだろうぜ」

 

『…はっ』

 

 冬獅郎の言葉を聞いた部下たちの目に決意が宿る。そうだ、ここで悩んでいても何も解決しない。雛森の真意を知るには、遠く離れた彼女に触れられる距離まで近付かなくてはならないのだから。

 

 

 

 

「…忠言助かった、斑目三席。これで少しはあいつらの覚悟も定まるだろう」

 

 黒崎邸を去ること少し。成り行きで乱菊と共に織姫の家に厄介になることになった冬獅郎は、十一番隊の二人へ別れ際にそう口にしていた。

 

 彼の礼に少し意外そうな顔をする一角と弓親。

 無理もない、冬獅郎が誰よりも雛森を連れ戻そうと必死なのは護廷十三隊で周知の事実だ。それでも二人の一歩引いた視点を大事にしてくれるのは流石は隊長格と言ったところか。

 

「い、いえ。むしろ偉そうなこと言ってすんません、日番谷隊長」

 

「ああ、そうだな」

 

「……あ、え?」

 

 だがそんな更木隊二人の困惑は見当違いである。

 何故なら冬獅郎は最初から…

 

 

「斑目、次に俺の前で雛森について話すときは──」

 

 

 たとえ味方であろうと「雛森を殺す」などと抜かした者へ明確な殺意を覚えるほどには、彼女を己の世界の中心に置いているのだから。

 

 

 

 

 ──もう少し言葉を選ぶことだな。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 同日夜、破面(アランカル)軍襲来。

 

 現世は空座町へ到着して息を吐く間もない敵との戦闘は、されど大切な幼馴染の情報を渇望していた日番谷冬獅郎の望むところだった。

 

「──破面No.11(アランカル・ウンデシーモ)シャウロン・クーファンと申します」

 

 そう名乗った細身の長身破面を一騎打ちに持ち込み、共に卍解と帰刃(レスレクシオン)の切り札を切った接戦。少年は辛うじて相手の実力に喰らいつきながらも己の弱さに臍を噛んでいた。

 

 十二番隊霊子観測所から送られた識別信号は橙。つまりコイツらは先日雛森に従っていたあの二体の成体破面より遥かに劣る霊圧の敵と言うこと。限定霊印があるとはいえこの程度の相手に苦戦していてはいつまでたってもあいつを救えない。

 

「…チッ、てめえ何者だ」

 

「はて、既に名乗りは交わしたはずですが」

 

「名前じゃねえ、格だ。No.11(ウンデシーモ)とか言ってたが、それはてめえが上から十一番目の強さってことか。シャウロン・クーファン」

 

 焦燥を抑えて情報収集を目論む冬獅郎。この手の不遜な輩は自らや自らの組織の強大な力をひけらかし、相手の動揺を誘い戦局を優位に立ち回る。あるいはその姿を眺め悦に浸ることを好む傾向にある。

 

「まさか。我々破面の番号は生まれた順番です」

 

 どうやらヤツもその一人だったようだ。発言を促そうと冬獅郎は構えを緩める。

 

「わかりやすく言いましょうか。我々はまず、藍染様の崩玉により虚から破面へと生まれ変わり、その順番に応じてNo.11以降の番号を冠する数字持ち(ヌメロス)の一席を与えられます」

 

「…ッ、つまりてめえも、他の破面の数字も強さの序列は関係ねえってことか」

 

「はい。もっとも──数字持ち(ヌメロス)に関しては、ですが」

 

 含みを持たせる言葉に少年は眉を顰める。それを見たのかシャウロンが得意げに自らの組織図を開示した。

 

「我々"数字持ち(ヌメロス)"の番号はNo.11以降。そしてその中から特に殺戮能力に優れていると選抜された上位十名の者に与えられるのが、特別なNo.1からNo.10の番号です」

 

「…何?」

 

「彼らの名は"十刃(エスパーダ)"。我々"数字持ち"を支配する権限を与えられた最強の破面たる彼らの強さは──我々のそれとは別次元です」

 

 冬獅郎は息を呑む。

 これほどの力を持つ破面が別次元と形容する強敵など確実に隊長格以上、すなわち最上級大虚(ヴァストローデ)種の破面に他ならない。

 

「そして更に言うならば…今、我々と共に一体、その"十刃"が来ているのです」

 

 シャウロンが腕を開き、ある男──"第6十刃"グリムジョー・ジャガージャックの名を厳かに口にする。

 

 …だが冬獅郎の意識が捉えたのは別の単語。井上織姫の言っていたその仰々しい地位の名を耳にした瞬間、少年は咄嗟に目の前の破面へ【大紅蓮氷輪丸】を振り下ろしていた。

 

 

 その地位の名とは、グリムジョーにNo.6の数字を与えた張本人たる──

 

軍団長(ヘネラーリャ)

 

 

「なっ!」

 

「…やっと聞けたぜ、その単語をよォッ!」

 

 

 感情に扇動され一気に巨大化する霊圧の猛吹雪。動揺するシャウロンの両腕を凍て付かせながら、冬獅郎は逸る感情を抑える努力すらせず一気に畳みかける。

 

「"第6十刃"、その称号は軍団長(ヘネラーリャ)から与えられたと言ったなッ!?」

 

「ぐっ、この…!」

 

「吐いて貰うぜシャウロン・クーファン! てめえの知るその軍団長の、雛森桃の全てをッッ!!」

 

 直情的な攻撃も霊圧の暴力にかかれば達人の一撃すら凌駕する。後先考えずにがむしゃらな突撃を繰り返す冬獅郎の内心はたった一つ。

 

「逃がすかよ──松本ォォッ!」

 

「ナイスタイミングです、隊長!」

 

 そしてようやく、待ち望んだ中央四十六室の許可が下る。

 

 

 

──限定解除──

 

 

 

 その瞬間、まさに爆発的と表して然るべき膨大な霊圧が空座町の上空に立ち上った。

 冬獅郎の霊印に封じられていた八割もの力が暴風となって周囲に吹き荒れる。桁違いの霊圧に茫然自失とするシャウロンの大きな隙を逃さず、少年は間髪を容れず一息に決定打を叩き込んだ。

 

「【縛道の六十一・六杖光牢】!」

 

「何ッ!? その鬼道は…!」

 

 記憶の中に浮かんだあいつの小さくも大きな背中を胸に抱き、少年はこの術で全てを終わらせる決意で言霊を練っていく。

 

「知らんとは言わせねえぞ破面(アランカル)! てめえら虚上がりの連中が暴力以外の手段で死神の下に付くワケがねえ。この俺でさえ見抜けなかったあいつの霊圧に騙されて、てめえらの何体もコイツの世話になったんだろ?」

 

「くっ…!」

 

「俺の前にのこのこ現れた自分の不運を恨みな、シャウロン・クーファン。てめえが一番の…ハズレだったってな!」

 

 

 ──雷鳴の馬車…糸車の間隙

 

 …光もて此を六に別つ!──

 

 

 あいつが自慢気に「マスターした」と宣言してきた時の笑顔を幾度となく思い浮かべ、後述詠唱による完全出力の縛道を完成させる。

 込めた霊圧の実に百倍の拘束力を発揮する、鬼道衆・一之組第三班班長を務めた雛森直伝の【六杖光牢】。身動ぎ一つ出来ない状況を理解したシャウロンが、遂に観念したように肩の力を抜いた。

 

 限定霊印下で苦戦しながらも、最終的にほぼ完璧な結果で勝利した冬獅郎。卍解を解いて捕虜の尋問を開始する。

 だが…

 

 

「さあ、洗いざらい吐いて貰う──」

 

 

 冬獅郎がその気配に気付いたとき、全ては遅すぎた。

 

 発動時の霊圧を感じさせない独特の歩法で現れたのは、新たな破面。

 黒髪に頭部左半分に鎧兜のような仮面の名残を残すその男は、シャウロンとは桁外れの存在感を放ちながら、無機質な翠の瞳で冬獅郎たちを見下ろしていた。

 

「ウ、ウルキオラ…? 何故貴様がここに」

 

「軍団長のご命令だ。グリムジョーも撤退させた。引け、第6従属官(セスタ・フラシオン)

 

 ウルキオラ。

 その名は確か黒崎一護らを襲った先日の襲撃犯の片割れ。発言といい、確実に虚圏(ウェコムンド)で雛森と接点があるはずの上位破面だ。

 

 石像のようなその男が腕を一振り。たったそれだけで冬獅郎の【六杖光牢】が崩壊する。

 

「なっ!? ま、待て…ッ!」

 

「…くだらん」

 

 即座に我に返り無言の始解で挑むが同じく一瞬で氷竜を吹き飛ばされてしまう。何とか隙を窺うも、シャウロン戦で大きく消耗している今の冬獅郎に黒髪の男の凄まじい霊圧を跳ね返せる力は残されていない。空しい制止の叫びが夜の空に木霊するだけだ。

 

「──貴様が日番谷冬獅郎か」

 

 だが大虚特有の空間を引き裂く解空(デスコレール)を開いた黒髪の破面が、そこでおもむろに口を開いた。

 

「…そうだ」

 

「軍団長、雛森様から貴様宛てに伝言を一つ預かっている」

 

「──!?」

 

 青天の霹靂。

 伝言、それは世界さえ別たれた二人を繋ぐ確かな絆を頼った言葉。彼女自身では言えないほどの、それでいて少しでも早く伝えたい凄惨な思い。

 

 そして破面の唇が紡いだ無感情なそれは、それでも最愛の少女の涙を伝えるのに十分な一言だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────あなたは、生きて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かに伝えたぞ、日番谷冬獅郎」

 

「ぁ…」

 

 声にも悲鳴にもならない、震える微かな吐息。それが黒髪の破面へ冬獅郎が返せた全て。

 

 真っ白になった頭で、何度も何度もその言葉を反芻し、そして同じ数だけ彼の胸奥に絶望の刃が突き刺さる。

 

 …なんだ、それは。なんで今、そんなことを言うんだ。

 

 周り全てが藍染の毒に染まった世界で、あいつがそれを口にするのに、一体どれほどの覚悟と苦悩があったと言うのか。まるで今生の別れのような伝言に籠る彼女の悲愴な思いに圧倒され、冬獅郎は身動き一つ取れずにいた。

 

 

 一瞥を最後に黒腔(ガルガンタ)の奥へと消えるウルキオラとシャウロンの後ろ姿を唖然と見送りながら、恋する少年は去り行く二体を止めることすら忘れ、ただひたすらその場で立ち尽くすことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

桃「シロちゃん、あなたは生きて!」(嘘泣きウルウル

ウ「軍団長、消えるんですか?」(困惑

桃「え、別に消えませんけど?」(真顔


シロちゃんが情報収集を優先したため原作同様勝利と判断して両腕を砕かれた囚われシャウロンを回収。
他は死亡か瀕死をカハ・ネガシオンで回収。

ちなみにバックでチャン一にGJJJ回収ついでに「殺すに足らぬゴミでしたとな」の台詞をちゃんと言ってくれたウルキオラくん、あとで桃ちゃんにご褒美にディナー作ってもらえる。


あ、それとコメであった旧あらすじ絵は上書きしちゃったからもうないの…
シニヨン桃ちゃんを明日またトップ絵に加えるので許して♡


 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。