雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」 作:ろぼと
変則更新にてすまぬ。
前話に書ききれなかった桃玉の裏話です。
聡明な愉悦部諸君の推察コメもあるし要らないかなと思ったけどやっぱり書きたかったので許して♡
久々のヨン様とのレスバトル(?)
クローン人間。
宗教や倫理的善悪の一大議論として有名で、神への反逆、命に対する冒涜と叫ばれる生物学上のタブーの代名詞だ。しかし同時に臓器移植やクローン兵士など、犠牲損失を避けられない事柄における合理的な解決手段として理解されており、極めてわかりやすい二元論的ジレンマを抱える問題でもある。
その単純明快さからよく創作物語の題材になり、現実的なSFホラーとして広く認知されている永遠のテーマだ。
そして今。
あたしの目の前に、その数多あるクローン創作物の中でも最も残虐な部類の研究によって生み出された、生命冒涜の血晶がおぞましく輝いていた。
「──霊性技術の限界と言うべきか、義魂に一定以上の霊力を発現させることが出来なくてね。どの魂魄クローンも最大で君の二割程度の力しか持ち得なかった」
いつもの薄ら笑顔のヨン様が明かす、ハガ〇ンの賢者の石より邪悪な崩玉製造方法。
だが完璧主義なヨン様はそれでも満足しなかったらしい。不完全な雛森クローンを完成させるために、彼は更なる禁忌に手を出していた。
「霊性技術で発現出来る君の霊圧は二割。その壁を超えるには発想の転換が必要だった。例えば──最初から不完全な五つの魂魄を別々に構築し、改めて一つに結合させる、などの工夫がね」
「…え、それって」
「君ならばわかるだろう。万人がその支配に甘んじる虚空の主、霊王の魂魄性質を崩玉の力で強引に再現させたのだよ」
最早絶句以外の表現はない。つまりこの男はあたしのクローンどころかエクゾデ〇アを造っていたのだ。
霊王すら超える究極の尊厳破壊に晒されたあたしは、放心したまま視線を彷徨わせ…
「──どうした? 顔色が悪いぞ」
過去最高に愉しそうな笑みを浮かべる藍染惣右介の姿を見た。
「え…」
「らしくないな、桃。君の魂魄はあのときとは違い塵芥ではなくなったはずだ。何故そうも怯えた目をしている?」
細まる瞼の隙間に輝く虎眼石の瞳が、嗤っていた。これはヨン様があたしをいじめようとしているときの悪い目だ。
…やはり彼があたしに崩玉を造ってくれた理由には、善意と悪意の両方が含まれている。
開いたままだった口を閉じ、素早く思考。ヨン様があたしをいじめるのはいつものことだが、今回のはからかいの範疇を超えた規模だ。つまりこれは遊びではなく──
(…挑戦)
そう、ヨン様はいつだって自分を支配しようとする者の打倒を目論む無限の向上心を持った人物だ。そんな彼が自らを"物語の道化"と喩え、同時にこの世界で好き勝手しているあたしを"神"と呼んでいる。
「…あ」
そこであたしは思い至る。
もしかして、この崩玉を造ったヨン様の真意こそが、彼の言う"
クローンを生み出してあたしの自我認識を揺るがしつつ、さらにそのクローンをヨン様が心底愚弄する霊王と似た状態に落とし込み、最後にそれらを巨大な利益をもたらす崩玉の創造手段とする。
"道化"の身で神を辱め、そしてそんな無礼を受けた神が、代償に最高のメリットを差し出されてどんな反応を見せるか観察しているのではないだろうか。
「…むぅ」
思わず頬を膨らませる。あたしが抱いた感情は無数にあれど、行き着いた思いはたった一つ。
なんて下劣で、そして…
──なんてオサレな挑発なんだ…!
あたしは今、自分では発想すら浮かばなかった方法で、逃げ場まで用意された完璧なマウントを取られているのだ。これほど手を尽くされた精神攻撃をオサレと言わずになんと言う。
ていうか、クローンの存在があたしの自我崩壊に繋がる恐怖とか、クローンたちを犠牲にあたしの崩玉が完成した罪悪感とか、そういう感情が全部ヨン様に仕組まれたと知ったせいか、なんか一気にどうでもよくなってしまった。それが逆にヨン様に救われたような気分になって余計に敗北感を感じる。
くっ、凄い悔しい!
「…こ、これでいい気にならないでくださいね…っ」
ふん、流石はヨン様と言っておこうか。今回は素直に負けを認めてやる(震え声)
でも悔しいのでキッと彼の顔を睨み付けると、怯むどころか代わりにキラリと輝く白い歯を見せ付けられた。うぎぎぎ…!
かくしてオサレマスター藍染惣右介に精神的敗北を喫した哀れな桃ちゃん。
…だがヨン様の真の快進撃はここからだった。
「──さて。すまないね、少し話し込んでしまった」
未だ悪い顔をしたままの彼が徐に口を開く。
「せっかくだ、最後の試験にその崩玉と君の同調を見せて欲しい」
「…まだ何か企んでますね?」
「いや? 不服そうな君の誤解を解こうと思ってね」
誤解とはまた妙なことを。胡散臭さが留まるところを知らないが断る理由もないので、訝しげな顔を見せ付けつつ、あたしはそっと桃色の崩玉に指を翳した。
すると…
『…ちゃ…ロちゃ…シロちゃ…ロちゃん…シ…ゃん…ちゃ…ロちゃ…シロちゃ…ロちゃん…シ…ゃん…ちゃ…ロちゃ…シロちゃ…ロちゃん…シ…ゃん…シロちゃ…ロちゃ…シロちゃん…ロちゃん…シ…ゃん…ちゃ…ロちゃ…シロちゃ…ロちゃん…シ…ゃん…ロちゃ…ちゃん…シロちゃ…ロちゃん…シ…ゃん…ちゃ…ロちゃ…シロちゃ…ロちゃん…シ…ゃん…ちゃ…ロちゃ…シロちゃ…ロちゃん…シ…ゃん…』
「──ッッ!?!?」
思わず咄嗟に飛び退く。
触れた指先から流れ込んできたのは無数の思念。それはまるでライブ会場の大群衆に一斉に耳元で囁かれたかのような虫酸が走る感覚だった。
「な、何これ…」
「面白いね。やはり君には彼女たちの声が聞こえるのか」
体を抱き締め青褪めるあたしを興味深そうに見つめるヨン様。未だ頭の中で反響している崩玉の思念に恐る恐る耳を傾け、そしてようやく、あたしはその意味を理解した。
「これ…全部…あたしの義魂…?」
「そうだ。それが彼女たちと交わした約束だからね」
「…約束?」
理解が出来ずオウム返しで問う。
「私は君の義魂が全員揃ったとき、彼女たちを一堂に会させ、そこで一つの真実を教えた。それまで自分こそが雛森桃だと錯覚していた彼女たちの、己の正体と誕生理由をね」
そんなえげつない余興をさぞかし愉しんだのだろう。自分のクローンたちの悲劇を想像してまたグロッキーになるあたし。
だがヨン様の話には、例の「約束」とやらに繋がる続きがあった。
「人と言う存在は社会的生命体でありながら、己の個に執着する。事実、君の義魂たちも己が模造品であることを知ってかなりの動揺を見せた──自らの誕生理由を知るまではね」
「…え?」
あたしの口から困惑の声が零れる。
「桃、君はオリジナルだ。ならばこそ、彼女たちの望みに誰よりも早く気付き、そして理解出来るだろう」
何だそれは。クローンの望みなんて絶望し死を望むか、創造主を恨むか、あるいはオリジナルになり替わるか。どのみち悲劇的な結末だ。
自分が紛い物だと知って、しかも生まれた理由がオリジナルを強化する崩玉のエサになるためだと知ったら、あたしだって…
…
…まって。ちょっとまって。
「全く、君は本当に私を飽きさせない子だ。あの時ほど人と神の違いを明確に観測出来たことはない。実に面白いひと時だったよ」
「いや、いやいやいや」
思い出しているのか、どこか呆れを滲ませるヨン様の含み笑い。
おい、嘘を吐くな。流石のあたしも自分がクローンだと知って
「…で、できないよね?」
そして対するヨン様の答えは、そのいやらしい笑顔が全て物語っていた。
「彼女たちが私に望んだ対価は一つ」
「まってやめてききたくなぁぁい!」
そんなあたしの無駄な足掻きに掻き消されることなく、ヨン様が明かした犠牲クローンたちの最期の願いは、あまりにあんまりな内容だった。
──君と共に日番谷冬獅郎の慟哭を観測するための、意識の保持だよ。
…シロちゃん。
どうやらあたし、あなたの曇り顔を見るためなら、本当に命どころか自我すら喜々として捨て去るマジもんの狂人だったようです。
っていうかクローンたちが望んで崩玉になったんだったら動揺してたあたし完全にピエロじゃん!
ちくしょう、ヨン様めぇ…!
桃玉の埋め込み位置
1:おでこ
2:くび
3:鎖骨の間
4:胸元
5:みぞおち
6:おへそ
7:下腹部
下腹部人気すぎぃ!
でもみぞおち以下はスカートが邪魔で見えないんだよね…衣装を再臨邪ンヌみたいなヘソ穴ドレスにするぐらいしか手はないな
…似合わなさそう
そしてまたしても支援絵を頂いてしまいました!
hakutyou様のガバ挽回森さん。
https://img.syosetu.org/img/user/24425/68427.png
チャン一に謝りつつ、ちゃっかりOSR値を回収していくしたたかな悦森さん!
悲し気な表情が複雑な葛藤を感じさせるその姿はまさに悲劇のヒロイン!ああ、なんて健気な人なんだ、雛森さん…
華奢なスタイルも桃ちゃんの魅力ですよね!
…なんか脳内台詞がありますけど別の人のものですよね?(すっとぼけ
髪や衣類の動きとか砂塵の流れとかが臨場感を煽って凄くステキです!所々渦巻いてるのがリアルでかっこいい!
hakutyou様、オサレかわいい悦森さんを大変ありがとうございました!
本編はいい加減に原作展開を進めます
次回こそ第三次空座町侵攻、お楽しみに!