雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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昨日は未完で更新してしまいました。ドタバタしてごめんなさい(鏡花水月
何とか時間を作れたので更新。誤字脱字はゆるして♡

それと長くなったので前後篇にしました。後編は火曜日11日予定です。


 


再会ィィィィ!

 

 

 

 

 

 

 

「──随分早いな」

 

 

 唐突に虚空を裂いて現れた四体の破面(アランカル)。十二番隊の霊圧識別信号に赤と表示された"十刃(エスパーダ)"級の敵の襲撃に、護廷の先遣隊を指揮する日番谷冬獅郎は思わず拳を握り締めた。

 

 それは先月の屈辱。貴重な情報源シャウロン、そしてウルキオラを逃がしてしまった己の不甲斐なさを戒めるための行為。

 そして、あの幼馴染の沈痛な伝言に焦燥ばかりが募る日々の終わりを期待した、天井知らずの戦意の表れだった。

 

「…色黒、巨漢。てめえが雛森と一緒にいたヤミーって破面だな…!」

 

「へっ、銀髪チビの氷使い。俺も知ってるぜ、雛森さんがウルキオラに何かの伝言頼んでた日番谷とか言うガキの隊長だな?」

 

「ガキかどうか、そのデケえ体で試してみな──【卍解】ッッ!」

 

 前回で足を引っ張られた限定霊印もない。故に出し惜しみもしない。最初から全力の【大紅蓮氷輪丸】で畳みかけ、余計な邪魔が入る前に少しでも多く情報を吐かせる。冬獅郎の望みはそれだけだった。

 

「…ッ、ちっ。やるじゃねえか」

 

「その霊圧、てめえ"十刃"だな」

 

「よく知ってんじゃねえか…俺は"第10十刃(ディエス・エスパーダ)"ヤミー・リヤルゴだ!」

 

「十番隊隊長、日番谷冬獅郎だ!」

 

 幾度の攻撃の応酬。着実に相手を追い詰めつつ、されど冬獅郎は己の非力さに臍を噛むばかり。

 

 敵はかなりの強さ。だがこれで十番、つまり"十刃"の序列最下位。こいつらを従える雛森はもっと強く、そんな彼女を支配し苦しめる藍染惣右介はその遥か上にいるのだ。

 

 そして、焦る冬獅郎に更なる試練が訪れる。

 

 

「──ヤミー、そっちの子も僕に譲ってよ」

 

 

 唐突に少年の戦いに割り込んできたのは、部下の斑目一角と綾瀬川弓親が抑えていたはずの別の破面。ルピ・アンテノールと名乗ったヤツの腰には"6"の刺青。ヤミーより上位の"十刃"を意味する数字だった。

 

 

 そこから事態は更に混沌としていく。

 刀剣解放状態のルピ対日番谷先遣隊の四名。援軍に駆け付けた浦原喜助対ヤミーと三人目の華奢な金髪破面。遠方では黒崎一護が最後の敵の一体と交戦。更には見知らぬ隊長級の霊圧の死神の登場。こんな状況ではヤミーを捕らえて尋問など不可能だ。

 

 だが直情的な冬獅郎は意外にも、この大混乱の中において本能的に正解を選択した。

 

(随分相手を舐めてかかるヤツだな、ルピ・アンテノール)

 

 敵の傲慢さを逆手に取り、少年は大技一つで破面を仕留めることを決断。以心伝心の副官、松本乱菊に無言の合図を送ったのち、敵の隙を作るべくワザと倒されたふりをして準備に徹する。

 そして。

 

「な、お前…まだ生きてたのか!」

 

「一度攻撃を加えた相手に対して気を抜きすぎなんだよ、お前は」

 

 嬲られる部下たちが稼いだ時間を無駄にはしない。技の発動と同時に、幾本もの巨大な氷の柱が大地より聳え立つ。

 

「お…お前えええェェェッ!」

 

「わりィな、八本じゃ足んなかったろう」

 

 動揺する破面は隙だらけ。大気が含む全ての水を支配する冬獅郎の命で、それら氷塔が一斉にルピへ襲い掛かる。

 

 必殺の【千年氷牢】が、見事序列六位の"十刃"を撃破した。

 

 

「な…!? おい何やられてんだよルピ! クソッ…このままじゃ雛森さんに合わせる顔がねえ…!」

 

「破面ってのも世知辛い組織なんスね~──ま、そのあたりの詳細も後でたっぷりとお伺いしましょうか」

 

 その強面に焦りを滲ませたヤミーが急いで救援に向かおうとするも、浦原喜助がそれを許さない。【紅姫】に斬り刻まれ巨漢の"十刃"は防戦を余儀なくされている。あの金髪の破面も浦原が鬼道で拘束したようだ。

 

 

「──すまんな破面。あんた強そうやから…手加減、無しや」

 

「ク…ソがああああァァァッッ!!」

 

 遠くへ目を向ければ、黒崎一護とあの片腕の破面の戦いも大詰めを迎えている。一時は苦戦を強いられていたようだが、謎の援軍の力で敵を圧倒。尸魂界から駆け付けた朽木ルキアはともかく、現れた現世風の装いの男に冬獅郎は覚えがないが、こちらの戦闘も我が方優勢だ。

 

 戦局は味方に傾いている。敵がこれを覆すには最早奥の手の帰刃(レスレクシオン)を使う他ない。

 だが警戒するや否や、冬獅郎たちの感知の遠く、黒崎一護の戦場を渦巻く破面の霊圧が高まった。

 

「軋れ…!」

 

 そして同じ結論に至ったであろうあの片腕の個体が切り札の刀剣解放の予兆を見せた、その瞬間。

 

 

 

 

 ──任務完了。

 

 

 

 

 四つの光の柱と共に、まるで空から海が降って来たかのような凄まじい力が冬獅郎たちに襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

『かッ────』

 

 

 その異次元の現象が、霊圧による圧迫感だとその場で気付けた者は殆どいなかっただろう。

 体中が四方八方から押し潰され、放心したまま魂魄がはじけ飛びそうになっている乱菊たち。立っているのは謎の仮面男と浦原喜助、そして自分の三人だけ。その無事な者たちも戦慄に体が震えて立ち尽くすことしか出来ずにいた。

 

「面目ねえっす…」

 

「チッ…」

 

「あーあ、帰ったらお説教かぁ」

 

「ぁぅ…」

 

 降り注ぐ光の柱、反膜(ネガシオン)に守られた"十刃"たちが撤退していく。申し訳なさそうな者、不満そうな者、不貞腐れる者、怯える者。それぞれが不完全燃焼に顔を顰めながらも、その目に一様に浮かんでいるのは、こちらへの同情と憐憫の感情。

 まるで屠殺場へ送られる家畜を見送るような、そんな哀れみすら滲ませて。

 

「…じゃーねー死神諸君。軍団長サマの梅焔で、指一本でも遺体が残るといいね!」

 

 そんな捨て台詞を最後に、四体の破面は虚空へと消えた。

 

 

 ──宙に立つ、一人の人影へ礼をして。

 

 

『……』

 

 沈黙が辺りを支配する。去り行く敵を気にする者は一人もいない。

 何故なら誰もが、突然現れた小柄な少女に意識の全てを囚われていたのだから。

 

 肩を晒した白いドレスの死覇装。下ろした黒髪を風に舞わせる姿は皆の記憶に殆どなく、そんな些細な容姿の変化がまるで別人のように彼女の雰囲気を一変させていた。

 

「…あんた、一体何が…」

 

「これが…本当に元副隊長…?」

 

 霊圧にあてられた乱菊たちが酷く動揺している。長年親しんだはずの霊力なのに、そのあまりに絶大な規模が皆の認識を狂わせ、目の前の少女が記憶の彼女と同一人物であると認めることが出来ないのだ。

 そして、それは日番谷冬獅郎も同じ思いだった。

 

 二ヶ月ぶりとなる、少女との再会。しかしあまりに突然なそれは、連れ去られた彼女をただひたすら取り戻すことしか頭になかった冬獅郎にとっては、もしかしたら早すぎた出会いだったのかもしれない。

 覚悟も決まらぬままいざ相まみえた哀れな少女は、藍染の悪意に運命を捻じ曲げられ…破面たちの撤退を指揮する、明確な護廷の敵として彼らの前に現れたのだ。

 

 

 それでも。

 

 感じる桁外れの霊圧が、たとえどれほど自分の知るあいつとかけ離れようと。

 見下ろす冷たい双眸が、硬く結ばれた小さな唇が、たとえどれほど精巧な"悪役"らしく作られていようと。日番谷冬獅郎は、彼女が自分にくれる確かな温もりだけは、絶対に見違えることはない。

 

 ああ、あいつだ…

 

 

 

「──雛…森…」

 

 

 

 無意識の不安か、あるいはそれは残された希望の儚さを表していたのか。再会した幼馴染──雛森桃を求めて思わず零れた声は、自分でも驚くほどか細く弱々しかった。

 

「……」

 

 彼女が返した言葉は無言の一つ。

 だが冬獅郎を拒絶するような沈黙に反し、その唇は白くなるほど噛み締められ、ドレスの胸元を固く握る拳は、少女の胸中に渦巻く想いの強さを映し出す。

 

 錯覚でもバイアスでもない。彼女が未だ自分に向けてくれる確かな情を垣間見た冬獅郎は、居ても立ってもいられなくなった。

 

「ッ、雛も──」

 

「護廷十三隊、そして現世の皆さん!」

 

 だが笑顔で駆け寄ろうとする冬獅郎を制止するかのように、雛森が町中に轟く大声を張り上げた。久しぶりに聞いた彼女の鈴音の声は震えていて、あの双殛の丘のときより一層枯れ果てて痛ましい。

 

「三日後の正午! 我々破面軍は藍染様に勝利を捧げるため、この地で雌雄を決める決戦を申し込みます…ッ!」

 

『…!!』

 

 それは過去に尸魂界が受けたものの中で最も敵意に乏しく、最も悲愴な宣戦布告だった。

 まるで致命的な何かに急かされているかのように憔悴した顔が、彼女の絶望を物語る。

 

「な…雛森お前──」

 

「止めたければ!」

 

 咄嗟に伸ばした少年の手を押し留める雛森の叫声が、この場全員の耳に木霊する。

 

 

「止めたければ…あたしをこの場で倒しなさい…ッ!」

 

 

 揺れる瞳の雛森が、腰の斬魄刀を鞘から解き放つ。取返しの付かない境界線を踏み越える恐怖と苦悩に満ちた挑発。そんな彼女の凄惨な覚悟に圧倒され、冬獅郎は息一つ吐くことすら出来なかった。

 

 だが。

 

 

「…そういう、事だったんスね」

 

 雛森の決意に何かを悟った者がいた。鬼才と恐れられる研究発明家、浦原喜助。

 

 そこにもう一人、冬獅郎の知らない例の謎の男が合流する。

 

「あの霊圧の高さ、普通の死神のモンとちゃうな」

 

「…ええ。ですが平子サン、アナタ方"仮面の軍勢(ヴァイザード)"とも違う」

 

「となるとアレしかないなァ…藍染もホンマ趣味悪いやっちゃ」

 

 平子なる謎のおかっぱ男との不穏な会話にたまらず「どういう意味だ」と割り込む冬獅郎。

 

「…日番谷サンは彼女の幼馴染ッスよね」

 

「だったら何だ。お前たちはあいつの何に気付いた、答えろ…!」

 

 されどその問いに二人は冬獅郎を憐れむように目を細め、斬魄刀を握り直す。

 

「…最善を尽くします」

 

「なっ──」

 

 冬獅郎の望む答えは煙に巻かれ、同時に浦原と平子が雛森を囲むように間合いを取る。その意図は明確。二人は、雛森と戦うつもりなのだ。

 

「なっ、待てお前ら! 雛森は敵じゃねえッ!」

 

 誰であろうとあいつを傷付けることは許さない。だが慌てて浦原たちを追い駆けようと少年が足を踏み出したとき、新たな四人の乱入者が雛森の周囲に現れた。

 

「──雛森副隊長っ!!」

 

 荒い息と共に登場したのは日番谷先遣隊の朽木ルキアと、黒崎一護。南の方角からは同部隊の阿散井恋次と…あれは浦原の仲間の四楓院夜一か。

 そしてそれは方々に散らばっていた現世の最高戦力が皆、空座公園の上空に集結してしまったことを意味していた。

 

「な、なんだよその霊圧…それがてめえの本当の力なのかよ、雛森ッ!」

 

「雛森副隊…雛森殿! どうか剣をお納めください…!」

 

「一護、ルキア! 馬鹿者が、お主らは下がっておれ!」

 

「何でだよ! 俺はこの人に聞かなきゃなんねえことが山ほどあるんだ!」

 

「ッ、全員剣を下ろせ! 雛森に手ェ出すなッ!」

 

 必死に一同の前に立ち塞がり、制止の声を張り上げる冬獅郎。押し潰されそうな霊圧の中でも何とか雛森から事情を問い質そうとする友人の朽木に阿散井。何か因縁のあるらしい四楓院やボロボロの黒崎。更には辛うじて立ち上がった乱菊や斑目、綾瀬川の三人も加わり、事態は雛森を中心に荒れていく。

 そんな彼らを余所に、浦原と平子が静かに少女の隙を探し戦意を高めていた。幼馴染を守りたい冬獅郎はその脅威を当然見逃さない。

 

 しかし。混乱の中で少年が二人へ掴みかかろうと腕を伸ばした、その瞬間。

 

 

 

 ──平子が、血飛沫に染まった。

 

 

 

「がふ…ッ」

 

「ぇ…?」

 

 突然、目の前で赤い螺旋を描きながら地面へ落下していく金髪おかっぱの男。皆一様に呆けた顔でそれを見つめ、真っ先に我に返った浦原と四楓院が一瞬で側の朽木たちを掴み距離を取った。

 

 そして一同が顔を上げた先に、斬魄刀から血を滴らせる──雛森桃が佇んでいた。

 

『…ッ!?』

 

 何も見えなかった。誰一人として指一本動かせなかった。

 腕の動きどころか紫電すら消える須臾の出来事を目の当たりにし、皆が緊張に凍り付く。

 

 張り詰めた空気の中、ただ一人、ゆっくりと剣を横に構える雛森。

 

 

「…言ったはずです。あたしは、もう」

 

 

 

 ──止まれない。

 

 

 

 そして振り下ろされた彼女の斬魄刀は、眩い桃色の焔を纏った四支の宝剣へと姿を変えた。

 

 

『…!!』

 

 

 無号の始解。それは特別な高みに至った死神のみに許された斬魄刀の解号方法である。その唯一の条件を知る冬獅郎は、同じ領域に立つ浦原や四楓院らと共に目を見開いた。

 

「雛森、お前…」

 

 話には聞かされていた。あの黒棺の威力や常軌を逸した霊圧から察することも出来た。だがこうして目の当たりにしたときの衝撃は想像より遥かに大きかった。

 

 やはりこいつは、今までずっと…

 

「隠してやがったのかよ…!」

 

 そう不満に悪態吐きながらも、藍染から事情を聞かされた彼らは少女を強く責めきれない。それでも、今までの長い付き合いを経ても尚、教えてくれるほどの信頼がなかったという事実は重くのしかかる。

 

「…そうだよ、阿散井くん。尸魂界に来てすぐの頃に、近所の友達に"化物"って言われてから、雛森桃はずっとみんなを騙して弱いフリをしてきたの」

 

「ッ、雛森…!」

 

「だけどそれも…もう、おしまい」

 

 周りに拒絶されないために己の才を隠した少女が、隠すことを止めた。まるで冬獅郎たちが、その力を秘めるに足る大切な存在ではなくなったと伝えるかのように。

 

「あたしは今日、みんなに…昔のように"化物"って言われに来たの」

 

 雛森の、達観したような擦れ声が皆の胸を締め付ける。

 違う、そんなこと言わない。そう叫ぼうと口を開くも喉を登るのは声にならない吐息ばかり。

 

 斬魄刀の解放で高まった少女の天井知らずの霊圧が、ついに隊長の卍解を以てしても跳ね除けられなくなっていた。

 

 

「だから、その化物に殺されたくなかったら…」

 

 

 そして少女の暗い声が耳に届いたその直後。

 

 

 

 

 

 

 

 ──死ぬ気であたしを殺しなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 冬獅郎たちの視界の全てが、淡い桃色の津波に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

桃ちゃん、桃玉ハッスルで自分の霊圧がわからずとりあえず一番頑丈そうな平子さんで試し切り。

そしてまたまた支援絵を頂きました!

farさまの桃玉会議です。
https://img.syosetu.org/img/user/15981/68652.jpg

桃ォ! お前ら桃玉になったら桃になったのかよ桃ォ!
それとウル織への情熱が大きすぎる桃玉に草。安心しろ、悦森はイチルキもイチ織も同じくらい好きだゾ。ただウル織成分が一番不足しているから無理やり演出してニヤニヤしているだけだ。

というわけでfarさま、THE☆桃な支援絵を大変ありがとうございました!


次回の更新こそ無双100%です。お楽しみに!

 
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