雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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どうしてコメらんのみんなそんなすぐふくせんみぬいちゃうの?(タッカー


 


対峙ィィィィ!

 

 

 

 

 

 

 ドルドーニを回収したあたしはすかさず桃ちゃんラボの黒腔(ガルガンタ)へ向かい、現世のアジトへ彼をおんぶで丁重に送り届ける。ドレス死覇装の素肌の肩におじさんの顎ヒゲが触れてくすぐったいけど、今日くらいは許してあげましょう。

 

 迎えの従者破面にドルドーニを預けたらとんぼ返りでチルッチの所へ行く。あそこでは今作中有数のオサレバトルが繰り広げられているのだ。絶対に見に行かなくてはならない。ガンテンバインの方はノイトラが介入の隙を窺っているので、邪魔にならないよう回収は葬討部隊(エクセキアス)にお任せだ。

 舞い戻って"三桁の巣(トレス・シフラス)"のチルッチちゃんルーム。ドルドーニと違って彼女とガンテンバインはついこの間まで十刃だったプリバロンだ。ちなみに後任は浦原崩玉で再覚醒したノイトラとゾマリです。

 

 

「──わからないなら教えようか。君の羽と僕の【魂を切り裂くもの(ゼーレシュナイダー)】の霊子振動数には、倍以上の差があるってことさ」

 

 こっそり入った列柱の間では、ちょうど石田くんとチルッチちゃんが切り札を披露し合っていた。

 おお、このシーンは…!

 

 

「…そう。要するにあたしの羽は、もうあんたに通用しないってことね?」

 

「ああ、そうだ」

 

 無情な青年の明言にチルッチが小さく深呼吸をする。

 

「……オッケー」

 

 彼女がそう頷いた直後、その巨体がゴトリと分離した。折れた羽と巨大な両手が無造作に床に転がり、女破面は連獅子のような荒々しい長い毛髪と尻尾を残した人型へと変化する。

 

「…その解放状態がそんな風に着脱自在なものとは思わなかったよ。君たち破面は全員そうなのか?」

 

 石田の問いにチルッチが苦い笑みで答える。額を流れる脂汗が痛々しい。

 

「…自在じゃないわ、捨てたの。

 

──二度と元には戻れないわ」

 

 

 彼女の言葉に滅却師(クインシー)が目を見開く。

 

「あたしたち破面の斬魄刀は、虚本来の攻撃能力を刀剣の形に封じ込めたもの。帰刃(レスレクシオン)状態からそれらを元の斬魄刀に再封印せずに捨てることは、自ら腕を焼き切るのと同じこと」

 

「な…!」

 

「あたしの【車輪鉄燕(ゴロンドリーナ)】、燃費悪くってさァ。 だからこの腕も羽も、あんたに通用しないってんなら全部捨てて…」

 

 そしてチルッチが自らの尻尾を天へ掲げた。

 

 

「──その分の霊圧を一個に纏めたほうが、マシ」

 

 

 二又に分かれた尻尾の切先で霊圧が扇状に凝固する。これまでにない力の密度、ギラつく眼光は彼女の覚悟の固さの表れ。我が身の犠牲を厭わぬその決死の想いに気圧され、石田は思わず悲憤に声を荒らげてしまう。

 

「ッ…君たちにとってこの戦いは、そうまでして勝たなければならないものなのか…!?」

 

 青年の問いに笑止と呆れる女破面。

 

「あったま悪いんじゃないの、あんた。勝たなくていいなら最初から戦争なんて起きやしないのよ!」

 

 当然だ。道理に疎い子供の石田でも理解出来ること。顔を歪める甘ったれたガキへ、チルッチが己の矜持を言葉にする。

 

破面(アランカル)は兵士よ。十刃(エスパーダ)はその頭領。たとえ"元"だろうとその責任と誇りは変わらない」

 

「…ッ」

 

「敵を殺し、勝つために生まれた存在。許された敗北なんて…」

 

 そして束ねた超高密度の霊圧の刃を振り翳し、女破面は自らの役割を全うせんとその命を投げ打った。

 

 

「──どこにもないのよッ!」

 

 

 

 …はぁぁぁ、かっこいい。かっこいいよチルッチちゃん。

 それまでのギャルっぽい勝気な態度と、ギャグ空間での転倒顔面ダイブからのブチ切れ刀剣解放というマイナス要素を、全てプラスに反転させるオサレな自己犠牲型パワーアップ。

 これにはOSR警察のあたしも思わずニッコリ。

 

 ドルドーニもそうだったけど、やっぱ古参の破面は長らくヨン様を見てるからかオサレな人が多い気がする。中でもこの世界のチルッチちゃんは中級大虚(アジューカス)から最下級大虚(ギリアン)に退化しそうなところをヨン様の破面化で救われた経緯があるからね。ここまで体を張れるのも恩と忠義のなせる業だろう。まさにオサレ。

 

 だが。残念ながらその自己犠牲戦法は既に目の前の敵が過去に使った、ある種のマンネリ手段であり…

 

 

「少し勘違いをしているな。【魂を切り裂くもの(ゼーレシュナイダー)】の本質は武器ではなく補助具。斬った霊体の霊子を奪いやすくするためのものだ」

 

「なっ、あたしの霊圧が…!」

 

 

 まあ流石に前座キャラのチルッチでは、あの有名コピペを世に放った石田雨竜に勝つのは無理ですね。

 

 彼は"OPBで戦う滅却師"という最高の戦闘方法を取る作中最強格の一人で、個人的には才能スペック頼りな一護よりも圧倒的に手強い人物だと思う。

 滅却師最終形態(クインシー・レットシュティール)破芒陣(シュプレンガー)魂を切り裂くもの(ゼーレシュナイダー)、etc.…もうドイツ語と言うだけでオサレなのに、それらの技や道具の使い方が神懸かり的にオサレ。弁舌や挑発の語彙力も非常に優れており、何より毎回ちゃんと苦戦して敵にも見せ場を作ってくれるリスペクト精神篤い聖人キャラだ。彼に勝つにはザエルアポロやハッシュヴァルトのようにNTBを仕掛けるか、後はもうウルキオラのように霊圧でゴリ押すしかない。

 正直あたしも当初はこの石田眼鏡の【敵リスペクト型OPB】を戦闘時の参考にして原作キャラたちを輝かせたかったんだけど…やはりシロちゃん最優先の桃玉融合は少し早まったかな…

 

 

「すまない、僕の勝ちだ。勝利は確かに、リーチの差だったよ」

 

「クソ…ッ」

 

 

 その後は本誌と同じく霊矢形態の魂を切り裂くもの(ゼーレシュナイダー)で鎖結を撃ち抜かれ、チルッチちゃん無念の敗北。

 

 原作通り、石田雨竜のオサレ勝利だった。

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「──ご苦労様でした、チルッチさん」

 

 

 戦闘終了からしばらく。

 敵でも殺人はしない主義な石田眼鏡とペッシェが列柱の広間を去った後、あたしは見事宿命を果たした自慢の部下の前に姿を晒した。

 

「…雛森…様…!?」

 

「お久しぶりです。途中から見てましたが、十刃らしいとても立派な戦いでしたよ」

 

 驚愕するチルッチちゃんへ本心の称賛の言葉を送る。流石はあのオサレ集団の元メンバー。さっきの戦いはガチで相手が悪かっただけだからね、ドンマイ。

 

 だがあたしが慰めようとすると、チルッチちゃんが突然泣き出した。

 

「…申し訳…ござい…ません…! 雛森様に不甲斐ない戦いを…お見せして…ッうぅ…」

 

「チルッチさん…」

 

 そ、そんなに悔しかったのか。

 いやごめん、そうだよね。あたしの立場で言うなら、一護の無月的な技で飛梅ちゃんを犠牲にしたのに勝てなかったのと同じだもん。これはちゃんとフォローしなければ。

 

「大丈夫ですよ、チルッチさん。傷も、霊力も、犠牲にした帰刃(レスレクシオン)も、あたしが全部必ず回復させます」

 

「あ、ぁ…」

 

「あなたほど気高い女性を戦士として死なせはしません。ふふっ、待機命令に背いてフラフラしているノイトラさんに爪の垢を煎じてあげたいくらい」

 

 全くだぞ、弱者相手に霊圧でイキることしか出来ないカマキリめ。あなたも少しは前任"第5十刃"(クイント・エスパーダ)の彼女を見習ってオサレになりなさい。

 

 しかしあたしが慰めても「お許しください」だの「情けない」だのえぐえぐ自己嫌悪に陥ってしまって話を聞いてくれないチルッチちゃん。仕方ないのでドルドーニの時と同じくそのまま背負ってあげよう。

 

「ひ、雛森…様…!?」

 

「安静に。今医務室へ運びますね」

 

「あたしのような…者に、こんな…」

 

 背中の巨乳の感触に感動しつつ、あたしは急いで桃ちゃんラボの黒腔(ガルガンタ)へ向かう。鎖結を失ってもロカに修復させたらまだ十分間に合うだろう。ダメならまた桃玉の尻を叩けばいい。

 

「傷に障りますよ。しばらくお休みなさい」

 

「ひな…も……」

 

 優しく【白伏】で眠らせ、現世アジトへの黒腔(ガルガンタ)に控えていた雑用破面に彼女を預けて、ホッと一息。

 あたしは先ほどのvs.石田雨竜OPBについて思いを馳せる。

 

 うーん、負けちゃったチルッチちゃん。原作と同じく一時はいい線行ってたと思うんだけど…OPB強者になるにはあともう数歩足りないんだよなぁ。

 効果無しと知って即座に羽や腕を潔く犠牲にするのは確かにオサレだが、もう少し引っ張って不利な状況下で【過去回想】を挟んでからの方がもっとOSR値を稼げたはず。彼女の戦士や組織人として覚悟を決めすぎてるところが、なんとなく副隊長モードの侘助に似てて残念感が拭えない。

 

 何よりあのケバい紫メイクとキモい解放状態が容姿ポイント大幅マイナス! せっかくの【女強者】と【容貌:グラマー美女】のプラスを台無しにしている。

 あのヨン様でさえ例のハンペン化&羽〇結弦ポーズとキモメルヘン蝶の翅な崩玉変化のOSR値マイナスを覆すことは出来なかった。容姿ポイントを大事にしない者はOPBにおいて絶対に勝利を取り零してしまうのだ。

 幾つかイメージはあるけど、あたしも午後の空座町決戦で行う桃玉変化デザインは慎重に選ばないとね…

 

 

 さて。戻って来たマイルーム。

 決戦前に汚れてたらOPB的にマイナスなので、まずは背負った部下たちの血でベトベトの服を着替えねばならない。

 この衣装はフィッシュテールドレスの上半身が面倒だけど、頑張れば一人でも着替えられるタイプだ。一応死覇装だしね。

 

 チョーカーとコルセットを緩めて、ベアトップの胸元部分と袴を脱ぐ。

 鏡に映るのは下着姿の雛森ボディ。シャルロッテ兄貴姉貴の強い勧めのブライダルランジェリーみたいな純白チューブブラが凄く恥ずかしいが、我慢だ。女子の容貌服装OSR値はシビア。そう、これも最高の「雛森ィィィィ!」のため…っ。

 

(そ、それより大丈夫だよね? 監視とか…)

 

 洗脳NTRムーヴ用とはいえ、流石にこんな気合い入りまくりな下着姿を味方の男性陣に見られたくない。心配になったので部屋の天井あたりをキョロキョロ見渡す。あのヨン様も女の着替えまでは覗かないだろうが……さっきから視線を感じる気がするのは一体…?

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 何とか疑念を振り払い、同じシロちゃん曇り用背肩ガン開き死覇装の替えに着替え終わったあたしは、コソコソと更衣室を出る。

 

 諸々の準備を終わらせ、再度虚夜宮(ラスノーチェス)本宮へと瞬歩でGO。つい先ほど主人公勢と十刃たちの最初の激突がこちらの霊圧感知に引っかかったのだ。

 原作の戦いがようやく始まる…!

 

(より取り見取り。どれを現地観戦するか凄く迷うな…)

 

 ああ、鰤ファンとしてなんて贅沢な悩みだろう。流石は一年五ヶ月も連載していた濃密な作中内五時間だ。これは名シーンや台詞回収のために慎重に見廻る順番とタイミングを整理しなくては。

 

 

「──おや、桃ちゃん。君も気になって見に来たん?」

 

 あたしは具体的な状況を把握するため、全てを一望できる中央監視室へ入ると、監視シフト当番の一〇が迎えてくれた。ちょうど原作イベント中だったのかウルキオラもいる。

 

 …うん。一○もこのオサレ破面がいる所であたしの着替えを覗いたりはしないだろう。気のせい気のせい。

 気のせいだよね?(威圧

 

「アーロニーロさんの宮への回廊が動かされた形跡があったので。市丸隊長の仕業ですね?」

 

「嫌やな、"仕業"なんて。あの子たちが十刃と戦いたい言うんで、ちょっとお節介焼いてやっただけやで」

 

「わぁ…流石ですね。今度なにか機会があったらあたしもその言い訳参考にしていいですか?」

 

 軽口を叩き合いながら、あたしはパパッと監視室の画面を確認する。確かザエルアポロの宮が081番、アーロニーロの宮が091番、ガンテンバインの部屋の外周辺が147番、一護がウルキオラと戦う大階段付近が235番、ってこっちはルキアがアーロニーロと相打ちした後か。

 

 やっぱり順番的にはまずアーロニーロvsルキア、ノイトラvsチャドを見て、それからウルキオラvs一護の初戦、ザエルアポロvs恋次の順番だな。その四つが終わり、石田が加わってザエルアポロが着替えに行くタイミングでまたこの監視室へ状況確認に戻ってこよう。

 段取りを決めたあたしは早速アーロニーロ宮へと踵を返す。

 

「なんや桃ちゃん、もう負傷兵治療のお仕事にお戻り?」

 

「ええ、アーロニーロさんが心配なので」

 

「…へえ、意外やね。君が日番谷隊長以外の死神を評価すんの」

 

 ニヤリと「ルキアちゃんのこと信じてるん?」と聞いてくる一〇。

 何だそれは、それであたしにマウント取ってるつもりかね? 先程あのヨン様相手に一勝二敗の接戦を繰り広げた、このNEW桃ちゃん相手にOPBで遊ぼうなどとは笑止千万(調子乗り中)

 

「…いいえ」

 

 あたしは一〇の問いを否定し、オサレに監視画面へ顔を向ける。彼の注意を映像に促すように。

 

 

 

『──よォ、オメエが一番乗りか?』

 

『──ッ!』

 

 

 ──"第5十刃"(クイント・エスパーダ)──

NNOITRA GILGA(ノイトラ・ジルガ)

 

VERSUS

 

茶 渡(さど) 泰 虎(やすとら)

 

 

 

───  ───

 

 

 

『──仮面ヲ取ッテ、挨拶スルよ』

 

『──なっ!? あ、貴方は…ッ!』

 

 

 ──"第9十刃"(ヌベーノ・エスパーダ)──

AARONIERO ARRURUERIE(アーロニーロ・アルルエリ)

 

VERSUS

 

 ──十三番隊(じゅうさんばんたい)隊士──

朽 木(くちき) ル キ ア

 

 

 

 かつて尸魂界(ソウルソサエティ)の護廷十三隊を相手に戦い、仲間を奪い返した死神代行・黒崎一護一派。幾千幾万もの同胞を喰らい至り、種族の限界を超越した破面の最上位、十刃(エスパーダ)。かくして両者の初戦を担う、役者が揃った。

 

 

「…あたしはルキアさんを信じてるんじゃありません、市丸隊長」

 

 

 そして笑う市丸ギンへ、あたしは満面の笑みで笑い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 ──この世界(BLEACH)を、信じてるんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

ドルドーニ氏、おそらく幼いシロちゃん以来初となる桃ちゃんの体の素肌に触れた男。
そして桃ちゃん、OPB脳すぎてチルッチちゃんの敬愛心に気付かないガバ。


次回はOPBが提唱された原点として有名なアーロニーロ戦。
お楽しみに!

 
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