雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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いつも感想評価マイリス支援絵誤字脱字報告ありがとうございます。
冗長にならないようにノイトラ戦と、桃ちゃんが見れなかった十刃たちの戦いを一話に纏めました。
サクサク決戦へ!

 


援軍ィィィィ!

 

 

 

 

 

 

 

 虚圏(ウェコムンド)の王城虚夜宮(ラスノーチェス)を拠点とする、種の限界を超越した虚、破面(アランカル)。その頂点に君臨する最強の十体十刃(エスパーダ)の迎撃により、黒崎一護率いる侵入者との戦いは破面軍へ大きく天秤が傾くこととなった。

 

「──御苦労様、諸君。愉快で冗長なこの舞台も、ようやく終演を迎えられそうだ」

 

「──案ずるな、アーロニーロ。君の不始末は私が拭っておく」

 

「──諦めろ。てめえら全員、ここで終わりなんだよ」

 

 個々の実力はもちろん、地の利に加え数の優位もない一護たち。連れ去られた井上織姫の救出成功まであと一歩までたどり着きながら、一同は健闘空しく全滅寸前にまで追い込まれる。

 

 …だが破面軍の勝利で決したはずの戦闘は、突如現れた四人の死神により振出しへと戻された。

 

 

「…誰だい、君は?」

 

「──ククク、"私が誰か"…か。その質問に答える意味があるのカネ?」

 

 死に体の石田雨竜と阿散井恋次で遊ぶザエルアポロの前に、十二番隊隊長・涅マユリが。

 

 

「…私は"第7十刃"(セプティマ・エスパーダ)ゾマリ・ルルー。さあ、名乗りなさい侵入者」

 

「──兄等の敵だ」

 

 瀕死の朽木ルキアを狙うゾマリの前に、六番隊隊長・朽木白哉が。

 

 

「──私たちは皆の傷を癒しに来ただけ。貴方がたと争うつもりはありません」

 

「…!」

 

 敗北した茶渡泰虎、ガンテンバインを回収しようとする葬討部隊(エクセキアス)を、四番隊隊長・卯ノ花烈が。

 

 そして。

 

 

「──十一番隊隊長、更木剣八!」

 

「第5十刃、ノイトラ・ジルガだ!」

 

 満身創痍の黒崎一護をいたぶるノイトラを、最強の剣の鬼が。

 

 一族の誇りを守るため、癒師の務めを果たすため、知識欲を満たすため、ただ血が沸き立つような最高の戦いを愉しむため…

 それぞれの意志を胸に、尸魂界の守護者・護廷十三隊が誇る最強の戦士たちが破面軍に襲い掛かった。

 

 かくして新たな王を迎えて以来となる虚夜宮(ラスノーチェス)の波乱は、多くの予想を裏切る大転回を迎える…

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 死神は皆、傲慢だ。

 

 

 朽木ルキアを殺す直前に現れた新たな侵入者。護廷隊の隊長と思しきその死神と言葉を交わした"第7十刃"(セプティマ・エスパーダ)ゾマリ・ルルーは、自らの持論を改めて確とする。

 

「…私は貴方を自分と同格と考え、そのように振舞っているつもりです。私の心に驕りなどない」

 

「破面がこの私と自らを同格と考える…それ自体が既に驕りだと言っている」

 

 この死神の何と不遜なことか。

 ゾマリは虚から破面となり、理性と"愛"を取り戻し、そして知った。その事実を他の有象無象と同様に見向きもしない驕り昂る敵へ、男は自らの技巧を披露する。

 

「【双児響転(ヘメロス・ソニード)】。十刃最速を誇る私が磨き上げた歩法です。貴方がた死神に"瞬歩"があるように、我ら破面はこの"響転(ソニード)"を鍛え、己の武闘を優位に進めるのです」

 

「貴様の児戯に興味はない」

 

 しかし相手がその傲慢な態度を改めることはなかった。分身にも等しい高度な技術も、敵の同等以上の変わり身術を見せられ…

 戦士の誇りを傷つけられたゾマリは、斯くて決断する。

 

 

 ──それを人と呼ばず何と言うの?

 

 

 ああ、そうだ。あの方はおっしゃってくれた。

 我ら破面は、人だと。虚から人となった、破面なのだと。

 

 見せ付けねばなるまい。認めさせねばなるまい。我らを見下し侮る死神の、千年にも亘る誤りを。

 

 

「…鎮まれ」

 

 

──呪眼僧伽(ブルヘリア)──

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 "第5十刃"(クイント・エスパーダ)ノイトラ・ジルガは、更木剣八と名乗る血の気の多い死神の隊長と斬り合いながらも、自らの優位を信じて疑わなかった。己の鋼皮(イエロ)は歴代全十刃最高硬度。死神の斬魄刀如きで切り裂かれることなどあり得ない、と。

 そして事実更木との戦いにおいても、ノイトラは傷一つ負うことなく戦い続けていた。

 

 …だと言うのに。

 

「何──笑ってんだコラァ!!」

 

 敵が倒れない。敵が諦めない。獰猛な笑みのまま様々な方法で、箇所で、こちらを斬ろうと試してくる。

 

「ようやく慣れてきたみてえだな。てめえの硬さによ」

 

「…慣れ…?」

 

 それは不意に起きた変化だった。一度のまぐれ当たりでノイトラが腕を負傷。そして以後の更木の剣筋が何故か、見違えるほど鋭く研ぎ澄まされた。

 "慣れ"などという言葉では到底説明のつかない理不尽な現象。鍔迫り合いの中、混乱するノイトラに更木が凶悪な笑顔で礼を言う。

 

「ありがとよ、おかげでいい肩慣らしになったぜ」

 

「ふっ…ざけるなああああッ!」

 

 激昂し、自由な右手で敵の急所、頭部を狙うノイトラ。

 だが彼の指先が更木剣八の眼帯を剥ぎ取った、その直後。

 

 

「かっ────」

 

 

 ノイトラは、桁外れな霊圧を帯びた斬魄刀の袈裟切りで、虚圏の砂漠に膝を突いていた。

 

「外すんじゃねえよ、馬鹿。加減し損ねたじゃねえか」

 

「何だ……その眼帯……」

 

 更なる理不尽に苛立つ十刃へ、死神が「封だよ」と一言述べる。

 自らに枷を嵌めて戦っていた男の、真の実力。それが平然と佇む死神と辛うじて命に縋り付いた破面、両者の力の差であった。

 

「…馬鹿が…」

 

 死ぬかよ。

 この俺が、てめえ如きの剣で。

 俺が。

 俺がッ!

 

「おれが死んでたまるかァァッ!!」

 

 そしてノイトラ・ジルガは解放する。絶望の名に相応しい、自らの虚としての在り方を回帰させる、"帰刃"(レスレクシオン)を。

 

「…(いの)れ!!」

 

 

──聖哭螳蜋(サンタテレサ)──

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

「──"支配"か。そんなもの、私の前では何の意味も持たぬ」

 

 …何故だ。

 

 何故ヤツはそんな目で私を見る。何故我ら破面の矜持を蔑み、無価値と見做す。

 

「──最高だぜ破面(アランカル)!! 戦いってのはこうでなきゃいけねえ!!」

 

 …何故だ。

 

 何故ヤツは倒れない。何故これほどの力を前にして、この俺に絶望しない。

 

 

 護廷の隊長との激闘の中、十刃はそれぞれの疑問に、その虚ろな心を苛まれる。絶望の最奥に見出した微かな光へ手を伸ばす彼らにとって、死神の振るう剣は眩しく、そして忌々しいほどの力に満ちていた。

 

「…卍解」

 

──吭景(ごうけい)千本桜景厳(せんぼんざくらかげよし)──

 

 死神の卍解が周囲を隙間なく旋回し、四方八方より殺到する。その幾億の刃を辛うじて耐えながら、己の激情を憎き死神へ叩き付けるゾマリ。

 

「お前たち死神は一体誰の許しを得て我等(ホロウ)を斬っている! 否、貴様等は誰にも何も与えられてなどいない! その手に正義があると思い上がり、虚を悪と断じる!」

 

 何たる傲岸、何たる不遜。

 ヤツらはその名に"神"の字を自称し、その神の名において我等を裁いているつもりなのだ。

 

 

 ──理性を持ち、技を磨き、愛を知る者。それを人と呼ばず何と言うの?

 

 

ああ、度し難い。

 

 

 

「…知らねえだろ? 両手で振った剣の強さが、片手のそれと…」

 

──どのくらい違うのか。

 

 一閃の紫電。続く激痛と爆風。

 暗転する視界を必死に光へ繋ぎ止めながら、ノイトラは敵の一振りで自身の戦意が悉く打ち砕かれたことを理解する。

 

「…じゃあな」

 

「ま、待て…ッ!」

 

 去り行く更木剣八。その退屈そうな目を見た十刃は焦燥に声を上げる。

 

 どこへ行く。まだ俺は戦える。まだ戦いは終わっていない。まだ…

 

「俺は死んでねえぞ、死神ィ!!」

 

「…(しめ)えだ、今ので。戦えなくなった野郎にわざわざ止めを刺す義理ァ無えんだよ」

 

 何たる驕慢、何たる侮辱。

 どいつもこいつも軽々しく情けをかける。その先に救いがあるのだと、お目出度い頭で信じきって。

 

 

 ──藍染様はあなたに力を、機会を、名だたる強敵を。そして……死に場所を与えてくださるでしょう。

 

 

ああ、度し難い。

 

 

 我等は一度人から獣になり、そして人へと戻った破面。その過程で多くを失い、皆真綿の縄で首を絞められるような退廃の足音に恐怖している。

 

 ぽっかりと空いた、永遠に塞がらない心の孔を埋める何かを探しながら。

 

 

「…私が貴様を斬るのはただ、貴様が私の誇りに刃を向けたからだ」

 

 我々破面に"愛"以外の救いはない。

 

 

「…チッ、面倒臭えな……しょうがねえ。来いよ、死にたがり」

 

 俺達破面に"死"以外の救いはない。

 

 

「──万歳! 万歳!」

「軍団長閣下万歳!」

「ばんざあああああああい!!」

 

 あの方が与えてくださる、虚も死神も等しく全てを見下ろす、いと尊く高き愛だけが我等破面を救う。我々がこの世に存在する意味が、価値があるのだと、あの傲慢な愛のみが認めてくださるのだ。

 

『──俺は斬られて…』

『倒れる前に息絶える』

『そういう死に方をしてえんだ』

 

 それは"情け"ではない。たとえ藍染が、あのウザい八方美人な小娘がいようと、俺達破面に救いはない。戦い、戦い、そしていつしか出会う圧倒的な"最強"の一振りこそが、俺達を救うのだ。

 

 だから。

 

 

 私を陶酔させた最高の愛をくださったことに。

 

 俺を陶酔させた最高の戦いをくれたことに。

 

 

 

 

 ──感謝を。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 ──こいつがそう(・・)か。

 

 

 知性に欠けた猪武者、阿散井恋次の奇策により崩壊した第8十刃宮。散乱する瓦礫の上で敵の援軍と相対した"第8十刃"(オクターバ・エスパーダ)ザエルアポロ・グランツは、その異様な風貌の死神の正体を一目で看破した。

 

 涅マユリ。護廷十三隊十二番隊隊長にして、瀞霊廷技術開発局局長。

 あの邪悪な女神が見据えるザエルアポロの未来において、己を倒す破滅の導き手だ。

 

「…何故僕の名を知りたがる?」

 

「馬鹿かネ、君は? そんなもの決まっているじゃないか…

 ──君を瓶詰めにしたときに、瓶に名前を書くためだヨ」

 

 挑発を交わし、技術者同士の勝負が始まった。最終的な身の安全が既に確保されている彼にとって、この対面は初めから涅マユリの技術を引き出し盗むためのもの。実際の戦闘などただその手段に過ぎず、勝敗など更に価値がない。

 

「クソッ…こんな毒、時間さえあれば…ッ!」

 

「ピーピー五月蠅いヨ。…殺れ」

 

──金色疋殺地蔵(こんじきあしそぎじぞう)──

 

 劣勢に焦燥する自分の演技を俯瞰しながら、ザエルアポロは相手の手の内をじっくりと観察する。

 ヤツが連れた副官の"人造死神"。彼の【人形芝居】(テアトロ・デ・ティテレ)対策の"臓器複製"。自らの斬魄刀に猛毒を組み込む"斬魄刀改造"。初めて見る珍しい"生物型の卍解"。そして何より、それらを駆使し戦う涅マユリの戦術眼。

 そのどれもが、どんな宝石よりも貴重な、大変興味深い知的財産だった。

 

 

「────ぐうッ…」

 

『!?』

 

 そして、ザエルアポロ第一個体が涅の卍解に喰われ敗北する。

 ヤツの副官に、素晴らしい置き土産を残しながら。

 

「うあ"っ、あ"、あぁあ"ああ…っ」

 

「…何だ、様子がおかしいぞ…!? お、おい涅マユリ! 早くあの触手を解いてやれ!」

 

 そう、たとえ一切の事前準備がなくとも、この程度で滅びる僕ではない。必ず他に何かあるはずだ。

 このザエルアポロ・グランツの運命を決する、避けがたい何かが。

 

 

『──僕を、殺したと思ったか?』

 

「ッ、ザエルアポロ!? まだ生きてたのか…!」

 

 低劣な下等種共へ教えてやろう。【邪淫妃(フォルニカラス)】の最も重要で最も誇るべきこの能力の名は……"受胎告知(ガブリエール)"。

 

 

「──ッ、はぁあんっ♥!?」

 

「……へっ?」

 

 

 その能力とは。

 

 

『敵に僕自身を孕ませることだ』

 

 

 感動のあまり絶句し放心する一同。その中に艶めかしい女の、場違いなまでに色っぽい嬌声が木霊する。

 実験は成功だ。

 

『臍から体内に侵入し、とある内臓に卵を産み付ける…』

 

「あっ、や、あんっ♥ ダ、ダメっ、見ちゃ──はぁああんッ♥」

 

「く、涅副隊長!?」

 

 いつかの意趣返し(・・・・)の機会を見据えた改造だったが…人造とは言え女死神は女死神。"本命"の前に貴重なデータが取れたことに感謝せねば。

 

『そして宿主を一切傷つけず、卵は孵る。母体への"感謝"を込めて、女性の感じうる最大の多幸感を差し上げながら…』

 

「あ"っ♥!? あ、ああ、あっ♥あっ──はぁぁぁァァァああん♥♥!!」

 

「お、おい何やってんだザエルアポロのやつ!? ボテ腹の女性副官がすげえエロ顔でアヘ──「実況するなペッシェ・ガティーシェ!!」

 

 真っ赤な顔で狼狽しながら「誰かあいつを止めろ」と騒ぐオーディエンスの雄共。こちらは悪くないが、肝心の母体自身が周囲の反応に恥じらう精神的余裕がないのはいただけない。

 性的快楽信号を減らすなどの改善点を考えながら、ザエルアポロは涅の副官の体内に投与されていた無数の薬品(・・)のサンプルをアジトへ閉次元装置で転送する。

 そして彼女の股間から、ドロリと赤と白の半液状の姿で這い落ちた。

 

 …さて。

 

 

 

「自己紹介からやり直そうか。

 

──涅 マユリ」

 

 

 

 

 君がこの僕をどのように破滅させるのか、興味が尽きないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

桃「──ッッ!?」(ゾゾゾ

ヨ「どうした、桃?」

桃「な、なんか身の危険とガバの悪寒が…」



次回はネリエルさんの回想いろいろ。お楽しみに!

 
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