雛森「シロちゃんに『雛森ィィィィ!』と叫ばせたいだけの人生だった…」   作:ろぼと

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ヨン様無双とネタバレ()回。

 


崩玉……だと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある悲劇が終わった。

 

 護廷十三隊及び現世の死神勢力、山本重國・京楽春水・砕蜂・狛村左陣・平子真子・四楓院夜一、そして浦原喜助。一同は激闘の末、悲運の少女──雛森桃を崩玉の魔力から解放し、その魂魄の奪還に成功する。

 そして元の死神へと戻った意識なき彼女の護りに治癒の権威・卯ノ花烈を充て、死神達は遂に巨悪との正面対決へと歩を進めた。

 

 だが。

 

 

「────その程度の戦力で成しうる奇跡だと思わない事だ」

 

『く、そ…ッ』

 

 

 彼らを待っていたのは、魔王・藍染惣右介の圧倒的な戦闘力による蹂躙。

 斬術、白打、歩法、鬼道、そしてそれらを司る霊圧。いずれも天賦の才を持ち、その研鑽に驕り無き強者が繰り出す技の数々に、同胞達は為す術なく平伏していく。

 

 そして拠り所の最高戦力さえも…

 

「山本元柳斎重國。君との決着はまた後日、ゆるりとお相手しよう」

 

「お…のれ……」

 

 卑劣な手により自爆自滅を強いられた最強の死神、護廷隊総隊長の敗北。

 残す最後の希望、黒崎一護も敵の副官との戦闘に苦戦中。万策尽き、後は止めを刺されるのを待つのみとなっていた。

 

 

「────まだです」

 

 

 だがその時。突如藍染惣右介の背後に、無傷の死神が現れた。

 

「…ほう、見事な代り身だ。平時では見分けがつかないな」

 

「おたくの愛弟子サンの分身鬼道に少し触発されまして」

 

 男の名は浦原喜助。あらゆる手段を以て勝利を掴む三界最高の頭脳だ。

 自慢の携帯用義骸を囮に敗北を偽装し、味方の稼いだ時間で世紀の天才が今その手札を切る。

 

【縛道の六十三・鎖条鎖縛(さじょうさばく)

 

 先手の拘束、霊子の鎖が敵の体へ幾重に巻き付く。

 

【縛道の七十九・九曜縛(くようしばり)

 

 間髪を容れずの二重拘束。八卦の黒玉と中央の勾玉で相手を磔に。

 そして最後の本命、最上級破道。

 

「──千手(せんじゅ)の涯…届かざる闇の御手(みて)…映らざる天の射手…光を落とす道、火種を煽る風、集いて惑うな我が指を見よ…」

 

「芸が無いな。そんな鬼道で倒せる者は精々君達隊長クラスだ。私には傷一つ付けられない」

 

 縛道から抜け出す努力もせず、終始こちらを侮る藍染へ、秘めたる一撃を放つ。

 

「…光弾・八身(はっしん)・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔…」

 

─弓引く彼方、皎皎(こうこう)として消ゆ─

 

【破道の九十一・千手皎天汰炮(せんじゅこうてんたいほう)

 

 無数の光の矢が敵へ殺到。巨大な爆発を起こし周囲の悉くを吹き飛ばす。

 元護廷隊隊長による完全詠唱の九十番台。その文句に恥じぬ超火力が巨悪を包み込んだ。

 

「す、凄い…」

 

「しかしあれほどの破壊力でも…はたして」

 

『……』

 

 そんな仲間達の不安も、先ほどの雛森桃との戦いを振り返れば当然。

 そしてその通りに。

 

 

「───くだらない」

 

 

 やはり藍染惣右介は無傷で健在だった。瞬間移動の如き瞬歩で背後を取った魔王が、簡単な白打で浦原を地へ叩き落とす。

 

「こんなものではないはずだ、浦原喜助」

 

「ぐ…ッ」

 

「桃の対策に使ったあの結界も、彼女の崩玉の分離を目論んだ術式技術も、実に見事だった。その彼女を前座と見做す君なら、本命である私にさぞ効果的な対抗手段を用意しているのだろう」

 

 激痛に悶える彼を見下ろし「それを見せるんだ」と愉しげに宙で待つ藍染。その催促につられるように、味方の死神達も鬼才浦原喜助へ期待の目を向ける。

 

「…違いますよ」

 

「何がかな?」

 

 すると不意に、またしても背後に浦原がもう一人現れた。地で苦しんでいる方の彼は風船のように破裂する。

 

「雛森サンは前座、アナタは本命。確かにそうッス」

 

「……」

 

「そしてアタシは、アナタを倒す手段を隠しているんじゃない」

 

 

 ────もう、使ったんス。

 

 

 その宣言と同時、藍染の腕から眩い鬼道の光が立ち上った。先ほどの戦闘の隙にヤツの体に仕込んだ術が今、完成したのだ。

 

「封ッス。全ての死神にある両手首の霊圧の排出口を封じました」

 

「…ほう、面白い。山本総隊長の意趣返しと言う事か」

 

「面白いのはこちらにとってだけッスよ」

 

 浦原が布帽子の奥の瞳を光らせる。以前の藍染であれば警戒し、決して不用意に自分に近付く事などしなかったはずだ。あの雛森桃の怪物の出現が彼にどのような影響を与えたのかは定かではない。だが以後の男の驕りがくれた千載一遇の好機を、浦原喜助は見逃さない。

 

「アナタは、自分自身の霊圧で…

 

 

 ──内側から灼き尽くされる…!」

 

 

 大気を燃やす超大な霊力の奔流。

 光の津波、大地が削れる凄まじい爆風が吹き荒れ、護廷と現世の死神達は辛うじて戦場にしがみ付く。

 

「ぐ…ッ、なんやねんこの爆発は…!」

 

「これが藍染の霊圧の余波だと言うのか…ッ」

 

 目を開ける事すら難儀する大嵐が止まらない。渦巻く霊圧の中心では、空間が歪み千切れる驚天動地が世界を抉り荒んでいる。

 

 そして、どれほど待ち続けたかもわからない破壊の幕が下りた時。

 

「なっ…」

 

 光の塊の中から現れたソレに、一同は絶句した。

 

 

 

『…漸く、私を理解してくれたか』

 

 

───"崩玉"よ。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは藍染惣右介の声だった。くぐもっていようと、あの威圧感に満ちた低いバリトンを聞き違えるはずがない。

 だが死神達の動揺は男の生存に対してではなかった。その事実を遥かに凌駕する衝撃が目の前の巨悪によってもたらされたからだ。

 

 驚愕は、異質に過ぎるヤツの外見的変貌。感覚が遠くなるほど膨れ上がった霊圧。

 そして男の声が綴った──信じ難い一言についてであった。

 

 

『全く、"崩玉"とはよく名付けたものだ。正しくこれは神なるものと、神ならざるものとの交わらざる地平を悉く打ち崩す──力だ…!』

 

 

 死神達が放心し立ち尽くす中、化物が静かな歓喜の声を上げる。

 そしておもむろに自身の変じた体へ視線を送った。

 

『フフ…醜い白の異形か。なるほど、同じ進化の初期段階における共通性と言う事か…』

 

 唯一頭部に残った目を細め『素晴らしい』と喜色を露わにする、不気味な人型。そうとしか表現できない藍染の姿は、全身が白い髄。貌の各部位が塗りつぶされた不出来なマネキンのような存在になり果てていた。

 

 その胸に…

 

──ひとつの蒼い玉を輝かせて──

 

 

『…どうした、諸君。何故私の無事に驚いている?』

 

「うそ、やろ…」

 

『浦原喜助の策は、既に類似のものを桃が退けている。私がそれに遅れを取る事を許すと思うか』

 

 眼前の光景に体が震える。現実を目の当たりにした恐怖に目が眩む。そんな彼らを前に、藍染が淡々とズレた事を抜かしている。あたかも本題を些細な事と見做しているかのように。

 

 違う。浦原の策を逃れたとか、そんな事はどうでもいい。

 重要なのは、たった一つ。

 

「…何故…貴様がそれを…

 

 

 ──崩玉を持っている!!」

 

 

 砕蜂の絶叫が、皆の心の悲鳴が町跡の窪地に反響する。

 

 あり得ない。崩玉はあの雛森桃の化物の滅びと共に消失したのだ。後は藍染本人を倒せば、この果てしない戦は終わる。そのはずだった。

 だと言うのに…

 

『崩玉だと? 妙な事を聞くな』

 

 まるで心底理解できない様に、藍染惣右介は眼下の有象無象を蔑んだ。

 

 

 

『───何故、浦原喜助に造れた崩玉を……この私が生み出せないと思った?』

 

 

 

 淡々と、巨悪が述べる、絶望的な事実。その一言で彼らは理解する。

 

 …藍染惣右介が有する崩玉は二つあったのだ。

 

「ば、莫迦な…! それが出来ぬから…浦原殿にしか造れぬから双殛まで持ち出し朽木ルキアから取り出そうと企んだのではないのか!?」

 

「どういう事じゃ…! あんな大事を企てておきながらその最たる目的さえも嘘偽りじゃと…!?」

 

「貴様が崩玉を目にしたのは双殛の丘が初めてだと、貴様自身がそう言ったではないか! 理屈が合わん…!」

 

 しかし認める事など出来はしない。そんな焦燥を吐き出す狛村らを眺める藍染は、変わらぬ嘲笑の眼つきで彼らへ自身の矜持を披露する。

 

『…なるほど、つまり君達は敵の言を容易く信じた上、更にこう言いたいのか。「この私が、他人の作った不完全な崩玉で満足する愚物である」と…』

 

 

 ───実に、愚かな道化達だ。

 

 

 息を呑む一同。

 

「そ、そんなこと…」

 

 信じられるものか。尸魂界を混乱の坩堝に叩き込んだ八月初週の陰謀。その真意がこの時のための欺瞞だったなど。

 

 否、それだけではない。もしそうだと言うのなら、雛森桃を幾度にも亘り護廷と現世の死神勢力へ差し向け、崩玉と融合した彼女の哀れな姿を見せ付けたのも、彼女を苛んだ悲劇の数々も、最初に彼女を連れ去ったのも、その全てが…

 

 

「貴様の持つ崩玉を隠すためじゃったと言うのか…ッ!」

 

 

 夜一の歯軋りが各々の胸に重く響く。

 

 そう、我々はまんまと出し抜かれたのだ。雛森の秘めた護廷の仲間達への想いも、彼女が最後に逆らう事も、そんな彼女を救わんとこちらがあらゆる手段を投じるのも、余すことなく一切が、この男の掌の上。

 

「くそ…ッ」

 

 そしてこちらは"悲劇の同胞・雛森桃"という極上のエサに釣られて、戦略も戦術も曝け出してしまった。戦力も手札も尽きた上で、真の崩玉と融合した藍染惣右介と相対する状況に追い込まれたのだ。

 

 完膚なきまでの戦略負けだった。

 

 

「───ちょっと待った。崩玉が、不完全…?」

 

 

 ふと、そこで訝しむ声が上がる。京楽春水だ。

 即座に事実を事実と認め、最善を成すために彼は一先ず情報収集に徹した。

 

『そうだ、京楽隊長。浦原喜助の生み出した崩玉は、その器こそ私のものより優れてはいたが、肝心の根幹となる霊体がその体を成していなかった』

 

 男の台詞は続く。

 崩玉の完成には膨大な数の死神の魂魄が必要だった。しかしその調達に失敗した浦原喜助は、大気中の死神の因子を持つ霊子を強引に"義魂技術"で繋ぎ合わせた素体を崩玉の核とした。

 

『当然、私の崩玉の核とは雲泥の差だ。死神の、それも隊長格を凌駕する優れた死神の魂魄を束ね生み出した私と……桃の崩玉とはね』

 

 藍染が魂魄融合に用いた胸元の崩玉は、自らが生み出したものに浦原の崩玉を喰らわせて完成させたと言う。そして男はそれに用いられたあらゆる技術を、続く雛森桃の崩玉の創造に役立てた。

 

「…待ってください」

 

 だが藍染の説明に疑問を抱く者がいた。崩玉の創造者、浦原喜助だ。

 

 崩玉の器だけが欲しいのなら、中央地下議事堂の大霊書回廊か、綱彌代家の大書庫を漁れば完成度を上げる資料は幾らでも転がってる。どちらも鏡花水月を持つ藍染なら容易に入手できるだろう。

 

 ならば藍染が真に欲したのはそちらではない。彼の崩玉に用いられたもう一つの技術。藍染自身が「その体を成していない」と、あたかも斬り捨てたかのように述べたその技術こそが、藍染の真の狙い。

 

「…"義魂を繋ぎ合わせる"───ッまさか…!」

 

 浦原が一気に青褪め、背後へ振り向く。その先にいるのは卯ノ花と彼女が守る昏睡状態の二人。

 日番谷冬獅郎と、そして…

 

『おや、流石に早いな。もう気付いてしまったのか』

 

 ニヤと細まる巨悪の目。敵の不穏な発言に死神達が「何や!?」「何の事だ!」と口々に答えを要求する。

 そんな彼らへ、藍染が何かを含むように尋ね返した。

 

『…君達は先ほどの桃の変容を見て何を思った? "化物"と呼ぶ者もいたな。…哀れな事だ』

 

「何…?」

 

 魔王は語る。

 雛森桃と崩玉の融合状態を解除するために浦原が行使した術は、百年前に平子真子らを巻き込んだ魂魄消失事件の一件を経て完成に漕ぎつけた"魂魄の分離"と言う技術だ。特定の霊圧を指定し、それを司る魂魄をその他の異物から分離する極めて難易度の高い方法だが、霊圧を観測できない崩玉そのものを摘出するより確実だった。

 

 そこで「だが」と、藍染の声に喜悦が滲む。

 

『だからこそ、桃はあのような姿になった』

 

「ッ、卯ノ花隊長! 日番谷サンの耳をッ!」

 

 たとえ気絶していようとこれを聞かせてはならない。あの曲者浦原喜助が、その万が一すらも反射的に恐れるほどの真実に思わず身構える一同。

 

 そんな吐き気を催す邪悪を、藍染惣右介は心底愉しそうに、言葉にした。

 

 

 

 

『桃に与えた崩玉。その素材として犠牲になったのは───

 

 無数の桃自身の複霊(クローン)魂魄だ』

 

 

 

 

 

 唖然。

 

 背筋を痙攣させる者。体を掻き抱く者。喘ぐような吐息を零す者。誰もが茫然自失と立ち尽くし、巨悪の明かした外道の事実をその脳髄で甘受するばかり。

 

 クローン生物。現世では「生命に対する冒涜」と忌避されるその研究は、こと霊魂を司る尸魂界に於いては研究そのものが大罪とされるほどの禁忌である。魂魄とは個を個たらしめる最後の自己であり、その複製は現世のようにただ同じ肉体を持つ人間を造る事より遥かに深刻な問題と定義されるのだ。能力や記憶を保持する霊骸(れいがい)や改造魂魄を生み出すのとは訳が違う。

 

『…無論、霊骸技術と異なり今の義魂技術で生み出せる魂魄の最大霊圧は、精々が彼女の五分の一程度。同等の霊圧を有する魂魄には程遠い』

 

「な、ぁ…」

 

 だがそれほどの禁じ手を微塵の抵抗も無く晒して尚。男のしでかした悪事は尽きない。

 雛森桃の崩玉の創造過程には、更なるおぞましい技術が用いられていたのだ。

 

『そう。完璧な彼女の義魂を造るには、別の工夫が必要だった』

 

 そして巨悪が述べた呪詛の如き言葉が、仲間想いな死神達の誇りを穢し傷つけた。

 

 

『───()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 戦慄が辺りを支配する。

 

 ヤツは今、なんと言ったか。バラバラの魂魄の断片を、一つの霊体として繋ぎ合わせた、と。

 そんな、まるで人形やぬいぐるみを縫い合わせるかのような事を、一人の、数えきれない人々に対して行った、と。

 

 なんだ、それは。

 

「──そこまで……それほどまでに彼女を辱めていたと言うのか!? 藍染ッッ!!」

 

「日番谷隊長に聞かせないでよかった…! そんなに彼の、あの二人の絶望する顔が見たいのか!?」

 

「狂気だ…! こんな外道は生かしておけぬッ! 今すぐ死ねッ!!」

 

 口々に咆哮を上げながら巨悪へ殺到する護廷の隊長達。血も涙もない、この世の全ての悪意をたった一人の少女に注ぎ込むが如き非道に、仲間達は気が狂うほどの殺意を覚える。

 

「最後だ、明王! 我が霊力全てを持って往け!!

卍・解ッ!!」

 

── 黒縄天譴明王(こくじょうてんげんみょうおう) ──

 

「流石に死神として看過できないよ、その話は…!

花風紊(はなかぜみだ)れて花神(かしん)啼き、天風(みだ)れて天魔嗤う」

 

── 花 天 狂 骨(かてんきょうこつ) ──

 

 死力の大鎧の巨人が、尸魂界唯二対の青龍刀が、上下より敵へ斬り掛かる。

 それと同時、二人の現世勢力も加勢。

 

「平子サン、援護お願いしますッ!

…啼け」

── (しば)紅姫(べにひめ) ──

 

『ッ、しゃあないなァ…! 残り三秒、ここで使うてやったるわ!!』

 

── 虚 閃(セロ) ──

 

 赤黒い血の網が敵に纏わり付き、仮面の死神の強烈な霊圧閃光がそこへ放たれる。

 

「…まだです!」

 

── 火遊紅姫(ひあそびべにひめ)数珠繋(じゅずつなぎ) ──

 

 捕らえる網の節に火の玉が連鎖出現。一斉に爆発し魔王を火だるまにする。

 その渦中に、仲間の最後の二人が突入した。

 

「往くぞ砕蜂ッ!!」

 

「ハッ!! 魂魄法第656条、即断処刑…執行する!!」

 

『くたばれ藍染ッッ!!』

 

── 瞬 鬨(しゅんこう) ──

 

 雷と風を纏う女師弟が繰り出す白打の最高奥義。逃げ場のない左右の挟み撃ちで、衝撃と共に込めた全霊圧を相手へ叩き込む。

 

 斬撃、圧殺、霊力、蹴打、鬼道。死神に許された万術全ての力による必殺の殲滅陣。集団戦の最高最強火力を魂の底から絞り出し、今度こそ敵を滅ぼさんとその異形の体へ解き放つ。

 

 

 轟爆。

 

 荒れ狂う霊力と暴風に耐え、狛村、京楽、浦原、平子、夜一、そして砕蜂は確かな手応えを頼りに、目と鼻の先の燃える霊煙が晴れるのを待つ。

 これで終わりだと、自らの人生で磨いた強者の力に祈る様に。

 

 

 

 

 

「──そうか」  

 

 

 

 

 だがその時、彼らの鼓膜を無情な男声が震わせた。

 

『なッ!!?』

 

「どうやら先ほどの封術が最後の切り札だったようだ」

 

 煙の中。敵は、藍染惣右介は平然と佇んでいた。

 その絶望に死神達が気付く間もなく、巨悪が自らの剣を無造作に横へ薙ぐ。

 

 

『ッあ────』

 

 

 たった。

 

 たったそれだけで、護廷十三隊の戦いは終わった。

 

 

「さようなら、親愛なる道化諸君。暇つぶしの演目にしては、少しだけ愉しめた」

 

『が、ぁ…』

 

 血花が舞う偽の空座町の廃墟跡。

 焼け焦げた地へと落ち行く死神達の目に最後に映ったのは、白い覆面状の殻が剥がれ落ち、露わになったその憎らしい美貌に蔑みの微笑を浮かべる…

 

 

 蛹籃(ようらん)の時を終えた魔王、藍染惣右介の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

梅「…感想をどうぞ」(ジト目

桃「ヨン様△! 愉悦っていいね!」(キャッキャ



それとコメントのオサレニキネキより語彙アドバイス貰いました!
これでヨン様台詞がよりOSR値高めに! ありがとうございました!

 

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