目が覚めた時、そこは、いつもの見慣れた茶色い天井ではなく、青い空だった。寝ているところもベッドではなく、固い土の上だ。
何が起きているのか、まったく理解できない。
1度頭を整理しよう。
空が紫と茶色があわさった不気味な色になった→その空の中心から白い光が放たれ、津波のように襲ってきた→気がついたらよくわからないところにいました!
「……いや、どういうことだよ!?」
さっぱりわからん。あれは、神級魔術師の魔法だったのか、それとも、天国に到達したレベルのスタンド使いが起こしたことなのか。
どっちだとしても、今の俺が知ってもだからといって何か変わる訳でも無い。
そもそも、ここがどういう場所なのかわからん。
俺が住んでいた、中央大陸なのか、それとも別の大陸なのか。
「魔大陸だとしたら最悪だな……」
Cランク以上の魔物しかおらず、公用語も人間語ではなく、魔神語だ。
もし魔大陸だったら、ほぼ、詰むだろう。Cランク以上の魔物よりも、言語をまったく理解していないところが本当にキツい。
ここからどうするか……、そう思った瞬間、俺のすぐ側にあった岩陰から3mほどの巨体を持つ狼が襲ってきた。
「うぐッ!?」
すぐに、Silver Worldを出したおかげで防御することはできた。
(……少し、まずいな)
いくらスタンドがあると言っても、魔物と戦ったことはないし、俺はこの魔物がどれくらいの強さなのかわからない。
スタンドで直接殴るという戦い方もあるが、知らない魔物に迂闊に触るのも危険だ。もしかしたら、触ると発動する毒を持っているかもしれないからな。
(ここは少し距離を取って……)
Silver Worldにそこら辺に落ちている石を拾わせ、それを魔物に向かって本気で投げさせた。
その石はとんでもないスピードで、飛んでいき、魔物の体をぶち抜け、後ろにあった岩を木っ端微塵にした。
「……え?」
結構ビックリした。これだけでは倒せないと思ったから、時を止めようと思っていたが、必要なかったようだ。
思っていたより、俺のスタンドは強かったのかもしれない。
その時だった、そのまま倒れると思っていた魔物が、最後の悪あがきで、口から液体を吐いてきた。
「……ふぅ、やはり油断はよくなかったか。『Silver World』ッ!時よ止まれ!」
その瞬間、全てのものが停止した。これで、液体を難なく避けれる。
再び時が動き出した時、魔物は息絶え、地面に横たわっていた。
後ろを見ると、魔物が放った液体を喰らった草が溶けていた。
今の液体は酸だったのか。もし、喰らっていたら、全身が溶け、そのまま死んでいたかもしれない。
これは反省しなくてはいけないな。油断、慢心はしないようにすると決めたばかりだったが、さっそく油断してしまった。
次、魔物に出会ったら、確実に頭をぶち抜くとするか。
さっきの魔物はなんだったんだろう。腹をぶち抜いたのに生きているのは、それなりに、強力な魔物だったのだろうか。偶然、強い個体と当たってしまった可能性もあるが。
俺が住んでいた、中央大陸の西部には弱い魔物しかいないはずだ。
ここはフィットア領でないことが、確実になったな。
ここは、北部と南部のどっちなのだろうか。
それとも……。
(まさか、そんなに都合よく魔大陸に着くわけ……、ん?前から、3人の人族……いや、1人は魔族か?)
100mほど遠くから、3人の集団が近づいてきた。
1人はエメラルドグリーンの髪、白磁のような白い肌と、額に赤い宝石が埋め込まれている、魔族だった。
……この男は、スペルド族なのでは?
よく、親が絶対に近づいてはいけない、見かけたとしても見て見ぬふりをして逃げろと言っていたスペルド族の特徴と、一致している。
すぐに、逃げようと思ったが、そばに居た2人の子供を見て逃げるのを躊躇った。
あの子たちは、俺と同じ人族だ。あの、スペルド族の男に脅されて付いてきているようではなさそうだ。まったく、怯えているような様子はないし、むしろ、中が良さそうな雰囲気だ。
うーん、どうしようか……。
普段なら、親の言いつけ通り逃げてもいいだろうが、今の状況を考えると、この土地の情報は知っておきたい。それに、スペルド族の男も優しそうな顔をしているじゃあないか。
親は恐ろしい種族だと言っていたが、全員がそういうわけじゃあないだろう。
差別は行けないからな。
少し話しかけてみようか。もし、やばくなったら時間止めて逃げよう。
そして、彼らに近づこうとした瞬間
「いかん!逃げろ!」
スペルド族の男が急に叫んだので、後ろを見てみたら、大きい亀のような魔物が俺に迫ってきていた。
……今確信した。ここは魔大陸だ。こんなに頻繁に強そうな魔物が出てたまるか。
さてと、まずは今迫ってきているこいつをなんとかしなくてはな。
距離はおよそ7~10m程度離れている。それならば、時間を止めてすぐに近づける。
「時よ止まれ!『Silver World!』ッ!」
止めれる時間は、たったの0.1秒だけだが、魔力を纏った俺のスピードならそれで充分。
「時は動き出す……」
3m以内に近づけた。
やる事はただ1つ、一瞬で、頭を潰すッ!
グチャッ!と気味の悪い音が鳴った。
頭を潰された大亀は、大きい音をたてて地面に倒れた。
今回は、うまくいったかな……。
そして、後ろを振り返ったら、3人は武器を構えていた。
少し警戒させてしまったか。
無理もない。小さい子供が魔物をワンパンしたんだからな。それに、いつの間にか瞬間移動していた。
警戒しないわけがない。
ここから逃げてもいいが、ここが、魔大陸である以上、単独で行動するのは、とても危険だ。
さっきのスペルド族の男は、俺に人間語で危険を知らせてくれた。おそらく、人間語も魔神語も喋れるのだろう。彼が居てくれるだけで、これからの旅も楽になってくれるはずだ。
それに、この子供たちだが、おそらく俺と同じでフィットア領から、この場所に転移してしまったのだろう。
何度か、彼らを見たことがある。たしか、2人とも領主の子供だったっけ……。
彼らは、危険な人物ではない。おそらく、今は俺に不安を抱いているだけだ。
彼らの、信用を勝ち取るための方法は……、少し気が引けるが、全てを喋るか。何か隠し事をしているようでは、仲間としてやっていけないだろう。
肝心なのは、挨拶からだ。第一印象は大事だからな。
こういう時に、使える挨拶を学んでおいてよかったな。
警戒している彼らに近づき、そして……
「はっぴー、うれぴー、よろぴくねー!」
ふっふっふっ、我ながら完璧な挨拶だ!
これで、彼らの警戒も溶けたに違いない!
「「「……」」」
3人とも凍りついていた。
前途多難だな。
ルイジェルドをキャラ崩壊させてないかすごい心配です(まあ1文しか喋らせてないけど)
ヒトガミに干渉させるかさせないかですごく悩みましたけど、”まだ”関わらないことにしました。
あと、甲冑を脱いでいないと時を止められないという設定にしましたが、ちょっとそれじゃあキツいのではないかと思ったので、その設定は無くしました