今回も本能的に書きたい!と思ったので書いてみました!
面白ければ幸いです!!
第1話 発展
「謝らないで下さい。謝られて、それを許してしまうとなんだか、全部嘘のように思えてしまいます。だから……謝らないでください」
杏に想いを告げられ、俺も杏に想いを告げ、椋に謝りに行くとそう言われた。
そして改めて思う。
この決断をするのに時間がかかりすぎたと。
自分にとっても椋と付き合ってたあの時間というのは、本当に幸せだった、でも気づいてしまったんだ本当に気持ちを。
俺のことをずっと見てくれていた、それは本当に嬉しかった。こんな俺でも好きになってくれるんだと。
だから決めた。
椋が俺にくれた色々なことも含めて、杏を幸せにしようと。
「好きだからね、朋也」
少し頬を赤らめた杏が腕を絡めて上目遣いにそう伝えてくれる。
好きな子からの好きだという言葉は何故こんなにも嬉しいのだろうか。その一言でまた更に好きになってしまいそうだ。
「浮気すんじゃないわよ?」
「しねえよ」
しばらくの間は、俺たちは椋を傷つけたという罪悪感があるからこそぎこちない関係になるかもしれない。
でも俺は本当に付き合えて良かったと思ってる。多分杏もそう思ってくれてるだろう。
きっとあいつにも良い人がすぐ見つかるはずだと願いながら、俺たちの恋人生活は始まった。
★
「で、結局藤林杏と付き合ってわけか」
翌日、3限目に来た春原と授業をサボり最近いい空き教室があったのでそこでダラダラと過ごした。
椅子を並べてそこに寝転がっていた春原はまるで杏と付き合うことを分かってたような顔だ。
つか、ちょっとこの体制腹立つなよし椅子を引いて体を地面に倒してあげよう。
「おい、俺が真面目な話してんだからちゃんと聞けよ」
「ん?ああわるーーってなんで椅子を引くんですかねぇぇ!!?って痛い!?」
ゴツッッッ!!!!
頭と上半身が乗っていた椅子2個を一気に引っ張ると見事に頭を思い切りぶつけた。ああなかなか痛そうだな。
「あんた容赦ないっスねえ!?これ地味だけど地味に痛いんだよ!!」
「暇だからしょうがないだろ」
「あんたの暇つぶしになんで僕が痛い目みるんですかねえ!?」
ったくうるせえ奴だな杏や智代みたいな酷いことはしてねえんだからむしろ感謝しろよ。
春原はもう椅子を引かれるのは嫌なのだろう立ち上がってサボってもなんもすることがないよなど呟いてる。
俺はそんな春原に呟きにスルーし窓を見ると同じクラスの男子たちが持久走をしていた。
勿論、俺らはそんな面倒なものをしたくないので今こうしてサボっている。
4時間目は確か古文だったな。教室で寝るか…。
「なあ岡崎、飯どうする?」
「あぁ、今日は杏と約束してんだ」
「うんまあそうだろうなと思って聞いたよ。また僕1人なんだね結構悲しいよ!?」
「ああ?んなの知るかよ」
「あんたほんと薄情なやつだよ!!」
春原は今にも泣きそうな顔で俺を見つめてくる。
悪いな…普通だと罪悪感湧きそうな感じだがお前には全然そんなの湧かねえんだ。
最近の昼飯はずっと杏と椋の3人で食べたり椋と2人で食べたりあの2人どっちかがいた。
そして一昨日杏と付き合いだして、今日からは杏と2人で飯を食べることになる。もうこれからは3人で食べるということはないのだろうか。
キーンコーンカーンコーン……
「おい岡崎、次どうすっよ?」
「俺は戻る」
「そ。僕はここで寝とくよ」
「そうかい。じゃあな」
俺はさっさと空き教室を後にする。
次の時間が終われば杏と会えるってのに気分が晴れねえもんだな…。
でもあいつと会ってしまえば自然と笑顔でいることができるのだろう。
自分の教室に入った時、ふと机でなにか作業をしていた椋と目が合いとっさに逸らしてしまった。
これじゃあ避けているって思われても仕方がないかもしれない、俺はそのまま席に座り寝た。
「今日は結構手間のかかる料理作ったのよ?あんたと付き合って初めての手作り弁当だからね」
「確かにこりゃなかなかだな。んじゃ早速いただくぜ」
確かに杏の弁当の中身は見事だった。ある程度時間をかけないと作れないような具材ばかりが並んでいて見ていてとても食欲がそそる中身だ。今日わざわざ弁当のために早起きして作ってくれたのだろう、俺の為にだと思うとすごく嬉しく思う。
俺が1品1品に丁寧に頬張るのを正面にいた杏は微笑みながらも少し緊張した顔で見つめてくる。しかも杏は一口も食べずに俺を見つめているので非常に食べにくい。だから早めに感想を言うことにする。
「美味いぞ、いつもより」
「ほんと?なら良かったわ。ったく、こうやってこの私がわざわざ毎日お弁当作ってきてあげてるんだから流石に代価を返してもらわないとね〜」
「は?別に俺は頼んでーー」
「んー??なに、トモヤ」
「なんでもありません。何を支払えばいいでしょうか」
やべえ目が光ってるよ…ビビってるわけではないが今は何も言わない方が懸命だ。
言い返した所でなにあんた私が作ってきてるのに別に頼んでないとかそんな最低なこと言うわけええ!?とか返されて殴られるのがオチである。
まるで悪女に従ってる小人みてえだ、いや、俺がそれを肯定してどうする!んな事絶対嫌だぜ。
まあ、俺が何も言い返さなかったらこいつはこうやって笑顔で頷いたりと気分が良くなるのでとりあえず肯定しておけばいいのだ、そうすれば殴られずに済む。
「それでいいのよ。そうねぇー、次の初デートあんたがなにもかも全部奢るってのは?」
「んな払えるか!せめて飯だけとか遠慮はねえのか?」
「なに言ってんの?私の彼氏だから遠慮しないでやってんのよ?だから素直に喜びなさい」
こいつ…遠慮の意味ちゃんと分かってんのかよ。そもそも遠慮というのは相手のことを気遣う行動なのに全くこいつの行動には遠慮というものは感じられない、むしろ逆だ。
あー我慢しろ俺、自分がこいつを好きになって付き合おうと決めたんだこういうイラッとすることは日常茶飯事に起きるってことを分かった上で付き合ったんだ、だから慣れろ…!
だが流石に全部支払うというのは場所がどこであれもできないのでとりあえずこの事は軽く濁そう。
「まずそんなことよりどこ行くかさえも決まってねえだろ、話はここからだ」
「まず今デートするってこと決めたしね〜。私見たい映画あったのよってことで初デートは映画でおっけえ?」
「…分かったよ。じゃあ映画代は2人分払うがあとは知らん。それでいいか?」
「ったくケチな男ねえ。しょうがないからそれでいいわよ!」
普通は映画代支払ってくれると分かったらお礼を言われるべきなのだろうが仕方ない、相手はこの藤林杏だ、俺が払うなどまるで当たり前みたいに返してきやがる。
ここでありがとうなど可愛らしく言ってきたら他のも何か買ってあげようという良心的な気持ちが芽生えるのだろうがまずその言葉さえも発しないからな。
俺はひとつため息をついて最後のおかずを頬張った。
「ごちそうさん、美味かったよ」
「そりゃ私が作ったんだから当然でしょ。あ、それと朋也っ」
「んだよ」
「私椋にもお弁当渡してたんだけどもうチャイム鳴るじゃないアンタのクラスに取りに行く時間もないのだから代わりに椋からお弁当貰っといて〜んで帰りに渡してくれたらいいから!」
杏はわざとらしくニコニコしながら早口言葉でまくし立てる。
あの一件から2日しか経ってねえのにこの2人はすっかり元の仲良しさに戻ったようだ。まあ完全に戻ったという訳でもなさそうだが。
「お前それ最初から計画してただろ!隣なんだから取りに行けるだろ」
「あーもーー私だって忙しいのよ!!それ以上ぐだぐだ言うならあんたの髪の毛全部抜いて口に入れてやろうかしらええ?!」
「分かりました俺が貰ってきます!」
弁当食べるだけでなんでこんなに恐ろしいことを何度も言うのだろうかこいつは…。しかもあれから椋とは気まづいんだ話しかけるのにも躊躇がある。杏からすれば早く前みたいに話して欲しいという意思があるからこうやって俺と椋の仲を取り繕うとしてくれてるのだろうが正直余計だとも思ってしまう。自分が招いた責任なのだ、自ら椋に接しようとも思っていた。まああいつも責任を感じてるからこその行動なのだろうが。
そして杏とは別れまたため息をつきながら自分のクラスに戻った。
「りょ………藤林」
正直、なんて呼べばいいのか分からなかった。
椋という言葉が少し染み付いていたので藤林という呼び名に戻った今違和感を感じた。だが別れてから椋と気安く呼び捨てで呼んでいいのか分からなかった。
予鈴が鳴ったので席に戻ろうとしていた藤林に俺はそう声をかけた。
「え?と、ともやく……お、岡崎さん?」
俺に声をかけられたことにびっくりしたのだろう大きく目を見開いて少し緊張していそうだった。
そして下の名前で呼ぼうとしたが俺が藤林と呼んだのでこいつもとっさに特別な関係でなかった時の呼び名で俺を呼んだ。
「悪いないきなり声かけて。杏が藤林に渡した弁当杏に藤林から貰っといてって言われたからよ」
「あ、そ、そうなんですね……!じゃあお願いします…」
藤林はオドオドしながら机の横にかけてあった弁当袋を取って渡してくれた。
ーー謝らないでください。それを許してしまうとなんだか、全部嘘のように思えてしまいます。
その2日前に言われた言葉を俺は思い出した。
だから謝らなかった、俺もあの時の出来事は嘘だとは思いたくなかったからだ。本当に楽しかったんだ、それに嘘はない。
なのに、藤林はあの時そう言ってくれたが今の俺たちはその出来事をかき消すみてえな行動してんじゃねえのか?
本当にあの出来事を俺たちが嘘じゃないと楽しかったと容認しているのならばこんなに緊張しねえ。
「…………椋」
「……え??」
だから言う。
俺はお前と距離を置きたいわけじゃない、もしかするとお前は距離を置きたいかもしれないが、その時は拒んでくれたらいい。
勝手な言い分だが杏の傍にいれば必ずと言っていいほど近くには藤林椋という存在もいる。その存在を避け続けるというのは俺には無理だ。椋には少ない期間だがたくさんの事を俺に与えてくれた。俺を好きでいてくれることが嬉しかった。
それなのに違う人を見ていた、しかも椋の姉貴に。
本当に遅かったんだ、俺たち。
椋には酷いことをしてしまった。それでも、俺だってあの出来事を忘れたくはない。
「椋、俺だってお前と付き合っていたという出来事を嘘だとは思いたくない。楽しかったんだ、ほんとに」
「朋也くん……」
「だから、さ。これからも友達として仲良くしてくれねえかな。杏も、多分それを願ってる」
ああ俺、すげえ自己中な発言してんな……。
でも、それが俺の本当の気持ちだ。椋とはこれからも大切な友達として過ごしていきたい。
どっちみち誰かが傷つかずにはいられなかった俺たち3人。
「……何言ってるんですか。私だって、あの出来事を嘘と思いたくないです。私だって………朋也くんと話したいです!!」
「そうか。じゃあこれからも友達としてよろしくな、椋」
この選択をして、悔いはない。
俺は、藤林杏が好きだ。