あと遅くなってすみません!書く時間がなさすぎてすごい遅くなりました!
「やべ、寝坊しちまった……!」
定期テストのために深夜かもう朝なのか分からない微妙な時間に寝た結果見事にダッシュで準備をすればギリギリ学校に間に合うという時間に俺は起きてしまった。
しかも今は定期テスト真っ最中の期間なので遅刻は絶対に許されない。急いで身支度をして朝ごはんもがっつきながら食べ参考書などをまとめて入れ寝癖は適当に手で整えてから家を出る。
あんま寝てないから頭も回ってねえ……まだテスト期間だから午前中だけで終わるのが幸いだったな、帰ってから仮眠でも取るか。
少し走りながら腕時計を見ると準備するのが速かったのかまだ少し時間には余裕があった、このままだったら間に合いそうだ。
……と、桜並木を通り抜け校門に入ろうとする直前に見たことがある少女が隅っこに立っていた。
スルーする、という選択肢もあったが俺はピッタリと足を止めてその少女の傍に立った。
「古河」
その名前を呼んだのはいったいいつぶりだろうか?学校に行く意味もこれから先のことにも何の見通しもなかったあの頃、こいつと出会った。
演劇部を復活させたいと少女は言っていて俺も協力するつもりだったが結局途中で放り投げてしまっていた。もしかすると何かに一生懸命になるこいつを見て嫌気が差していたのかもしれない。
演劇部を復活させる時に古河と杏を接触させた機会もあってなのか今でも2人は仲のいい友達らしく時々2人で買い物などに行っているらしい。逆に俺はあれ以来全く古河との接点はなくなっていてこんな時間に学校に行くことも最近はなくなっていたので会うこともなかった。
だけどこうして久しぶりに会ってまた校門の前で立ち止まっている少女を見て話しかけいる俺は、どこかでずっとこいつのことを気にかけていたのかもしれない。
じゃあ何故あの時演劇部の手助けをしてやらなかったとーー今更ながら後悔の念が渦巻いて申し訳なく思った。
彼女は誰かに話しかけられるとは思っていなかったのだろう、瞑っていた目を徐々に開き出し俺を見つめた。
「……岡崎さんですか?」
「ああ。久しぶりだな」
「本当にお久しぶりです。杏ちゃんとお付き合いされたんですよね?おめでとうございますです」
「ん、ああ。杏とは結構仲良いんだってな」
「はい、よく遊びにも誘ってくれたりしています」
俺が演劇部の再建を放り投げたことは全く気にしてないような感じで古河は俺と話してくれていた。
基本的にこいつはすごく良い奴なのだろう、多少変わっている……いやだいぶ変わっている奴だが素直な嫌いになれない性格をしてる。
俺は気になっていた演劇部のことを遠慮がちに聞き出した。
「……演劇部はどうなったんだ?」
「しばらくの間は杏ちゃんや椋ちゃんなども手伝ってくれてたんですけどなかなか部員も集まらなくて……残念ながら復活させることは無理でした」
「そうか。悪かったな、途中で放り投げたりなんかして」
「岡崎さんは全然悪くないです!むしろ少しでも手伝ってくれたことに感謝しているんです」
古河はふるふると首が取れそうなくらいになりながらありがとうございますと俺に言う。
感謝されるようなこともこんなに庇ってくれるようなことも全くしていないのに古河は心の奥から思っている言葉を発してくれた。だからその言葉は偽りなど何も感じないし素直な思いなのだろうで受け取る。
そして改めて、今の状況はまさに古河と最初に会った時のシーンと同じ光景だった。
こいつはまた学校という囚われた環境に入れないでいるのだろうか?て言ってる俺も、この学校という環境に入れてるわけじゃないが。
1歩を踏み出せずにいる古河を、俺は無視して突き進むことができなかった。
「学校行かないのか?もう遅刻になるぜ」
「行きたいです。ですが……」
「じゃあ行こう。ここで立ち止まっていても何にもならない」
こうやって俺から積極的に行動することは前までの自分なら考えもしなかっただろう。これもあのお節介野郎の性格が移ったのだろうか。
あんパンーーと古河の声から聞き取れた。
その顔を見るといかにも勇気を振り絞った、自分を奮い立たせるような感じだった。
しばらく俺は古河が行く気になるまで立ち尽くしチャイムが鳴る時間ギリギリまで待つことにした。流石にテスト日に遅刻するなどではシャレにならん。
「私、最近またずっと休んでいたんです」
「そうなのか?また体調が良くないのか?」
「はい。1回良くなったと思ったんですけど、周期的に悪くなる感じで……」
それでしばらく休んでしまってまた行きずらくなったというわけか。だけど今の古河は前みたいに誰も知らない人ばかり、というわけではないのでプレッシャーも前より少ないだろう。
何せ杏とも仲がいいと本人の口からも聞いてるので例えクラスが違えども安心感はあるはず。
ここで運良く杏が来てくれたらいいんだけどな、流石にテストの日にスクーターで遅刻ギリギリに来るというのはないだろう。いやでもあいつの受験はもう終わってるーーと途端に少し遠いところからブーブーと音が聞こえてきた。
俺は反射的に古河の手を掴んで端っこに逃げようとする。
「古河そこどけろ!!」
「えっ??」
ビギィィィィィィィ!!!!!!
その少し大きな物体は今俺らがいたところをぶった切っていって人影を見つけた瞬間急ブレーキをかけて止まった。
やべえ、少し遅かったら2人とも軽傷ではすまなかったぞ……こいつ本当に免許取ったのかよ!?
そのスクーターを運転していたやつ、杏はヘルメットを取ってこちらに駆け寄ってくる。
「なにしてんの?」
「なにしてんのじゃねえ!危うく轢かれるとこだったぞ!」
「アンタがその瞬発力で避けてくれると思ったからじゃない。じゃなかったらあんなスレスレ行くわけないでしょ〜」
「避けなかったらどうするつもりだったんだっ」
「いちいちうるさい男ね、避けたんだからいいじゃない!」
杏は片手で持っていたヘルメットをこちらに投げ込んできたので俺は握っていた古河の腕から手を離しキャッチする。
そのままこいつは古河のところに駆け寄っていってその小さい体を抱き寄せた。
「渚、大丈夫だった?こいつに何もされてない?」
「いえ、大丈夫です。岡崎さんがとっさに守ってくれましたから」
いやおい古河、さっきの危ない状況を作り出したのはその目の前にいるやつなんだぞ何故そんな笑顔で話す?普通自分をめがけてスクーターで迫ってくるという状況はいくら仲良くても怒りが出るものなんじゃないのか。しかも杏も後から心配するのならば何故さっき古河がいたのに迫ってきたっ?こいつら本当に仲良いのかよ……。
俺だけ置いてけぼりの状態にため息をつきこれ以上ここにいる必要もないのでさっさと自分の教室に向かうことにする。そんな俺を杏は横目で見て一言言った。
「あ、朋也ー!私今日友達とテスト終わったら遊びに行くから一緒に帰れないの!」
こういうことは杏と付き合っていれば普通にある事なので返事として軽く手を上げながらその場を去った。
テスト初日からこんなに騒々しい朝とはな。時計を見ればもう予鈴1分前だったので復習をしようにもできない時間だった。
教室に入ると進学校でもやはり進路先が決まったからだろう勉強をしている奴としていない奴どっちもが存在していた。勉強をしていない奴らも入試組や就職組らを考慮してなのだろう極力喋らずに静かな空気を出していた。
なので俺も静かに教室に入り席について少しでも復習をしようと思い参考書を取り出す、ちなみに春原は相変わらずの遅刻だ。
正直今までテスト勉強というものをしてきた事がなかったのでいまいち要領が掴めず前のテストはあまり点数は高くなかった。それは今までしてこなかった結果でありいくら定期テストでも少し勉強したくらいで伸びるほど甘くはなかった。
しかも3年生だとこれが最後のテスト、今回を頑張れば内申も結構上がるはずだ。いえば最後のチャンスなのだ、だから今回は本気で頑張った。
そして教師がやってきてテスト用紙を配り始める。
(俺は杏のためだけにこんなにも学校という存在と向き合っているのだろうか……)
最近こうして真面目に取り組むことが俺のしたかったことじゃないのかと思うことがある。だけどそんな思考はすぐに消えた。もし仮に杏と別れることとなったならばすぐに勉強というものから手をつけなくなるだろう。今勉強をせずにいたらきっと杏が私の彼氏なんだからしゃんとしなさいしゃんと!とか言って叱ってくれる。誰かが俺の事を見ていてくれるからこそ今の俺があるのだろう。
筆箱からシャーペンを取り出しチャイムが鳴り出した瞬間名前を書く。
これでこれからの俺の人生がどうなるかの結果が出る。
★
「よう岡崎!1時間だけテスト受けようと思ったらもう終わったのかよ。ちぇ、来た意味がないなー」
「何時に終わるかとか把握はさすがにしておけよ。さすがバカ原」
「誰がバカ原だよっ!!」
「お前は反応も全部バカなんだよ」
3教科のテストがちょうど終わったあと、春原は終礼の時にやってきた。周りのやつらもなぜ今来たんだと不思議そうな顔で最初見ていた。俺は終礼が終わると帰る支度をして教室を出ようとする。
「置いてくなって岡崎!んでどこ行く?」
「帰る」
「僕の部屋にこんな時間に帰ったってなにもないでしょ。駅前のゲーセンにでも行って下級生から巻き上げようぜ!」
「お前の部屋じゃなくて俺の家に帰るんだよ」
「は?」
俺から自分の家に帰るという言葉を聞くなど思いもしなかったのだろう春原は素でとぼけた声を出した。
家に帰った瞬間すぐに勉強をするというわけではないがもしバカ原とゲーセンに行ったものならばそのままこいつの部屋に行ってダラダラと過ごしてしまうのがオチだろう。
勉強から逃れたい欲求はあるがこのテストさえ終われば成績も付けられ勉強をせずにすむ、だからもう少しの我慢だと言い聞かせバカ原の誘いを断った。
「あ、駅前までついてやってやるよ。買いたいものがあるからな」
「それ自分の用事済ますだけで僕の為ではないですよね……しかも駅前僕一人で行っても何もすることないでしょ」
「お前友達いないのな」
「あんたに言われたかないよ!!?」
いちいちうるさいので俺はバカ原をスルーし教室を出て駅前へと向かうことにする。何を買うのかというとまずシャーペンの芯が切れてしまうのと今回の買い物の本命、杏への誕生日プレゼントを買うことだった。
この前何が欲しいのかと聞くとテスト終わりでいいと言われていたのでそのつもりでいたのだがさっきのテスト中に気分が変わった。やっぱり
あいつにはきちんと誕生日にプレゼントを渡してやりたかった。杏の誕生日は明日なので今日買わないと間に合わない、まあ駅前に行けば何かしら気に入るものがあるだろう。
ちょっと待ってよとバカ原がかけてきて校門まで他愛もない話をダラダラと続けた。正直、こいつと色々話したりバカするのはすごい楽しい。絶対に言わないが、この高校で春原と会えたことには感謝すべきなのだろう。
「お前の彼女最近太った?それともおっぱいが大きくなったのかな?」
「あァ?お前どこ見てんだよ」
さっきのは前言撤回だ。
春原と校門で別れ駅前に着くと相変わらず賑やかな雰囲気を出していてあちらこちらで20%オフや閉店セールなど人で溢れかえっていた。
時間的にも昼頃なので主婦の人たちでいっぱいになるのだろう。
とりあえず買いたいものだけ欲しいので人が多そうな店は極力避けながら良さそうな店を見つけ出そうと思いウロウロする。
しばらく色々な店を見たが、その中のアクセサリー店に目が入った。だが、そこはなかなか男が入りにくい雰囲気の店だった……。
「アメジストを買った店も入りにくい場所だったよな……。仕方ねえ、入るか」
意を決して入ると面積が狭いのですぐに店員が礼をして近寄ってくる。
いつも思うがこうやって来た瞬間商品の説明とかされるのはなかなか苦痛だ。勝手に自分で選んでそれが人気なのかどうなのかとか聞いて初めてその品物について説明されるのならばいいが最初から1人の客に1人の店員がつくってのは本当に勘弁してほしい、しかも熱心に説明されると何も買わないで帰るという行動がしにくくなる。まあそれも商売の1つの策略なのだろうが。
「どういうのをお探しでしょうか?」
「あー……誕生日プレゼントで人にあげたくて。そんなに高くないやつがいいんですけど」
「分かりました、少々お待ちください」
店員は店の端っこ辺りからのショーケースから何かを取り出して再びこちらに戻ってきた。
丁寧に箱を開けるとそこにはネックレスとブローチのセットが入っていた。見た感じシンプルな感じなものなので気軽に付けられそうだ。やはり女の子にはネックレスなどのプレゼントが1番無難だろう、ピアスあたりは付けてるところを見たことがないしな。
値札が付いていたのでそこに目を通すと2つセットで6500円。少し出費が大きいがあいつの一年に一回の記念日だ、それに普段もプレゼントというプレゼントはしていないので多少は仕方ないと思うことにしよう。
「これ買います」
「ありがとうございます。包装紙に包んでお渡ししますね」
「お願いします」
財布の準備をしてしばらく待つとお待たせしましたと声をかけられバイトしていない人からすればかなり痛い出費額を出してオシャレな小袋を貰う。
こりゃしばらくは何も買えねえなと思いながら俺は店を出た。
「明日帰る時に渡すか……喜んでくれるといいが」
潰れたりしないように学校のカバンに小袋を入れて駅前を歩き出す。改めて駅前の風景を見るとやはり時間も時間なので賑わっていた。たまには近場で杏と出かけてえな……やっぱり住んでいる地域というのは未踏の場所とは違う雰囲気を持っている。最近は全然2人で遊びに行ってないしいつ行けるか分からないが久しぶりのデートはここ辺りでいいだろう。そうやって駅前を通っていると行きの道では気づかなかったある紙が目に入った。
それには《求人募集!!!》と書かれていて仕事の内容や大体月の給料などが書かれていた。
辺りを見回すと同じような紙が何枚も貼られており俺は何枚かに目を通す。正直今までさんざん自由にしてきたので職業など選べる可能性は自然と限られてくるのであまりこういう求人募集を見ても意味は無いが損ではないだろう。
募集仕事の種類は本当に様々でリサイクルショップや電気工事や介護士や他にもたくさんの職業の募集が載っていた。
今のところ特別興味を持っている職業はないが、もしこんな俺でも採用してくれる会社があるのならばそれにきちんと応えなければならない。人に必要とされることがこんなにも嬉しいことなのは杏に教えてもらった、だから誰かに必要とされたならばそれに応えるべきだ。
内定取りやすくなるためにもテストを頑張らないとな……。
俺は心の中で喝を入れここを去ろうと思い体を動かすとーーずっと俺の事を見ていたのだろうか?見たことのない女性がこちらに視線を向けていた。俺が存在に気づいた瞬間、その人は口を開き出した。
「就活生?」
この出会いはきっと、必然だったのだろう。
そしてこの人と出会ったせいでもあるのだろう。
俺たちの歯車は、本当に少しずつずれていった。