テスト最終日も無事に終わった放課後、もう何回したか覚えていないデートをする。
デートというのは毎回毎回違う新鮮さがあり飽きを感じさせない、その気持ちがあるということは相手のことが好きだという感情が少なからずあるからだろう。
隣で俺と腕を組んでいる杏は見た感じ飽きた感じはなさそうだったので少し安心する。正直、俺の良さというのは自分では全く見つけられることが出来ないのでいつ杏が俺の傍から離れてもおかしくないとも思ってしまう。まあ簡単に離すつもりもないが。
カバンにも昨日買った誕生日プレゼントも入っておりいつでも渡す準備はできている。……いや、少し不安なのでカバンをちらりと見てちゃんと入っているか確認し視線を戻そうとした瞬間俺の顔を覗き見るような顔で見ている杏と目が合う。
「なんだよ?」
「へっ?あっいや……べつに!」
杏は少し顔を赤くしながらごまかすように顔を背ける。
もう態度からめちゃくちゃ分かるが、こいつすげえ誕生日プレゼントのこと気にしてやがるな?おそらくプレゼントが何か、というのを気にしてるわけではなく俺がちゃんと杏の誕生日を覚えているのかどうかという点がこいつの中での不安な要素なのでこうやってもろ態度に出てしまうほど気になっている、というところだろうか。
とりあえず赤面している姿が可愛かったので俺は組んでる腕とは逆の手で杏の頬をつまむ。
「なによっ?」
「いや、可愛かったからつい」
「地味に痛いんだけど?」
「こっち向いてくれたら離すぞ」
そこそこ主婦や学生や社会人などが行き交う地元の商店街の中、道路のほぼ真ん中で腕を組みながら彼女の頬をつねっているカップルというのはなかなかシュールだ。
でもそんな恥ずかしい場で杏の頬をつねるという難易度の高い行為をしてる俺は凄いのではないだろうか?つねるくらいだったら大丈夫だろと思うだろうが杏に関してはその命取りが危ない。いつどこから辞書が飛び出してくるか分からないのである程度の用心はするべきだ。
まあそんなことなどこの柔らかい頬を触っていたらすぐに消えてしまう。
「あーもうっ、分かったわよ。とりあえずお腹空いたからどっか入りましょ」
「うわお前顔真っ赤なのな。なに照れてーーぶごっ!!」
「いいから黙って歩け!!アンタがこっち向け言ったんでしょーが!」
思い切り杏は俺の腹を殴り飛ばしときながらさっさと前を歩き出す。いや何故殴られる必要がある?顔が赤いのを指摘しただけなのに理不尽すぎる。やっぱある程度の用心は必要だな。
そして近くにあった学生に良心的な店に入りお互い食べたいものを注文した。
店員が去り周りを少し見渡すとテスト帰りと学校から近いってのもあるだろう同じ学校の生徒が結構座っていた。やっぱり値段的には学生的にはこの店人気あるんだろうな……などと思ってた矢先、後ろから肩を触られた。
「よっ岡崎。なにデート?」
「ああ?……まあな。白石だっけ、お前も来てたのか」
「おいおい結構教室では話したりしてるんだから名前くらいは覚えてくれよー」
「悪いな、人の名前を覚えるの苦手なんだ」
白石はじゃあこれから覚えてくれよと言ってドリンクバーの方へ向かっていく。
あいつとはクラスの中でちょこちょこ話す仲だ。友達、という関係までは行かないが話す時は話すみたいな間柄という感じだろうか。今まで人の名前というのを覚える気にもならなかったが、あいつくらいは覚えるのもいいだろう。こうやってどこかでクラスメイトと会った時に一言二言交わすということは今までの自分には到底考えられないものだった。
前を見ると杏はいつの間にか入れていたドリンクバーのジュースをストローで吸いながら物珍しそうに俺を見ていた。
「……珍しいわね。なんかごめんね?アンタって陽平しか友達いないと思ってたからさー」
「あいつを友達とは思ってないがその認識で変わりはないと思うぞ」
「そ?結構朋也と話したいって思ってる人多いでしょ。もっと色んな人と話したらいいのに変にカッコつけてるから誰も近寄ってこないのよ」
「それ椋にも言われたぞ。特に女子は俺と話したいらしいぜ」
「……そうなの?別にそれはデマなんじゃないの」
一瞬、杏の動作がピタッと止まったがまるで何事もないかのように再びジュースを飲み始める。
個人的にはここで嫉妬しているかのような言葉や態度をしてほしかったのだがな。だがこれ以上嫉妬をさせるような発言などをしてしまっても怒らせるだけなのでやめておく。
適当な雑談をしながら食事を済ませ伝票を見ると1000円以内に収まっていた。
これくらいなら奢ろうか、と考えながら店員に伝票を渡しいつもならここで2人とも財布を出す行動を取るのだが今日は違った。
隣に立っている杏をちらりと見るが、一向に財布を出す気配がない。しかも誕生日だからきっと奢ってくれるだろうみたいな雰囲気を出しまくりな雰囲気で呆然と立っている。まじで誕生日だということを忘れてやろうかと思ったが後が怖いので仕方なく俺の金で払うことにした。
「ありがとうございましたー!またお越しくださいませ」
店を出た瞬間杏はまた腕を組み始める。
「ありがと朋也っ」
「ああ。んでどこ行くよ」
「私行きたかった店あるのよ。そこ行かない?」
奢ったおかげなのか上機嫌な杏は絡めた腕を引っ張りながら先導していく。さっきからだがいつもより密着しているおかげか杏の胸の感触というものがひしひしと感じられた。
さりげなく杏の腕が絡まっている方の腕をもっと密着させてみるが気づいていないのか全く気にしていない様子だった。
逆に俺はといえばさっきから興奮しまくりである。
(ああやべえ……このままじゃ変な気になっちまいそうだ)
必死にニヤケそうな表情になるのを我慢ししわを寄せて気にしてないような表情を作る。
だが、その俺の踏ん張りは次で壊れるのであった……。
「あ、見て朋也っ」
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
隣で必死に変な気持ちになるのを耐えている俺など気にせず、杏はいきなり立ち止まりその反動のせいで絡めていた腕が杏の胸に思い切り触れ俺の理性は少し崩壊した……。
こんな事で興奮してしまう自分が少し恥ずかしいが好きな女の子の胸となるとまたそれは別物だ。
隣で頭を抱え叫んでいる俺を杏はジト目で見つめる。
「なにしてんの?」
「え、あ、いや……ちょっと叫びたくなったんだよ」
「は?アンタの頭の中怪獣でもいるわけ?」
「ある意味怪獣だな」
ほんとに頭おかしくなってるじゃない大丈夫?元から頭おかしい奴だったけどこれはもう重症よとでも言いたげな引き気味の杏の顔を見て少し冷静になる。正直付き合ってから半年くらいは経っているのでキス以上のこともと思うが、まだそんな雰囲気は一向に出ない。別にその行為を急かしてしたいわけでもないが、男の俺からすれば少しの不満はあるわけである。
1度パンっ!!と両頬を叩き再び腕を杏に差し出す。
「ん?」
「腕、組むんだろ」
「あら自分から差し出すほど腕を組んでほしいの〜?」
「ああ組みたい組ませてくれ」
「いやなんでそんな必死なのよ……」
そりゃその不満をこの腕を組むという行為で少しは解消されるからな。
少し何かを疑っているのか杏はぎこちなく腕を再び組み始め歩き始める。
そこからは色々な店に行き久しぶりに充実したデートを過ごした。
少しオシャレな店に行ったりデザートなどの甘いものを食べ歩いたりと恋人らしいデートだ。
ほとんど杏に連れ回されている感じだが学校でいるときや春原といるときのあの恐ろしい姿はほとんど消え去っていてただこの時を楽しんだ。まあ調子乗っていらぬことなどしでかしたらその楽しい時ってのはすぐに消え去るだろうが。
そうしてあっという間に夜になり今日は遅くまで一緒にいようということだったので椋と付き合っていた時に杏とキスの練習をしようとしたあの公園が近くにあったのでそこに向かった。
小学生や中学生ぐらいがいる時間帯でもないので辺りはかなり静かであり所々にカップルらしい人達が何組かいた。
その中で空いていた椅子に2人で座る。
「あー満足満足!見たい物とか服とかたくさん見れたしもうしばらくはいいわね」
「色んな服とか可愛い可愛い言ってたのにそれだけしか買ってねえのがすげえよ」
「当たり前じゃない。全部買うわけないでしょーが」
女子の中でそれは当たり前のことなのかよく分からないがとりあえず適当に相槌をする。
そんなことより……この夜の公園というだけで少しロマンチックな雰囲気を醸し出してるのでここで誕生日プレゼントを渡すというのは絶好なタイミングだろう。
俺はカバンからくしゃくしゃにならないように入れていた誕生日プレゼントを取り出し杏に向き合う。
「杏、誕生日おめでとう。これお前に合うか分かんねえけど、誕生日プレゼントだ」
「いいのっ?ありがと、朋也。開けてもいい?」
「ああ」
杏は俺から受けとったプレゼントの袋をゆっくりと開けていき、ネックレスとブローチが出てくる。少しどんな反応をするかが不安になったがどんな表情をしているのか確認する暇もないうちに俺は杏の胸の中にへと抱きしめられていた。
「アンタにしてはセンスあるじゃない?普通にどこでも付けていけるデザインだし気に入ったわ♪︎」
とりあえず頭が胸の中にへとあるので呼吸が苦しいという意思表示も込めながら全力で頷く。やがて解放されるとネックレスを渡され杏が後ろを向く。俺は呼吸を整え直し杏の首にネックレスを付け始めた。
「ねえ、朋也」
「あん?」
「就職活動、頑張りなさいよ?しばらく一緒に帰ったりデートができない分全力で」
「へいへい」
「だー!もう、適当に返事すんじゃないわよ!人生かかってることなのよ?…………それに、私を養わなくちゃいけないんだから」
ピタッと、ネックレスをつけていた俺の手は止まった。髪が長いとネックレスをつけるだけでもそこそこ時間がかかってしまう。だったらめんどくせえし別に付けなくてもいいんじゃねえのかと思ったがーーこちらを向いた杏がネックレスを付けただけなのにさっきより女という魅了が際立ち、そんな考えはすぐに消え去った。
それプラスさっきの言動だ、俺はそのまま少し固まる。少し……いやかなり顔を赤くした杏は俺の返答を待っているのだろう俺たちはお互いの目を見つめる。
「ああ。ちゃんと、頑張るよ」
自分でも驚くくらい自分の人生ときちんと向き合わなければならないその言葉を伝えることに抵抗はなかった。
(ああ俺、本当にこいつのこと好きなんだな……)
ただただ真っ直ぐな気持ちが伝わったのだろうか、杏はその言葉を聞いて安心したのか俺の肩に頭を置いた。
そんな仕草がたまらなく愛しく感じ軽くキスをする。そして、たまらなく杏の全てを求めたくなった。
それは俺だけではなくきっとこいつも俺の事を求めている。
軽いキスだけのつもりだったが、口を離した時の杏の顔がとても可愛らしかったのでつい深い方をしてしまった。
「んっ……」
「………杏。まだ、ダメか?」
正直先に行きたいという気持ちはもう既に溢れかえっているが俺一人の意思だけでしていい行動ではない。
だけどその理性が消え去りそうになるほど今の俺は杏のことを求めていた。
俺の言葉に杏はビクッと肩を震わせる。
「あ……ま、まだ早いんじゃない?別に全然嫌とかじゃないけど心の準備っていうか……」
「じゃあ、就職活動が終わってちゃんと内定を取ってこれたらいいか?」
「え?」
「俺実はさこの前名刺渡された会社があってな。行く気はなかったがやっぱり職を探している奴からすればそれはありがたいことなんだろな」
「マジ?アンタが!?その会社ちょっと危ないんじゃないの」
「お前ほんと俺と付き合ってんのか?
「冗談よ。でもそれってほんとチャンスじゃない?向こうからその機会を与えてくれるってそうないでしょ」
確かに杏の言う通りだ、会社の方から個人だけにここはどうですかと紹介されるというのは滅多にないだろう。
ただ俺はその会社の偉い人に紹介されたわけではなくそこに働いている人から名刺を渡されただけなので有利な立場から面接を受けれるというわけではないはず。
だが今こうしてどこに行きたいかも何をしたいのかも決まってないやつからすればこの機会は逃してはいけないチャンスではないだろうか、内申や推薦もなにもなければなおさらだ。
あの時あったあの女性はあんまり好かないが仕事場となれば苦手な人1人や2人はどうしても出てくるだろうしな。
杏自身から養ってくれと言われるときちんとしなければという責任感が芽生えてしまったのだろうか、行く気がなかった所をこうして今行こうとしている意識変革に俺は少し笑った。
「そうだな、1度行ってみるよ」
「ええ。ちゃんと内定取ってこれたら……いいわよ」
「なにが」
「分かって言ってるでしょ?」
「まあな。なあ杏、俺は猛烈に叫びたい気分だよ」
「は?」
「岡崎ひゃっほーーーーい!!!」
ああ俺、喜びがでかすぎて頭がおかしくなっちまったぜ……まじで自分でも意味不明だ。
きっと杏は二度とこいつとは関わりたくないと思っている表情をしているだろうから見ないようにし俺は椅子から立ち上がって少し歩き出す。
腕時計を見ると既に深夜帯に入っていた。
「そろそろ帰ろうぜ。送っていくよ」
「いきなり叫んでおいてすぐに冷静になるのやめてくれる?ある意味怖いわよ」
「1回叫んだら落ち着くもんなんだよ」
「全く意味わからん。アンタの脳みそほじくってその中身調べてみてもよさそうね」
えげつない言葉が飛びながらも杏は俺の手を取り2人で歩き出す。
何気ない会話をしながら帰り道を歩き杏を送り出して1人で歩く。
これからはあまり忙しくてずっと一緒にいられる時間というのはしばらくないだろうがあまり嫌な気はしなかった。
俺はあいつといる前にやるべきことがある。それはこれからの人生で避けることはできずずっと目を背けていたこと。
今まで何かの物事を一生懸命にやり遂げるというのは馬鹿馬鹿しいと思っていたが俺は今その一生懸命物事をやり遂げるということを実行しようとしているのかもしれない。
自分自身、本気で就職活動というのをやろうとしているのかは分からない。ただあいつを困らせたくないだけためにこうして将来の自分と向き合おうとしていることに関しては明白だった。
☆
少し時が過ぎ、就職活動の期間も終わった。
何個もの会社を巡り巡っては落ちまくりその中で内定を勝ち取ったのはあの日鈴木美耶という女から名刺を貰い、面接に行った《桜坂電気株式会社 》だった。
そして無事就職先も決まり卒業ももうすぐという時期に至る。
また平穏な日々が始まり前までは就職活動が終わったらまた遅刻して行こうーーと思っていたのだが心の変化なのかは知らないが登校時間内には学校に行っていた。
朝食を食べて歯磨きをし頃合いの時間に家を出るとそこには1人の女の子がいた。
「おはよ、朋也っ」
「ああ。おはよ」
今の俺は、そこそこ幸せだと思えるくらいは充実していた。
最近杏が好きすぎて辛いです。笑
ニコニコ動画にあるCrystal Kayさんのこんなに近くでの杏のMADがマッチしすぎてて凄くいいのでおすすめです!!
今回も見ていただきありがとうございます!
下手な文章力ですみません…汗