相棒のモンスターとともに戦う青春バトル系×触手系   作:匣に喰われた

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闇の中/悩みの種

 流れる様な銀の髪と獣の耳、宝石のような紅い瞳を持った、とても綺麗な獣人の少女だった。

 

 歳は16くらいだろうか。

 氷のように凛とした、どこかあどけなさが残った、そんな印象のグレイは薄暗い場所にいた。

 

 

「_____あっ♥」

 

 

 喘ぐような呼吸を漏らす。

 

 どくん、どくんと脈打つ赤黒い色の肉塊。

 その酷くおぞましい()()の中に、グレイは囚われたまま逃げ出せずにいた。

 

 小柄な彼女でも息苦しさを感じるほどの閉塞された空間で、無数に生え蠢く触手に四肢を締めるように巻きつかれ、身じろぎすることすら難しい拘束を与えられている。

 痛みはないが、どれだけグレイが暴れても拘束が緩む気配はない。ただ消耗されるだけの体力が、グレイに無力感を教えていた。

 

 

「______っ♥」

 

 

 触手に内股をぬらりと撫で上げられ、びくりと腰を浮かせる。

 苦痛による反射ではない、ただ純粋に肌を擦られた快感に身体が起こした生理的な反応だ。

 

 

 この魔物についてグレイが理解したことが一つあった。

 脱力して俯いていた顔をゆるゆると上げて、身体にまとわりつく触手を見る。

 

 

 蛸や烏賊を思わせる軟体生物めいた肉色の触手。

 嫌悪感すら湧き上がる異物を光らせる、とろりとした白みがかった粘液。

 

 この魔物の分泌する生臭い液体には、身体の感覚を鋭敏にし、また興奮させる作用があった。

 

 

 媚薬______などという生易しいモノには例えるまい。

 

 

 粘液(これ)は毒だ。

 それも使われるたびに効果が上がる、とびきり性質(たち)の悪い毒液だ。

 

 抵抗できないままに塗りたくられて、身体を撫でられるだけで気持ちよくなってしまう。

 泣きながらに許しを請うて、それでもやめてもらえずに、問答無用で徹底的にグレイは粘液漬けにされた。

   

 いまでは空気が肌に触れている事実すら、彼女を責め上げる要素になった。

 

 

 頬が赤く上気し、浅くはやい呼吸を繰り返す。

 無視のできない触手の接触に加え、休むことのできない状況下での長時間の拘束は、グレイを弱らせきっていた。

 

「.........っは、......ぁ♥。 ~~~~~~~っ!?」

 

 だが触手は知ったことかとばかりに蠢き続ける。 

 

 服の下に潜り込み、快感で反り返った腹を撫で上げられ、触手から逃げるように丸めた背筋を這いずられる。気持ちよさから逃れれようと体を反らしたその場所へ、先回りして撫でさする。

 じわじわと味わうように、楽しむように、なによりグレイを追い詰めるように。

 

 

 悲鳴を上げる彼女に反応するように、暗闇から這い寄るように、一匹また一匹と触手が現れては彼女を責め立てる。

 

 

 

 

 もう長い時間、グレイは触手に弄ばれていた。

 

 

 

 

「.........っ♥、......♥」

 

 

 体中に広がる甘いし痺れを感じながら、グレイはぴくぴくと痙攣を繰り返していた。 

 

 触手に撫でられても脱力したままロクな反応がない。

 頭部は首が座らずにガクリとぶら下がるように揺れているし、グレイの瞳はぐるりと裏返ってしまっている。

 

 途切れることのない快楽の連続、意識を反らすこともできずに積み重なるソレはもはや拷問に近い。

 長時間に及ぶ触手の愛撫は、グレイを心身ともに疲弊させきっていた。

 

 

 動かなくなったグレイに気が付いたのか、彼女の体を這いずっていた触手たちが動きを止める。

 

 しばらくして、状態を確かめるように気を失ったグレイを揺すり、頬を叩いては彼女の反応を待つという動作を繰り返す。

 

「.........ぅ、ぁ」

 

 だが返ってくるのはうめき声だけだ。それも弱々しい、唇の隙間から漏れ出る程度の。

 

 休まず責め立ててくる触手、逃れられない環境、蓄積され続ける快感。

 それでもこの状況から逃れるためにグレイの体が起こした本能的な最後の抵抗が、自身の意識の喪失だった。

 

 限界まで追い込まれて、責め上げられて、ようやく至った最後の手段。

 

 計画性も何もない、どうしようもなくなってしまったが故の苦肉の策。

 

 しかし事実として、その場しのぎだとしても彼女は触手の責め苦から逃れることができた。

 

「_________」 

 

 

 

 もっとも。 

 

 

 

 それも一時しのぎに過ぎないものだったが。

 

 

 

 

 トスリ、と小さい音が肉の空間で鳴った。

 

 音の主は、一本の触手だった。

 

 先ほどまでグレイを撫でまわしていた無数の一本。

 

 赤黒い肉の腕は、拘束していたグレイの体に自身の先端を押し付けていた。

 グレイの着ていた上着越しに細い先を押し付けるという、グレイの服に潜り込んで這いまわっていた時とは異なる動作。

 

 状態確認の延長とさえ思える単純な接触。

 

 

 その効果は極めて分かりやすく表れた。

 

 

「ふぇぁ_____!? っっあ?? あ、あぁ......♥ あぁぁああああああああああああ!?」

 

 

 グレイの途切れていた意識が覚醒する。

 快楽と疲労で朦朧としていた意識が鮮明になり、夢から現実へと強制的に引き戻される。

 

 

 体が熱いのに冷たいような異常な感覚。

 視界が鮮やかだ、自分の体臭が変わっていくのを感じる、心臓の鼓動がうるさいほどに鳴っている、空気の味がわかる、時間が流れるのが遅く感じる。

 

 

 ()()()()()()()()

 

 

「ひゃぐっ!? なんへ!? これっ、おかひぃっ.........♥」 

 

 ナニカを打ち込まれたのだと本能的に理解する。

 

 触手に塗り回された粘液などとは比較にならない。

 粘液よりも即効性で、はるかに強力な効力。無理矢理に感覚を引き上げられて、滅茶苦茶に気持ちよくされるとんでもない劇薬だ。

 

 四肢に巻き付く触手が気持ちいい。

 

 身に着けている服の衣擦れが気持ちいい。

 

 声が喉を振るわせるのが気持ちいい。

 

 空気が出入りする呼吸が気持ちいい。

 

 苦しいのが気持ちいい。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「はへぇぇぇええええええっ、へぅぅうううううう!?」

 

 エビ反りになりながら、目を見開いて口をパクパクと動かす。

 快感を逃がそうと身体を暴れさせて、それを押さえつける触手の締め付けでさらに快楽の域地に押し上げられる。

 

 静まり返っていた隻ほどと違い、ガクガクと危うい反応を起こすグレイを確認し、動きを止めていた触手群が鎌首を持ち上げる。

 

 それはグレイの這いまわるためではなく、彼女の体に先端を押し付けるための動作。  

 

「............っ! ぞれっ......はぁ......っ♥」 

 

 快感に溺れそうになりながら、視界の端にとらえた触手にグレイが気付く。

 

 赤黒い、光沢のある粘液をまとった肉々しい触手。

 その先端に映る、細い極小の針。そこから伝うように垂れている濃密な紫色の液体。

 

 ______毒針。

 

 この状態を引き起こした元凶であることを直感で理解する。

 弱々しく、けれど必死にその恐ろしい触手(モノ)から距離を取ろうとして______気付く。

 

 そして目の前で蠢く触手群が、先端に隠した毒針をむき出しにしてゆっくりと距離を縮めていることに気付く。

 

「あ、は.........ひっ♥」

 

 引き攣った笑みを浮かべながらグレイは顔をゆっくりと横に振る。

 

 四肢を動かす。

 

 動けない、逃げられない。

 

 視線を彷徨わせる。

 

 出口はない、逃げられない。

 

 快楽と絶望がグレイの胸中を支配する。

 もう目の前まで、触手が近づいてくる。絶望が目に見える、地獄が正面から近づいてくる。

 

 

「______さ......い......」

 

 単なる偶然か、それとも言葉が通じたのか、あるいはただの錯覚か。 

 

 それでも触手が止まった気がして、最後の力を振り絞って。喉が震える快感をこらえてグレイは必死に言葉を紡ぐ。

 

「ごめ、んらさい♥、ごめんなさっ......い♥ はひゅっ、も、もう、ゆるし、へぇ......!」

 

 呂律が回らず、それでも必死に絞り出した。  

 

 

 静寂。

 

 

 祈るようなグレイの叫びに対する触手の返答は、トスリという無慈悲な音だった。

 

「あ、あぁ......、ひゃら! 嫌らぁっ♥ ごめんなひゃい! ごめんな、ひゅっ、ぁぁぁぁあああぁぁあぁああああ!!」

 

 ゾクゾクと背筋を冷たいものが走り抜ける。

 トスリトスリと触手が殺到する、音が鳴るたびに、気持ちよさが跳ね上がっていく。

 

 触手が体を這い始める。

 ガクガクと撫で上げられる快感で身体が暴れ回る。

 

 

 腰を震わせながら訳も分からずに絶叫をする。

 捕らえる肉の空間がうねりながら悲鳴を虚しく呑み込んでいく。

 

 

 

 

 銀色の少女の地獄は、まだ始まったばかりだった。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 従魔士とは魔獣を従える者のことである。

 

 魔力によって構成された存在、架空の姿をとるモノ、願いによって生まれる獣、呼び方は色々あるが、従魔士はそんな魔獣を使役する人間の総称だ。

 

 一言に従魔士と言っても、魔獣との関わり方は様々。

 ただの道具としか見ていなかったり、友人だったり、信仰の対象だったり、あるいは恋愛対象だったりする。

  

 魔獣側もそれは同じで、自分の主人に対して従順だったり、反抗的だったりするわけだ。

 

 そして俺の使役する魔獣______触手獣(テンタクルス)というのだが______はどちらかといえば反抗的な部類で、たまにトンデモない行動に出る時がある。

 

 

 

 そう、例えば少女一人を丸呑みにしてしまうとか、そういう事である。

 

 

 

「............」

 

 苔むした地面に、少女が転がっていた。

 

 流れる様な銀髪と獣の耳が特徴的で、宝石のような紅い瞳の、とても綺麗な少女だった。

 

「______」

  

 とても綺麗な少女が粘液に濡れて転がっていた。

 瀕死の動物のようにぴくぴくと痙攣を繰り返しているし、瞳は半開きで焦点が合っていないし、だらしなく開いた唇からは真っ赤な舌がチロリとはみ出ている。

 

 さらに言うなら両手足は触手に縛るように拘束されているし、細長い触手が服の隙間から潜り込んで蠢いているし、触手が動くごとに少女のか細いうめき声が漏れ出ている。

 

『ン? トーヤ、どうしたんダ?』

 

 あまりの惨状に絶句していると、成人男性の大きさを優に超える赤黒い化け物______大量の触手の塊に人の口をとって付けたようなモンスターが近寄ってきて話し出す。

 

 こいつは俺の従える魔獣のテンタクルだ。

 

『ああ、こいつカ」

 

「............」

 

『なかなか可愛い顔立ちしてるよナ。 昨日さぁ野宿してただロ? お前が寝てるときにサ、コイツがどこから来たのかコッソリおまえに近づいて鞄を漁ってたから捕まえたんだヨ』

 

「............」

 

『獣人だから力が強くて暴れてたんだけどヨ、そこは俺の触手と粘液でしっかり弱らしといたからナ。夜から朝までバッチリ仕込んどいたから、しばらくマトモに動けないだろうしオマエでも組み伏せられるゼ!』

 

「............」

 

『なぁ相棒(トーヤ)さァ、そろそろ童貞、卒業しちゃえヨ♡』

 

 なるほど、何があったかは理解した。

 夜の見張りをしっかりとしてくれたことにも感謝している。

 

 なので、俺は判決を下すことにした。

 

「............や」

 

「オ?」

 

「やりすぎなんじゃ、ボケェぇぇェェエエエエエ!!」

 

 触手の塊に綺麗な弧を描く回し蹴りが炸裂した。

 そのまま懐に潜り込んで放たれた俺の拳がドスドスと何度も突き刺さる。

 

 魔獣相手にパンチなど効いていないだろうが、とりあえず殴る。

 

「前にも行っただろ! 捕まえた人間で遊ぶんじゃねぇ!」

 

「ギクゥッ!?」

 

 こいつは気に入った生き物を体内で弄ぶという悪癖がある。

 特殊な粘液と触手でそれはまあ丁寧にネチッっこく責め立てては悲鳴を上げさせて愉悦するという、Sッ気全開の二重の意味で性癖モンスターなのだ。なお男女、生物非生物は問わない。

 

「ここ無法地帯だからOKだと思ったんだモン」

 

『無法地帯だからOKなわけじゃありません!』

 

 テンタクルにペロられる(襲われること)のは下手しなくてもトラウマである。

 

 以前、とある事件でこいつが野放しになり、持ち前の触手で俺の人間関係を見事にぶっ壊して以来、警戒していたつもりだったが、憐れな犠牲者が追加されてしまった。

 

 いくら泥棒だったとはいえ、同情を禁じ得ない。

 

『わぁーったよ、以後気を付けまース。次からは時と場合とシチュエーションを考えまース』

 

「おまえ後で覚えてろよ。............とりあえずこの娘を介抱するから隠れてろ」

 

『ウーイ』

 

 巨大だった触手の怪物がどんどん小さくなっていく。

 手に乗るサイズになったところで、掴んで上着の内ポケットに押し込んでおく。

 

 本来は必要に応じて魔獣を召喚するのが基本なのだが、テンタクルは大きさに融通を利かせられる珍しい魔獣なので、こうやって懐に入れて持ち運んでいる。

 

「.........さて」

 

 地面に転がる少女を見る。

 

 先ほどと変わったところもなく、ぴくぴくと浅い痙攣を繰り返している。

 

 弱っているが死ぬほどではないはずだ。

 たぶん強すぎる快感で反射運動がでてるとか、そんな感じだろう。

 

 それはそれで大丈夫じゃなさそうだが、テンタクルに遊ばれて死んだり後遺症が残ったという人間も今までになかったし、たぶん大丈夫だ。

 

 今までの経験上、時間経過で回復するはずなので水でも飲ましておけばいい。

 

「鞄に何かあったかな........」

 

 そういえば回復薬(ポーション)があった筈だ。

 あの効果の高い薄緑の液体を飲ませれば、一発で目が覚めるはずだ。

 

「ん?」

 

 かちゃり、と鞄を探る手に納まったモノを取り出してみる。

 

 出てきたのは濃厚で透き通った桃色の液体の入った小瓶。

 

「これは.........!」

 

 俺がまだ学生だった頃、テンタクルの体液を採取して作った薬、ひねくれまくった俺が生み出してしまった黒歴史の一品。

 

 

 『惚れ薬』である。

 

 

 プラシーボ効果がどうこうのチャチな薬ではない。

 媚薬効果のある触手獣(テンタクル)の体液から精製した、正真正銘の劇薬だ。

 

 使用したら最後、はじめて見た人間に惚れこんでしまうという超強力な、ポーションとは対極に位置する効果の薬。

 

 お目当ての薬ではない、が。

 

 

 

 

「............あ」

 

 

 

 

 余計なことを思いついた馬鹿が一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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