元帥に頼まれ鎮守府に向かった渚は3人の艦娘と出会い、その内の2人と戦闘したのであった。
「痛い目を見てもらうだ?上等だ。そこまで言ったなら斬られても文句言うなよ!」
そう言って少女は先程のように斬りかかってくる。
刀を構える。この刀を持った時に見た技術、ただ人を殺す為の技術。
けど今殺すのはアイツじゃない、アイツの持っている武器だ。
しかしこの刀ではあの武器を破壊するのはおそらく不可能だ。こちらより重い、だったら話は簡単だ。破壊できないなら殺せばいい
チャンネルを切り替える。そこは死の線が蔓延る死の世界。この眼に捉えられない死は無い、
「覚悟しろよ人間、お前の剣は俺がここで殺す」
「は?」
剣と剣が交差する。渚が捉えたのは彼女の剣の綻び、一番脆い所を全力で斬る。すると彼女の持っていた剣はまるで渚の刀に触れた部分が砂になったかのように斬れた。否、殺された。
「な!?」
少女の表情が驚愕に染まる
少女はその現実を受け止めきれずその場に崩れ落ちた。
「…俺はさ、お前たちを酷い目に合わしてやるとか、道具だとかそんな事考えちゃいない」
少女の表情は穏やかな物では無い、それは離れて見てもおそらく分かる程だろう
「…嘘だ。前に来たやつだってそう言ってた!けど数日したら結局ヤツと変わらないクズだった!もう人間なんて信用できねぇ!」
そう言う彼女の目は、憎しみと怒りに染まっていた。けどそれだけじゃ無い、まだ何かが隠れている。
「…頼む。人間に酷い事をされたやつに言う事じゃないのは分かってる。人としてどうかと思う。けど最後にまた人間を信じてほしい」
そう言って渚は頭を下げた。彼女たちの心の傷が治るわけでもない、彼女たちは心の拠り所が無い状態で戦っていた。それをもっと早くに見つけられなかった自分を憎んだ
「…なんなんだお前」
たった2人、たった2人しか見てない。だけどこの男は他の2人とは違うことが分かる。他の2人は同類だったけどこの男は違う。今まで私達に頭を下げた人間はいなかった。目も違う、邪な物じゃない、白く清い物だった。
信用に値するが受け入れられない、怖いんだ。2度も信用した人間に裏切られた。この男もそうかもしれない、そう思うと怖くて目も合わせられない
「お、れ…は」
「私は信じても良いと思うわ!」
雷が叫ぶ
「あなたさっき天龍に言ったわよね、『覚悟しろよ人間』って」
「?…あぁ、言った」
それがどうしたのだろうと思っていると
「艦娘の事を人扱いしてくれてる。初めて見た。艦娘を人と言ってくれる人…だから私は信じる」
ただそれだけ、それだけで雷は信じてくれた。
「天龍はどうなの?」
雷が天龍の方を見る
「……」
信じたい
そう思った。無意識に心を封じ込めていた鎖が解かれる、感情が爆発しそうだ
「…信じる」
気が付いたらそんな言葉が漏れていた
直死の魔眼
渚の魔眼、渚の目を刀が無理矢理変質させた物。物の死を見ることができる。また、機械などの死も視覚できる。これは『生命活動の終了』では無く『いつか来る終わり』を見ているから
本来であれば渚の脳に膨大な負荷が掛かるが、ある程度の負荷は刀が受け止めるため数回の使用であれば支障は無い
次回 討滅兵装