深海棲艦討滅兵装
深海棲艦との戦闘を有利に進めるために作られた装備。適合している人間ならば討滅兵装を着るだけでも駆逐艦レベルには戦闘能力を上昇させる。ナノマシンを定着させ、接続機器を手術によって脊髄に埋め込み、討滅兵装の端子に接続すると戦闘能力を艦娘以上に引き上げることが可能。これにより深海棲艦との戦争は人類側が優勢だった。しかし着用者のほとんどに半身不随や失明、記憶障害が発生し、後任の適合者も現れず、深海棲艦の猛攻に対抗できる艦娘を建造する為に討滅兵装はほとんどが解体された。解体されず残った物は僅か四機、この残った四機は適合者が半身不随などを起こさなかった物。
現在も使用されているのは二機だけであり、使用されてない二機のうち一機は深海棲艦による鎮守府襲撃の際に紛失、もう一機は渚の着任した鎮守府に保管されている
「そういえばお前達以外のやつらはどうしたんだ?」
渚は天龍と雷以外のこの鎮守府にいる艦娘に出会っていなかった。先程の天龍達の様に攻撃してくるかもしれないがそんな事はどうでも良い
「今の時間帯だといつもは食堂にいるけど、今日はお前が来るから駆逐艦共は自室にいると思うぞ、他は食堂にいるかもしれねぇが」
そう言われて廊下にある時計を確認した。時刻は正午、そろそろ腹の虫がうるさくなる頃だった。
「正午だね」
「そろそろ腹が減る時間か、食堂に行って何か食うか」
「さっき俺達に殺されかけたのになんでわざわざ攻撃されそうな所に行くんだよ」
「どうせ会って攻撃されるならそれで良いよ。それに今はお前らがいるからな、さっきに比べたらこの状況はまだマシだ」
今ここで会わなくてもそれはただの問題の先延ばしに過ぎない、それにこれからの事を考えると今の険悪な関係よりも良好な関係を築いた方が今後の事を考えると動きやすいだろう
「そうかよ、でも気をつけろよ特に加賀と榛名、他は話し合いで解決するかもしれねぇがその2人はダメだ。話し合いどころか目に入った瞬間消し炭にしようとして来る」
渚は天龍の忠告を聞き入れ、天龍の案内で食堂へと向かった。
〜討滅兵装保管室〜
深海棲艦討滅兵装の内の一機レプンカムイ、それが保管されている部屋に1人の艦娘が入り、討滅兵装を見つめていた。
「そういえば、あの人間はこれを動かせなかったわね」
あの人間とは前任の提督達である。この鎮守府の艦娘を殴り、罵り、辱めた人間。もう人間は信じない、でも、これを、あの人間達が動かせなかったこれをもし新しく来た提督がこれを動かせるなら
「1回だけ、チャンスをあげてもいいかもしれないわね」
そう言い残し、艦娘はその場を去った
〜食堂〜
「ここが食堂だ。あんまり騒ぐなよ、大きな声が苦手な奴もいるんだ」
分かった。と渚は返事を返し、万が一に備えて刀を何時でも抜ける様に構えながら食堂の扉を開けるとそこにいたのは
「…………」
「…………」
先程天龍にあいつには気をつけろよと念を押された戦艦、榛名だった
「あぁ、あなたが新しい提督なのね?」
「そうだけど」
(なんだ天龍があんな事言ってたけど普通そうだな)
渚のそんな考えはすぐに消え失せる。榛名の目は確実にこちらを殺すと言う意志を感じ取れる程の殺気を放っていた。渚は天龍と雷、響を伏せさせる。砲門が砲弾を放つ、伏せさせてからでは遅い、天龍達は助かるだろうが渚は避けれないし防げない、渚の反応速度を持ってしても一瞬の遅れと至近距離からの砲撃の組み合わさった一撃、そうして放たれた砲弾は爆発した。
「司令官!」
響が叫ぶ、渚の姿が煙で見えない、戦艦の砲撃を受けたのだ。いくら渚とはいえ無事ではあるまい
「流石戦艦だ、あのままじゃ本当に死ぬ所だった」
煙が晴れる、そこには榛名の砲撃を喰らったはずなのに、頭から血を流し、左腕を損傷する程度で済んでいる渚が立っていた
「っ!?榛名の砲撃を受けても立ってるだなんて…一体何を?」
「俺に着弾する前に斬っただけだよ、まぁあんな至近距離だったから無傷とはいかなかったけどね。左腕持ってかれたし、普通の人間だったら立ってないだろうな」
「そんな事ができるはずがありません!どんなに速くても、どんなに強くてもできるわけが!」
「ただ未来を斬っただけだよ、俺の目は物の終わりが見えるんだ。
魔眼?目をいじられた?未来を斬れる?榛名には分からない、分かったのはこの男が艦娘以上に謎の多い存在だと言うこと、この男は自分達の命を脅かす可能性があると言うこと
「…嫌だ。せっかく、せっかく手に入れた人間がいない日常が、こんな所で」
榛名の艤装の砲口が再び渚を捉え、砲弾を放った。しかし、渚が抜いた藍鉄色の刃をした刀に弾かれる。一発、二発、三発と放たれる砲弾を尽く弾く、人間のじゃない、艦娘ですらこんな事ができる者はいないだろう、それは前任の提督と同じ人間であるのか疑う程の強さだ。
「嫌、ダメ、また戻って、あァ」
恐怖の日々、人間の顔色を見て、いつ殴られるのか、機嫌を損ねないかを恐怖していたあの長い日々はもう終わったのだ。
「戻らない、お前達をここまで追い詰めたヤツと同じような鎮守府には戻させない、行こう。幸せになれる場所に」
惑わされるな、惑わされるな、榛名を支配する悪意がそう囁く、目の前の男を殺せと、視界が白黒になる。色を無くした榛名の中で榛名を繋ぎ止めていた糸がプツリと切れた
「あぁ、あァあ、アアアアアアアアァァァアアア!!!」
「「「「!?」」」」
榛名が叫ぶ、榛名の髪は灰色がかった黒髪は完全な白に、艤装は黒く、生物の様に、目は青くなり肌は生気の感じられない程に白かった。
「深海棲艦化か」
艦娘が深海棲艦となる状況は主に二つある。一つは艦娘が沈んだ時、二つ目は艦娘が深い憎しみや恐れなどの感情を過剰に抱えてしまった時、榛名は自分の今までの状況に対する怒り、今の日常が壊れる恐怖、この感情が榛名の抱え込める量を超えてしまった結果、今目の前にいる榛名である
「司令官ここは私達に任せて逃げて」
「そんな事できるか、でも今ここにいる戦力だと勝つのは不可能だな、天龍、秘密兵器みたいのって無いの?」
渚が呑気にそんな事を言う
「あるわけねぇだろ!この鎮守府に今の榛名に勝てる様な兵器はねぇよ!圧倒的戦力不足だ」
このままでは榛名を助ける事はおろか倒すことすらできない、魔眼を持っていても追いつけないなら意味が無い
榛名の姿が消える、渚が後方に殺気を感じ振り向くとそこには拳を握り、渚の頭を砕こうとすら榛名の姿があった、しかし榛名の拳は渚には届かなかった、雷は錨を榛名に向かって投げ、響の砲撃により榛名が怯む
「逃げて司令官!」
響が叫ぶ、しかし渚はそんな事気にせず榛名に語りかける
「聞こえてるか?戻ってこい、このままだと仲間も傷付ける事になる」
「ッ!…」
少しの反応が見られた。まだ消えていない、。だがそれも時間の問題だ。ここで心の闇から引きずり出さなければ届かない所まで沈んでしまう。
空気を裂きながら迫り来る榛名の拳、咄嗟に左前腕で受け止めると前腕の骨がミシミシと嫌な音を立てる、渚の左腕があらぬ方向へと曲がり榛名の拳はそのまま勢いは衰えさせずに渚の頬を殴った。
「ぐぅっ!」
殴り飛ばされ周りの椅子などを巻き込みながら無様に転がる。捌ききれない、そこには絶対的な人間と艦娘という壁がある。天龍達の攻撃には迷いがあった。そして先程の榛名にも天龍達程では無いが迷いがあった。だから渚でもまだ勝算はあった。しかし今の榛名にその迷いは無い、天龍達との戦いでもこの刀が現れ無かったらあのまま死んでいただろう。天龍達の攻撃には少しの迷いがあってアレなのだ、迷いを完全に削ぎ落とした榛名に渚は勝てない。
「参ったな、こりゃ勝てないわ」
この国を守る最大の矛、艦娘。人間から人外へと片足を突っ込んだ程度の渚では勝てない。
『あの程度の妖にここまで追い詰められるとはな、私と変われ。あの程度片腕で葬り去ってやろう』
刀が脈打つ、この身の主導権を渡せと、呪いに塗れたその刃は今までに感じた事の無い恐怖を感じさせ、渚の精神を呪いが蝕む
「…黙れよ、
渚を蝕んでいた呪いが吹き飛び、渚の折れた骨が殆ど再生する。体が先程よりも軽い、まだ戦える。
「総員、榛名を海に誘導するぞ」
海での戦闘は艦娘の
幸運にもここは海を見ながら食事ができるのが売りの食堂、天龍達は了解と言い、食堂の壁を破壊し風穴が開く。
榛名が一瞬気をとられ隙が生じる。渚は榛名を柄頭で殴る。榛名が怯むが負けじと右手で渚の頭を砕く勢いで迫る。渚は榛名の拳を避け両腕で榛名の腕を掴む
「うおおおおおおおおおおおお!!!!」
榛名の体が浮かし、海の方へと投げた。
「よし、この軌道なら海に行くな」
「あぁ、でも司令官、私達だけでは榛名さんには勝てない。何か考えはあるのかい?」
海ならば艦娘の独壇場、少なくとも陸上より戦いやすいだろう。しかしそれは榛名も同じ事、相手も自分も得意な場所に移った所で意味が無い、おまけに意味が無いどころか渚という怪物を失う事でこちら側が不利になるというおまけ付きだ。
「…水の上での戦闘は三分ならできる。だから三分でケリをつける」
「もし三分で倒し切れなかったら?」
「それは…「そんな事態は起きません。まぁ、提督次第ですけど」
突然後ろから話しかけられた、振り返るとそこには髪をサイドテールに結った少女が立っていた。
討滅兵装レプンカムイ
深海棲艦を倒すために作られた装備のうちの一機、太ももや背中の部分にはスラスターが着いており飛行が可能だが本来は海上を高速で移動する為の物なので短時間しか飛行できない。