日常の中で   作:ひいろ@支部民

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5.嘘を真実に変えて

コナンside

 

「行くぞ、志保。」

 

「ええ、行きましょ。」

 

「行ってらっしゃい、新一、哀くん。気をつけるんじゃよ」

 

すぐそこまでだというのに気をつけろと言う博士に少し笑いながら、阿笠邸を出る。

歩きながら、昨日までの二日間のことを思い返していた。

 

あのあと、まず母さんに電話した。

蘭じゃなく志保を好きになったこと、告白したときに蘭が聞いていて正体がバレてしまったことなど、全て話した。

 

帝丹高校に行き、海外に転校することにしてくれた。

 

蘭は、園子にオレがもう帰らないこと、好きなヤツができたと言ったことは言ったらしい。

 

園子から電話がかかってきた。

 

まず、蘭を泣かせたのは許さない、一回帰ってこい、張り倒してやる、と言われた。

もちろんオレが悪いのでそれを黙って聞いてると、

けれど、と園子は言った。

その言葉を思い出す。

 

「蘭の親友として、蘭を泣かせたんだから一回張り倒してやりたい。

でも私は2人の幼馴染みで、あちこち飛び回る探偵を、

蘭が黙って待ってられるのかな、とも思ってた。

だから残念だけど、2人はもともとこうなっちゃうって決まってたのかも。

私は新一くんの幼馴染みでもあるんだから、今度その彼女紹介しなさいよ!」

 

「ああ、もう二度と日本には帰れないかもしれないけど、覚えておくよ。ありがとう、園子。」 

 

そう言って電話を切った。園子には感謝しなければならない。

蘭を慰めてくれているはずだ。

 

そして、変声機を使い、新一の声で目暮警部に電話をした。

 

「工藤です。」

 

「おお、、どうしたのかね。」

 

「ちょっと海外で大きな事件に首を突っ込んでしまって、何年も日本に帰れないと思います。

すみません。」

 

「なんと!警察が一般人に頼るのは情けないが、工藤くんは日本警察に必要だ!」

 

「そのかわりと言ってはおかしいかもしれませんが、

オレが育てたコナンを使ってください。」

 

「コナンくん‥?たしかにあの年にしては鋭いが工藤くんの代わりになるほどでは‥」

 

「コナンには、今までは目をつけられないよう、

真相が分かってもそれを言わず、警部たちを誘導したり、

博士や毛利さんに聞いて答え合わせをするのみにしておけ、

と言っていました。

そして推理が間違っていたことはありません。

コナンはオレと同程度の推理力があります。

ですからこれからは事件が起きたらコナンを使ってやってください。

あいつはオレの後継となる探偵です。」

 

「工藤くんがそう言うのであれば‥その言葉を信じよう。」

 

「ありがとうございます。では。」

 

これで、オレは今までよりも格段に捜査に参加しやすくなるだろう。

おっちゃんを眠らせずとも警部に推理を伝えることができる

 

それから、服部にも電話したが一足遅かったようで電話がつながった途端、

 

「今和葉から聞いたんやけど

空手の姉ちゃんと別れたってどういうこっちゃ!

二度と戻れないとでもわかったんか!」

 

と怒鳴られた。

 

「違う。戻れないってわかったんじゃなくて、

戻らないって決めたんだ。」

 

「あの‥ちっこい茶髪の姉ちゃんの為か?」

 

「和葉ちゃんがなんか言ってたのか?」

 

「いや、和葉は単に空手の姉ちゃんとあの金持ちの姉ちゃんから連絡があって、

海外で大きな事件があるからこのままずっと帰らんと思うし、

ほかに好きな人ができたらしいよって聞いただけや。」

 

「じゃあなんでわかったんだ?

オレ自身、志保を好きだって気づいたのもさっきなのに‥」

 

「そりゃ空手の姉ちゃんとの電話をしたがらなくなっとったし、

した時もあんな疲れた顔しよって。

んでそのあとであの茶髪の姉ちゃんとこ行って肩の力抜いとんのが見え見えやったからな。

和葉やて

『コナンくんと哀ちゃんて絶対両思いやな!2人ともわかってなさそうやけど‥』

て言っとったで。

んで、茶髪の姉ちゃん志保って言うんかいな」

 

「あ、ああ。あいつの本当の名前だ。

てかオレ、そんなわかりやすかったのかよ‥」

 

「おう、バレバレやった。」

 

「お前自分のこととなると鈍いのにな。」

 

「なんやて!」

 

思わず笑ってしまった。

変わったことが多い中で、服部との会話はいつも通りで。

 

「ほんじゃ頑張りや、コナンくん?」

 

「なんだよそれ‥

ま、ありがとな。

あ、あと新一の声で目暮警部にコナンはオレと同じくらい推理力がありますって

言っておいたからこっち来たらオレと捜査すること増えっかもよ。じゃな。」

 

「ええ!」

 

また驚いた服部の叫び声をききながら切った。

それから、降谷さんにお願いして、江戸川コナンと灰原哀の戸籍を創ってもらった。

証人保護プログラムの変則的な利用だ。

その上で、オレは父さんたちの、志保は博士の養子にした。

家族の方が何かの時に関係者になれるからだ。

その為戸籍上は工藤コナンと阿笠哀だが、小学校ではそのままにしてもらった。

 

また母さんはおっちゃんに(工藤有希子の姿のままで)江戸川文代が亡くなった為親戚である自分が養子にすることにしたと説明した。

 

おっちゃんはそのまま探偵事務所にいていいと言ってくれたが、お世話になりすぎているから、と阿笠邸に住むと言い断った。

おっちゃんには感謝しているが、この状態で蘭と暮らすわけにはいかない。

 

**************************************************

「コナンくんたち、遅いですよ!」

 

いつのまにかもう三人との合流場所まで来ていた。

 

「悪りぃな、オメェら。」

 

「もう、遅いよコナンくんたち!」

 

「おせーぞコナン。」

 

光彦が歩美ちゃんが、元太が、早くと急かしている。

そして横では灰原が微笑んでいる。

 

「ああ、行こう」

 

江戸川コナンと灰原哀。

その場しのぎで作った嘘の姿を真実にして、ただの小学生として、生きていく。

 

これにて一応完結ですが、

付き合いはじめた2人の日常もちょこちょこ書いていこうと思っています。

まだまだ連載中のもう2つのシリーズも、どうかよろしくお願いします。




これにて一応完結ですが、
付き合いはじめた2人の日常もちょこちょこ書いていこうと思っています。
まだまだ連載中のもう1つのシリーズも、どうかよろしくお願いします。

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