新生怪獣王戦いの歴史   作:surugana

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お久しぶりです。
今回はバトル描写は控えめ、でも少しずつ怪獣と人とが歩み寄っていく。
そんな感じの話になったかなと思います。


第7話

2000年。

新世紀が目前に迫ったこの年の初頭、国連G対策センターの会議室には東都大学の考古学教授藤戸拓哉の姿があった。

彼はこの1年の間、国連G対策センターと特生自衛隊の依頼を受けてフリーライターの寺沢健一郎と共に、日本各地の古文書や民間伝承、土着信仰に登場する幻獣や魔獣、聖獣と怪獣の関係を調査していた。

 

 

その結果、漢字伝来以前の先史時代より、日本各地には多数の怪獣が出現していたことがほぼ確実である、という結論が出された。

 

古代の壁画などから、モスラやバランなどの怪獣と思われる姿が確認されており。

ほかにも戦国時代の出雲、山口、丹波等では土着信仰の象徴であった『魔神』と呼ばれる石像が突如動き出し、当時圧政を敷いていた権力者たちを打ち負かしたという伝説が存在していた事も新たに判明。

 

更に日本書紀や古事記と同時に編纂されたとされる歴史書、『護国聖獣伝記』と言う文献には、日本全土に出現した当時の怪獣たちの情報が網羅されており、日本武尊が八岐大蛇となった悪神を天から現れた神、宇宙戦神と一体化し覆滅したという記述が記されていることも記されていた。

 

 

これらの記述に出現した怪獣のような存在について、ヴァンガード一族のデータベース上の資料と一部が合致した。

宇宙秩序を守るために宇宙を旅している生命体、或は自己意識を持った金属生命体などで、これら特殊生物の姿を古代日本の人々が神話に当てはめた姿ではないかと推察される。

 

これ以後も藤戸教授への研究以来は継続され、各地ににスタッフを増員派遣して一層の詳細な探求を行う必要があるという結論を出し、この会議は終了する。

 

 

 

3月下旬、チベット高原西部にある複数の宗教の聖地であるカイラス山の近くにある小さな村を、国連G対策センターが派遣した調査団が訪れていた。

 

数か月前からカイラス山周辺で、震源地が移動する地震が複数発生。

更に山に近いナーガアームリタ湖周辺で、謎の発光現象がたびたび確認された事から、なんらかの巨大生物の存在の可能性を懸念したG対策センターが調査団を結成し、派遣したのである。

 

一行のリーダーはモナーク所属の生物学者、ニック・タトプロス博士。

同じくメンデル・クレイブン博士とエルシー・チャップマン博士もモナークから派遣され、中国からもアイリーンとリンのチェン博士姉妹。

 

日本からは生物学者の魚崎博士と古生物学者の真嶋博士が、その他、自然現象を考慮して地質学者や水質学者も多数一行に参加していた。

 

調査団の護衛は、USCXF所属、元Gフォースメカゴジラチームの一員だったキャサリン・曽根崎大尉率いる極東方面第8歩兵大隊第6歩兵中隊。

 

 

一行がまず訪れたのは、ナーガアームリタ湖の岸辺にある小さな町。

人口1000人にも満たず、古くからの習慣と現代的な文明が共存するのどかな町の郊外を、調査活動の拠点としたのだ。

 

気の良い町の住民たちは外からの異邦人である調査団を暖かく歓迎し、交流も盛んに行われ町はお祭り騒ぎの様相を呈していた。

だが、湖や周辺で何か異常を感じなかったか、と言う調査団の質問に町民たちは一様に何も知らないと返すばかりで、この時にだけ頑なになる姿にニックと、彼と親しくなった第一小隊長のフォード・ブロディ少尉は違和感を感じていた。

 

 

調査を開始してから数日後、ナーガアームリタ湖の水中調査を行うため、ニックとフォードは湖の上に浮かぶ小型クルーザーに乗っていた。

 

水中探査用のプローブとドローンを使って水質や棲息している生物についての調査を行おうとしたのだ。

 

透明度が高い美しい湖の中を探るうちに、水深は400m近くとかなり深く、更にソナーの探査結果から、南側の湖底部分には巨大な穴が開いており、さらに底から地底湖の様にさらに深い部分があると判明。

魚を始めとした水棲生物の生息量や種類も、この湖での漁業が町の食事情を一手に担っている事からも十分と言え、100mクラスの巨大生物が生息できる環境であるとニック達は結論付けた。

 

 

と、ソナーの異変をボートに乗っていたクレイブンが発見する。

地底湖になっている部分から何か巨大なものが浮かび上がり、どんどんと水面、ニック達の真下に向かって浮上してきているのだ。

 

慌ててフォードの部下がクルーザーを発進させると、今までボートが居た水面が俄かに泡立ち、紫色の水煙を上げ始める。

そして泡が最も大きくなった次の瞬間、水面に巨大な生物が顔を出した。

 

 

両腕が鎌、背中に翼状のヒレを持ち、緑色の外殻と薄い黄色の皮膚を持った、昆虫や甲殻類の様な怪獣だ。

目測15m程と小型だが、一匹二匹、三匹とどんどんと数を増やし、紫色の液体で湖を汚し続ける。

 

その姿は岸辺からも確認でき、目撃した住民たちは口々にシーガン!と叫びを上げて恐れおののいた。

見守っていたリン博士が住民たちを問い詰めると、あの怪獣はシーガンと言う名前で昔からこの湖に住み着いており、恐ろしい毒と鎌で湖に住む生物をすべて殺して食べつくし、時には村すら襲う魔獣だと言う。

 

 

全力でシーガンから距離を取るニック達の乗るクルーザー。そのエンジン音に気づいたシーガンの一匹が小型クルーザーに目を付け、雄たけびを上げると残り二匹を従えて小型クルーザーに向かって進み始めた。

 

ヒレと尾を使って水上を進むシーガンはみるみる小型クルーザーへと接近。

護衛に乗り込んでいたフォードと彼の部下たちはライフルを使って必死に反撃するが、シーガンの頑丈な外殻を貫通することはできず、岸辺のキャサリン達が発射した対獣バズーカ砲も器用に体を沈めて回避してしまう。

 

ついに小型クルーザーに追いついた!鎌を振り上げるシーガン、それでもフォードは叫びながら反撃を辞めない!

 

 

その時、水面下から飛び出した何かがシーガンを吹き飛ばした!

 

 

間一髪を救われたニック達がクルーザー上から振り向くと、一匹の巨大な怪獣がクルーザーを攻撃したシーガンを口にくわえこんでいた。

 

黄金の体表。

頭部から背中に連なる透明な針の様な背鰭。

ニックはその怪獣に見覚えがあった。

 

 

数年前、日本の妙高山から出現し、特生自衛隊が出動し、対応した初の相手。

 

紫電龍 バラン

 

バランは口にくわえたシーガンに、そのままフラッシュボルトを発射。

断末魔を上げて瞬時に焼き尽くされたシーガンは炭化してボロボロに崩れ、バランは口からシーガンの死骸の一部を苦々しげに吐き捨てると、残り二匹のシーガンを睨みつけ威嚇する。

 

二匹のシーガンは怯えたようにその場に釘付けになるが、意を決してバランに突進。迎え撃つバランは水面からジャンプし、上から片方のシーガンを殴りつけ粉砕。

 

最後の一匹がバランの背中に乗って鎌を振り下ろし攻撃を仕掛けるが、特に痛がるそぶりもないまま身をひるがえして水面にシーガンを叩き落すと、そのまま尾の一撃で同じく粉砕してしまった。

 

 

唖然とする派遣調査団を尻目に、事態を見守っていた町民たちは歓声を上げ、バランに向かって婆羅陀魏様!と言う言葉を放ち、バランの勝利を祝福する。

バランは町民たちの姿を一瞥すると、静かに湖面に体を沈め、その場から去っていった。

 

 

その日の夜、ニック達は町長たち町の重役たちを庁舎で睨みつけていた。

怪獣など見た事が無い、と言う町民たちの証言が嘘だったから当然だ。

そして町長たちは少しずつ、バランとシーガンについて話し始めた。

 

 

はるか数千年以上の昔、この土地に町民たちの先祖が居住地を拓き始めたころから、既にバランとシーガンはナーガアームリタ湖に住み着いていた事。

 

バランは湖の生態系の頂点に立つ存在で、そのバランスを崩す存在であるシーガンを敵視し、ずっと戦い続けている事。

 

町民たちは湖や周囲の自然を必要以上に開拓して生態系を崩さない代わりに、シーガンからバランに守られ、バランが好む湖の澄んだ水を護る為に村の周囲で取れる古代樹で作った炭で湖の水を清める一種の共存関係にあり、バランを土地の守護神婆羅陀魏神として崇め祀っている事。

 

この土地が様々な宗教の聖地になっているのはバランの存在がある事を。

 

 

そして、怪獣と言う存在が憎悪の対象として見られている今の世で、バランの存在が勝手に殲滅する対象にされてしまうことを恐れたから、バランの存在を誰もがおのずと隠してしまったのだ、と。

 

 

そして実際、バランは村の人々の牙をむくことなく、湖で漁をする漁師のボートに寄り添うように並走したり、おぼれた子供を背中に乗せて岸まで運んだりと、まるで現地の住民と共存するイルカやクジラの様な関係性を両者が築いている。

 

 

湖で泳ぐバランの姿に声をかける町の子供たちの姿を、ニックはどこか上の空のままに見つめていた。

 

彼にとって、怪獣とは地球の生態系の中から逸脱してしまった悲劇の被害者であり、同時に間違った存在であったからだ。

だが、この地では人と自然と怪獣とが、それが当然であるように共存し、互いを尊重しながら生きている。

 

ニックの警護役に就いていたキャサリンとフォードは、彼のその言葉にそんな難しい事ではないのかもしれない、と返した。

キャサリンは日本人の夫と国際結婚した仲で、フォードも中学生まで日本で暮らしていた経験があり、それまでの安定した状態から一気に経験のしたことのない環境に放り出されてしまう戸惑いと難しさを知っていたからだ。

 

それを解消するのは、結局はお互いが踏み出し互いを尊重できるかでしかなく、それは一度踏み出してしまえば簡単な事でもある、と二人は語る(キャサリンは簡単だからこそ実行するのは難しいけれど、と続けたが)。

 

その日の夜、再び設けられたG対策センター調査団と村の有力者の会談で、バランの存在をG宅策センターには報告するが、危険な怪獣としては報告しないと約束し、町の人々は安堵。調査団はバランと湖の生態系の調査を続行する。

 

 

調査は再開され、様々な角度からバランの生態と湖の生態系を研究し、貴重なデータの収集に従事。

また、先ほどバランに斃されたシーガンの死骸を解析し、シーガンはプランクトンの様な微小生命体が異常進化した怪獣であることが判明。湖の地底湖部分に多数生息していることから、よどんでいる地底湖で何らかの化学反応が発生し、それの影響で巨大化したのではないかと言う推察がなされた。

 

時は流れ、調査団の撤収の時が訪れた。すっかり打ち解けた町の住民達は皆別れを惜しみ、涙する者すらいるほどだ。

 

 

最後の車両の準備が出来るまでの間、ニックはナーガアームリタ湖の岸辺を眺めていた。

自分の価値観を変えた存在が住む美しい湖。その主に再び会えるのではないかと思ったからだ。

しばらくすると、その主、バランが湖面に顔を出していた。ゆっくりとニックに向かって接近し、手ですぐに触れられるほどの距離で二人は相対する。

ニックを迎えに来たフォードの部隊の隊員がライフルを慌てて構えるが、フォードはあえて手でそれを制する。

 

アメジストの様な紫のバランの瞳にニックが映る。見つめ合う一人と一体、互いに言葉はなく、やがてバランは身をひるがえし、静かに湖の中に去っていった。

 

バランは何を思ったのだろう、拒絶か、再訪の歓迎か。真相はわからないが、ニックは少なくともバランの瞳に強い意志と確かな理性を感じた。

彼は、彼らは生きているのだ。自分の意思で、自分の決断で。

 

 

数日後、帰還した調査団の報告を受けたG対策センターは、この地のバランをバランⅡと命名し、ゴジラやモスラと同じ低警戒観察にのみ認定すると決定した。

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